こんにちはUMEです。
「THE BLUE HEARTS」は1987年リリースのブルーハーツの1stアルバムです。
日本が誇るパンクの大名盤です。ブルーハーツならまずこれを聴くべきというほどの説得力のあるアルバムです。同時に楽曲のインパクトによる破壊力もあります。
僕たちの心をぶん殴ってくるほどの刺激に満ちています。
意外にもブルーハーツはこの1st以降はパンク一辺倒ではない音楽性豊かな引き出しの多さを持ったバンドになっていきました。それでいて根底にはしっかりパンクの精神性があります。それがブルーハーツの魅力です。
歴史に名を残す4人は
真島昌利:ギター
河口純之助:ベース
梶原徹夜:ドラム
この人たちで、ブルーハーツは1985〜1995年まで活動しました。
THE BLUE HEARTS/THE BLUE HEARTS(1987)
こんなにエネルギーに満ち溢れた名盤は他にありません。
やさしさと誠実さがあります。
1stアルバムにしてクオリティの高さはピカイチです。曲の良さも勢いや疾走感も若い溢れ出すエネルギーもこの「THE BLUE HEARTS(1st)」にこそ詰まっています。
間違いなく「伝説」の名盤です。
音として聴いた場合には粗いパンクロックですが、歌詞はどこまでも繊細な感性で書かれたからこそ胸の奥に刺さります。
・難解な曲も長い曲も一切なく全曲が際立っている
・『日本代表ブルーハーツ』の言葉に嘘偽りのない日本語パンクの名盤
潔く短い曲のオンパレードでアルバム1枚、全12曲聴いても33分59秒しかありません。マッハ50で駆け抜けます。
今作リリースの半年後には2ndアルバム「YOUNG AND PRETTY」をリリースしてしまったほどにデビュー直後のブルーハーツには若い溢れるエネルギーがあったんですね。
ブルーハーツの全8枚のオリジナルアルバムの中でこの1stアルバムが一番に印象深いのと他のどのアルバムよりも生き方、考え方に影響を受けました。
初めて聴いたその時が、若ければ若いほどに心に響くのかもしれませんがある程度の歳を重ねた今聴いてもアルバムからガツンと伝わる興奮は何も変わりません。
何度か聴くと割と早い段階で曲順も歌詞もメロディも記憶してしまえる強いインパクトがあります。
歪みすぎて聴き取りにくさがあるほどのパンクロックらしいギターの音が特徴的です。
1985年12月25日のクリスマスに行ったライブで配布した『1985』というタイトルの曲は自主制作のソノシート(薄いペラペラの小さいレコード)で、かなりの間「幻の曲」と言われていました。今はベスト盤で聴けます。その曲の最後にヒロトが叫びます。
“1985年 日本代表ブルーハーツ!”
この言葉がまっすぐなまんま日本を代表して1stアルバムに日本語のパンクロックとして表現された伝説の名盤です。つまり日本代表する1枚です。
その後、ブルーハーツは誰もが知る日本を代表するバンドになったということも確固たる事実です。
尚、10代とかの若い人は必ずこのアルバムを聴いてください。そうしないとこれからの人生が「組織のイヌ」になって後悔することになります。
M1「未来は僕等の手の中」(2:25)
作詞・作曲/真島昌利
伝説の始まりにバッチリな名曲です。当初はこの位置(1曲目)に「ブルーハーツのテーマ」が収録される予定でしたが歌詞の問題で収録できなくなり、この曲が1曲目に来たということです。この曲は本来は7曲目に収録する予定だったというのが驚きです。
歪ませまくった音のギターが、一発でいかにもパンクロックを聴いているという気分にしてくれます。
未来は自分で決められるというメッセージのポジティブな曲です。若いしパンクだしエネルギーが爆発してます。聴いているこちらにも真っ直ぐに伝わるのでこの曲に救われる人も多いのではないでしょうか。
“生きてる事が大好きで 意味もなくコーフンしてる 一度に全てをのぞんで マッハ50で駆け抜ける”
生きていることにコーフンしてるって、人の常識に縛られがちな日本人はあまり言わないですね。死にたい人はよくいるけど生きてることが大好きな人はなかなか見ません。しかし今生きている人は全員、本当は生きることが好きだから生きているのかもしれませんね。「マッハ50で駆け抜ける」まさにそんな勢いをこの曲から感じます。
“誰かのルールはいらない 誰かのモラルはいらない 学校もジュクもいらない 真実を握りしめたい”
この歌詞こそ重要です。特に日本人は「同調圧力」という日本にしかない悪しき習慣に支配されて個性のままでいることを否定されてしまいます。本当は誰かのルールも常識も自分には関係ありません。この曲でそのことに気づいたのなら真実を握りしめてみましょう。後悔しない生き方を。
“僕等は泣くために 生まれたわけじゃないよ 僕等は負けるために 生まれてきたわけじゃないよ”
このアルバムにもブルーハーツというバンドにも、こういうテーマの曲が多いのは、やっぱり人として幸せに生きるって意味では重要だからだと思いますよ。反抗とか反逆とかそういうことだけじゃないんです。
M2「終わらない歌」(3:04)
作詞・作曲/真島昌利
シンプルながらこのイントロのフレーズよく思い付いたなと思うほどに人の心に響くパンチ力です。この曲にも反骨精神があって生きる気力が湧いてきます。どんな自分でも肯定するキッカケになる曲です。
サビの歌詞なんか猛烈にパンクロックのやさしさが出ています。4曲目に「パンク・ロック」という曲が入っているけど、その歌詞の内容は僕にとっての「終わらない歌」のようなパンクロックのことを歌っています。
“終わらない歌を歌おう クソッタレの世界のため 終わらない歌を歌おう 全てのクズ共のために 終わらない歌を歌おう 僕や君や彼等のため 終わらない歌を歌おう 明日には笑えるように”
やさしい。この歌詞を否定する人には決してないやさしさです。クソッタレの世界と全てのクズ共と僕や君や彼等が明日には笑えるように終わらない歌を歌おうってマーシーのやさしさに感謝します。
“なれあいは好きじゃないから 誤解されてもしょうがない それでも僕は君のことを いつだって思い出すだろう”
自分を大事にしている人でなければ言えない言葉です。誤解されてもしょうがないと決心している強さと誠実さもある。その相手を切り捨てるわけじゃなくいつだって思い出すという誠実さが心に刺さります。
3番のサビはアコギとボーカルだけになります。最後のフレーズは差別用語になるため歌詞カードにも記載はなく音としてもバカでかいギターの音でボーカルはぼかされています。ほとんどの人はここまでの歌詞の内容とパンクにブルーハーツということでだいたい察しはつきます。
“終わらない歌を歌おう 一人ボッチで泣いた夜 終わらない歌を歌おう ・・・・あつかいされた日々”
もちろん「キチガイあつかいされた日々」です。よく聴くとしっかり聞こえてきます。
M3「NO NO NO」(2:26)
作詞・作曲/甲本ヒロト
ヒロトがブルーハーツの前にやっていたバンド「ザ・コーツ」時代からの曲です。ギターはカッティングを多用した歯切れのいい演奏で、この曲の雰囲気を決定付けています。やっぱり粗いパンクロックでヒロトの歌詞の世界観が胸を打ちます。ロマンチックに打ちのめされる衝撃です。
“戦闘機が買えるぐらいの はした金ならいらない NO NO NO……..笑いとばせばいいさ”
この皮肉の表現の仕方がヒロトらしいです。戦闘機より金より大事なことがあると歌う2番の歌詞には衝撃を受けました。
“どこかの爆弾より 目の前のあなたの方が ふるえる程 大事件さ 僕にとっては 原子爆弾 打ち込まれても これには かなわない”
戦争より戦闘機より金よりも目の前のあなたの方が大事件だと言い切る人間らしい言葉です。原子爆弾さえかなわないって、ものすごく真っ直ぐな気持ちです。これにはビビりました。人生でこういう気持ちはほとんどの人が経験したことがあるから共感できるんですね。
若い、激しすぎる、感情が出まくってる。一生懸命とはこういうことです。単純にみんなルックスがいいです。
M4「パンク・ロック」(3:41)
作詞・作曲/甲本ヒロト
意外にもスローテンポの曲です。初めて聴いた時は「パンクロック」というタイトルから速いテンポの曲を勝手に想像していて拍子抜けしたのを覚えています。
※ウィキペディアより
解散後にインタビューで甲本がこの曲について「レコーディング時にアレンジで揉めて(メンバー同士で)大ゲンカをした。」と語っていた。
このアレンジを否定する気はまったくありませんが、他にどんなアレンジのアイディアがあったんだろうという興味はあります。
1988年に発売された『ドブネズミの詩(うた)』というブルーハーツの本の中にパンクロックについて誰もが納得するしかない根拠のある発言がありました。
これこそがブルーハーツなんだな。ミュージシャンからこんな本音は聞いたことがない。この発言をしたこの人たちがやるからこそ誰かの人生を変えるような音楽をやれたんですね。
パンクロックのことをどれだけ好きか伝える熱いメッセージの曲です。ヒロトが相当な衝撃を受けて好きになったんだなという気持ちが分かりやすく伝わってきます。曲の随所にマーシーのピックスクラッチが聴こえてくるのが印象的です。
“吐き気がするだろ みんな嫌いだろ まじめに考えた まじめに考えた”
この歌い出しに共感するパンク好きは多いでしょう。パンクに対する一般的なイメージでしょうね。まじめに考えた結果がパンクロックが好きだと主張しているのがすごくよく分かります。僕にとってはそれがブルーハーツであり、ブルーハーツ好きな人はきっと本当の意味でまじめなんだと思います。
“友達ができた 話し合えるやつ 何から話そう 僕のすきなもの”
「話し合えるやつ」この言葉が言っているのはマーシーと出会ったことなのかもしれませんね。2人の友情は今でも続いているしうらやましい限りです。
“僕 パンク・ロックが好きだ 中途ハンパな気持ちじゃなくて ああ やさしいから好きなんだ 僕 パンク・ロックが好きだ”
このアルバムに収録されているすべてのパンクロックが、この曲の歌詞で言っていることに当てはまります。「やさしいから好きなんだ」という言葉にものすごく共感します。ブルーハーツにそのやさしさがあります。
『ドブネズミの詩』より
“パンクは優しかったよ。正直で、真面目でさ。なんか涙が出るくらいに優しくてさ。”
M5「街」(3:18)
作詞・作曲/甲本ヒロト
イントロから気持ちいいシンプルなパンクロックです。決して難しくない演奏でこんなに熱くなれる情熱的なバンドは他にありません。
こらえきれぬ友達との出会いと希望をくれる曲です。この曲が一番好きだという人もいるんじゃないでしょうか。少数派の考え方かなと思ってしまう自分を自分だけじゃないから大丈夫だよと肯定してくれます。だからこの曲を聴くと安心します。実際に同じ考えの人と会うと自然と盛り上がります。
“いつか会えるよ 同じ気持ちで爆発しそうな仲間と きっと会えるよ”
前の曲「パンク・ロック」に登場した『話し合えるやつ』がここでも出てきているのだと感じます。ヒロトにとってマーシーと出会えたことが“爆発しそうな仲間”って歌詞を生んだ経緯なのでしょう。「街」を作った時に、このアルバムリリースの34年後にも一緒にバンド(クロマニヨンズ)をやっていると信じていたのかもしれませんね。
“命のあるかぎり 忘れてはいけない 今しかぼくにしか できないことがある”
最後は楽器陣がめちゃくちゃな盛り上がりの中この歌詞が乗っているので興奮必至です。そのままの自分でいいと肯定して生きようと奮い立たせてくれる最高な歌詞です。希望を差し出すポジティブさがブルーハーツらしいです。
M6「少年の詩」(2:41)
作詞・作曲/甲本ヒロト
すっかり有名な曲になりました。これも「ザ・コーツ」時代からの曲です。反抗期に作ったんだろうかと思えるほどに若さを感じられるテーマです。しかし他人の人生を生きてしまっている大人にも響きます。
“ドアをあけても 何も見つからない そこから遠くを ながめてるだけじゃ”
重要なことに気づいている歌詞です。少年は行動しようとしているんですね。曲では少年ですが、行動しない大人も同じです。
“別にグレてる訳じゃないんだ ただこのままじゃいけないってことに気付いただけさ そしてナイフを持って立ってた”
これは日本人が目指すべき思考です。「老害大国日本」においてこれに気づくことの大切さは心を病んでしまわないための第一段階です。「そしてナイフを持って立ってた」という比喩表現がたまらないです。自分らしさだと解釈しています。このままじゃいけないと、何よりも大事なことに気づいたから自分の人生を生きていこうという勇気ある決心ですね。
“誰の事も恨んじゃいないよ ただ大人たちにほめられるような バカにはなりたくない そしてナイフを持って立ってた”
これは実は大人になってから意味がわかりました。「大人たちにほめられるようなバカにはなりたくない」というのは同調圧力に支配されてしまってるような尊敬できない人にほめられてもしょうがないから、自己犠牲なんかやめて自分を生きようということだと理解できました。
“いろんな事が思い通りになったらいいのになあ”
わがままでも自己中でもなく、みんなと同じものを目指さない自分優先という事です。
M7「爆弾が落っこちる時」(2:06)
作詞・作曲/真島昌利
ここから後半戦です。ダレるところはありません。“いらないものが多すぎる”という有名な歌詞はこの曲です。歪んだ音のギターリフが難しくなく、これまたパンクらしいです。歌詞の内容は上からの圧力みたいなものを感じます。言いたいことは言うべきだと、この曲は言っています。社会派な曲ですね。
“誰一人 望んではいないのに 誰一人 喜んじゃいないのに 爆弾が落っこちる時 何も言わないってことは 爆弾が落っこちる時 全てを受け入れることだ”
この曲の「爆弾」とは、上の立場の人間だったり年上の人からの発言、決定事項、勝手なルールという受け入れ難いものだと言えます。日常にある本当は嫌なのに周りに合わせるという日本の風習に従ってしまって、何も言わないのなら自分がそれを全部受け入れたってことだよということです。生きるために本当は一切必要のない「空気を読む」をやっていると爆弾を受け入れなきゃいけなくなってしまいます。
“僕は自由に生きていたいのに みんな幸福でいるべきなのに 爆弾が落っこちる時 僕の自由が殺される 爆弾が落っこちる時 全ての幸福が終わる”
自由に生きていたいと願っているのに、何も楽しくない大人の事情や国柄や他人のルールを周りに合わせて黙って受け入れようとする「空気を読む」という「同調圧力」に屈してしまう本質を突いています。
“いらないものが多すぎる”
自由という幸せでいるために自分の意志を優先することが大事だとこの曲から学べます。
自由よりも価値があるものなんてない。
こんなに暴れながらよくギターが弾けるなぁと感心します。この頃のヒロトの野太いパンクロックな声もいいですね。ロックの人って足が細いですよね。特にヒロトとマーシーなんか今も変わっていません。
M8「世界のまん中」(2:20)
作詞・作曲/甲本ヒロト
歌詞の問題で収録できなかった「ブルーハーツのテーマ」の代わりに収録された曲です。世界の片隅で生きてる人なんかいないんだよと自分を肯定するための曲。誰もが今いるその場所こそが世界のまん中なんだというメッセージ性が強く表現されているのが好感度高いです。アレンジはもちろん聴きやすいシンプルなパンクです。
“僕が生まれた所が世界の片隅なのか 誰の上にだって お日様は昇るんだ”
お日様が昇るのは誰にとっても平等です。それを忘れてはいけません。そう気づくだけでも世界が変わります。
“僕が今見ているのが世界の片隅なのか いくら捜したって そんな所はない”
世界の片隅なんて存在しないんだと大事なことを教えてくれます。世界の片隅なんか捜しても見つかりません。そこは世界のまん中だから。
“うまくいかない時 死にたい時もある 世界のまん中で生きてゆくためには 生きるという事に 命をかけてみたい 歴史が始まる前 人はケダモノだった”
ヒロトの歌詞には熱い決意を感じます。生きるという現実は厳しいけど、その生きるという事に命をかけるって言葉に救われます。今生きている所は決して世界の片隅じゃないんだよと言ってくれる「やさしさ」がこの曲から伝わってきます。
M9「裸の王様」(2:50)
作詞・作曲/真島昌利
かなりマーシーの世界観を感じられる曲です。出だしはいきなりヒロトとマーシー2人の声なのが胸熱です。しゃがれた声を張り上げて歌うマーシーのボーカルがバッチリ聞こえます。
裸の王様をこの目で見てしまった自分の経験上からなのかもしれませんが、これは燃えます。
童話の「裸の王様」に出てくる子供がその言葉を叫んだ時の気持ちになれます。世の中で「裸の王様」に出会うことはありますね。経営者なんかがこれだと最悪です。彼らは何も持っていない。人として大事なことがすっぽ抜けてる。きっとブルーハーツを聴いていない。この曲を聴くと奮い立たされて叫びたくなります。
“見えなくなるより 笑われていたい 言えなくなるより 怒られていたい”
見たまま感じたままに言いたいことは言ってしまう「同調圧力」に屈しない誠実さがある。
“今夜 僕は叫んでやる 王様は裸じゃないか”
炸裂しました。服を着ていない人に裸じゃないって言い続けるバカバカしさをへし折ってくれます。
“裸の王様 何が見えますか? 裸の王様 何を学んだの? 裸の王様 今夜 サヨウナラ”
裸の王様に対し何を学んだの?という問いかけが最高です。きっと何も学んでいない。見ればわかる。最後に「サヨウナラ」とバカバカしさと決別するのは大正解であってマーシーらしいです。ちなみに僕も裸の王様と「サヨウナラ」をしました。
M10「ダンス・ナンバー」(1:28)
作詞・作曲/真島昌利
前の曲が終わった後に間髪入れずに急に始まる感じがインパクトあります。一番の印象は「高速な曲」です。高速で、しかも1分28秒という短すぎる熱さです。ブルーハーツの中で一番演奏時間が短い曲。ライブバージョンの速さなんか異常です。間奏の前にマーシーの強烈すぎる魂のシャウトが入ります。
“ダンスナンバーで 踊り続けよう くだらない事は たくさんあるけど 誰かが決めた ステップなんて 関係ないんだ デタラメでいいよ”
他の誰かが決めた形式、常識なんてどうでもいいから自分のステップで踊ろうと楽しんで今を生きることを推奨してます。ライブ中のヒロトのように見たこともないような自分の感情を爆発させたパフォーマンスが、この歌詞の一番わかりやすい見本です。
“カッコ悪くたっていいよ そんな事問題じゃない 君の事笑う奴は トーフにぶつかって 死んじまえ”
この歌詞が完全に味方でいてくれています。カッコ悪くたっていい、そんなこと問題じゃないとすべての人に勇気を与える真実の曲です。そんな姿を笑う奴はトーフにぶつかって死んじまえと一蹴してくれる思いやりがあります。
実はマーシーが歌っているバージョンが存在します。同じ歌詞を歌っていますがテンポを落としてアレンジがまったく異なるので全然違う曲に聴こえますが僕にはドンピシャでした。「ダンスナンバー」を作詞作曲した本人が歌うと、こういう解釈になるんだなと心を鷲掴みにされました。このリズムの方が歌詞の内容がより刺さりやすいです。同じ曲でもマーシーバージョンは4分くらいあります。
マーシーファンならこっちのが好きかもしれませんね。“死んじまえー”の後の“オー!”と何度も叫ぶところがたまらなく好きになります。これ正式にリリースしてほしかったですね。
M11「君のため」(4:18)
作詞・作曲/真島昌利
あれだけ高速で激しく短すぎる曲のあとに、このアルバム唯一のスローなバラードは、ここになくてはならない曲だと感じずにはいられません。そう感じた瞬間に音楽の素晴らしさを実感できます。
最近は曲単位で音楽を聴くのが極自然だと聞きますが、この1stアルバムを1枚まるごと聴いているとやはりアルバムとしての構成、曲順、音がバッチリと心に届いた時に本当の感動が身体中に広がると気づきます。本人たちはその意図で作り上げているから当然ですね。次のラスト曲「リンダ リンダ」を聴き終えた時にさらにこの感動に胸を支配されます。
マーシーの歪ませぎみのアルペジオがバラードでもパンクらしさを感じさせます。心のこもったヒロトの歌が涙を誘います。こんなにストレートなラブソングはありません。誰にでもわかる言葉で伝える想い。
“もう泣かないで 月がとてもきれい こんな素敵な夜なのに 涙なんていらない もう抱きしめて 二度と離しはしない たとえ地球が砕けても 金がなくても”
ロマンチックで誰が聴いてもラブソングだと一発でわかるのがマーシーらしくて共感します。
“すがりつく 腕が欲しいなら 僕のこの腕で そうして欲しいずっと Baby Baby”
Babyの部分でマーシーの熱いコーラスが入って最高潮な盛り上がりです。マーシーはよくBabyという言葉を曲で使っています。歌っているのはヒロトは「ベイビー」マーシーは「ベイベー」と聞こえます。
“「好きです 誰よりも 何よりも 大好きです ごめんなさい 神様よりも 好きです」”
間奏ではマーシーの胸を打つほどに情熱的なギターソロに乗せてヒロトのこのセリフが入るのが特徴的です。愛の言葉ですね。照れることもなく心を込めて伝えられるヒロトには尊敬の念を抱きます。「神様よりも好きです」ってわざわざ言わなくてもいいことをハッキリ伝える想いの深さがあたたかいです。
M12「リンダ リンダ」(3:22)
作詞・作曲/甲本ヒロト
イントロにアコギの音があることによって前のバラード曲「君のため」からの繋がりがすごくスムーズです。
誰が聴いても衝撃的な「ドブネズミ〜」と歌い出す1stアルバム唯一のシングル曲ですが、ここに収録されているのはアルバムバージョンです。特にアルバムバージョンという表記はありませんがシングルバージョンとは結構違います。誰もが知っているのはこっちのイントロにアコギが入っているアルバムバージョンですね。当時、本人たちはシングルバージョンを気に入ってなかったらしいですが確かにこのアルバムには合わないアレンジのメジャー感(ポップス感?)が出ているのでその気持ちはわかります。とはいえ、シングルバージョンはギターを重ねていたりするので特にパンク好きではない人にとっては聴きやすさがあります。
「リンダ リンダ」のシングル盤のレコードとCDはこんな感じでした。どちらも内容は変わりません。なんとなく両方持ってます。レコードのが音圧が高く、ボーカルにも演奏にも生々しさはあります。
リンダリンダについてヒロトが「これ大丈夫かな?」と思いながら作ったという話も何かで見ました。
個人的には初めてギターが弾けるようになった曲です。と言ってもこの曲はコードのみなので難しさはありません。それでも1曲弾けるようになった喜びは大きかったです。
みんなで盛り上がれるノリノリな曲ってだけではなくヒロトらしいロマンチックな歌詞にも注目です。
“ドブネズミみたいに誰よりもやさしい ドブネズミみたいに何よりもあたたかく”
やさしさ、あたたかさと言っている辺り、ヒロトにとって「ドブネズミ」とはパンクロックのことかもしれないですね。それをパンクらしく「ドブネズミ」という言葉で表現したのは後にも先にもヒロトだけですね。
“愛じゃなくても恋じゃなくても君を離しはしない 決して負けない強い力を僕は一つだけ持つ”
「決して負けない強い力」この言葉こそが「リンダ リンダ」のパワーです。「君のため」の世界観にも近いです。
最後の全員での畳み掛けるほどの「リンダリンダー‼︎」の高揚感のままスッキリした気持ちでアルバムを聴き終えられます。
「リンダ リンダ」とは何なのか、作った本人がよくわからないと言っているのでその通りなのでしょう。なんかよくわからないけど、とにかくカッコいい!ロックにはそんな魅力がありますね。
これを観ると何よりも純粋な音楽だなと胸が熱くなります。全員がその瞬間にその音楽に魂を込めて向き合ってる。これはアルバムバージョンに近いですね。マーシーの短いギターソロが入ってます。
1988年に発売されたブルーハーツの『ドブネズミの詩(うた)』というタイトルの本の最後のページに書いてある言葉が衝撃的です。
88年ということは3rdアルバム【TRAIN-TRAIN】の頃ですね。こんな本も出していたんです。内容は3rdアルバムまでの歌詞とメンバーの個性的な発言の数々で楽しいです。中古で見かけたら買って読んでみてください。絶版とはいえ千円前後で買えると思います。
これだけ濃い内容の12曲がたった30分ちょっとでダレることなく駆け抜ける聴きごたえたっぷりな1stアルバムです。
このアルバムから強く心の自由を求めている気持ちが聴き取れるし、パンクのやさしさが溢れ出ています。
全曲が誰にでもマネできるほどの簡単な演奏ですが、この人たち以外の誰かがやったところでカッコよくはなりません。感性とエネルギーが違います。
このアルバムのやさしさは人生で一度は聴いておくべき1枚です。一度というより何度も聴くことになるはずです。
つまり名盤です。
2017年に「THE BLUE HEARTS」のアナログ盤が再発されました。オリジナル発売当時はまだレコードが主流だったので、当時のその雰囲気のまま楽しめるのが胸熱です。
若い世代の人たちはこの媒体自体を知らないかもしれませんが伝説の1stアルバムのカセットテープ版はこんな感じです。横長でCDとはちょっと違う印象です。
もちろん1stアルバムだけでなく活動期間中にリリースした全8枚のアルバムは彼らの繊細な感性が生み出した傑作ばかりです。作品ごとにブルーハーツの良さが増していって、1stアルバムとは対極にありそうなアコースティックでゆったりしたテンポの曲のみで構成された7thアルバム【DUG OUT】まで世に出しました。
「THE BLUE HEARTS」の半年後にリリースされた次作である2ndアルバム【YOUNG AND PRETTY】にも強烈な歌詞の個性的な曲の数々が収録されています。
オリジナルアルバム未収録曲が満載なベストアルバム【ALL TIME SINGLES】
他の作品では聴けない曲(バージョン)を含む【後期ベスト+前期ベスト】
ブルーハーツの一ファンとして。
ありがとうございました。
それではまた。