こんにちはUMEです。
「HIGH KICKS」は1991年リリースのブルーハーツの5thアルバムです。
あんまり人気ないような気がしますが実は気張らずに聴けて飽きないので僕は好きです。
1stでやったようなシンプルなパンクロックとは音楽性が少し違うからなのかな?と思っています。
だけどそこがこのアルバムの良さなんです。
初期のブルーハーツを否定する気はまったくないと事実を伝えた上で感想を述べると、シンプルでストレートなパンクロックにありがちなアルバム1枚全曲が同じ曲に聴こえるというある種の退屈さがこのアルバムにはないです。
ブルーハーツの良さは何も変わってないし、決して失敗作なんかじゃなく名盤です。とはいえ、僕はこの名盤を実は結構時間が経ってから買いました。それほど評価されてなかったのをなんとなく感じていたから後回しにしてました。あとは収録されてるシングル曲がちょっと弱いように感じてたからですね。
しかし世間の評価は自分にとっての大不正解でした。
最初はやっぱりそんなに好きにはなれなくて放っといたけど気になって、だんだん好きになってきて、気づいたらよく聴くやつになってたという流れです。
こういうのがいいんだよ。
勢いをノリノリで聴くというより人生を噛み締めて聴くという方が好きですね。
埋もれてしまっているのかもしれないけど「HIGH KICKS」にはいい曲が多いです。じっくり聴いてみるとメロディーも歌詞も演奏もロックとしてカッコいいし、あまりにも“若すぎない”良さがあることに気づきます。あくまで個人的な感想としてはこのアルバムにはマーシーのリードボーカルの曲が入ってないのがちょっとだけ残念ですね。
THE BLUE HEARTS/HIGH KICKS(1991)
まずジャケットがなんかすごいです。何で出来てるのかわからないオブジェが「意味深」すぎます。見ればわかるけどそれデカすぎるでしょ(笑)
・ブルーハーツ自身の力の抜け具合が絶妙
・根っからのパンク好きには多分合わない
このアルバムではたしかにブルーハーツが迷っているという印象は受けます。そして前作である「BUST WEST HIP」のアルバム色の延長にあるのは事実ですね。ウィキペディアに当時の本人たちのコメントがありました。
ヒロトのこの言葉には納得です。まさにこの発言の通りの良さが特徴的なアルバムです。
マーシーの言葉にもこのアルバムがどんなものかがすごく表現されています。
彼らの言葉からこのアルバムの聴き方が伝わってきます。自分の聴き方は正解でした。
疾走感が欠けているという表現よりもいい具合に力が抜けているという方が合っています。つまりリラックスして聴けるアルバムです。
M1「皆殺しのメロディ」
作詞・作曲/甲本ヒロト
ヒロトの「バカーーー‼︎」と叫ぶ声で始まってブルーハーツらしいノリノリで盛り上がる曲です。サビで歌と同じメロディを弾くマーシーのギターは聴きどころです。あとマーシーのピックスクラッチのジェット音がやってほしい所に完璧なタイミングですごくいい音で入ってるからテンション上がらずにはいられません。歌詞はかなり過激な内容でジョーカー的な雰囲気が出ています。
“我々人類は バカ 過去・現在・未来 バカ 正義はあったのか バカ 正義は勝ったのか バカ くり返し くり返し くり返し うたう”
映画「ジョーカー」の世界がこの曲の内容に近いと感じます。
“皆殺しのメロディが 切り裂きジャックを呼んでいる マシンガンのリズムだぜ 皆殺しのメロディだ”
人類の悪しき習慣を一度リセットしようという解釈ができます。
“夜の闇に悲鳴をあげた少年が今 狼になる なる なる”
この歌詞は切り裂きジャックかジョーカーの誕生ということでしょうね。
シングル「夢」のカップリングに「皆殺しのメロディ」と「東京ゾンビ」のライブバージョンが収録されていて2曲ともに聴きやすい音になっています。「夢」は1993年リリースの6thアルバム【STICK OUT】に収録です。
M2「M・O・N・K・E・Y」
作詞・作曲/甲本ヒロト
バイクが走り出す音からスタートします。タイトルは「MONKEY」というホンダのバイクのことです。原付です。バイク好きのヒロトらしいテーマですね。これこそが「いい力の抜け方だな」と分からせてくれる重要な1曲です。難しいことは考えずに軽快なこの曲に心を預けるのが良さげです。
“M・O・N・K・E・Y 大人になって 大事なものを 忘れそうなら ついて来い”
ブルーハーツを聴いていると大人になっても大事なことは思い出せます。
M3「心の救急車」
作詞・作曲/河口純之助
速いテンポの曲ではないですけどこれは外せない名曲です。この曲も力んではいないのでリラックス状態で聴けます。歌詞を聴くと優しい気持ちになれて安心します。歌詞中の「ボク」とはきっとこの曲のことで、「ボク」はきみの心の救急車だよって言ってるんだと思っています。誰かにとっての「心の救急車」になれるのは素敵なことです。ヒロトやマーシーとは違う河ちゃんならではの言葉の選び方と表現が詰まっています。
“かならずくるよ 走ってくるよ 心の救急車”
この裏切らない強さがカッコいいです。とはいえ、僕は心の救急車に宗教は選びません。
“予約もいりません カードもいりません 夢を描く色と形があるのなら 胸の奥から きこえてくるよ 心の救急車”
予約もカードもいらないという心の繋がりこそが信頼だなぁと感じて心に響くものがあります。
M4「あの娘にタッチ」
作詞・作曲/甲本ヒロト
シングル第1弾。「うーわーうーうーわーあーたんたからったったー」とヒロトが歌うのが印象に残りますが歌詞カードには書いてません。恋心のスケールが大きいなといい感じのショックを受けます。ヒロトにとってのプロポーズは世界中の時計の針を止めてしまうしエジプトのピラミッドよりU・F・Oの秘密基地より衝撃なんだなと驚きました。
この曲はなんといってもニューヨークで撮影されたPVが面白いです。メンバー全員が多分必死で覚えたであろう振り付けを楽しそうに踊ってます。どこか照れくさそうな表情にも見えるけどちゃんと出来てるところがブルーハーツらしいです。革ジャン着てる人とかバンダナ巻いてる人とかモヒカンな人とかがやってるからこそ観ていて楽しいんです。ブルーハーツはこういうことも出来るんだなとほっこりしました。マーシーが一番楽しそうにやってます。
“初めてだった あの娘にタッチ 初恋だった あの娘にタッチ 世界中の時計の針を 止めてしまった プロポーズ”
これだけのスケール感をポップに軽い感じで歌うからすごいです。
これがYouTubeでブルーハーツの公式チャンネルとして観られるのは本当に便利だし嬉しい。
「HIGH KICKS」に収録のシングル『あの娘にタッチ』と『TOO MUCH PAIN』の当時のシングルCDはこんな感じです。アルバムと同じアート性が目を引きます。
M5「ホームラン」
作詞・作曲/真島昌利
5曲目でやっとマーシー作が来ました。アコースティックなアレンジとブルーハーツ好きにはマーシーのメロディだとすぐにわかる心地いい雰囲気の曲です。野球好きのマーシーならではの歌詞です。シンプルですけどメロディは秀逸です。ラストアルバム【PAN】に収録の『休日』にも同じ野球というテーマの歌詞があります。両曲とものんびりした雰囲気があって癒されます。
ウィキペディアより引用
真島いわく「(当時流行っていた)ノストラダムスや死後の世界を気にするより、今を生きる事の方が大切」というメッセージを込めているという。「隣のグラウンドでガキが野球をしていて、この中に21世紀(未来)のONがいるんだなって考える方が健康的。楽しいことだ」と。
やっぱり本人の言葉は説得力がありますね。「今を生きる事の方が大切」というマーシーの言葉には年を重ねてからの方が共感しやすいです。
“となりのグランドでは ガキ共が熱くなってる 21世紀の金田やONがいるぞ”
マーシーは河川敷の野球少年たちに未来の名選手を見ているんですね。こういう視点の歌詞は希望が湧くので好きです。ちなみにONとは野球好きのマーシーが憧れたのであろう王さんと長嶋さんのことです。
M6「泣かないで恋人よ」
作詞・作曲/真島昌利
シングル「TOO MUCH PAIN」のカップリングでした。“どうにかなるようになる”という最高の歌詞が心に残るマーシーのラブソングです。ここで歌っているのはすべて本当のことです。初めて聴いた時から全部の歌詞が僕の心に突き刺さっていました。
後から発売された「LIVE ALL SOLD OUT」っていうライブ盤があるんですけど、その中に「泣かないで恋人よ」のライブバージョンが収録されてて、その演奏の中にハーモニカが入ってます。ブルーハーツでハーモニカを吹くのはいつもヒロトで、このライブバージョンは誰か他の人が吹いてることに気づいたんです。ヒロトが歌ってると同時にハーモニカの音が入ってるからなんで?って当時はめちゃくちゃ疑問に思ってました。きっとゲストを呼んでその人が吹いたんだろうと仮定してました。それが最近になってやっと衝撃の事実を知ったんですね。YouTubeのブルーハーツの動画を観てたらこの曲のシーンがバッチリと映ってました!そしてその事実にめちゃくちゃ驚きました。
その謎の人物はマーシーでした。
アコギを弾きながら首から下げてハーモニカを固定するやつ(名前は知りません)を使ってマーシーがハーモニカ吹いてたました。フォークシンガー風の出で立ちで。これは本当に感動でした。マーシーだったのか!なんか嬉しいです。まさかの事実は予想もしなかったですね。
“遅すぎる事なんて 本当は 一つもありはしないのだ 何するにせよ 思った時が きっとふさわしい時”
出だしの歌詞がすでに名言中の名言です。ラブソングとはいえすべてのことに当てはまります。
“泣かないで 恋人よ 何もかも うまくゆく 泣かないで 恋人よ どうにかなるようになる”
どうにかなるようになるとある意味開き直って生きるというのは心を病んでしまわないためにも重要な考え方です。
“あきらめきれぬ事があるなら それはきっといい事だ”
この歌詞はきっと誰かのあきらめきれぬ事を叶えます。
M7「THE ROLLING MAN」
作詞・作曲/真島昌利
すごくマーシーらしい歌詞とロックンロールのフレーズたっぷりな曲でマーシーが歌ってもよかったんじゃないかなと感じます。というか是非ともマーシーバージョンを聴いてみたいです。トランペットにサックスにトロンボーンも入っていて楽しいので盛り上がること必至です。
Cメロの歌詞とメロディーが秀逸なので好きです。
“魔法のような夏の日に ひょっとしたら君に会える 入道雲のその下で 君のアレを盗んでいく”
起きてほしいという偶然と確固たる欲望と決意。マーシーのこういう表現の仕方が好きです。歌詞カードのこの曲のページには表紙で登場した“アレ”のオブジェがもっとリアルになってて、しかも“転がってる”のが笑えます。それはROLLING MANです。
“俺は転がる男だぜ 月の時計を腕に巻き 指名手配をくぐり抜け どこまでも転がっていく”
最後の歌詞は「月の時計」という詩人マーシーにしかできない表現が光ります。自分の意思でどこまでも転がっていくスタンスはブルーハーツらしいです。
人間は可能性の原石を持ってます。つまり転がればどこかが光るはずです。ポジティブにいきましょう。
M8「東京ゾンビ(ロシアンルート)」
作詞・作曲/甲本ヒロト
どことなく雰囲気が「皆殺しのメロディ」に似ています。パンクによくある感じのギターフレーズです。ギターを弾く時のポジションを移動する「キュッキュッ!」という音がよく聴き取れるのがいいです。ギターソロはワウを使って「ウウィンウウィン」言ってます。ヒロトの「東京ゾンビ」という単語の語尾の歌い方がなんかすごい。絶対「ゾンビ」とは歌ってないですね。
“さあどうだ かけないか 死にたかねえけど死ぬかもよ ビッグなチャンスはいらないか 死にたかねえけど死ぬかもよ ロシアンルーレット ロシアンルーレット 一から十まで偶然だ 日が昇るのも偶然だ”
ロシアンルーレット=偶然だし世の中すべてのことはその偶然だと言い切っています。当たったら死ぬというすさまじい緊迫感があるから怖いけどゾンビにならずに人生賭けてみないかと歌う、実は深い歌詞です。
M9「HAPPY BIRTHDAY」
作詞/河口純之助 甲本ヒロト・作曲/河口純之助
このアルバムの河ちゃん楽曲の2曲目です。河ちゃんのハモリが燃えるので結構好きです。宗教色が強く出るまでの河ちゃんの曲はブルーハーツの中にそんなにたくさんないけど、どれも聴きやすい分かりやすい誰もが好きになりそうな曲ばっかりなのでわりと注目です。今の彼は好きにはなれないけどその辺は個人的なただの感想ですので悪しからず。
“知識だけがふえていくよ わからないまんま 霧の中にかくれてるよ わからないまんま”
知識ばかりが増えて経験が伴っていないと薄っぺらい人間の言葉になってしまうよ、ということが分かっているからこそ完成した曲です。経験からしかわからないことはたくさんあります。
“生きる人に生まれてきた 生きる人に勇気はでる 生きることはカッコイイ”
とすべての人を肯定してくれます。その後で“誕生日おめでとう”と祝ってくれます。
勇気をくれるバースデイソングはこれで決まりです。この曲をレコーディングした日はドラムの梶くんの誕生日(9/26)だったということです。
M10「闘う男」
作詞・作曲/真島昌利
これが好きなんです。歌詞もメロディーも歌もコーラスも演奏もドンピシャな名曲です。この曲が流れると闘志が湧いてきます。このギターリフは胸熱で耳にこびりつきます。イントロのヒロトの「ダァーーー‼︎」と叫ぶのが燃えていてテンション上がります。間奏のマーシーのギターソロが歌を歌っているかのようです。何を弾いているのかわからないようなテクニックの長ったるくて、やってる本人しか楽しくないギターソロは好きじゃない。マーシーみたいに情熱的なメロディーを弾いて熱くさせてくれるソロが好きです。これもまたソロを弾き終わった直後のピックスクラッチが絶妙すぎて胸熱です。ヒロトの歌が入る直前の早すぎず遅すぎず長すぎず短すぎずの神技には鳥肌が立ちます。
“燃え上がる情熱なら 何にも変えられやしない 闘う男 どこまでいくのか”
これはブルーハーツ自身の心意気だと感じます。歌詞は格闘技をイメージさせますが、別に格闘技に限ったことではないので自分に置き換えて聴いてみると闘う魂を震わせてくれます。
“最終のゴングまで あきらめやしないのだ 闘う男達よ 虚勢は張るが去勢はされない”
「男達よ」と闘っているすべての人に向けているのが嬉しくなります。最後はマーシー得意の韻を踏んでいるけどシャレなのか⁈
歌詞に出てくる「黄金の滝のように流れる汗」が本物です。マーシーのパンツに貼り付けたガムテープとかDIYなファッションセンスにロックを感じます。ヒロトのラストでの全力ぶりは鳥肌モノです。
M11「ネオンサイン」
作詞・作曲/甲本ヒロト
ヒロトにしか作れない名曲です。「闘う男」からの「ネオンサイン」の流れがめちゃくちゃいいです。この2曲が僕には「HIGH KICKS」のハイライトですね。これはだんだんハマってくタイプの曲だったと思います。この歌詞の絵本があるなら読みたいくらいに物語があってしみじみします。だからこれは絵本に似合う曲です。ブルーハーツは誰よりも優しいと確信できます。
“遠く離れて光るものは 僕の洋服のボタンだよ 一番こわれやすい物は シャボン玉なんかじゃありません”
やさしい。こういうことは子供の時に教えてほしかったです。この曲に救われるまで知らなかったです。親も教師も教えてくれなかったことをブルーハーツは教えてくれました。日本人はこんなにも大事なことをなぜ教えなかったんだ。
“あれは ネオンサイン 真夜中の道しるべ 犬も猫も人間も 寄り道するんだよ”
この歌の優しさと思いやりの溢れる歌詞に救われた心が沢山あると思います。
私は目的地より寄り道のが好き。
このまま寄り道したまま職場に着かないというのもいいな、うん。いいね。
休憩するのに理由はいらない。
「ネオンサイン」はロックの哲学な気がします。癒されるので是非とも聴いてみてください。
M12「TOO MUCH PAIN」
作詞・作曲/真島昌利
ウィキペディアより引用
デビュー前から歌われていた楽曲で、自主制作シングルCD「ブルーハーツのテーマ」に収録される予定だったが、実現せず。このアルバムに収録したのは「深い意味はない。忘れていた、に近い感覚」と真島。
こんな逸話があったんですね。なんだか拍子抜けしてしまいます(笑)気を取り直して曲のレビューします。
シングル第2弾。感傷的で泣けるバラードの名曲です。しばらくどうにも好きにはなれなかった曲です。昔はバラードが苦手だったのは確かにあるしこの曲がなにを言いたいのかがよくわからなかったです。でもマーシーの書いた歌詞を聴いてその世界が僕の中に入ってきた時についに涙が流れました。きっと自分の人生の中でいろいろと経験して分かった気持ちとかがたくさんあって感情移入したのでしょう。この曲にたどり着いたような気がしました。切ないし哀愁が漂っているし感傷的で確実に泣けます。
非常に繊細な曲です。メンバー全員の演奏も繊細です。アルバムの中のただの1曲だと大雑把に聴き流してしまうと伝わりにくいかもしれません。
“もう一度 まだまにあうはずさ まだ今なら遅くない もう二度と戻る事はないよ 僕はまた一歩踏み出そうとしてる 少しこわいけれど あなたの言葉は遠くもう聞きとれない 何かがはじけ飛び散った TOO MUCH PAIN”
人間が表現する言葉や気持ちは完全なオリジナルなんかありません。必ずいつかどこかで誰かが言ってる言葉であり感じたことのある気持ちなんです。
だからわからないはずはないんです。
「あの娘にタッチ」のPVのはしゃぎっぷりとは打って変わって感傷的な雰囲気が沁みます。ヒロトのブルースハープが切なくて泣けます。
M13「さすらいのニコチン野郎」
作詞・作曲/真島昌利
ラストはこのアルバムの中で一番の難解かもしれないです。同じリフを繰り返すタイプのヘビーな曲です。うーん…なんか重い。ブルーハーツに求めているキャッチーさが欠けてしまっています。歌詞が終わったあとに楽器が弾きまくり状態になります。その後にイントロのリフがまた来てフェイドアウトしていく感じです。マーシーのソロ作「RAW LIFE」に入っていても違和感ないと感じました。
“マニュアルを読んでるうちに 今日もまた陽が沈んでく 誰のせいにもできないよ 希望はいつもとなりに座ってる”
他人のルールや常識の中で生きているうちに今日も一日が終わってしまうけどそれは仕方ないと。それでも希望はいつもあるから自分の人生を生きようってことですね。マーシーの歌詞は「希望」とか「チャンス」とかポジティブな言葉がよく出てくるので勇気が出ます。
“あれは本物だ それはニセモノだ 語られるだけで見た奴はいない”
世の中にはこんなことはありますよね。すべてを真に受けることはいいことではありません。
というわけで実はこの「HIGH KICKS」には飽きない要素が存分に入っています。いわゆる捨て曲なんかありません。今でもたまに取り出して聴いてます。そして1人で熱唱してます。
残念ながらマーシーボーカルの曲はないんだけど、マーシーファンな僕はコーラスを歌ってるその声にも聞き耳を立てています。確実に聴こえるな。あの感情的なしゃがれ声が聴こえてるな。
このアルバムでブルーハーツがやったように変化しようという気持ちは大事です。人生は変化の連続です。
この先どれだけ変化しても成長してもこれを聴かなくなることはないですけどね。
ずっと大事に持ってるよ。
ちなみに高校生の頃はこんな楽譜を見ながらギターをコピーしていました。1994年の発売です。読み物ではないですが、これにしか載っていない写真が数点だけあります。
「HIGH KICKS」リリース当時はCDのみの発売でしたが2017年に急にブルーハーツのすべてのオリジナルアルバムがアナログレコード化されました。オリジナル発売当時からのファンにとっては「HIGH KICKS」をレコードで聴くというのはまさかの体験です。
今だけかもしれませんがAmazonならセール価格で少しだけ安く買えるのでヤフオクとかで高値が付いているものは買わないでください。気になったら廃盤になってしまう前に買っておくことをオススメします。
この名盤でもブルーハーツがやってくれない訳がなかったですね。
「HIGH KICKS」には胸熱なカセットテープも存在します
稀にヤフオクなんかに出品されていて、多分ですが最近の相場は5〜6千円だと思います。新品未開封ものが出ていたりもするので欲しい場合は常にチェックしていると手に入る可能性はあります。
もちろん自分で生のカセットテープに録音して聴くという手もあります。むしろカセットテープはそれが基本なのかもしれません。
筆者は実際に自分で「HIGH KICKS」をカセットに録音して聴いてみましたが、正規品も自作品もしっかりアナログの音の良さを出してくれていました。どちらも楽しいです。
カセットテープで聴くとCDとかデータより「HIGH KICKS」に正面から向き合えます。再生するまでのわずらわしさというか所作というか、そんなものが関係していると筆者は思っています。デジタルとは違うそのまんまな音、圧縮されていない誠実なアナログの音が演者のその瞬間の感情まで聴かせてくれます。
本作のいい具合に力の抜けた感じが突出してスピーカーからブッ放されます。カセットテープの扱いの面倒くささはあるとは言え、聴いていてまったく疲れません。
アナログな「HAPPY BIRTHDAY」が生きる勇気をくれます。アナログな「闘う男」が立ち向かうパワーを注入してくれます。アナログな「ネオンサイン」が涙を誘います。
アナログな『HIGH KICKS』が自分てこれでいいんだと肯定してくれます。
“犬も猫も人間も 寄り道するだよ”
デジタルでは聞こえない音が聴こえてしまうアナログの謎はかなりの魅力です。
重いと感じあまり好きではないラストの「さすらいのニコチン野郎」まで最高なロッケンロー‼︎に聴こえてくるじゃないか。
カセットデッキは故障しやすいというのが致命的ですが。使うカセットデッキによって、気付かない人は1人もいないほど音が変わってしまうという事実は最低で最高です。
レコードももちろんポテンシャルの高いアナログの音です。使う針によってこれまたあからさまに音が変わってしまうという致命的な魅力がおもしろいです。
この「HIGH KICKS」がハマった人には前作である【BUST WASTE HIP】も近いアルバム作りになっているのでオススメです。
「HIGH KICKS」の次作6thアルバム【STICK OUT】は疾走感に満ち溢れています。アコースティックアルバム【DUG OUT】とセットで聴いてください。
オリジナルアルバム未収録曲が満載なベスト【ALL TIME SINGLES】
他の作品では聴けない曲(バージョン)を含む【後期ベスト+前期ベスト】
ブルーハーツの一ファンとして。
ありがとうございました。
それではまた。