こんにちは UMEです。
「HAPPY SONGS(ハッピー・ソングス)」は1991年リリースのマーシーのソロ2ndアルバムです。
アコースティックな1stの「夏のぬけがら」と比較したとするとエレキ率高めで多種多様な音楽要素が加えられています。とはいえ前作同様に詩人マーシーの胸を打つ言葉たちがしっかり堪能できます。完成度高いです。だけどブルーハーツとはやっぱり違う。全然違う、そこがいいんです。当たり前ですけどブルーハーツとマーシーのソロは別物です。元々はブルーハーツのパンクな音楽性が好きだったので、初めて聴いた時の正直な感想はというと「なんか聴きにくいな…」でした。なんか最初はいつもそういうもんです…名盤のだいたいはそういうもんです。むしろそれが正解です。
1回目の視聴で「おー!よかった!」という感想を持った音楽は2回目があっても3回目がないとかザラにありませんか。そして聴かなくなってしまう。オレの3000円が…ってなる。この名盤もなぜか気になって2回目を聴き、そしたら胸に引っかかるなにかを強く感じて3回目を聴き僕の名盤になっていったのでした。
30年近く聴き続けた今は全曲にシビれてます。1曲たりとも飛ばして聴けません。もう好きすぎてオレの3000円どころの騒ぎじゃないです。

真島昌利/HAPPY SONGS(1991)
激しすぎない柔らかさのあるアルバムです。
寒い冬にあったかさも感じます。のんびりした冬の朝にこのアルバムを聴きながら2杯目のコーヒーが飲める幸せ。
あったかい幸せも生きてこそ。
“生きること”はきっと生きないより100倍楽しい。さりげない希望も差し出される優しいアルバム。
この「HAPPY SONGS」を買うかどうか迷うことがわりとあるんじゃないでしょうか。マーシーのソロ作品の中でもあまり有名ではないし情報も少ないですからね。正直なところ僕も後回しで買いました。結果は言うまでもなく名盤でした。これも後から徐々に良さがわかる不思議なそして貴重な体験ができるアルバムです。ハマったらもうなくてはならない音楽になります。しゃがれた声のマーシーの歌が印象的なのでそこに期待している人にはオススメです。もちろん楽曲はハイレベルな仕上がりです。
・ナイーブな歌詞が心に刺さる
・聴き終わるとポジティブな気持ちになれる
マーシーファンには外せないのは言うまでもありません。ロマンチックな優しさが好きな女性にもオススメです。
このアルバムにも感じましたが、マーシーのソロ作品の音楽は良さが後からグッサリと来るのがポイントです。大抵は何度か繰り返し聴いたあとに気付きますが、どの曲も必ずどこかに刺さる部分があります。それに気付いた時には飛ばしては聴けない大事な曲になっています。
M1「オーロラの夜」
作詞・作曲/真島昌利
第1弾シングルですね。ロマンチックな歌詞にポップでキャッチーなメロディーとアレンジ。アルバム全体を期待させる1曲目にふさわしい曲です。マーシーの歌い方は聴く人によっては強いと感じるかもしれませんがこの曲はロマンチックで優しいです。寝る前に聴くのも合ってます。
歌詞の中に“若い顔したポールニューマン”て出てくるんですけど当時はポールニューマンがなんのことなのかさっぱり分りませんでした。それが、20数年の時を経てつい数ヶ月前の僕がポールニューマン主演の「明日に向かって撃て!」(1969)を観てやっと納得したのでした。それこそが“若い顔したポールニューマン”でした。
”うなる長距離トラックには 若い顔したポールニューマン サルバドール・ダリの絵みたいに 夜がパラシュートを開く”
この表現こそ詩人だなと感じるので本を読んでいるような気分にもなります。
これはシングルカットされてるので当然そこにはカップリング曲が入ってるんですど、それが「真夜中過ぎの中央線」というすこぶる名曲です。アルバム未収録でこのシングルでしか聴けないのが残念なところです。クレジットにないし記憶が定かではないけどこの「真夜中過ぎの中央線」のブルースハープはヒロトが吹いてるはずです。
M2「砂丘」
作詞・作曲/真島昌利
キレイに韻を踏みまくるマーシー得意の歌詞が耳に残る曲です。アレンジはモータウンビートってやつですね。サビの声の張り上げっぷりがまたいいです。“詩人”マーシーにしか出来ない言葉の使い方が最高ですね。
”砂丘に君と2人で行きたいな 2級のお酒で酔っぱらいながら 地球の呼吸を感じていたいな 子宮で俺をうけとめておくれよ”
3番まで歌詞があるんですけどすべてで韻を踏んでいて圧倒されます。ここまでやると本当にすごいしカッコいいです。
M3「休日の夢」
作詞・作曲/真島昌利
ここで雰囲気が変わります。マーシーいわく“ギンギンバリバリのノリノリの…ボサノバ”です。ゆったりとしたジャズというより軽快なリズムのジャズです。当時はこの曲の良さがよくわかりませんでした。何度も聴いていたからなのか自分が歳をとったからなのかはわかりませんが今はこの曲のようなうるさくない音楽が好きになりました。歌詞にジャズシンガーのビリーホリディの名前があるしサックスのソロが入っているあたりにジャズを感じます。
”なまけ心が 子供のフリをする 告発の矢は 嫉妬に燃えあがる 酸性雨に 打たれながら 休日の夢 想ってる”
「なまけ心が子供のフリをする」これすごく共感します。ナイーブな心情ですね。だけど誰のにでもありますよね。
M4「朝」
作詞・作曲/真島昌利
これはゆったりとしたテンポのアコースティックサウンドです。演奏している楽器も少なくシンプルなアレンジが優しいです。マーシーの朝のイメージを唯一無二の言葉で歌っています。
”理不尽を乗せ リムジンが行く おひさまキラキラ輝く朝だ”
ゆったりテンポですが聴きにくい曲ではないです。気を抜いているとアッという間に終わってしまいますがしっかりマーシーの世界観で朝日を見せてくれます。
M5「ホープ」
作詞・作曲/真島昌利
「希望」がテーマです。この曲が僕の大本命です。スライドギターのイントロでゆったりしたテンポの曲のためか当時はこれが聴きにくかったです。それがある日突然、名曲になりました。ある時なんとなくこれを聴いていたらこの歌詞の説得力に急に気がつきました。
“だんだんよくなっていくんだ ゆっくり じょじょに 少しずつ そんなにあせらなくてもさ 今日には今日の風が吹く”
その瞬間は悩んでいたんだけどブワーーー!っと目の前が明るくなりました。それから大好きな曲になってこのアルバムの中で1番好きな曲までなりました。いまだに胸を鷲掴みにされっぱなしだし生きる支えになっています。この歌詞を意識して生きていく方が幸せです。そしてこの歌詞は事実です。こういう経験は貴重です。悩んでいる時はこの曲を聴いて考え直した方が幸せになります。

M6「夜空の星くず」
作詞・作曲/真島昌利
シングルカット第2弾。恋心っていいなと思わせてくれる1曲です。アコースティックが基調ながらもバンド感はバッチリ出てます。2人で三日月のボートに乗り込むファンタジー。そして好きにならずにいられないほどの恋心。恋する気持ち以外の言葉を使っていません。それにしてもこんなにロマンチックな恋なんて…うん…ありますね。何年経とうがこういう気持ちは抱けるものです。曲の終盤から入ってくる「シャララッシャン♪シャララッシャン♪」のコーラスがこの曲の醍醐味であるロマンチックな雰囲気をさらに高めます。
”夜空の星くずは 何でも知っている 夕べの出来事も 涙のその理由も 流れるほうき星 あの娘に伝えてよ”
シングルカット時のカップリングはなんと2曲入ってるという太っ腹。「バラ色の人生」と「うな重」(2曲ともアルバム未収録)この2曲はさらにバンド感が出てます。うな重はキンクスの日本語カバーでもちろんマーシー作詞です。バラ色の人生がマーシーらしい曲で好きですね。
今作『HAPPY SONGS』に収録のシングル2枚「オーロラの夜」「夜空の星くず」の当時の8cmのシングルCDはこんなこんな感じのデザインです。
M7「ダイナマイトが150屯」
作詞・関沢新一/作曲・船村徹
これは小林旭のカバーですね。ロックでノリノリなアレンジです。ロカビリーかな。この曲を歌うマーシーのライブ映像は必見です。カバーもマーシーがやれば完全にマーシーの世界になるのがすごいです。これは一回目から聴きやすいです。前の曲であれだけ恋心を歌っておいて今度は“恋なんて吹き飛ばせ”って真逆のことを歌うのがなんとも面白いです。
M8「サンフランシスコの夜はふけて」
作詞・作曲/真島昌利
イントロから印象的で魅力的なベースラインが映えます。これもノリがいい曲調だし、これぞマーシーのボーカルの真骨頂である間奏でのシャウトがたまらない。待ってました!これです。それにマーシーの趣味から来ているであろう「ライ麦畑」「バディホリー」「エルグレコ」といった言葉が並びます。“ビール飲みながら アクセル踏みつけて”この歌詞は時代性かもしれませんね。飲酒運転はやめましょう。
”子供の頃はもっと すべては単純だった あいつが悪者なら こいつは正義だった たくさんの問いかけに たくさんの答が ただ嵐のように うずまいてるだけ”
2番のこの歌詞にいつも考えすぎは良くないと気づかされます。人の数だけそれぞれに違った答えがありますね。そのままの自分でいいと前向きになれます。
M9「とても寒い日」
作詞・作曲/真島昌利
のんびりした冬を感じます。耳触りのいいスライドギターでほのぼのした雰囲気の曲です。こういう冬の日を過ごしたいなとかなりの影響を受けますタイトルは「とても寒い日」なんですけど聴くと心はポカポカになります。
“ああ 雪が降る ああ 世の中は こんな日も動いているんだるう”
のんびりした朝にこの歌を聴きながら2杯目のコーヒーを飲める幸せ。
あったかい幸せは生きてこそ。
“生きる”ことはきっと、生きないより100倍楽しい。健康に心穏やかに、あったかく。
M10「2人でいれば」
これすごくいいです。男の弱さが出ています。1人では不安なんだけど2人でいれば大丈夫って内容が沁みます。短い歌詞で“君”への信頼感の強さが強烈に表現されている誰にでもわかるラブソングです。日常にある気持ちをシンプルにアコースティックな演奏で歌ってくれるもんだから心に響くこと間違いなしです。
”一人ぼっちじゃ 冷や汗が 出ちゃうような時でも 二人でいれば幸福な 気持ちになれるから”
これがサビの歌詞で、誰でも経験する気持ちですね。本当に好きなのは最後の歌詞です。
”むずかしい事 言わない君さ わかってるんだ 言葉じゃなくてさ”
ここが信頼感の強さです。相手のことをここまで理解できると条件付きではない信頼感があっていい関係を築けるよって学びがここにあります。
M11「ガソリンアレイ」
作詞・作曲/Rod Stewart・Ron Wood 日本語詩/浅川マキ
カバー2曲目です。曲に声がバッチリとハマってるからマーシーバージョンが一番好きです。「HAPPY SONGS」に収録されているカバーの2曲はマーシーの味がすごく出ているしアルバムの内容にもしっくり来ているので満足度高めです。
M12「HAPPY SONG」
作詞・作曲/真島昌利
めっちゃ陽気で自己肯定感高くて突き抜けてるハッピーでしかない曲です。聴くとこのままの自分でいいじゃないかって自分を認められます“さあ もう タリラリラーン”な世界観です。これ聴きながらビールでも飲むのが最高です。
“くたばってしまうその前に ちょっと楽しもう お楽しみはまだまだ これからじゃないか”
まったくこの歌詞の通りだと思います。どうでもいい妄想に苦しめられるより、楽しむ方がいい。残りの時間は思ってるより少ないと思います。昼間っから酔っ払ってるこの曲の主人公みたいに自分を肯定して楽しんだ方が後悔しない人生が送れます。ここまでハッピーな気持ちにしてくれる曲を他に聴いたことがありません。なんでも考えすぎて落ち込みやすい人、人の評価が気になってしょうがない人、常識に囚われすぎて疲れちゃってる人にオススメです。この曲には人生変えるほどのパワーがあります。
世間体なんて気にしないほど気楽な気分になったところでアルバムはおしまいです。
すっかりHappyでタリラリラーンになりました。

そんな感じの全12曲で、良さがわかってくると聴くたびにいい時間を過ごせたって思わせてくれる名盤です。マーシーほど、こんなにもロマンチックに言葉を使える人はいません。大人になった時この名盤を持っていないと自分らしく生きれません。名盤になるほど好きになった今はそんな風に感じます。
これはマーシーソロ4作品の中の冬の一枚なので冬にこたつに入って聴くのがいいですね。
このアルバムが出た頃の若いマーシーのライブ映像もあります。有難いことにだいぶ前に意外なほどの低価格で化してくれました。動くマーシーが観れるのはうれしいです。
僕の勝手なイメージなのかもしれませんが「HAPPY SONGS」があまり人気ないような情報も少なく感じてしまうのは前作【夏のぬけがら】の人気っぷりの影に隠れてしまっているのかもしれませんね。
1人のミュージシャンからこんなにも人生を学ぶことがあるんですね。
2017年に「HAPPY SONGS」が念願のアナログレコード化されました。レコードに針を落として1曲1曲を丁寧に聴くというのも新鮮な感覚です。
「HAPPY SONGS」のアナログ盤はAmazonなんかでまだ買えます。
一ファンとして。
ありがとうございました。
それではまた。