こんにちは。
『TRAIN-TRAIN』は1988年リリースのブルーハーツの3rdアルバムです。
語り継がれる名盤です。
すでに30年以上も語り継がれています。
世間では、1stアルバムからこの3rdアルバムまでが初期3部作なんて言われたりします。
それから『TRAIN-TRAIN』は“コンセプトアルバム“と言われたりもします。
これには少し共感します。
アルバムとして全曲を聴いた時に受ける印象が確かにその通りだと感じます。
最近また復権しつつあるアルバムという概念が一番手前に存在しています。
1曲目の『TRAIN-TRAIN』が始まる前と、ラスト曲の『お前を離さない』の演奏後に汽車が疾走していくイメージのブルースハープのソロが入っています。
聴くといい音楽を聴いている感覚と同時に、感動的な映画を観ているような満足感に包まれます。
これがアルバム全体でひとつの作品だと思わせる要素であり、より一層物語を聴き終えたという気分に浸れるポイントでもあります。
とは言え、何かに偏らずいろんな曲調の歌が楽しめるのがアルバムの心の掴まれどころです。
ジャケットのデザインにも汽車の切符がイメージされていてコンセプト作品としてのこだわりを感じます。
ともかく、自分の感性のままで聴き、人生を決定してしまうほどの影響力を感じたら、それが一番楽しいことです。
THE BLUE HEARTS/TRAIN-TRAIN(1988)
TRAIN-TRAIN(トレイン・トレイン)は2枚目のアルバム『YOUNG AND PRETTY』(1987年11月21日)発表からほぼ1年後(1988年11月23日)にリリースされた3枚目のアルバムです。
2ndアルバム『YOUNG AND PRETTY』までのパンク中心だったバンドの音楽性がブルース、フォーク、カントリーなどの多彩な音楽を取り入れバラエティ豊かという印象が強いです。
このようなバラエティに富んだ作品は聴き続ける1枚になることが多いです。
『TRAIN-TRAIN』ではゲストミュージシャンが多数参加していて、アレンジはもちろん、聴こえる音としてのバラエティの豊かさも強化されています。
1stアルバム『THE BLUE HEARTS』のいかにもパンク!という聴き心地ではなく、音がキレイなアルバムです。このミックスはパンク過ぎないところに好感が持てます。
・アレンジの幅広さが煌びやかな印象
・心に刺さる名曲たちの絶大な存在感
・特にマーシー作の曲は繊細な感性で作られた名曲揃い
しかし当時のCDは音圧が低い(音が小さい)ので、かなりボリュームを上げる必要があります。ブルーハーツの全アルバムの中で最低の音圧です。
他のCDと同じ音量で聴くには、いつもより5目盛ぐらい(またはそれ以上)ボリュームつまみを上げることになります。
ブルーハーツ史上初のヒロトとマーシーの共作曲が収録されているのが興味深いポイントです。
この共作曲が収録されたことで、バラエティに富んだアルバムになったという根拠にもなっています。
最重要なことがあります。
耳への感触は変わったとは言え、ブルーハーツの根底にある反骨精神は一貫して唯一無二の存在感を放っています。
やはりそこに魅力を感じます。
どの歌にも大きなインパクトがあります。
『TRAIN-TRAIN』収録曲
1.TRAIN-TRAIN
2.メリーゴーランド
3.電光石火
4.ミサイル
5.僕の右手
6.無言電話のブルース
7.風船爆弾(バンバンバン)
8.ラブレター
9.ながれもの
10.ブルースをけとばせ
11.青空
12.お前を離さない
全12曲、44分です。
アルバムタイトルが疾走感に満ちています。
栄光に向かって走る汽車に乗って、果てさえ越えて希望まで疾走していくイメージです。
疾走するアルバムの流れが滞ってしまう部分は一切ありません。堂々と駆け抜けます。
無意味な勢いでただ駆け抜ける訳ではなく、多くの輝きを放つメロディ、繊細な言葉たちが私の心を奪い去りながら突っ走ります。
『TRAIN-TRAIN』は小学生の頃に私が初めて聴いたブルーハーツのアルバムです。
小学生の心にも強烈に刺さる誠実さを感じました。
35年聴き続けた今の方が魅力的です。
ただ一つハッキリと言えるのは3rdアルバム『TRAIN-TRAIN』には聴くほどに新しい輝きを放つ魅力があって名盤だということ。
それは適当な言葉で説明可能なものではなくて、心が感じ、心が激しく動く魅力です。
ヒロト「後悔と懺悔の繰り返しです。」
ーー今回のツアーではかなり会場もホールも大きくなってるし、ソールドアウトという所もあるようなんですけど。人気が急に盛り上がったっていう感じがすると思うんですよね、そういう部分についていけない部分は皆さんの中にありますか?
ヒロト「ついてこれないのは客の方じゃねえか?(笑)。ブルーハーツにちゃんとついてきなさい皆さん。」
梶くん「お客さんが来てくれることは喜ばしい事ではないかと。」
マーシー「でも動員減ってる所もあるよ。」
ヒロト「あるよ(笑)」
河ちゃん「峠は過ぎました。」
ヒロト「あのぉ、ライブハウスで観るのが好きな人もいるみたいだしね。」
ーー結構お客さんの中でも会場が大きくなるとちょっと、えっ⁈って思っちゃう人も、、、
ヒロト「じゃあ、買わないって人もいるよね。」
ーーそういうファンに関してはどうですか?
ヒロト「じゃあ、来ないでいいよって言うしかないね(笑)」
梶くん「私たちは私たちでこのままやっていって、そのライブハウスが好きな人の為に一生ライブハウスでやるっていう訳にはいきませんからね。私たちの人生がありますから。」
ーーヒロトさんの髪が、金色になっちゃったのはどうして?
ヒロト「ブリーチ剤かけたから。」
ーーそりゃあそうですよね。あの、そういう色にしたかったんですか?
ヒロト「ちょくちょくやってたんだけどね、人前にあんま出なかったけど、最近恥ずかしくなくなったの。昔は人前に出る時は普通にしてたの。」
『TRAIN-TRAIN』発表の頃はバンドの人気が超絶大になった時期なんだなと感じました。インタビュアーの質問に、ほんのわずかにイラッとしたようなヒロトの一瞬の表情が頑固なロックでした。
大事なものを変えないために、少しずつ未来を変えながら突き進んでいくブルーハーツの強靭な意志に憧れます。
ヒロト「満足したらそっから先は老後だもんな。満足したヤツかわいそう。」
シングル曲は3rdシングル「TRAIN-TRAIN」4thシングル「ラブレター」5thシングル「青空」の3枚が収録されました。太っ腹です。
3枚目のシングル「TRAIN-TRAIN」はアルバムと同時発売(1988.11.23)されました。
カップリングに本作にも収録済みの「無言電話のブルース」が収録された2曲入りです。
「TRAIN-TRAIN」はハーモニカのイントロのないシングル・バージョンですが、テイクは同じです。
4枚目のシングル「ラブレター」はアルバム発売後の1989年2月21日にリリースされたリカットシングルです。
カップリングに本作にも収録済みの「電光石火」が収録された2曲入りです。2曲共にアルバムに収録のものと同テイク。
5枚目のシングル「青空」もアルバム発売後の1989年6月21日にリリースされたリカットシングルです。
カップリングには本作には未収録のマーシーボーカル曲「平成のブルース」が収録されました。現在は『ALL TIME SINGLES』などのベスト盤で聴けます。
10分近い長編のロックンロールで、スタジオにてライブ形式で録音されたということです。とてつもない臨場感があります。
5人目のブルーハーツ、白井幹夫さんが初めてピアノで参加した1曲です。
3枚目のシングル「TRAIN-TRAIN」が発表される前に、ブルーハーツは自主制作で2枚のシングルをリリースしました。
2枚共に1988年7月1日に発売。
3曲入り8cmシングルCD「ブルーハーツのテーマ」と、1曲入り7インチ片面EPレコード「チェルノブイリ」です。
全曲、オリジナルアルバムには未収録。
1988年アルバム発売当時『TRAIN-TRAIN』はレコード、カセットテープ、CDの3形態でリリースされました。
オリジナル発売から29年後の2017年に、それまで入手困難だった『TRAIN-TRAIN』のアナログ盤(レコード)が、リマスターも施され再発売されました。限定生産です。
音がよりハッキリしていて好ましいです。
『TRAIN-TRAIN』という汽車に乗ったなら、すぐにハーモニカのイントロが遠くから近づいてきたことに全身がワクワクします。
耳に聴こえたその音は、次に心へ響きます。
それはすでに栄光に向かって走り出している希望のメロディだからです。
M1「TRAIN-TRAIN」
作詞・作曲/真島昌利
ブルーハーツの3枚目のシングル。
超名曲から絶好調でアルバムスタートです。
ほとんどの日本人が知っていると言ってもいいくらいの名曲。
メロディもアレンジも最高な上に、歌詞なんか心に突き刺さったまま抜けなくなるほどに神がかってます。
美しいピアノ入りのロックンロール。
アルバム『TRAIN-TRAIN』に収録されているのはコンセプトアルバムの中の1曲なので、シングルの方にはないハーモニカとドラムによる汽車が疾走していくイメージのイントロ部分があります。
アルバムの「導入部」という感じで、そのイントロがすごくいい。心に聴こえます。
汽車が近づいてきてもの凄い勢いで目の前を疾走して通りすぎた直後に、本編の歌が始まるという演出にはアルバムへの期待が高まります。
人の本音と真心が溢れたヒロトの歌と、寄り添う細やかなピアノ。わずかに感傷的です。
そこには切ないほどの真実だけがある。
そっと入るアコギは美音です。アコギが何かを切望する人の気持ちを歌ってる。
むろん、ボリュームは上げておくべきです。
梶くんのパワフルなドラムカウントでロックンロール炸裂開始。テンション爆上がり。
絶対的な細胞の蘇生。人生の再起動開始!
私の意識のすべてを奪っていくギターリフ。マーシーの音がする。ただのマーシーじゃない、本物のマーシーです。
なんてことだ、現れたのは圧倒的な疾走感。
これで突っ走れない人は滅多にいません。気力を失くした心は一念発起して、イライラしてた気持ちは結果を出すパワーに変わる。
こんなにもピアノが合う曲は他にない。ピアノがロックンロールを大いに煌びやかにしてます。
力強さと繊細さが両立した、バンドの絶妙な演奏力に惹き込まれます。
ヒロトの歌はパンクロックに合う野太い声ですが、すごく繊細な歌い方なのでダイレクトに心に響きます。
マーシーによる歌詞は多くの人の心に刺さったはずです。そこには個性溢れる繊細さと嘘のない誠実さがあるから。
栄光に向かって走るこの歌は決してやわなものではないけど、雑に扱うと壊れてしまう。
そこに魅力があります。
そういうものが、光りながら形を変えずにまっすぐ心に直撃する衝撃。
聴くといつでも、自分のままで生きようと思えるとてつもなく誠実な1曲。
この歌で前向きになれないひねくれた心なんてひとつもありません。
歌詞 : 歌い出しから心を撃ち抜きます。
絶望ではなく栄光に向かって走ります。どこかで間違えて絶望に向かっていたかもしれない行き先を修正してくれました。
誰かの心を救うポジティブな歌。
曲の展開としても、歌詞の繊細さに対しても、自分の中で奥の方から込み上げてくる熱いものを感じます。
それは感動の涙と生きる気力です。
「だけど生きてる方がいい」という言葉は弱者の私にも絶大な安心感と勇気をくれます。
画像の掲載はできませんが「TRAIN-TRAIN」と「ラブレター」のシングルの裏ジャケットは、なんとマーシーとヒロトによる手書きの歌詞です。
ハーモニカのイントロ入りバージョンは本作のみにしか収録されていません。
すべてのベストアルバムに収録されているのは、イントロのないシングルバージョンの方です。
M2「メリーゴーランド」
作詞・作曲/甲本ヒロト・真島昌利
ヒロトとマーシーによる初の共作曲。
歌を作る時に、2人の唯一無二な個性と優れた感性を掛け合わせると、平常心が追いつけない異世界の音を聴かせてくれます。
それまでブルーハーツになかった音です。
異色に感じる耳触りの一方で、やっぱりブルーハーツだなと納得する説得力があります。
不快でない気怠さと、心地よい軽やかさ。
ほんの少しの重みのあるブルースっぽい感じでスタートして、2番で一気に突き抜けて軽快になるアレンジが印象的。
独特の輝きを放つ雰囲気が漂います。
イントロからマーシーの渋めのチョーキング炸裂が連発します。
ムダな勢いでない哀愁が手前に存在します。
少しだけかすれるような、しかし力強さのあるヒロトの歌が入ると、ロックの頑丈さが際立ちます。
アレンジやメロディとして所々に感じる哀愁みたいなものがじわ〜っと心に入ってくるのを実感します。
あまり感じたことがない異質な興味深さ。
急にリズムを解放する2番からのマーシーのカッティングギターは神がかっています。その心地良さはそこら辺のジャズやフュージョンを超えています。
ギターの音は歪ませすぎていないクリーントーンで、勢い任せのパンクとは一味違う魅力を感じます。
とてつもなく熱いのはサビです。
「回り続けよう」という歌詞をヒロトとマーシーの掛け合いで繰り返し歌います。
やっぱり強烈だし、インパクトが強い。
2人ともロックにバシッと合う歌声で、そこには理屈を超える感情だけがあります。
カッコ良すぎて鳥肌が立つかもしれません。
サビの直後に豪快なシャウトがあって、マーシーが長めのギターソロを思いっきり弾くと憂鬱な気持ちがパッと晴れます。
この歌が心の深い場所に問いかけてくる。
メリーゴーランドの一番前は誰なのか⁈
私には分かりません。明確な答えなんてない方が楽しいような気はします。
歌詞 : メロディもアレンジも歌詞も、タイトルから想像する遊園地感はないと感じました。
どうやらこの「メリーゴーランド」とは遊園地の歌ではなさそうです。
この曲の歌詞は短めですが、思考を混乱させるほどの心地よい深さがあると感じます。
ヒロト、マーシー2人の共作曲はレアです。
ブルーハーツではこの曲だけで、これ以降の共作曲というと、ザ・ハイロウズの1995年のシングル「胸がドキドキ/そばにいるから」の2曲です。
M3「電光石火」
作詞・作曲/甲本ヒロト
4thシングル「ラブレター」のカップリング曲。
ここからヒロト作の歌が3曲続きます。
反論さえないであろう名曲っぷりに気持ちがたかぶります。
パンクでシンプルなアレンジに覚えやすいメロディ。ブルーハーツにすごく似合います。
勇気づけられて明るい気分になれます。
凄まじき勢いでブッ飛ばす2分46秒の稲光。
ロックの光がキャッチーさ100%で一気に駆け抜ける。気を緩める暇はありません。
イントロなし。いきなり始まる豪快さ。
野太いヒロトの歌声はシンプルなパンクアレンジを、揺るぎなく独走的なロックの音にしてしまう煌びやかなエネルギー。
マーシーの個性的なギターの音と弾き方が際立ちます。パンクで大胆なのに、華麗で繊細です。荒々しい1stアルバムに比べるとかなりキレイな音に聴こえます。
高速なテンポに乗せてパンクの反骨精神をブッ放すマーシーの激情のギターソロあり。
感情的なチョーキングが炸裂してます。
河ちゃんのコーラスがいい雰囲気を醸し出しています。『TRAIN-TRAIN』を聴くと、それが河ちゃんのポジションとして確率されているのがよく分かりました。
ブイブイ疾走してくベースもたまらない。
梶くんに一番よく似合う高速の8ビート。へだることなく1曲を突っ走り抜く力強さに、生きてる人間の熱い体温を感じます。
途中の一節にだけ入る手拍子がロックの楽しさを最大限なものにしてます。
スピード感のあるパンクの音と、希望のみを感じるロックの歌詞に、日常の心の違和感が消滅してポジティブな気持ちに入れ替わる。
ひたすら明るい耳触り。耳が楽しい。
キラキラした聴き心地。心が前向きになる。
この歌には『TRAIN-TRAIN』というアルバムの3曲目にバッチリ合う疾走感が何より手前に存在してる。
超特急でフルパワーなパンクロック。
「電光石火」の歌詞には、ほとんどの人が忘れてしまっている当たり前のことに気付かされる言葉があります。
歌詞 : すごくヒロトの感性が表現された歌詞だなととても共感しました。
ヒロトにしか見えていなかったこと。
人生のかなり重要な事が歌われていると思います。誰にとっても『未来はまだ白紙』ってことです。むろん、未来なんて余裕で変わるし、どうせ成長できます。
よくヒロトがこういう嘘のない人間にしか出来ない真実の歌詞を書くのが、誰かの心に届くパワーになるんだと納得しました。
M4「ミサイル」
作詞・作曲/甲本ヒロト
タイトルから連想する勢いではなく、割と落ち着いたアレンジのラブソング。
アルバムの中では曲として印象に残りにくいかもしれませんが、ヒロトのロマンチックな歌詞が深いゆったりテンポです。
歌詞の「君」に恋していて、自分の中で存在が大きいという気持ちを感じます。
好きという気持ちが溢れ出しています。
初めて聴いた時は減衰した勢いに戸惑いましたが、歌詞を聴き込んでみるとこの歌の良さが突然現れました。
キラキラな恋心とヌクヌクな歌心あり。
ゆったりしたテンポにシンプルな演奏なので楽器の音が聴き取りやすいのが特徴です。
イントロなしの衝撃的な柔らかさ。
歌も演奏もムダに暴走していません。その分スーッと心へ優しく響きます。
夜空を描く柔らかなアコギと、そこに輝く星になる煌びやかなエレキ。夜の静けさに物語を作るベース。時間を真夜中へ導くドラム。
足りないものなんてない。
ロマンチックは溢れてます。夜の中を広々とした恋心が、ミサイルになって飛んでいく。
棘がない。攻撃性もない。
大好きな人を想う気持ちだけが爆発的にある。ブルーハーツって真っ直ぐさとか誠実さがなんかすげえ。
この歌は澄んでる。
マーシーがいつもより長めに聴かせてくれる緩やかなギターソロにはメロメロです。
歪ませていない清涼感のある音。聴くと夜空にキラキラ輝く星が見えてきます。
優しくて柔らかくてあたたかい気持ち。
それは何かと同じです。誰かに恋してる特別にロマンチックな気持ちそのまんま。たったひとつしかない気持ちの特別感には、似ているものの存在さえもありません。
なぜか最初は分からなかったですが、これはロマンチックな恋心を歌うラブソングです。
捉え方は人それぞれが正解ですが。
私にとっては遅れて好きになった歌でした。冴えたロマンチシズムと澄んだ真心が好きです。
歌詞 : 「夜の階段をのぼる」という表現がロマンチックすぎます。きっと歌の主人公は、そこら辺に落っこちてる愛ではない特別な“恋心”が深いのだと思いました。
恋心が全てのルールをちょっとだけ忘れるとか、なんだかとても共感しました。
この歌の空気がきれいに澄みきっているからです。
M5「僕の右手」
作詞・作曲/甲本ヒロト
シングルになった訳でもないのにすっかりブルーハーツの代表曲です。つまり名曲です。
くじけない心のエモーショナルソング。
ヒロトの友人のミュージシャンがこの曲のモデルになっているというのは有名な話です。
この歌のモデルになったのは、甲本の友人でハードコアパンクバンド「GHOUL」の「片手のパンクス」ことMASAMI(細谷雅巳、小学1年の頃、ダイナマイト遊びをして右手首から先を失い義手となった。89年にステージで倒れ、昏睡状態のまま92年9月に死去)といわれる。甲本は彼の追憶ライブに出演した際に、この曲を泣きながら歌っている。
分かりやすいメロディと、シンプルさ全開でブルーハーツに一番しっくり来るアレンジの感動的なパンクロック。
歌が心に入り込んだ瞬間に涙がこぼれるかもしれません。
それは激情したということです。
始まりのパートはヒロトの真心の歌と、マーシーの絶妙に優しく弾くエレキのみ。
その後は凄まじき勢いに乗った揉みくちゃ状態の高速パンクアレンジへ突入します。
キャッチーさがある。感情的なメロディがある。心に聴こえる言葉がある。
すげえエモい。感情を激しく揺さぶる。
鳴ってる音に感情移入して涙がこぼれそう。
ヒロトのボーカル、マーシーのギター、河ちゃんのベース、梶くんのドラム、全員の音から“歌心”が溢れてる。
名曲に必要なものが揃ってしまってる。
この歌は真っ直ぐすぎる。だから曲折せずにそのままの形でダイレクトに心へ響きます。
こぼれそうになった涙と、熱くなった自分の心を感じます。
聴きながら爆発しそうになってるのは、自分の根底にある“くじけない心”です。
ヒロトの力強い歌詞に励まされすぎる。
4番ではマーシーのアコギの美しいメロディが入って、それまでなんとか堪えていた涙が遂にこぼれ落ちます。
音が涙を含んでる。なんて繊細な音なんだ。
その音は、無意味な勢いだけで大雑把に触ると壊れてしまいそうです。
人間の感情に突き刺さる名曲。
誰かの心を大きく動かすパンクロック。
ラストにこれまた感情的なギターソロが、高速に激アツに高らかに鳴り響きます。
マーシーの音に今日を生きる勇気が出る。
歌詞 : ヒロトの歌詞はやっぱり心のある人間らしいし、真っ直ぐな言葉が心に刺さります。
「いまにも目から〜」の歌詞から入るマーシーのアコギのメロディが非常に繊細で、心にジーンと来ます。
いつも、泣けるパンクだと感じます。
M6「無言電話のブルース」
作詞・作曲/真島昌利
3rdシングル「TRAIN-TRAIN」のカップリング曲。
マーシーの実話が元になっているという歌。
無言電話に対する考察とクレーム。
迷惑行為に対する怒りの歌なのに、深い情緒があります。
私は最初は割と聴き流してしまいがちな歌でしたが、よく聴いてみるとマーシーの優れた詩人の感性が豪快に表現されていて、後からすごく好きになりました。
真夜中の苛立ちがリアルに響いてきます。
歌の一番手前にあるのはフラストレーションですが、なぜか感慨深いと感じるのがポイント。
マーシーの歌作りの上手さとか、リアリティに富んだ表現力がすこぶる繊細だからです。
イントロのドラムが深夜の高くはないテンションを表しています。
落ち着きの中に激しい苛立ちのあるミドルテンポ。この歌に一番合ってるテンポです。
ギターの音が絶妙な歪みで心地いいです。心の中の怒りが込められてる。
ベースの音は抑え気味のテンポの歌に本音を語らせる突進力。
ヒロトが感情のままに歌います。誰よりも歌に感情移入しながら歌うロックのボーカリスト。
怒りと同時にある切なさがグッと来ます。
突然の他人の身勝手な行為に自分のリズムを崩されたという、幸せとは反対の気持ち。
それが歌になってしまうほどの強烈な記憶。
ヒロトの豊かな歌心が、心の奥の部分まで細やかに表現し切っていると感じました。
歌に興味深いストーリーがある。
マーシーらしい独創的な音で録音されたギターソロもしっかりあります。
この曲のボーカルがヒロトの声からマーシーのギターに変わるスリリングな瞬間。
どちらかと言うと緩やかなテンポの歌だけど、マーシーのギターは相変わらずとがってる。深夜の憂鬱を歌っているようにも聴こえてくるし、それが反骨精神にも聴こえます。
この歌の根底には反逆的なものを感じる。
そこにブルーハーツの揺るぎない魅力を感じます。
曲のラストでは「はいー!もしもしー!」と強気で対応する、ヒロトの電話に出る時のセリフが入っているのが好印象です。
歌詞 : 言葉の使い方とか言い回しが、詩人だなと後になって気付きました。こういう後から気付く良さというのも貴重な体験です。
自分の人生の経験値が上がったということなのではないでしょうか。
この曲で言いたいのは、マーシーが歌詞でよく主張する「ほっといてくれ」ってことだと思いました。
M7「風船爆弾(バンバンバン)」
作詞/河口純之助・甲本ヒロト 作曲/河口純之助
初の河ちゃん作詞作曲の歌です。
河ちゃんは天才的なメロディメーカーだと私は思います。
覚えやすいメロディがかなり好きです。
「風船爆弾」には河ちゃんの歌声が大きく、しかも最大限で効果的にフィーチャーされていて素直に心を掴まれます。胸熱です。
明るい音の雰囲気に軽快なリズムとテンポで親しみやすいです。
弾けるアップテンポのロックンロール。
明るく弾けたイントロ。多めの風船がにぎやかな雰囲気で飛んでいる印象です。
ひたすらポジティブなアレンジのど真ん中でヒロトが歌い出したのは、河ちゃんが作ったものすごくキャッチーなメロディ。
ぶっちぎりなロックの疾走感と、華やかなポップスの親しみやすさを感じます。
抜群にキャッチーなこの曲に、自分のメロメロな気持ちを感じる人も多いと思います。
重さをまったく感じない音が好ましいです。
70’sパンクの分かりやすい音に似てます。それらは絶望的なネガティブを、絶対的なポジティブにひっくり返すキラキラな音が鳴っていた。
それと同じ揺るぎないパワーを感じます。
ブルーハーツのその音が、いつまでも誰かの心をいい方向へ動かし続ける。
ロックンロールの強引なほどのポジティブ加減に、心の不調がどんどん治療されていく。
私はもう落ち込んでいない。
心の中には沢山の希望の風船が飛んでる。
途中でリードボーカルがヒロトから河ちゃんへスムーズに交代します。一切違和感なし。
その瞬間に、ヒロトやマーシーとはまた違う声質の河ちゃんのボーカルにロックイズムを感じて、心の中の楽しい部分が弾けます。
河ちゃんボーカルパートでの、マーシーのリードギターも光りながら炸裂していてこの歌の盛り上げりポイント。
一度聴いただけで記憶に残るこの歌のインパクトは、間違いなしの名曲です。
元のタイトルは「恋は風船爆弾」だったらしいのですが、これは実は恋の歌ではなく戦争に関係しているのかもしれません。
とは言え、私はそういう視点でこの歌を聴くことはないです。
感じるのは暗さとは無縁の弾けた明るさ。
いつもポジティブの風船が飛ぶだけです。
歌詞 : 「涙の秒読み」という表現がインパクト絶大です。後にも先にもこの歌だけなんじゃないでしょうか。一発で記憶に残りました。
どういった意味なのかはわからないですが、確かに涙が溢れる前に秒読みを開始したらもっと悲しく切ないです。
ともかく、この歌詞からもネガティブな感情は一切感じません。
M8「ラブレター」
作詞・作曲/甲本ヒロト
ブルーハーツの4枚目のシングル。
ブルーハーツのラブソングといえば「ラブレター」を思い浮かべる人も多いのではないかと思います。
とは言え、これは「叶っていない恋」なので切ないです。
ラストでは恋の相手に対しての本当の気持ちが歌われているのが心にキュンと響きます。
パンクの荒々しい雰囲気ではありません。
ふわっと柔らかな聴き心地で、ヒロトの力んでいない歌い方も曲に馴染んでいて、新しい魅力を発見してしまいます。
音楽のジャンルなんか超越した歌心。
この曲でも河ちゃんのファルセットのコーラスが効果的に入っていて曲の雰囲気をより柔らかくしています。
ゆったりしたイントロに滑らかに響く澄んだ音色のギター。とてもほっこりする。
イントロのその音が今からヒロトに、照れ臭いほどの恋の気持ちを打ち明けさせようとしてる。
ギターのメロディに感じるわずかな切なさ。
「ラブレター」のマーシーのギターは細やかなので、恋する気持ちの切なさや嬉しさにピッタリです。
ヒロトが恋心を本音で歌い出します。
心への入り込み方が自然すぎる。スッと入ってきて心の中で、歌の柔らかな温度を実感させます。それはきっと人の優しい気持ちのあたたかさ。
柔らかくて優しくてあたたかくて嘘がない。
ダサくカッコつけていない。
真っ直ぐな愛おしさだけがある。
誰にでも向けられる愛とはまったく違う、絶対にひとつしか存在できない特別な恋心を感じます。
愛の歌の100倍の価値がある恋の歌。
繊細な歌だけど、その中にブルーハーツ独自のダイナミズムがしっかりあります。
そいつが唯一無二な魅力を放ってる。
ただ切ないだけではない、本物の恋心と嘘のない真心が力強いからです。
歌詞 : これは切ないです。今、結ばれないことを受け入れている強さも同時に感じます。
感情移入すると涙が流れそうです。
私は今ある心と心の繋がりを大事にしようと決心しました。
叶わぬ恋の相手に「あなたよ しあわせになれ」と願えるのは本音だし、真心のみで願っているところが、そこら辺で拾える愛ではない本物の恋心なのかもしれません。
M9「ながれもの」
作詞・作曲/甲本ヒロト
この歌が好きだという人が結構います。
完全にカントリーアレンジ。
私にとっては魅力的なヒーローの歌。
2分しかない短い曲なのであっという間に終わってしまいます。テンポも速いです。
砂埃の大地を一気に駆け抜ける。
その短い演奏時間の中ですごく大事なことを歌っているので、自然と歌詞に意識が向いていきます。
ベースの太い一音で疾走開始。
この歌は一瞬で走り去ってしまう凄まじい疾走感が特徴です。
高速テンポのイントロに際立つフィドル(バイオリン)の音が豪快なインパクト。
フィドルがこの歌の要にもなってます。
軽快なギターのリズムはいい音で録音されていて、体も心も軽くなって楽しい気分。
全速力で走るベースの明るい表情が、無意味な緊張感をほぐします。
軽やかに叩きまくってるドラムは、のんびり歩くよりスキップを誘っているよう。
自信に満ち溢れて高らかに歌うボーカルが、落ち込んでた私の背中に“元気”を貼った。
すべての音が小刻みに地球を揺らしてます。
次から次へと真心のみを歌う。一言一句に心が動くほど衝撃的な魅力がある。
メロディがひたすらにぎやかに響きます。
不思議だけど、1曲に何通りものメロディがあるように感じるのが、ブルーハーツの独特のエンターテイメント性です。
自分がこの歌に衝撃を覚えているのに気付いたのも割と後になってからでした。
何もかもが速いな。いかす。
歌詞 : すごくグッと来ます。
この歌詞を聴いた瞬間に自分の中で何か熱いものが込み上げている実感もあります。
よく聞くセリフなのかもしれないけど、ブルーハーツがやった場合はとてつもないリアリティを伴っているから刺さるのです。
無理に強く見せていない、キレイに飾ってもいない、ムダに気を使っていないそのまんまな感じに憧れました。
この歌の主人公はすごく好きになれるし、共感します。言い訳なんかはいらないというのは思いやりです。
私なら言い訳なしで必ず会いに行きます。
主人公の“ながれもの”は非常に魅力的な人間だと感じました。
M10「ブルースをけとばせ」
作詞・作曲/真島昌利
『TRAIN-TRAIN』のマーシーボーカル曲。
ここからラストまでマーシー作の歌が3曲続きます。
決して嘘で飾らない誠実さに心が動きます。
マーシーが歌詞にもよく使う言葉「ブルース」です。
この言葉を調べてみると“ブルース”には「憂鬱」という意味合いもあるようです。歌詞の「ブルース」という言葉を“憂鬱”と置き換えてみるとしっくり来ました。
華麗なピアノ入りの強情なロックンロール。
圧倒的なロックの頑固さと太々しさ。
曲げない、折れない、ひるまない。
自分の生き方と揺るぎない主張を、絶対的かつ爆発的なものにしてしまう、速すぎない絶妙なテンポ。
マーシーがド迫力にド派手に歌います。
つまらない人並みな思考に、激しい衝撃を与えるロックのボーカリスト。
大事なことを変えない自分らしさがある。
自分らしさに人生の勝ち組を感じる。
イントロはまず芯のあるギターのみで口火を切ります。
ギターはロックンロールでよく聴く感じのフレーズを、マーシーの感性で鳴らす激情スタイル。
すぐに続くのは鮮やかなピアノ。
直後に一気にバンド全体の音が入って、収拾がつかないほどの自分の興奮を実感します。
今、ロックンロールが鳴っている。
この歌の主たる雰囲気をとことん胸熱なものにしているのは、ゲストミュージシャンの演奏によるピアノです。古き良きロックンロールの音を聴いている感触があります。
キラキラしてる。熱を放ってる。
そこへヒロトのハーモニカが吹き荒れ、ロックンロールの煌びやかなエンターテイメント性を実現してます。
たかぶる自分、激しく強い感情は制御できない。
マーシーがしゃがれた声で歌い出したら、もう憂鬱なんてけとばされて二度と戻ってこない。なんてパワフルなんだ。シビレる。
心に響いているその声はロックンロールだ。
この歌の前で怖気付いてしまうダサい心はないです。そんなもん勇ましく奮い立つだけ。
狂熱のシャウトが炸裂した直後に、ギンギンバリバリのギターソロを勇ましい音で、けたたましい弾き方で、宇宙一激しい主張としてやってくれます。
ロックンロールは高純度で頑固だな。
今日のオレは負ける気がしない。何かを失うつもりもない。頑固で何が悪い。
本作のCDの音が小さいとは言え、鮮烈な音が録音されていて、そいつが世間一般のイメージの限界を突破する魅力で鳴っています。
ボリュームは上げておかないと後悔します。
度を超えたストロングな主張が駆け巡る。
ブルーハーツで知った言葉「ブルース」。
音楽のジャンルとしてのブルースも、憂鬱という意味でのブルースも、教えてくれたのはロックンロールでした。
ロックンロールは鳴り止まない。
歌詞 : 素晴らしく頑固な主張。
1988年当時の平均寿命は70年。
今は人生100年時代なんて言われています。平均寿命が何年だろうと人生には100%終わりが来る訳で、残りの時間は思っているより少ないのかもしれません。
だからこそやりたくねえ事やってる暇はねえってことです。
まさにこの歌の通りなので、他人の人生を生きてしまうのはやめて、自分で決めた運命を生きるべきだという哲学的な学びを得られました。
自分で決められないものはいりませんし、自分が納得していないものは全部ゴミです。
今現在のマーシーとヒロトを見ても、いつ見てもですが、やっぱり幸せそうなので歌詞で言っていることは正確だと確信しました。
M11「青空」
作詞・作曲/真島昌利
ブルーハーツの5枚目のシングル。
詩人『真島昌利』が猛烈です。
この歌はただ者ではない真っ直ぐなオーラを放っています。
私が「ザ・ブルーハーツ」を初めて認識した歌でした。小学6年生の時に友達に録音してもらったカセットテープで初めて聴いたこの歌が心に刺さりました。
あの時この歌が好きだと気付いていなかったら、今のような自分は存在していなかったんじゃないかとさえ思えます。
「青空」の誠実な歌詞と美しいメロディと感動的なアレンジに心を鷲掴みにされました。
人の心を動かす超名曲のバラード。
落ち着いたテンポのバラードですが、心が感じるものは高速テンポでノリノリな歌の熱さと変わらないし、胸に込み上げる熱いものはより激しいです。
目頭も熱くさせる真摯なアレンジ。
美しいエレキも入っていますが、アコースティック基調なアレンジに胸が熱くなって涙がこみ上げてくることもよくあります。
イントロの奥ゆかしいアコギが聴こえただけで心が歌の世界に入り込みます。
少しの切なさと細やかな感性が見えてくる。
歌い出したヒロトの、感情移入した歌心がはっきりと伝わってきます。この時点で、歌の誠実な世界の中で自分もセンチメンタルな気持ちになってる。
それを更なるものにする胸熱な演出。
2番からヒロトとマーシーのツインボーカルになる感情的な歌は、胸が破裂しそうな本物の切なさを含んでいます。
河ちゃんの感情的なコーラスまで入って、感情というものがいい意味で爆発します。
熱くなりすぎた感情は小さく発火してる。
ゆったりしたバラードに激情している実感。
エレキギターが奏でるソロはエモい。もちろん感情的という意味です。エモさと同時に存在する美しさ。ギターの歌心が自分の心に余裕で聴こえます。
なんなんだ⁈
「青空」がオレを惹きつけているものは?
この歌を作った時のマーシーと同じ感情を自分の中にも持ちたいと強く思いました。
歌詞全体が心に訴えてくる言葉のみなので、それまで感じたことのない何かが、私の心に違和感を与えました。
それはそれまで考えた事もない誠実さ。
真っ直ぐすぎて他の誰も歌わない人間の真実を、何も隠さず歌う際どさに涙がこぼれる。
普段は自分でも触れない心の奥にまでこの歌が響いたのは、かけがえのない誠実さと、他にない繊細さがあったからです。
マーシーの心の中の美しさに触れた。
目先の欲望にまみれた軽率さとは真逆の、人が持てる素晴らしい誠実さを知りました。
歌詞 : 初めて聴いた日から30年以上も経った今でも「誠実さのかけらもなく」という歌詞が胸に刺さったまんまです。
過ぎていった時間の中で、とても優しい顔をした誠実さのかけらもない人を見たような気がします。
この歌の言葉からポジティブなイメージと明るい希望を感じます。
青空を見たくなりました。
心にゆとりがなければ青空を見上げることもありません。
この歌を思い出した時に青空を見てみると、びっくりするほど青くて高くて広いです。
M12「お前を離さない」
作詞・作曲/真島昌利
ラストの曲はホーンセクションも入っている楽しげなアレンジのラブソングです。
弾ける若さの中にシビレる誠実さがある。
盛大にテンションの上がるアップテンポ。
その盛り上がりにたくさんの風船が飛んでいそうな煌びやかな雰囲気を感じます。
河ちゃんのメロディアスなベースのフレーズからトドメの一撃開始。
キャッチーなベースのメロディに気分が高揚します。ホーンにキーボードも入って豪快で華やかなイントロです。
すべてが明るい音。キラキラしてる。
ロックのエンターテイメント性がある。
ヒロトの太いボーカルが、はっきりとした口調で純度100%の恋心を歌い出した。
何かを伝えようとするヒロトの歌心が、私の心を大きく動かします。ブルーハーツのロックのパワーが、私の平常心を逸脱させる。
ものすごくテンションが上がる。
歌詞はマーシーらしく、クサいことを胸を張って言う美しさ。そこに魅力があります。
興味深いストーリー性があって、頭の中に恋の物語の映像が鮮明に再生されます。
ロックの音+ラブストーリーの映像。
とは言え、すべてを語る訳ではなくリスナーにとっての想像の余白が用意されています。だから答えは一つではないのがロックの歌詞の美しさ。
バンドが結末も正解も決めつけていません。
このアルバムを初めて聴いた時、爆発的に印象に残った絶好調なフレーズがあります。
“Oh! Baby give me one more kiss”
しゃがれた声でマーシーが歌います。
自分の体の外側にまで剥き出しになってテンションが上がる。心のど真ん中に鳴り響く。
この声はなんかすげえ気になるなと衝撃を受け、小学生だった私の心がとてつもなく惹かれました。
マーシーファンになった瞬間です。
何度も歌われるこのフレーズは歌詞カードには記載されていません。
この歌は、名曲ばかりの『TRAIN-TRAIN』の中でも度を超えてキラキラしてる。
キラッキラです。
歌詞 : この歌の世界観が前作である2ndアルバム『YOUNG AND PRETTY』に収録の「ロクデナシ」シリーズに登場したパンクスそのまんまじゃないかと感じました。
金はないけど強い恋心があります。
歌詞にはドラマとかでよく聞きそうなセリフが出てきますが、ブルーハーツがやると非常にハマっているしリアリティもあります。
誠実なフレーズになんだかすごくシビレる。
「お前を離さない」終了後、汽車の中で聴くラジオからの「TRAIN-TRAIN」が流れたら、アウトロにハーモニカのメロディが響き渡ります。
長編映画のエンドロールのよう。
しかし新しい人生のプロローグのよう。
アルバムに没入していた心には、その音が頼もしい汽笛に聴こえました。
汽車が今度は自分自身の栄光へ向かって走り出した音を聴いて、勇気と自信に満ちたところでアルバムはおしまいです。
多彩なアレンジにチャレンジしつつも、根底にあるパンクの反骨精神がぶっちぎりに突き出したブルーハーツの3枚目のアルバムでした。
1枚のアルバムのストーリー性も感じました。
最速の疾走感あり、とろける柔らかさありで自分の色んな感情まで楽しめました。
あと、音がすごく分かりやすかった。
このアルバムに収録されて、たくさんの人の心に刺さったであろう名曲「TRAIN-TRAIN」も「青空」もマーシー作ということで、やっぱり私はマーシーの感性に惹かれんるだなと今でも憧れのままの気持ちを実感しました。
ロックでありながら大雑把さをまったく感じない、極限の美しさと繊細さが際立つから好きなのです。
強引ではなく丁寧な感じ。
簡単に捨てられるものではなく宝物な感じ。
3rdアルバム『TRAIN-TRAIN』は私にとってはその先の「自分」を決定してしまうほどの影響力がありました。
かいつまんでこの曲をと聴くよりも、やっぱりアルバムとして全曲をブルーハーツが意図した曲順で再生する方が感動が大きいです。
『TRAIN-TRAIN』はスムーズです。
私はオリジナル盤のCDしか聴いたことがなく比較ができなくて申し訳ないですが、、、
現在では『TRAIN-TRAIN』のリマスター盤が発売されているので、音が小さい問題が改善されているかもしれません。
ありがとうございました。
また読んで頂けるとものすごく嬉しいです。