こんにちはUMEです。
「ALL TIME SINGLES〜SUPER PREMIUM BEST〜」は2010年リリースのブルーハーツのベストアルバムです。
結成から解散までに発表したシングル全17枚をカップリング曲もすべて含めて年代順にCD2枚組で収録しています。
オリジナルアルバム未収録のシングル曲とカップリング曲が多数あるのでレビューします。
それらの曲も心に響く名曲揃いです。
THE BLUE HEARTS/ALL TIME SINGLES〜SUPER PREMIUM BEST〜(2010)
※Amazonなら16%OFFです!
このベストアルバムの特筆すべきポイントは全曲がデジタルリマスタリングされていることにより相対的に音圧にまったく差がなく、昔のCDにありがちな音が小さいという問題がないことです。
オリジナルアルバムはすべて持っていても、当時の8cmのシングルCDは持っていないという場合には、ブルーハーツのシングルのカップリング曲は名曲揃いであるという点に聴く価値があります。当時のシングルCDをコンプしていくよりも圧倒的に手軽です。
「リンダ リンダ」「情熱の薔薇」はオリジナルアルバム収録のアルバムバージョンとは結構アレンジの違うシングルバージョンがこちらには収録されているので、そこにも聴きどころがあります。
個人的にはシングルのタイトル曲、カップリング曲をこれだけでまとめて聴けるところが重宝しているので持っている価値観になっています。
全15曲のPV集を収録したDVDも入っています。YouTubeにブルーハーツの公式チャンネルがありますが「旅人」のPVは観れません。このDVDには“放送禁止バージョン”とサブタイトルの付いた「旅人」のPVがしっかり収録されています。
※解散決定後にリリースされた8thオリジナルアルバム【PAN】はシングルカットがされなかったので「PAN」収録曲は入っていません。
DISC 1 meldac side(1985〜1989)
DISC1は初期のメルダック時代のシングル8枚、全16曲が収録されています。シングルのタイトル曲はブルーハーツ好きではない人でも知っているほどの名曲ばかりですね。
※引用『ドブネズミの詩』(ブルーハーツの本)より
“わけわからない田舎もんだったからや、東京に行って音楽やりゃあなんとかなると思うとった。その結果がブルーハーツ。”
M1「1985」(1985)
作詞・作曲/甲本ヒロト
オリジナルアルバム未収録曲
ブルーハーツの始まりです。これぞビートパンク!だと聴けばすぐに耳の感触でわかるほど。
ブルーハーツがまだインディーズ時代の1985年12月24日に都立家政スーパーロフトというクリスマスライブの会場にて自主制作ソノシート(ペラペラのレコード)として200枚だけ配布された曲です。その日のライブで演奏もされました。その後は1987年7月4日の日比谷野音公演でしか演奏されていないということです。「1985」のソノシート、さすがにこれは持ってません。2021年に一度だけジャケなしでヤフオクに出品されているのを見掛けましたが、かなりの高値が付いていました。
幻の曲と言われていた「1985」が一般的に聴けるようになったのは1995年リリースのブルーハーツのベストアルバム『SUPER BEST』で初CD化された時です。今ではベストアルバムには入っていますがシングルCD化はされていません。
反戦ソングですね。社会派と言われることを本人たちは嫌がっていたけど、「1985」や「チェルノブイリ」なんかは社会派と呼ばれるゆえんなのでしょう。
“1985 今、この空は 神様も住めない そして 海まで 山分けにするのか 誰が作った物でもないのに”
このベストに収録の「シャララ」も近いテーマです。この歌詞に人間の愚かさがものすごく表現されています。神様も住めないほど汚れてしまっている空と誰が作った物でもない海まで山分けしようとする人間のバカさ加減は驚きの言葉でした。
“僕たちを縛りつけて 一人ぼっちにさせようとした 全ての大人に感謝します。1985年 日本代表 ブルーハーツ”
歌詞には載っていないですが、最後のこの言葉がずっと心に刺さっています。ブルーハーツらしい反骨心があって、大事なことに気付いてしまったという皮肉ですね。1985年に「日本代表」と叫んだその後のブルーハーツの活動と実績が証明している通り、この言葉に嘘偽りがなかったということが何より偉大です。
M2「人にやさしく」(1987)
作詞・作曲/甲本ヒロト
オリジナルアルバム未収録曲
1987年に自主制作盤シングルレコードとしてリリースされました。
これほど元気をもられるやさしさ溢れる応援ソングはないですね。難しい言葉は何も使っていないからストレートに届きます。
“人は誰でもくじけそうになるもの ああ 僕だって今だって”
応援ソングといっても、この歌詞のように「誰でもくじけそうになるもの」と弱さも肯定してくれる曲はなかなかありません。ブルーハーツには、その溢れるやさしさがあるからこそ刺さるんですね。
“やさしさだけじゃ人は愛せないから ああ なぐさめてあげられない 期待はずれの 言葉を言うときに 心の中ではガンバレって言っている 聞こえてほしい あなたにも ガンバレ!”
精神的に病んでいた期間があったんですが、その時は頑張れと言われると負担にしかならなくて、とっくに頑張っているんだとその言葉を完全に突き返していました。そんな精神状態の時に「人にやさしく」を聴いて、この「ガンバレ」だけはヒロトの「ガンバレ」だけは素直に受け取れることに気付きました。他の「頑張れ」とは誠実さが違う。深くてあったかくて愛情があって嘘をついていない本物の「ガンバレ」です。
実は「人にやさしく」にはCDでは聴けない本来のミックスが存在します。
※ウィキペディアより
1988年3月21日にメルダックよりCD化されたが、実際には外部の手が加わり音が派手になった「リミックス版」であり、オリジナルの音はインディーズ時代に出したアナログレコード版のみである。
CDバージョンは音が遠いです。レコードバージョンはすぐそこにブルーハーツがいて爆音で演奏しています。実在感が違うんですよね。ヒロトがそこで歌っていてマーシーがそこでギターを弾いてそこにあるアンプの音が生々しく聴こえている。ウィキペディアの説明にもある「音が派手になった」これが悪さをしています。CDバージョンには余計なギターが入ってしまってます。レコードバージョンはマーシーのギターソロの前のピックスクラッチの音なんかバカでかい音で入っているので生々しさに鳥肌が立ちます。コーラスの音も違うし「ガンバレ!」の聴こえ方も違うから心への響き方が変わってくる。
1988年にシングルCD化された「人にやさしく」はもちろん、すべてのベストアルバムに収録されているのもCDバージョンの方です。
「人にやさしく」と「ハンマー」はこれで聴くのが正解です。ブルーハーツが意図した誠実な音がします。
M3「ハンマー(48億のブルース)」(1987)
作詞・作曲/真島昌利
オリジナルアルバム未収録曲
サブタイトルの48億は1985年当時の世界の総人口のことですね。2021年の世界の総人口は78億以上です。日本は11位です。
48億の個人的な憂鬱がテーマの曲です。その重みに耐えかねて地球がきしんでる。今では当時よりも30億増えたわけなので地球からしたらたまらないですね。
“48億の個人的な憂鬱 地球がその重みに 耐えかねてきしんでる デタラメばかりだって 耳をふさいでいたら 何も聞こえなくなっちゃうよ”
絶望してしまうけど、心を閉ざさないでそれでも生きていこうよってポジティブで強力なメッセージです。
「ハンマー」の聴きどころは途中でボーカルが野太い声のヒロトからマーシーのしゃがれ声に変わる瞬間のスリリングさです。
“外は春の雨が降って 僕は部屋で一人ぼっち 夏を告げる雨が降って 僕は部屋で一人ぼっち”
マーシーが歌うこの歌詞すごい好きなんですけど、ライブでは「外は春の雨が〜」の歌詞を2回繰り返すことがほとんどなので「夏を〜」の方はスタジオ録音の音源でしか聴けません。
「人にやさしく」と同様に「ハンマー」もレコードバージョンの方がパンクらしい音です。マーシーのボーカル部分なんかマイクに向かってマーシーが今歌っている生の声を聴いているようです。
ちなみに2017年に発売された「シングル・レコードボックス・セット」というブルーハーツの全シングルをEPレコード化したボックスセットがあります。写真を見ただけでもわかるテキトーに作った感満載の商品です。当然その中に「人にやさしく/ハンマー」も入っています。僕はこのボックスセットを持っていないので自分の耳で確認できてはいませんが、どうやらその「人にやさしく/ハンマー」はレコードにもかかわらず針を落とすと中身はCDバージョンのようです。Amazonでそんなレビューを見ました。あくまで他人の感想なので真相は分かりませんが、聴けばすぐに分かる違いですから間違いないと思われます。そうなると本当の音は当時のシングルレコードでしか聴けません。聴きたい場合は中古で当時の物を探して買うしかないです。ヤフオクなんかで割と出品されていますが、セットの物を1枚ずつバラで売っている可能性もあるので注意してください。
M4「リンダ リンダ」(1987)
作詞・作曲/甲本ヒロト
オリジナルアルバム未収録バージョン
誰もが知るほどの名曲です。その聴き馴染みのある誰もが聴いたことのあるであろう「リンダ リンダ」はイントロにアコギが入っているアルバムバージョンですね。シングルバージョンはヒロトがアカペラで1番を歌います。本人たちはこっちのシングルバージョンを気に入っていないようです。アレンジがいかにもメジャーっぽいからでしょうね。短いですがギターソロも入ってるし聴きやすさは確かにあるので僕は好きです。
“愛じゃなくても恋じゃなくても君を離しはしない 決して負けない強い力を僕は一つだけ持つ”
やっぱりこの歌詞はロマンチックだしパンクだし惹かれます。
アルバムバージョンは1stアルバム【THE BLUE HEARTS】に収録です。
※引用『ドブネズミの詩』より
“恋がさめた時に続けられるのが愛だと思うんですがね。”
M5「僕はここに立っているよ」(1987)
作詞・作曲/真島昌利
オリジナルアルバム未収録曲
アコギ基調なアレンジです。信念を貫き通すための曲。どんな状況になろうとクソッタレと言い放つレジストソング。僕はここに立っているよと自分という存在のままいる姿がカッコよすぎて、この曲の世界にはメロメロになります。
“オマエは僕に電話して 強引なとりひきせまる なんとかワナにはめようと 僕はのことを脅迫する 不安が夜中にドアをノックする”
めちゃくちゃ怪しい雰囲気がプンプンする1番の歌詞。それでも自分の気持ちを誤魔化さずサビの歌詞を言い放つ。
“ナイフをつきつけられても ピストルつきつけられても クソッタレって言ってやる”
間違ったことに決して「はい」とは言わない誠実さに惹かれます。
“夜の音に耳をすまし 少しだけ涙がでたよ 本当に大事なものだけ いつまでも忘れないんだ わめいて 叫んで 声が枯れたって”
「本当に大事なものだけ」これが一般論ではない「人」としての正しさなんだと共感します。世間から信じ込まされていつのまにか付いてしまった固定観念ではなく自分の感性が100%であるという主張に聞こえます。
M6「キスして欲しい(トゥー・トゥー・トゥー)」(1987)
作詞・作曲/甲本ヒロト
M7「チェインギャング」(1987)
作詞・作曲/真島昌利
M6,7 収録オリジナルアルバム【YOUNG AND PRETTY】
1枚のシングルが「キスして欲しい」とマーシーボーカル曲の「チェインギャング」というのが豪華です。2ndアルバムの1曲目とラストの12曲目でした。
M8「ブルーハーツのテーマ」(1987)
作詞・作曲/甲本ヒロト
オリジナルアルバム未収録曲
1987年に自主制作シングルとしてリリースされました。自主制作になったのはカップリングの「チェルノブイリ」にレコード会社からの発売許可がおりず、早く発売したかったメンバーの意向ということです。
バンド名がタイトルになっているので初めて聴いた時は大いに期待しながら聴きました。個人的にはベストソングとは言えませんが、本来なら1stアルバムの1曲目に入る予定だったバンドのテーマ曲です。
CDのメンバーのクレジットには「甲本浩人」(本名)と記載されているので一瞬戸惑ってしまう。
“あきらめるなんて死ぬまでないから”
この言葉が「ブルーハーツのテーマ」なんだと解釈しています。
M9「シャララ」(1987)
作詞・作曲/甲本ヒロト
オリジナルアルバム未収録曲
このベストアルバムの歌詞カードには作者が真島昌利となっていますが間違いです。もっとちゃんと作ってくれ!ちなみにこの歌詞カードは歌詞の誤字脱字もあります。
リコーダーかな?笛が吹くメロディが印象的です。曲の最後では子供たちのコーラスも聞こえてきます。コーラスに子供の声を使うアイディアを出したのはマーシーだそうです。原爆とか戦争をイメージさせる暗いテーマを歌っているけど、めちゃくちゃ明るく軽快なアレンジが暗さをまったく感じさせないのがポイントです。
“大変だ! 真実がイカサマと手を組んだ 誰か僕に約束の守りかた教えてよ”
世の中のバカさ加減にやり切れない気持ちを表現したと思われます。
“あー 奇跡を待つか あー 叫ぶのか 叫ぶのか あー すべての罪は あー みんなで分けましょう みんなで分けましょう シャララ・・・シャララ・・・”
サビで子供たちのコーラスが入って楽しい曲にしか聞こえませんが、テーマは実は重いです。誰か一人が悪いわけではないから全員で罪を分けようという普段は考えることもない難しい内容です。
M10「チェルノブイリ」(1987)
作詞・作曲/真島昌利
オリジナルアルバム未収録曲
イントロのギターリフからすべての演奏に至るまでアレンジがカッコ良さの象徴みたいに感じます。間奏ではめちゃくちゃトガったマーシーのギターソロに心を掴まれます。
※引用『ドブネズミの詩』より
“なんにも知らない人が「チェルノブイリ」を聴いて、自分でいろいろ本を読んだり考えたりしてくれれば、それでいいんじゃないかと思うよ。”
曲のテーマはタイトルですぐ分かるようにチェルノブイリ原発事故ですね。どうすればいいかわからない、第3の案が出てこないやるせなさを感じます。
“チェルノブイリには行きたくねぇ あの娘を抱きしめていたい どこへ行っても同じことなのか?”
すごい本音。当たり前の本音です。あの娘を抱きしめていたいという個人的な感情と、どこへ行っても同じことなのかという罪悪感なのか皮肉なのか、「ドブネズミの詩」にある言葉の通りそんなことを考えさせられるサビです。
ラストの「行きたくねぇ」とボーカルが強調されるところが胸に刺さります。
シングル「ブルーハーツのテーマ」の2曲目に入っていますが「チェルノブイリ」単体で自主制作盤レコードも発売されました。「チェルノブイリ」は片面EPなのでひっくり返した裏面にはレコードの溝がありません。こちらはヤフオクなんかで割とよく出品されてます。
写真では分かりにくいですね(笑)
実は「ブルーハーツのテーマ」のシングルCDはこのベストアルバムとは曲順が違います。チェルノブイリが2曲目です。
①ブルーハーツのテーマ
②チェルノブイリ
③シャララ
M11「TRAIN-TRAIN」(1988)
作詞・作曲/真島昌利
M12「無言電話のブルース」(1988)
作詞・作曲/真島昌利
M11,12収録オリジナルアルバム【TRAIN-TRAIN】
CDはジャケットの裏に、レコードは投入された歌詞カードにマーシーの手書きによる歌詞が掲載されていて胸熱です。
レコードの歌詞カードに掲載されていたマーシーの詩がCDの場合はジャケットをめくると出てきます。
M13「ラブレター」(1989)
作詞・作曲/甲本ヒロト
M14「電光石火」(1989)
作詞・作曲/甲本ヒロト
M13,14収録オリジナルアルバム【TRAIN-TRAIN】
ジャケットの裏にはヒロトの手書きによる歌詞が掲載されています。
ジャケットをめくるとヒロト直筆のメッセージが胸を熱くさせてくれます。
M15「青空」(1989)
作詞・作曲/真島昌利
「青空」収録オリジナルアルバム【TRAIN-TRAIN】
「青空」と言えば2019年にこんな本が出ました。マーシーの名曲「青空」が絵本になったということで興味津々で買ってみました。ところが筆者の名曲「青空」のイメージとは全然違うすごくダークな世界観で正直、共感はできませんでした。ディスってるわけではなくただの個人的な感想です。
M16「平成のブルース」(1989)
作詞・作曲/真島昌利
オリジナルアルバム未収録曲
この曲を発表したのはもちろん「平成元年」です。マーシーボーカル曲。10分近い長編です。同じフレーズの繰り返しで割と単調ですが歌詞が興味深いので飽きずに聴けます。ライブで演奏された当初は3分程度だったそうです。ピアノに後のハイロウズメンバーでもある白井幹夫さんが初参加です。
全体的に皮肉たっぷりでマーシーのソロ3rdアルバム【RAW LIFE】にも通用する勢いです。マーシーがソロ活動を始めたのもこの年です。
“いつまでたってもおんなじ事ばかり いつまでたってもなんにも変わらねえ いつまでたってもイライラするばかり”
平成元年からすでに世間に対して「いつまでたってもなんにも変わらねえ」と言っています。今も大して変わってません。新しいものを怖がって何も変えようとしない状況にイライラする気持ちは、令和になった今でもそこらじゅうにあります。
“ヤな野郎だなとオマエが言うから ヤな野郎だなとみんなが言うから いい人ぶったらみんなにほめられた”
いい人になった訳ではなくいい人ぶったらというのが皮肉でいいですね。
“ロックンロールスターになりてぇな ロックンロールスターになりてぇな ブルーハーツのマネすりゃいいんだろう”
最高の皮肉だと思いますね。当時ブルーハーツのマネしたようなバンドが増えていました。ロックンロールスターにもブルーハーツにもなれません。
DISC 2 WARNER MUSIC side(1990〜1993)
DISC2はレコード会社移籍後のワーナー時代のシングル9枚、全21曲が収録されています。
DISC2収録のシングルのカップリング曲はオリジナルアルバムに収録されている曲の方が多いです。ライブバージョン等のバージョン違いがいくつかあります。徐々にシングルに対する考え方が変わったような印象を受けます。もちろんシングルだけのオリジナル曲を入れて欲しいというのが本音です。
M1「情熱の薔薇」(1990)
作詞・作曲/甲本ヒロト
オリジナルアルバム未収録バージョン
ブルーハーツの中で1番売れたシングルです。51万枚でダントツです。2位は「TRAIN-TRAIN」で26万枚です。3位の「夢」が18万枚です。売れた曲がいいものという意味ではないですけどね。
誰もが聴き馴染みがあるのはこちらのシングルバージョンの方です。アルバムバージョンの方は一発録りのシンプルなアレンジですが、シングルバージョンはマーシーのギターが3本も重ねられているなど豪華な耳触りで聴きやすいです。
“情熱の真っ赤な薔薇を 胸に咲かせよう 花瓶に水をあげましょう 心のずっと奥の方”
この強烈に胸を熱くするサビが1回しかないというのが衝撃的です。サビばかりがもてはやされる今の音楽事情からは考えられないほど屈託した姿勢がパンクの精神性です。
一発録りのアルバムバージョンは【BUST WASTE HIP】に収録です。
M2「鉄砲」(1990)
作詞・作曲/真島昌利
オリジナルアルバム未収録曲
ブルーハーツらしいバンドサウンドが聴けますが、遊び心のある曲です。バンドサウンドが演奏し終わった後にピアノと声だけになって、みんなで「ミァア〜ミャア〜」言うコーラスがかなり印象に残ります。これはマーシーの思いつきで入れたということですね。ヒロトがインタビューで「マーシーが突然『俺はミャーミャー言う!』って言い出して聞かなかったんだ」と語っているのは興味深いです。ヒロトが途中で笑いながら歌ってるのが聴けて楽しいです。
この時期のブルーハーツは予定調和を打開しようとしていたので、歌詞に深い意味はないのかもしれませんが、マーシー節はしっかり存在しています。
“鉄砲が今日も 無鉄砲なふりで 鉄砲が今日も 静かに笑ってる”
力を抜いて楽しめる1曲として大好きです。この曲でもマーシーのトンがったギターソロに心を持って行かれます。
M3「首吊り台から」(1991)
作詞・作曲/甲本ヒロト
「首吊り台から」収録オリジナルアルバム【BUST WASTE HIP】
M4「シンデレラ(灰の中から)」(1991)
作詞・作曲/河口純之助
オリジナルアルバム未収録曲
あんまり人気ないっぽいですけど個人的には胸が熱くなるので、かなり好きです。河ちゃん作で歌い出しは河ちゃんが歌ってます。やっぱり河ちゃんのメロディセンスは抜群です。歌詞もシンデレラをモチーフにしていて大事な事を言っています。ギターソロはいかにもマーシーらしい情熱的なメロディです。シンプルなバンドサウンドかと思いきや最後の方にはオーケストラも加わって盛り上げます。胸熱ソングにやって欲しいことを全部やってくれたような曲だと思っています。
“涙はそのうち乾くでしょう 痛みはとれるでしょう 心配してもかわらない それならはじめましょう”
この歌詞の言い回しはなんだか妙に励まされます。過去はそのうち過去になるし、心配しても何も変わらないから「とりあえず始めよう」とブルーハーツのスタンスがしっかり入っています。
このシングルのCDレーベル面がブルーハーツカラーで素晴らしいです。
M5「あの娘にタッチ」(1991)
作詞・作曲/甲本ヒロト
「あの娘にタッチ」収録オリジナルアルバム【HIGH KICKS】
M6「わーわー〈ライブ・バージョン〉」(1991)
作詞・作曲/真島昌利
オリジナルアルバム未収録曲
ライブバージョンですがスタジオ録音のオリジナルバージョンは存在しません。歌詞に出てくる「あの女」とは60年代後半のアメリカの女性ロックシンガー「ジャニス・ジョプリン」のことだそうです。
“ポートアーサーで生まれた あの女の歌を聞いた ハリウッドで死んでいった あの女の歌を聞いた”
めちゃくちゃ短い歌詞を繰り返す曲なんですけどサビの“わーわーわおわお”のヒロトとマーシーの掛け合いだけで異常に興奮してきます。
この後からはオリジナルアルバム未収録曲はありません。バージョン違いがいくつか入っています。
M7「TOO MUCH PAIN」(1992)
作詞・作曲/真島昌利
M8「泣かないで恋人よ」(1992)
作詞・作曲/真島昌利
M7,8収録オリジナルアルバム【HIGH KICKS】
泣ける2曲のしっとりした感触のシングルです。ジャケットのアート性も涙を誘います。
※『ドブネズミの詩』より名言をひとつ
“幸せを手に入れるんじゃない。幸せを感じることのできる心を手に入れるんじゃ”
M9「夢」(1992)
作詞・作曲/真島昌利
「夢」収録オリジナルアルバム【STICK OUT】
M10「皆殺しのメロディー〈ライブ・バージョン〉」(1992)
作詞・作曲/甲本ヒロト
M11「東京ゾンビ(ロシアンルーレット)〈ライブ・バージョン〉」(1992)
作詞・作曲/甲本ヒロト
M10,11のライブバージョンは1992年6月2日に日本武道館で行われたライブ「HIGH KICK TOUR」FINALの1曲目と2曲目です。ライブバージョンとはいえ音質はしっかりしていて聴きごたえあります。勢いのあるこの2曲のチョイスが「夢」のカップリング曲としてもバッチリです。3曲すべてが2分台の演奏時間なので全部聴いても7分半で聴き終わったしまいます。勢いで聴くシングルですね。
M10,11収録オリジナルアルバム【HIGH KICKS】
M12「旅人」(1993)
作詞・作曲/甲本ヒロト
M13「台風」(1993)
作詞・作曲/真島昌利
こちらの2曲は「STICK OUT」収録の音源と同様です。
M12,13収録オリジナルアルバム【STICK OUT】
当時こちらの『ALL TIME SINGLES』を購入した時の特典はピック型のこんなやつでした。
M14「1000のバイオリン」(1993)
作詞・作曲/真島昌利
「1000のバイオリン」収録オリジナルアルバム【STICK OUT】
M15「俺は俺の死を死にたい(Alternative version)」(1993)
作詞・作曲/真島昌利
オリジナルアルバム未収録バージョン
マーシーボーカル曲。こちらのバージョンはデモテープに基づいて製作されているので多少の歌詞の違いがあります。オリジナルバージョンと甲乙つけがたいです。マーシーの歌い方はこちらの方がドスが効いてる感じです。ギターがもっと前に押し出されている音です。つまりマーシーの存在感が近いです。
“寝たきりのジジイになって 変なくだをぶちこまれて 気力も萎えきっちまったら 生き延びたいとは思わない”
歌詞の「生き延びたいとは思わない」がオリジナルバージョンとは違う部分です。オリジナルは「無理して生き延びたくはない」でした。
「STICK OUT」収録のオリジナルバージョンは最後がフェイドアウトして終わりますが、こちらのAlternative versionの方はフェイドアウトせず演奏しきって終わります。最後に深いため息のようなマーシーの声が聞こえてきます。
M16「1001のバイオリン」(1993)
作詞・作曲/真島昌利
オリジナルアルバム未収録バージョン
「1000のバイオリン」のバンドの音は入っていないオーケストラバージョンです。オーケストラがかなり盛り上げます。タイトルの付け方がすごい好きです。1000に1を足して別バージョンにするセンスに共感します。オーケストラアレンジによってマーシーの繊細な感性で書かれた歌詞がより浮かび上がります。歌詞はオリジナルバージョンと変わりません。
M17「パーティー」(1993)
作詞・作曲/甲本ヒロト
M18「チャンス」(1993)
作詞・作曲/真島昌利
こちらの2曲は「DUG OUT」収録の音源と同様です。
M17,18収録オリジナルアルバム【DUG OUT】
このシングルCDは厳密には「パーティー」「チャンス」のカラオケバージョンが収録されていて全4曲の構成になっています。ブルーハーツのシングルでカラオケが入っているCDはこのシングルのみです。
M19「夕暮れ」(1993)
作詞・作曲/甲本ヒロト
こちらのPVのようにイントロにマーシーの情熱的なエレキが入っているアレンジの方が好きです。
M20「すてごま〈ライブ・バージョン〉」(1993)
作詞・作曲/甲本ヒロト
オリジナルアルバム未収録バージョン
1993年6月1日の渋谷公会堂(STICK OUTツアー)でのライブにて収録された音源です。音質に特に不満はないライブ音源で聴きやすいです。ヒロトが歌詞を間違えているのがわかります。
M21「夜の盗賊団」(1993)
作詞・作曲/真島昌利
ラストは名曲「夜の盗賊団」です。『EAST WEST SIDE STORY』という別のベストアルバムにバージョン違いが存在します。
M19,21収録オリジナルアルバム【DUG OUT】
※引用『ドブネズミの詩』より
“人間が一番ふれることができないのが自分なんじゃねえの。それにふれようとするからブルーハーツがあるんだと思う。”
30年以上ブルーハーツを聴き続けて、その間に自分の人生で経験したたくさんのことを考えてみるとブルーハーツの曲でわかったことは多かったです。何より自分の考え方を変えられました。考え方を変えられる人は少数派です。気づいた方が幸せです。
「それにふれようとするからブルーハーツがある」
一ファンとしてその実感があります。
「ALL TIME SINGLES」は2018年にアナログ盤が発売されています。なんとレコード4枚組です。手に持った時の重量感はヤバめです。
レコードはサイズの大きさから所有感があって満足できるところがメリットですね。CDとはほんの微妙にだけ違う耳触りのいい、心地いい音がするのも事実です。内容はCDと何も変わりません。ただし「ALL TIME SINGLES」のアナログ盤は価格がアホみたいに高いのが難点です。
アナログ盤が現在でも購入可能か調べましたら終了してしまったようです。Amazonは再入荷の見込みが立っていないため注文不可です。しかし本体には「限定」という言葉は書いていないのでそのうちまた注文可能になるかもしれませんね。
他の作品では聴けない曲(バージョン)を含む【後期ベスト+前期ベスト】
マーシーソロ⬇︎
一ファンとして。
ありがとうございました。
それではまた。