こんにちは。
『PAN』は1995年リリースのブルーハーツの8thアルバムで、ラストオリジナルアルバムです。
メンバー4人がそれぞれ個々に録音してきた曲の寄せ集めのアルバムです。
『PAN』リリース時にラジオで突然発表された“解散”を前提で作ってる感じが強いです。「THE BLUE HEARTS」というバンドというよりもメンバー4人の個性がぶっちぎりに炸裂した作品だと感じます。
そんな事情もあり、ブルーハーツ好きで最初に『PAN』をオススメする人はいません。
“ブルーハーツ突然の解散宣言”
8thアルバム『PAN』(1995.7.10)発売直前の1995年6月1日。NHK-FMのラジオ番組「ミュージックスクエア」に出演したブルーハーツの4人。この番組は中村貴子さんという明るい雰囲気の女性がDJを務めていました。
当時、高校生だった私は生放送のそのラジオをリアルタイムで聴いてました。
4人が照れながら『PAN』収録のそれぞれの曲の紹介をしました。
ヒロトの曲すでに名曲じゃんとジーンと来たり、ついに梶くんも歌うんだとほっこりしたり、河ちゃんの曲は勢いがあって気に入ったなと感激したり、マーシーはレコーディングは簡単だったと言い切っていてカッコいいなと興奮気味で聴いてました。
ひと通りそれぞれの曲を一つずつ紹介して番組も後半に差し掛かったところで中村貴子さんがブルーハーツに今後の予定を聞いたらヒロトとマーシーがそれほど戸惑いもなく、なんと「解散…」と伝えた。
ブルーハーツの今後の予定はなく「解散」とやっぱりハッキリそう言った。
当然、その瞬間の衝撃は相当なものでした。
なんかすごい事実を知ってしまったと思った。
番組のエンディングはマーシー本人による曲紹介と共にマーシー作の「休日」で締めくくっていたのは感慨深かったです。
番組の最後に中村貴子さんが心を込めて言った「前向きな、ポジティブな解散なんだな」という言葉に勇気付けられます。
という訳で8thアルバム『PAN』はブルーハーツのラストオリジナルアルバムになりました。
今でもミーハーなやつがたまに現れます。
なんでもブルーハーツの解散理由を紐解くとか言っていますがそんなこと紐解く必要があるのかが謎です。そんなもん紐解けません。
解散理由についての誰かのテキトーな憶測とかはやっぱりつまんないし、そんなのどうでもいいです。長年続けたバンドの内側の重みなんて第三者には分からないと思います。
“ブルーハーツは解散した”
その事実だけを私は受け止めました。
この人たちは今現在それぞれの好きな場所で活躍してる。それが何より素晴らしいです。
今でも余裕でブルーハーツの音楽が心の中で輝いていて、そこから生きる勇気をもらってる。それだけが揺るぎない事実です。
THE BLUE HEARTS/PAN(1995)
PAN(パン)は前作である7thアルバム『DUG OUT』(1993.7.10)からぴったり2年後(1995.7.10)に発売された8枚目のアルバムで最後のオリジナルアルバムです。
ジャケットのデザインはバンド名のみで、アルバムタイトルの表記がないのが印象的です。歴代のアルバムの中で一番シンプルなジャケット。
アルバムタイトルはヒロトの発案だということです。梶くんが『PAN』で使用した楽器“スチールパン”から取っているらしい。作品をまとめる言葉がなかったから、アルバムで一番風変わりな“スチールパン”にしたとヒロトが話していました。
「鍋」という意味。
ヒロト、マーシー、河ちゃん、梶くんの4人別々の個性と感性を楽しむアルバムになりました。
それが『PAN』を最高に楽しむ聴き方です。
それぞれの曲は各自が歌を唄います。特に注目なのはボーカル初披露の梶くんです。全員のボーカルが聴けるのは『PAN』の最大の特徴になっています。
収録された13曲はすべて4人のメンバーが個々に自作したオリジナル曲。
そんな曲たちはそれぞれが個々に録音してきたとは言え、個々に集めたメンバーによるバンドの演奏なので弾き語りとかではなく煌びやかなバンドサウンドが楽しめます。ラストの13曲目「ありがとさん」のみ河ちゃんのギター弾き語りスタイルです。
そのため、ヒロトの曲でマーシーがギターを弾いていないし、河ちゃんの曲で梶くんはドラムを叩いていないという内容です。
ロックバンド「THE BLUE HEARTS」としては機能していません。ソロ作を持ち寄ったラストアルバムです。
『解散』という事実を前提で聴くしかなかったし、そうするべきなのかもしれません。
ブルーハーツというバンドがそれまでに積み上げたものを一撃でぶっ壊した印象もあります。
ヒロト「すごく素晴らしい作品が出来て嬉しいです。この作品はなんか、僕は自慢できるので皆さんも聴いてみてください。」
『PAN』収録曲
01.ドラマーズ・セッション
02.ヒューストン・ブルース(月面の狼)
03.もどっておくれよ
04.ボインキラー
05.花になったかまきり
06.バイ バイ Baby
07.歩く花
08.休日
09.トバゴの夢(キチナーに捧げる)
10.幸福の生産者
11.Good Friend(愛の味方)
12.ひとときの夢
13.ありがとさん
全13曲64分。
アルバムは解散決定後に制作されました。
「別れ」をテーマにした歌も数曲入っていて、バンドの解散を感じさせる瞬間も何度かあります。
とは言え、別れが悲しいという感じではなく中村貴子さんも言ったように、前向きなポジティブな印象を受ける力強さが存在します。
とにかくそれぞれの個性が爆発しているという印象です。全曲が「THE BLUE HEARTS」というバンドの枠組みを外しているとさえ感じる13曲。
甲本ヒロト、真島昌利、河口純之助、梶原徹也、この4人の違う個性と感性で作られた音楽を深く堪能できます。そういう意味ではよりコアなアルバムなのかもしれません。
きっと心の名曲も見つかります。
リードボーカル初披露の梶くんは南国を感じる明るくあたたかい感じの雰囲気が中心です。作った歌は独特なメルヘンチックな世界観で好ましいです。スタイルとしてはカリプソとかサルサです。それまでのブルーハーツにはなかったインストもやっています。
ヒロトは人並み外れたロックという感じ。ブルーハーツにはほとんどなかった長いイントロや打ち込みの機械的な表現の音を取り入れたり、フォーク・ロックの名曲を生み出していたりで楽しませてくれます。人並みや一般的を果てしなく外れた個性的なロックの世界。
特にマーシーはブルーハーツというより完全にソロアルバムでやっていたそのまんまの音楽をやっている感じです。ストリングスアレンジがあったり、繊細でロマンチックなギターを弾く詩人の世界。収録されたのはたった3曲ですがマーシー曲はとても聴き応えがあります。
河ちゃんはやっぱり優れたメロディメーカーという印象です。個人的には歌詞が普通だったらもっと好きになっていたと思います。とは言え、河ちゃん独自の美しさがあります。そこは愛が溢れる優しい世界。
ラスト曲「ありがとさん」では河ちゃんからの感謝の気持ちと言葉が歌われているようでジーンとくる名場面になっています。
3〜4曲ずつ収録されたそれぞれの曲が1つずつ全然違うアレンジになっているのも面白いです。それまでの「THE BLUE HEARTS」にこだわらず、バラエティに富んでいることが『PAN』をずっと聴き続けてる要素です。
アルバムは解散後に発表されたので『PAN』からのシングルカットはありません。なので、ラストアルバムは本作ですがブルーハーツのラストシングルは1993年リリースの7thアルバム『DUG OUT』収録曲の「夕暮れ」です。
1995年の本作オリジナル(CD)発表から22年後の2017年にアナログ盤が発売されました。『PAN』をレコードで聴けるとは思ってもいなかったのでとても嬉しかったです。
ヒロト「今までの作品て僕あんまり聴かないんだけど、これは聴くと思う。聴き続けるかもしれない。」
M1「ドラマーズ・セッション」
作曲 : 梶原徹也・新井田耕三
編曲 : Drummers
『PAN』の1曲目は梶くんのインストです。
アルバムの幕開けにふさわしいドラムロールといった感じです。
初の梶くん作曲。ドラムだけのインストです。4人のドラマーによる熱いセッション。
Drummers : KOZO NIIDA
TETSUYA KAJIWARA
MASAYUKI KOBAYASHI
KENJI OHSHIMA
後に「THE HIGH-LOWS」のドラマーとして活躍する大島賢治さんが参加しているのは興味深いです。なんだか“ブルーハーツ”と“ハイロウズ”を同時に聴いているような不思議な感覚。ただの感覚です。錯覚かもしれません。
歴史には残らないかもしれないけど、異質な音ととして私の記憶には残りました。
爆発的で斬新なアイディアだと感じます。圧倒的なロックの音圧も感じます。ドラマーズの激しく熱い打撃音が耳の奥まで炸裂しています。ドラムの音ばかりこんなに聴いたのは初めてです。
それまでに体験したことのないドラムの音の重なり方だとか、メロディと感じる瞬間さえあるドラミングは地球を揺らします。正にドラマーたちだけのセッションという驚異の音が鳴っています。
でも、、、
これはどう聴けばいいのかわからないです。
はっきり言って私には難しいです。
6分を超える迫力の大作。ずっとドラムの音だけというのは、正直ちょっと飽きてくる。
インスト曲をブルーハーツに求めているかと言うと、そうではないです。個人的にはブルーハーツに求めていないものではあります。
本音を言うと結構高い割合で1曲目をスキップして2曲目から『PAN』を聴き始めることがあります。梶くんごめんなさい、、、
でもレコードで聴く場合は飛ばしません。
自作カセットテープの場合も飛ばしません。
いい音してます。CDが良くないのかも⁈
カセットで『PAN』を聴きたかったので自分で作りました。
M2「ヒューストン・ブルース(月面の狼)」
作詞 : 甲本ヒロト 作曲 : 甲本ヒロト
イントロが始まった瞬間にブルーハーツとは別のバンドの音を感じました。2分以上もある異常に長いイントロ、何か機械的な音、ただならぬ雰囲気に包まれます。
何が起きるのかと少し緊張しながら聴き進めていくと突然ヒロトの声で“Fly to the Moon from Houston”と叫び、やっと歌が始まる感じになります。
でもまだイントロは続く。ジャキジャキでバキバキなロックの音は興味をそそる。しかしヒロトはまだ歌わない。結局イントロだけで2分51秒あった。
こういうのはそれまでのブルーハーツならきっとやらなかっただろうという違和感はありつつも、斬新ですごくカッコいいロックだと興奮気味で聴けます。
左右に振り分けられたギターがギンギンなロックンロールの鋭さを際立たせてる。
歌い出しはいきなり天国を否定するロックイズム。オレの場合は宗教の考え方よりもヒロトのロックイズムの方がしっくり来る。
間奏は踊りたくなるファンキーなベースソロからのメロディアスで胸熱なギターソロがロックの太々しさを聴かせてくれる。
心に響くメロディに乗せて、神様さえも拒否する圧倒的自己愛に共感します。
自己重要的な歌で、ありもしないくだらない何かにすがらずに生きていく今日を見出せてしまう。こういうの好きだ。他人の考え方なんて気持ち悪い。独走的で強烈な歌だ。
ロック以外の何かを信じてる人からしたら、この歌には馬鹿げた太々しさがある。そこがいい。オレには他の何よりもロックの馬鹿げた太々しさが好ましい。
歌詞 : そこら辺の人間が作った神様の言葉や思考停止な他人の考え方を真に受けてはいなくて、自分の頭で考えて放ってるこの言葉に100%の共感と更なる憧れを抱きます。
自分の頭で考えるのがロックです。
馬鹿げた事を言い放った最強のロックイズムに、他人の考え方や人並みな思考は一切感じない。よく分からないけどなんかすげえ。どうでもいい人並みに甘んじたいダメな心を奮い立たせるパワーがある。
オレももっと広々暮らしたいんだ。
おい!そこのネガティブな神様!聞こえねえフリてんじゃねえよと叫びたくなります。
M3「もどっておくれよ」
作詞 : 真島昌利 作曲 : 真島昌利
ノスタルジックなゆったりテンポ。
キラキラ光る美しいストリングス。人の手と感性で奏でるオーケストラのメロディにうっとりします。
すぐにロックではない音楽を感じるけど、そこがいいです。金子飛鳥の豪華なフルオーケストラが心にズキューンと感動の一撃を与えてきました。
ストリングスのイントロが終わるとマーシーのしゃがれた歌声、柔らかいアコギ、堂々とした伴奏のピアノが聴こえます。マーシーが歌い出したのはノスタルジー。懐かしさ、あたたかさ、優しさなんかを一瞬で感じる。
歌もそうだけど、真島昌利という人からそれを感じているのかもしれない。
この歌にはドラムとベースは入ってこない。
2番なんかすごくロマンチックです。なんだか、置き去りにされてしまった恋心みたいなラブソングに聴こえる。詩人の歌にドキドキする。切ない情景に胸がキュンキュンする。いつの間にか高校生ぐらいにまで心が若返る。
オレはなんて異質な気持ちになってるんだ。日常ではこういう気持ちにはならない。きっとマーシーの音楽がロマンチックすぎる。
使う言葉とか表現の仕方とか歌い方とかマーシー節がいちいち心に響いてくる。
間奏では取り戻したい時間と忘れられない約束を、ダイレクトに感情的に演奏するストリングスの音が魅力的です。
ラストの緩やかなストリングスは物語のラストシーンという感じでジーンと来ます。
ギンギンバリバリのロックを求めてはいけないけど、1本の美しい映画を観たような心地よい気分になります。カッコいいけど、それより素晴らしいって思う。
歌詞 : 胸がズキューンとなった美しい歌詞。胸キュン度最高潮でメロディと一緒に1回目で記憶に残りました。なんか心のどっかが照れる。
今思い出してる切なさと、確実に持っている恋心がデッカく存在している胸キュンソングの決定版です。
ただの歌にドキドキする異質な瞬間はたまらなく胸が高鳴る幸せな気分を感じます。
2015年に出た『THE BLUE HEARTS 30th ANNIVERSARY ALL TIME MEMORIALS〜SUPER SELECTED SONGS〜』というベストアルバムにも収録されました。
『PAN』の曲がセレクトされたベストはこれが初めてでした。
M4「ボイン・キラー」
作詞 : 甲本ヒロト 作曲 : 甲本ヒロト
なんだかすごくすっとぼけた感じのただならぬ音が始まった。心が、これはとんでもないことやりそうだという期待感に満ちていく。
歌詞なんか人並みな思考では絶対に追いつけない。
この歌は尋常ではない瞬間の連続。
2曲目の「ヒューストン・ブルース」にもあったロックの太々しさと図々しさがここにもまたある。ロックの馬鹿馬鹿しさ、訳の分からなさも同時にある。
そこに圧倒的に感じるカッコ良さ。
ヒロトが歌い出すと“ボイン”を連発する。“ボイン”がいっぱい出てきてなんかすげえエロい感じがしてきた。
ヒロトにしか表現できない歌心だ。
速くはないテンポと独特なリズムが余計に撫で回すようなエロさを爆誕させてしまった。
もしかしたら今オレは官能小説を聴いているのかもしれない。
最近“ボイン”という人はあんまりいない。楽しいからもっと言ってほしい。この歌では何度も言う。うんざりするほど言う。楽しい。
サビに入ると突き抜けたかのように激しさを増す演奏がロックへの憧れを思い出させてくる。太くギンギンなギターの音が凄まじくイキリ立つ。勃っている可能性もある。
間奏でヒロトのこれまた官能的なハーモニカソロとブルージーなギターソロのこれ以上ないマッチングは変なアプリよりよっぽど冴えてます。
ただの下ネタソングなのかと思いきや、やたらとカッコいいギターのフレーズがたくさん登場してテンションが上がります。でもやっぱりボインだ。基本的にはボインです。
歌に意味なんてないのかもしれないけど、下心への説得力はある。
歌が終わると最後にヒロトたちが楽しそうに笑っているのが微笑ましくて、ついオレも“ボイン ボイ〜ン”と口ずさんでしまう。
歌詞 : そんなに意味とかないんだろうけど、とにかく強烈です。こんなに“ボイン”を聴ける曲なんて他にないです。ロックが持ってるバカっぽさ全開でカッコいい。
難しいこと考えてる場合じゃねえって思えます。
深い意味はなくても盛大に韻を踏みまくってるセンスに嫉妬してしまう。これがとぼけたメロディに乗った時の気持ちよさが最高です。
M5「花になったかまきり」
作詞: 梶原徹也 作曲 : 梶原徹也
編曲 : Camouflage & Mimicry
Horn Arrange : JUN野村
『ミュージックスクエア』オンエア曲
初めてボーカルを披露した感想は?
梶くん「基本的にはカラオケでいつも鍛えてたんで、いつかご披露できる日が来ればいいな、なんて思ってなかったんですけども、前の日から緊張しちゃって眠れなかったんですよ。」
カラオケ状態で楽しく歌えたということで、それはバッチリ伝わってきて聴くと楽しい気分になります。
DJ「曲が流れてる間にね、河口さんがいやぁ梶くんの声ってあったかいねっておっしゃったんですけど。」
河ちゃん「ええ。」
マーシー「いやぁもう、感動の涙で、何も見えません。」
ブルーハーツで初の梶くん作詞・作曲の歌です。梶くんが歌います。
梶くんの歌はドラマーのリズムな感じがします。それに、聴くと心がほっこりするあたたかさと、本人の人柄の優しさが溢れていて楽しくなるので、もっと歌ってほしいと感じました。
更に驚いたのは、梶くんてこんなにメルヘンチックな歌を作れるんだということ。それは心がスーッと惹き込まれてしまう世界観。
例のスチールパンは入っていません。
始まった途端に明るい楽しい以外の感情が消え失せます。キラッキラな音、あったかい歌声、楽しさ全開なコーラスが一瞬で南の国にぶっ飛ばしてくれます。
カッティングギターやサックスが聴こえてきて豪華なジャズの音に近いと感じます。
いい音してるなぁと思った。
花になりたいかまきりの苦悩をコミカルなタッチで歌にしていて好感度MAXです。興味深い物語を聴くという感覚もあります。
誰でも持ってしまう劣等感とか、誰も信じないけど何かを強く信じる心とか、すごく深いけど共感しやすい内容を一切ネガティブを感じさせずに結末まで楽しませてくれます。
梶くんのドラムもそうだけど、どこを聴いても南国をイメージさせるキラキラした音が鳴っていて、人のあたたかさとか、太陽の明るさとか心に良いものしか感じていません。
特に、梶くんにしか表現できない歌心があってかなり好きです。
人と違っても自分のなりたいものになればいいんだなと前向きになれる歌。そのための辛い苦悩はあるけど、きっとなれると背中を押してくれる私の心の名曲。
歌詞 : 自分のなりたいものになってやると決意した瞬間がキラキラ輝いてます。コーラスで歌われる自分の頭で考えるって一節にすごく共感したし、オレも何としてもなりたい自分になってやると奮起しました。
他人の人生を生きないために重要なことを歌っていたのでドキドキワクワクしました。そして人と同じでなければという意味のない呪縛に萎縮せずデッカイ気持ちが持てました。
オレにとってドキドキしたり、ワクワクしたりするもの以外は全部ゴミだ。
M6「バイ バイ Baby」
作詞 : 真島昌利 作曲 : 真島昌利
軽快なドラムから始まるすごくポップなロックにストリングスが入ってとても華やかです。
耳に広がるオーケストラ。
心に届くミディアムテンポ。
それは心にスーッと入ってくる心地いいテンポ。音数は多めだけど、決して重くはない演奏に体も心も小踊りし出します。
歌詞からの影響もあるけど、日に焼けた夏に聴くのがよく合います。
夏を意識させるメロディと、明るく大きな空をイメージさせるアレンジが、ほとんどの人の感受性に伝わる音がします。
失恋の歌だけど、果てしなく明るい雰囲気。これを聴きながら落ち込んだり、生きるのやめたくなったり、突然イライラする人はいません。ポジティブな音がそこで鳴ってる。
またしてもぶっちぎりな詩人のセンス。心に残る美しい歌詞。心を揺さぶる熱い歌心。別れを決めた恋心。生きる覚悟を持った人心。
50年代の歌のようなとても軽い感じの音です。オーケストラが入っていながら空まで飛んで行けそうなほどの軽快さが特徴的です。
アコギの音が爽やかです。本人がやってるカスタネットが曲の重要な存在感になってる。しかもすげえ上手い。コーラスもマーシー本人がやっていて、マーシーの歌の世界観を崩さないすごくいい感じ。
イヤホンやヘッドホンで聴いた方が分かりやすいと思うけど、音の配置の仕方が独特です。一般的な音の配置はこうではないと思います。古いステレオのジャズを聴いてる時の感じ。懐かしさのあるいい感じ。これはおもしろい。ミキシング?マスタリング?詳しい事はよく分からないけどそういうやつです。
ラストに何度も“バイ バイ Baby”と繰り返し歌うサビに、オレのブルーハーツへの名残惜しさを実感してしまう。
そんな気持ちを煽るようなキレイなフェイドアウト。でもやっぱり新しい道へ向かう強さをもっと強く感じる。
ポジティブにいこう。
歌詞 : 歌い出しの一気に夏を感じさせる爽やかさと覚えている思い出の強さを語る歌詞はいきなり詩人の感性に魅せられます。
すごく心に響きます。
この歌にはときめく。恋心って自分の中ですげえデカい存在です。失恋の歌とは言え、恋をしていた時の気持ちが恥ずかしくなるほど美しく表現されてて、むしろ強い気持ちになれました。
今の自分て何mくらい? 3mくらい。
マーシーバンドは後のハイロウズ陣がやってます。ピアノは白井幹夫さん、ドラムは梶くん曲にも参加した大島賢治さんです。
ベースは違うけど、ほとんどハイロウズ。
『PAN』リリース時には当然まだハイロウズの存在を知らないけど、時を経た今の耳で聴いてみると当時とは違った音に聴こえてきます。
M7「歩く花」
作詞 : 甲本ヒロト 作曲 : 甲本ヒロト
『ミュージックスクエア』オンエア曲
ヒロト「車に積んでドライブする時に聴くといいかも。天気のいい日に。」
マーシー「いやぁもう、感動の涙です。」
ヒロト「ウソつけ。」
マーシー「感動の涙でもう何も見えません。」
河ちゃん「いやぁ、おもしろいと思います。タイトルからして、詩人だな〜(笑)」
梶くん「え〜とね〜、今回ほら別々で録ったから、それぞれの録ったスタジオっていうのがね、まだ行ってない所もあったりするんですよ。で、ヒロトくんは新しいスタジオで録ったんで、その音が非常になんか気になりますね。よかった。」
フォーク・ロック、カントリーなんかを感じさせるアレンジで人並みを目指さず自分を生きるための名曲です。
カントリーは日本人にはとっても人気がないけどヒロトはかなり好きなんだろうなと感じるアレンジ。
『PAN』に収録されたヒロトの曲に励まされる心はきっとたくさんあると思います。
ドラムのイントロからもうこれは名曲であると察してしまえる。
そのイントロに入ってるギター?の音はあまり聴き馴染みのない音です。何て言う名前のギターなんだろう?カントリーな感じのその音が「歩く花」のポイントになってる。
最初に感じるのは「優しい」ってこと。ヒロトの前の2曲のようにギンギンしていない。柔らかく滑らかなアレンジで、ヒロトが歌う内容が際立って光る。
河ちゃんと同じく、詩人だなぁって思う。
もはや哲学的な歌詞は、間違った生き方を変えてしまうほどのいい影響力があります。
ラジオで聴いて一発で気に入って、今ではもっと好きなったすげえいいメロディ。
ヒロトの良さが一番炸裂してると感じる歌い方。明るく軽やかで聴き手に何の負担もかけない。だけど心の真ん中を鷲掴みにしてくる魅力。
「歩く花」はこの時にヒロトが作って、この時にヒロトが歌わなければいけなかった歌だとさえ思えます。こういう歌が自分の人生の近くになくてはいけない。
ラストアルバムにとんでもない名曲をぶっ込んできた。
歌詞 : 「歩く花」の一言一句が名曲の歌詞と感じる特別感いっぱいです。やたらと心に刺さります。ある日突然ピンとくるものって大事だと思います。ずっと考えて出てきたことじゃなくて降ってきたようなインスピレーションを深掘りしたいです。
その恋の特別感を表すこれ以上の表現はありません。驚異的な歌へのトキメキがあります。ヒロトが歌うとずーっと心に残ります。
歌詞に完全な自分を誕生させた瞬間を見た。強い意志で生きる覚悟を聴いた。花は歩かないと勝手に思っているけど、実は歩くのかもしれない。足が生えて歩くんだな。
結局は今でもロックンロールを信じてる。
解散から随分経った2015年に出た『THE BLUE HEARTS 30th ANNIVERSARY ALL TIME MEMORIALS〜SUPER SELECTED SONGS〜』というベストアルバムにも収録されました。
「歩く花」はベストに収録されるくらいの名曲だと私も思っています。
M8「休日」
作詞 : 真島昌利 作曲 : 真島昌利
『ミュージックスクエア』オンエア曲
解散宣言のラジオ番組のラストにかかったのはこの「休日」という感慨深さ。
DJ「今回はどんな感じの曲を作られたんですか?」
マーシー「いろいろ。うん。(アレンジとかも)1曲毎に全然違うんだよ。違うのさ。」
この人はいつも多くを語らない。だけどマーシーの音楽が語りかけてくることは多くあります。本人談としてはダラダラした計画性のないレコーディングだったということです。
何も考えていない心の休日と、いつか来る新しい旅立ちを感じる1曲。期待通り、この歌ももちろん詩人の優れた感性にヤラレます。
「休日」からは突き抜けた印象を受けます。
イントロなし、ジャーンと弾いたギターの後いきなり力強いマーシーの歌が入ってきてとても快調です。サビから始まる胸熱なやつ。
一瞬で自由な心になれるアップテンポ。
ギターリフというのか、耳と心に残る存在感のある穏やかなギターのフレーズが曲から意識を離してしまうことを許さない。
この歌声が聴きたかったんだという欲求を完全に満たしてくれる圧倒的ロックのボーカリスト。
エレキ、アコギ、ベース、ピアノ、ハーモニカのすべてが弾けてる。いいバンドだ!中期ぐらいのハイロウズなんかの音を感じるかもしれない。
解散宣言をしたラジオで最後にかかった曲です。ここには悲しさや寂しさはなく、ネガティブな感情も一つもなく、楽観的で明るく、決意は力強く、ポジティブなものしか感じません。マーシーを人として尊敬する瞬間。
聴くと少し楽な気分になって涙が溜まってきます。悲しいからではないです。怖気付いた心が励まされたからです。
ネガティブになってしまった心に楽観的な希望の光を見せてくれるので、辛い時にはオススメの歌。
とても好ましい超ポジティブな他責思考のダラダラ感と、一本の折れない光の軸が未来を切り拓くキラキラ感です。その両翼の幅がすべての自分を肯定して自信が持ててきたりします。
ラストはマーシーのギターのフレーズが冴え渡って、オレの心を奮い立たせてからゆっくりフェイドアウトしていく演出が熱い。
歌詞 : 1番から美しい詩を聴いているような弾む気分になります。私にとって歌の歌詞はこういうその人にしか出来ない比喩表現の方が好ましいです。聴いていて楽しい。
何度か歌われるBメロの歌詞も大好きです。お日様へ向けた他責思考とかマネしようと思いました。自分は何も悪くなくてただボーッとしてる感じに癒されるし、救われます。心のネガティブがポジティブに変わります。
サビも何度か歌われます。いつか来る新しい旅立ちをしっかり意識している光の軸があって、折れないしなやかさまで感じます。
『PAN』がリリースされた高校生の時は毎日聴いてた。マーシーの歌は夏に合ってた。
オレの心は美しい3曲をずっと覚えているよマーシー。
たまにマーシーの3曲だけを聴いてみると、詩人の繊細さや美しさを感じるソロのミニアルバムを聴いているような気分になります。
M9「トバゴの夢(キチナーに捧げる)」
作詞: 梶原徹也 作曲 : 梶原徹也
編曲 : 梶原徹也・新井田耕三・槌田靖識
“音の島”から届いた歌のプレゼント。
激しいスチールパン炸裂で演奏開始です。
「花になったかまきり」に続き明るく楽しくゴキゲンな雰囲気で興味を惹かれます。
梶くんの暴走しない優しいボーカルにとても合う跳ねるアレンジ。変にクセがなく嫌味もないボーカルは何かの邪魔をしない。邪魔はせず心の柔らかい部分を直撃する。
特徴的で楽しさしか感じないコーラスが重要なポイントになっています。
「パンパンパンパンパン」と歌う楽しいコーラスはすでに8thアルバム『PAN』を代表しちゃってるぐらいのインパクトがあります。
これを聴きながらオレは今カーニバルの真っ最中な気分です。その中で踊ってる。
それまでのブルーハーツではあまり聴こえなかった音がたくさん鳴っている。あまり感じなかった雰囲気が広がっている。
梶くんのドラムもブルーハーツの印象からは異質な感じがある。独特のリズム、抑揚の効かせ方、プロフェッショナルってすごいなと感動した。
ブルーハーツの音ではないと感じます。でも梶くんの個性的な音だ。楽しければ何でもいいのかもしれないと思った。
“音の島”からはるばる届いたこの歌には秘密の魔法までかかってる。2曲しか聴けないけど、梶くんの歌詞って現実的な表現はせずに美しい物語風で夢があると感じます。
とても優しい。生きていたいって思います。
2分近くあるコーラス主体のアウトロはエキゾチックなカーニバルのハイライトを体験しているようで心が踊ります。
歌詞 : 梶くんの歌詞に「スチールパン」が出てきたことが嬉しくなります。軽快なステップを踏んで心から楽しんでる感じ。音が楽しい“音楽”を実感します。
2回目のサビでは自分の中のメルヘンチックな部分が反応してる。妖精や小人とかもその辺で踊っているかも。1回目と2回目のサビは歌詞が違ってとても丁寧な印象を受けます。
梶くんの歌の世界はオレにとっては異世界だった。そこにすごく魅せられました。
M10「幸福の生産者」
作詞 : 河口純之助 作曲 : 河口純之助
編曲 : 水澤有一・河口純之助
ここからラストまではやっと登場の河ちゃんです。河ちゃんの曲だけは交互にならずに後半に4曲続けて収録されています。
ヒロトがこっそり言うことには、これは河ちゃんのわがままだったらしい。
レコードでもSIDE FOUR(第4面)がすべて河ちゃんの曲になってます。河ちゃんサイド。
河ちゃんだけ曲の配置がまとまっている事情もあってか、アルバム後半は何処となく宗教の考え方を感じる面もあります。でもそれも河ちゃんだけの個性かなとも思います。
個人的には歌詞が難しいです。
ともかく、ブルーハーツが最後に残した『PAN』というロックンロールとして聴いた場合に楽しめます。
この曲はイントロなしで河ちゃんが歌い出します。歌詞にも出ますが強い「輝き」を感じます。
凄まじき輝きを放つ歌。
緩やかなテンポのバンドサウンド。ハッキリとした美音のアコギ。存在感のあるベース。悟ったかのような河ちゃんのボーカル。河ちゃんにしか出せない愛情が歌に入ってる。
すごく録音がいいと感じる高音質。
ゴスペルを感じるコーラスがこの歌をすごく大きいものにしてます。
「愛」「心」「幸福」といったものを主張しているように聴こえます。この人はきっと慈悲深いんだな。
河ちゃんのボーカルスタイルはいろんなパターンがあったけど、これは地声に近い真摯な歌だなと好感が持てます。
ずっとそうだったけど河ちゃんはメロディセンス良すぎます。心を掴む。
キレイな歌だなって思います。歌詞の裏側にある何かまでは深掘りする気はまったくないけど、すげえいい歌。
ブルーハーツの作品としてはこの『PAN』にしか入れられなかった曲という印象もありますが、聴けてよかった。カッコいいです。
オレは自分のやり方で自分の幸せを作ろうって思います。不幸に甘んじているのは良くない。自分の「幸福の生産者」はやっぱり自分しかいません。決して曲を否定してるんじゃなくて、曲からそれを学んだって意味です。
むろん、オレにはオレの信じるものがある。
歌詞 : 河ちゃん1曲目の歌い出しからすごい輝きを放ってます。ただの歌だけど眩しさまで感じる。信念が強くなければ音でこんなに輝かせられないです。
幸福を自分で作り出すという意味として聴いた場合すごく共感します。不幸に甘んじてる場合じゃない。幸福を目指すべきだと私も思います。
M11「Good Friend(愛の味方)」
作詞 : 河口純之助 作曲 : 河口純之助
編曲 : 水澤有一・河口純之助
『ミュージックスクエア』オンエア曲
ヒロト「いやぁそれはもう素晴らしい。ラモーンズで。」
マーシー「いやぁもう感動の涙で(笑)何も見えません。」
梶くん「素晴らしいんですけど、一つ質問がありまして。僕の周りの方みんな言うんですけど、いつもと唱法、歌い方がちょっとなんか、、、これは意識して?」
ヒロト「ちょっと舘ひろしじゃなかった。」
河ちゃん「いや、意識してなくて、こうやって歌わないと変なんなっちゃうんだよ(笑)。歌難しいですね。」
ヒロト「でもシーナバージョンとかもあるんでしょ?うちに帰れば。」
河ちゃん「シーナバージョンはないよ。ちょっと永ちゃんが入った感じのはあるんだけど(笑)」
アレンジとしては『PAN』の中で一番ブルーハーツに似合う、そして求めているパンクロックの勢いがある曲だと感じます。当時、ラジオでかかった時に一発で気に入りました。
音がゴリゴリした感じでシビレます。
パンクアレンジに心がときめく。
河ちゃんのいつもと違う歌い方に最初は戸惑いがあった。若干の抵抗もあった。でも今感じるのはこの歌はこうでなくてはいけない。
ブルーハーツに求めていたアップテンポ。相変わらずブイブイ唸るロックのベースに、強烈に歪んだパンクのギターという感じ。
チョーキングを多用したキンキンなギターソロに河ちゃんのパンクの魂を感じました。
河ちゃんギターもすげえ上手いです。
天才メロディメーカーが作ったメロディはキャッチーさとインパクトがある。明るく伸びやかなメロディは初めてパンクロックを聴いた時に心を奪われたあの衝撃と同じだ。
「愛の味方」と言われても一体なんのことなのか分からない面も個人的にはあります。その反面「糞ったれ」という言葉が出てきたり、パンクの反骨精神を感じます。やっぱりこの人は自分の主張があるパンクの人です。
河ちゃんが強く信じたものを必死になって説いているけど、突撃しながらロックンロールで歌うから好ましいカジュアルさがあります。
1人の人間としての河口純之助という人が最初から持っていた根底の強さを感じます。
この人は音楽家だって思いました。
歌詞 : Bメロの一節だけを切り抜いた場合、すげえ反骨精神に満ちたパンクスピリッツを感じます。でも次に続く歌詞はそういう意味ではなかった。相反する両極の考え方が『PAN』というアルバムの中に存在していてすごくおもしろい。
曲の中で何度か繰り返す”Good Friend”という歌詞が一番単純で分かりやすく、パンクロックに合う気がします。
M12「ひとときの夢」
作詞 : 河口純之助 作曲 : 河口純之助
編曲 : 水澤有一・河口純之助
音が鳴り出した瞬間にオレは今ブルーハーツを聴いているのか⁉︎と不思議な感覚になります。讃美歌でも始まるのかと思うほどの美しく壮大なオーケストラサウンド。
朝の目覚めに良さげな穏やかさ。
ロックの激しさ、太々しさ、バカバカしさは期待できない。勇ましく何かに立ち向かいたい時より、心を落ち着かせたい時に合う。
一日の終わりにも良さげな心地よさ。
愛のスローテンポ。大切な人を想う気持ちがある場合はすごく共感できます。
真摯に歌に向き合う河ちゃんのボーカルスタイルが穏やかな心の世界に惹き込んでいきます。
「愛しい人」「大切な人」という言葉が出てきてラブソングにも聴こえるけど、そうではなく主張しているのは心の歌といった印象です。
アレンジがゆったりとした感じだから大人しめの歌に聴こえるけど、メロディはこの曲もすごくいいし、こういう歌も作れるなんてと感激しました。
メラメラ燃える心の炎を奏でるエレキギターのソロにグッとくる。
やはり引っ掛かる部分もある。「本当のふるさと」というのがオレにはよく分からないしどうでもいい。今がすべてだ。今が幸せでなければ未来もそのまま幸せではないと思う。
ともかくアルバムの最後の方に似合ういい歌だって感じたことは間違いないです。
歌詞 : ラブソングとして聴くなら神様とかじゃなくて、自分だけの大切な人を思い浮かべるべきです。本当にいるかさえも分からない遠すぎる存在より、いつも一番近くで肩を寄せる存在。そこにだけ自分たちの歴史がある。
河ちゃんはきっと努力家で誰よりも思いやりのある人なんだな。ライブでの「ベース投げ」からもそれを感じました。
M13「ありがとさん」
作詞 : 河口純之助 作曲 : 河口純之助
編曲 : 水澤有一・河口純之助
ラストアルバム『PAN』の、そしてブルーハーツの一番最後を総括する歌。
最後がこの「ありがとさん」であることがすごくいいと思います。余計なことは語らないただただ感謝の気持ちが歌われます。
1分30秒という短さが、ダラダラせず感謝だけを伝えている誠実さに感じます。
あっという間に聴き終わってしまうけど、素敵なメロディで柔らかい雰囲気なので素直な気持ちで自分の“心”が聴いてるという実感。
河ちゃんのギター弾き語りスタイルのこの曲は、古いアメリカの牧場でラジカセから流れている音を聴いてるような耳触りのいい懐かしさのある音がします。
1995年の解散直後は終わってしまった切ない気持ちが強かったかもしれないけど、今になって聴くとなんだか胸を撫で下ろせます。
河ちゃんの本音が伝わってくる。
「ありがとさん」を聴きながら、ブルーハーツの11年間のひたむきなバンド活動への情熱が心に沁みます。
歌詞 : 極端に短くブルーハーツの活動に関すること以外は歌っていません。とても分かりやすい。応援してくれた全員への感謝の気持ちとブルーハーツへの愛情のみを感じます。
私が今持っている生きる勇気や、自由に生きていいという事を気付かせてくれてありがとうと、私からも感謝と尊敬と憧れの気持ちを伝えたいです。
会ったことのない「THE BLUE HEARTS」というバンドの4人の男たちに伝えたい気持ちはたくさんあります。
ラストアルバムで河ちゃんが真心で歌った、
「ありがとさん どうもありがとう」
『PAN』の最後の言葉として、すごく心に伝わってきました。
それぞれの個性があって、別々の感性もあって、いろんなロックの表現があって、人それぞれ違う愛があって、たくさんの自由もあると納得したところでラストアルバムはおしまいです。
ブルーハーツはこれで解散しました。
これからブルーハーツを聴いてみようという人に最初にオススメは出来ません。解散決定後に制作されていること、ソロ作品の寄せ集めであることから『PAN』はやっぱり最後に聴くべきです。
ヒロト「レコード会社との契約が残っていたため、仕方なく作った。」
この言葉だけ切り抜いてしまうとやる気なさそうですね(笑)
でも実際にはブルーハーツの4人それぞれが作ったいい曲ばかりの8thアルバムでした。
「THE BLUE HEARTS」としての違和感はありつつも、それぞれの曲はすごくいいと感じました。だから今でもたまに聴きます。
4人の個性と感性、人柄が溢れ出た自由すぎるラストアルバムでした。
ブルーハーツってやさしいって思った。
当時は『さよなら、ブルーハーツ。』という文言をよく目にしました。その文言に商業的なニオイを感じつつも、オレは“さよなら”はしないでブルーハーツに励まされ続ける人生を生きようと素直に思っていました。
その結論としては、今でもブルーハーツがオレの心を熱くし、心を優しくして、カッコ良すぎて涙が溢れる瞬間もあるという心の中でずっとライブをし続けているロックバンドのままです。
激励のロックンロールが聴きたい時、ブルーハーツに熱狂します。
“その時 その瞬間 僕は一人で決めたんだ 僕は一人で決めたんだ” ーー歩く花ーー
今日もブルーハーツが心に聴こえる。
ブルーハーツは解散した。
いつからか「ブルーハーツ」ってバンド名に青空のように真っ青で自由な心って意味を私は感じています。
アナログ盤もまだ買えます↑
ブルーハーツ解散について、当時リアルタイムでラジオを聴いていた高校生の私は本音ではショックでした。もうマーシーやヒロトの音楽が聴けないのかと思ったからです。
でも半年後にハイロウズ が登場しました。
彼らはやりたいことをやるために解散したんじゃないでしょうか。
ヒロトとマーシーの場合はハイロウズがやりたくなったということなんじゃないでしょうか。その結果としては、凄まじき名作ばかりをハイロウズとしてたくさん発表しました。
もう20年以上前ですがブルーハーツ解散後、ヒロトとマーシーはハイロウズでデビューして活躍している頃、私の地元の「アニマルハウス」というライブハウスに『3ピース』(正しい表記は分かりません)と名乗るバンドがやって来ました。
そのバンドのドラマーは梶くん。そのライブには3組のバンドが出演していて、対バンの演奏中に客席からライブを見ていた梶くんの隣に私はいました。梶くんと一緒にライブを見た。大きな存在感を放ってそこに立っていました。
梶くんはいつものペシャンコなスニーカーを履いていた。
ありがとうございました。
また読んで頂けるとものすごく嬉しいです。