こんにちは。
『flip flop 2』は2003年リリースのザ・ハイロウズの企画アルバム第2弾です。
ハイロウズ後期、キーボードの白井さん在籍時までの5人編成の音源が楽しめます。
心の名盤 : 全曲レビューです。
このシリーズはオリジナルアルバム未収録曲を集めた企画盤です。
オリジナルアルバム未収録のシングル、シングルバージョン、カップリング曲、別ミックス、トリビュート盤への参加曲、シークレットトラックが網羅されています。
ハイロウズのオリジナルアルバム8枚をコンプしても聴けない割とレアな音源のみで構成されています。
最大の特徴 :
今からシングルを集めなくても後期のアルバム未収録曲が揃ってしまう“名企画盤”。
ハイロウズの親心。
THE HIGH-LOWS/flip flop 2(2003)
flip flop 2(フリップ・フロップ2)は2003年11月12日にリリースされた企画アルバム第2弾です。
その第1弾である『flip flop』は2000年12月6日に発表されたので、約3年後の続編になります。
本作は企画盤“第2弾”ということでハイロウズの後期にあたる音源の収録です。
アルバムだと5thアルバム『Relaxin’ WITH THE HIGH-LOWS』から7thアルバム『angel beatle』の時期までの音源が収録されています。
シングルでは14thシングル「青春」〜21stシングル「夏なんだな」までの期間(2000〜2003年)の音源です。
※ラストアルバム『Do‼︎The★MUSTANG』の曲及び、活動停止直前のシングルは収録されていません。
これからハイロウズを聴くという人には、どちらかというと前期の音源で構成された第1弾である『flip flop』の方がオススメです。
その理由は、本作の内容はオリジナルアルバムに収録された曲のミックス違いが大半で、シングルのカップリングでしか聴けなかった当時の新曲が第1弾に比べると少なく、個人的にはその部分の感動が低かったからです。
とはいえ、ギンギンのロックンロールから笑いが出ちゃうおふざけソングまで、ハイロウズの魅力に心を奪われる絶好調の内容なのは間違いありません。
別バージョンや別ミックスではなく完全に曲としてオリジナルアルバムでは聴けない曲は8曲です。
・いかすぜOK
・夏なんだな
・プール帰り
・ジェリーロール
・セクシーナンシーモーニングララバイ
・狼ウルフ
・オクラホマデスカ?
下3曲はシングルのシークレットトラックでおふざけソング。
本作を聴くとどうしても「これ、オリジナルアルバムに入ってる曲ばっかりじゃん」という感想はあると思います。
しかし、その感想のままでは終わりません。
ハイロウズファン、音楽好きの感性を刺激するポイントが特に“DISC-2”にあるので所有している意味は全開にあります。
『flip flop 2』収録曲
【DISC-1】
1. 魔羅 ’69
2. 不死身の花 69 mix
3. タンポポ hang on version
4. ユーのカー
5. 青春 lunch time version
6. 十四才 [SINGLE EDIT]
7. フルコート
8. よろこびの歌 [Nancy Mix]
9. 天国野郎ナンバーワン [Live Version]
10. いかすぜOK [Radio Edit]
11. いかすぜOK
12. 迷路 [Nancy Mix]
13. ルイジアンナ
【DISC-2】
1. Too Late To Die [Nancy Mix]
2. 曇天 [Nancy Mix]
3. 一人で大人 一人で子供 [Nancy Mix]
4. 俺たちに明日は無い [Nancy Mix]
5. ななの少し上に [RADIO EDIT/MONO MIX]
6. ecstasy [RADIO EDIT/MONO MIX]
7. 毛虫 [RADIO EDIT/MONO MIX]
8. マミー [RADIO EDIT/MONO MIX]
9. 映画 [RADIO EDIT/MONO MIX]
10. 夏なんだな
11. プール帰り
12. ジェリーロール
13. セクシーナンシーモーニングララバイ
14. 狼ウルフ
15. オクラホマデスカ?
全28曲128分。
超長編です。
集中して全曲を聴くにはちょっと、いや結構長いです。音楽を聴くにも体力が必要なので、私は1日にどちらか1枚を聴くという感じ。
歌詞カードには曲の制作にちなんだ解説と、当時の写真も掲載されています。
【DISC-2】は7thアルバム『angel beatle』の未発表盤という印象です。
素晴らしい企画!
特に [RADIO EDIT/MONO MIX] が収録された5曲は『angel beatle』のモノラル盤として聴けるのもいい感じです。
これまで聴き親しんだ『angel beatle』とは異なる曲順に、最新型の興奮をしました。
収録されたすべての別ミックスは、オリジナルバージョンとは音が随分と異なるので、聴き比べの楽しさまで提供されてます。
2003年の『flip flop 2』発売当時、CDとアナログレコード(限定生産)の2形態でリリースされました。
CDはデジパック仕様の2枚組。初回盤にはジャケットと同デザインの特製ステッカーが封入されていました。
アナログ盤はなんとレコード4枚組の重量級です。12インチ3枚+10インチ1枚という仕様で物体としての特別感ありまくりです。
シリーズ第1弾の『flip flop』のアナログ盤は3枚組(12インチ2枚+10インチ1枚)だったので、余裕で前作のボリュームを超えました。
手に持つと非常にズッシリとしてます。
限定生産だったレコードは2020年にリマスターも施されて再発売されました。
私は再発盤の方を持っていないので、リマスターの効果やオリジナル盤との音質の違いをお伝え出来ません。
記事中の写真はすべてオリジナル盤です。
歌詞カードに掲載されている写真には、キレイに5人揃ったものもありますが、実は白井さんは撮影時にスタジオにいなかった為、後日撮られたものを合成したという事が多かったそうです。
いつもそうだったみたいです。
誰にも縛ることは出来ません。
管理されてない、自由です。
さすが生々しいロックンロールのピアニスト。
『flip flop 2』は白井さん在籍時の芳醇な名演奏を、気が済むまで何回でも楽しめます。
DISC-1
シングルバージョン、カップリング曲、カバー曲で構成されたDISC-1です。
4曲入りの15thシングル「FLOWER」はとても好内容で、そのシングル盤のすべての曲が収録されています。
今から中古を探して「FLOWER」を買う必要がないのは利点です。
矢沢永吉のトリビュート・アルバム『JOY RIDE』へ参加した曲「ルイジアンナ」は、ハイロウズがやってハマらない訳がないという程の炸裂っぷり。
完全にハイロウズの歌になってる凄みあり。
この曲のためだけにトリビュート盤を買わなくていいのは、やっぱり利点です。
※曲の情報については、歌詞カードの解説を参照しています
M1「魔羅’69」
作詞・作曲/甲本ヒロト
2000年リリースの14thシングル「青春」のカップリング曲。
5thアルバム『Relaxin’ WITH THE HIGH-LOW』に「魔羅(シンボル)’77」というタイトルで、別のミックスが収録されています。
「魔羅’69」は5thアルバムのレコーディング、トラックダウンがすべて終了してから別ミックスとして作られました。
1曲目はゴリゴリした音が容赦なく突っ込んでくるファンク・ロックからのスタートです。
イントロが全然違います。
こちらはイントロの前の導入部が短い、というかほぼないです。
音の感触も全然違います。
アルバムバージョンはもっと明るくスッキリした音ですが、こちらはとにかくゴリゴリ感強めです。
よりファンキーな聴き心地。
ムシャクシャした時にはこっちのが合います。
そういうの全部ぶっ飛ばしてくれる頑固な音が出るので。
アルバムバージョンと違ってこちらは全体的に歪んだ感じのエフェクトがかかっているような音ですが、何故かそれが生々しい音だと感じます。
一言で表すと“強烈”です。
タイトルの魔羅とは男根のことなので、やっぱり1曲目から強烈です。
AメロとBメロは極端に短いメロディの繰り返しで、あまりキャッチーなメロディのない歌という印象。
とはいえ、1回しかやらないし、なかなかやらないサビは突き抜けてキャッチーだし、覚えやすいメロディです。
腕を振り上げて一緒に歌いたい感じ。
歌詞は深い意味とか考えたりしない方がいいかもしれない。
意味とかググってる場合でもないし、極まったファンキーっぷりに感化されて今日を強気で生きるべきです。
ファンキーなハイロウズ。
ハイロウズは何事も中途半端にやらない。
シングル「青春」のジャケットはマーシーのデザインで、ヒロトとスタッフがマーシーの指示により着色や貼り付けなどを手伝って制作されました。
鮮やかな黄色がすごくインパクトあります。
M2「不死身の花 69 mix」
作詞・作曲/甲本ヒロト
2000年リリースのハイロウズの15thシングル。
ここからの4曲は15thシングル「Flower」収録の全4曲を連続して聴ける、企画盤らしさ全開なポイントです。
「69 mix」とは、モノラルミックスです。
という訳で『Flower』のシングルはタイトル曲「不死身の花 69 mix」のみモノラル音源、他3曲がステレオ音源と、変則的なスタイルになってます。
アナログ盤も同様。
当たり前だけど、聴き比べると全然違います。
誰でも聴感で気付く音場の違い。
それからアルバムバージョンは整ったキラキラな音という印象。比べた場合に少しおとなしめにも感じます。
それに対し、シングルバージョンはスタジオで鳴っていたそのままの音に聴こえます。敢えて整えていないジャキジャキな音が前に出てきます。
もしこの「不死身の花 69 mix」が、5thアルバム『Relaxin’ WITH THE HIGH-LOWS』に入っていたら、ちょっと違和感があるかもしれない。
「69 mix」はシングルになった時に、世界によりインパクトを与える音です。
軽やかで、穏やかな雰囲気のロック。
アコギが映えるナチュラルアレンジ。
一瞬も滞らない川の流れを見ている時のようにサラサラした感触。
根底にはとてつもない力強さがあります。
こちらの「69 mix」になってその部分が69倍に増幅しました。
空想的でありながら、哲学的でもある歌詞は1回でその世界観が心に残ります。
全員を納得させる事は出来ないかもしれないけど、誰か一人に刺さる言葉が確実にこの歌にはあります。
Aメロは、所々がマーシーとのツインボーカルになっているのがグッと来るポイントです。
独創的なファルセットのコーラスも楽しげで、ハイロウズこだわりの一品といった感じ。
すこぶるハイセンス。
爽快なアップテンポで目の前のストレスを突き破ります。
とはいえ、ブンブン頭を振りまくるというより心の奥が共感しながら聴いている時の感じ。
ヒロトの冴えたハーモニカのメロディが心のわだかまりまで押し流す。
これで、新しい今日の心になったはず。
なんとこの「不死身の花」は当初、14thシングル「青春」のカップリング曲として発表する可能性があったということです。
M3「タンポポ hang on version」
作詞・作曲/真島昌利
名曲「タンポポ」のパンクバージョンと言えそうな、勢いのある胸熱なアレンジです。
激変したスタイルにはびっくりしました。
初めて聴いた時のその衝撃と興奮と感動が何回でも体験できます。
シングル「Flower」用のレコーディングセッション時の録音。
ツアー“リラクシン”のリハーサルセッションで登場したこのパンクバージョンはシングル「Flower」のリリースを待たずにライブで度々演奏されて好評を博したということです。
スローテンポのオリジナルバージョンより随分とテンポアップした激しいパンクアレンジ。
イントロはべっちゃんの唸りまくる強靭なベース。どんなに小さなスピーカーでも鮮烈に鳴る轟音。
フェードインのようなドラムを合図に歪んだギター、渋めのキーボードが入ります。
ヒロトとマーシーがロックイズム全開な態度でサビを歌い出す。ライブで盛り上がり必至のサビ始まり。
オリジナルでは繊細だった名曲「タンポポ 」が、急に図太く、色の濃い「タンポポ 」になったみたいな衝撃と破壊力だ。
キレのいいギターが爆音で炸裂しまくる。
ベースの音がいつもよりデカく聴こえる凄まじい存在感。
2番からのヒロトとマーシーのツインボーカルは胸が熱くなり、グッと来る名場面。
パンクバージョンとは、ハイロウズに一番似合うスタイルだと感じます。
Bメロで入るマーシーのチョーキングのフレーズが冴えまくりです。
新しくギターソロまで入ってるじゃん!
この歌は、マイナー調のメロディが心に突き刺さってくる衝動的な感じ。
このバージョンはライブで破壊力が10倍になる感情的な音。
聴き終わると心の中で何かが変わった手応えまであります。私の心は大きく動いた。
早い話が、“激情”してます。
それを感じない人には、残念ながらハイロウズの強烈なロックンロールは向きません。
「タンポポ hang on version」 は、PVも制作されました。
リリースとは逆の順番で先に「タンポポ hang on version」を聴いてからオリジナルバージョンを聴いた場合は、何をどう感じるのかは私は知りません。
M4「ユーのカー」
作詞・作曲/甲本ヒロト
15thシングル「Flower」の中で唯一の完全な新曲でした。
5thアルバム『Relaxin’ WITH THE HIGH-LOWS』に「ミーのカー」という曲が収録されています。そのアンサーソングとも言うべきタイトルですが、歌の内容にはそれほど関連性はありません。
「ミーのカー」はギンギンバリバリなレースが開催されたけど、「ユーのカー」は速くはない自分のペースでどこまでも行こうとしてます。
アコギが心地よい柔らかな曲調。
アレンジには優しく風が吹いているし、歌は心にそっと触れてくる真心がありしみじみともしています。
日本人に馴染みやすいメロディが最高で個人的にはかなりの名曲です。
心軽やかなミディアムテンポ。
ほっこりしたくなった時によく聴きます。
イントロの滑らかなエレキはクリーントーンで、正直者の音が出ます。
少し遠くから聴こえてきたような控えめに吹くハーモニカも入ってイントロだけで随分と心が和みました。
この歌、絶対に嘘つかないと悟る。
ヒロトが歌い出すと、空想的な歌詞、意味のよくわからない歌詞がユニークな物語を聴かせてくれます。
Bメロからマーシーのボーカルも入って感情が理屈を突破する。
ここは2人とも“ワレメ ワレメ”とか何のことかわからない歌詞を力強く歌うからインパクトがあります。
サビの滞らずサラサラ流れるメロディと、その音が心の引っ掛かりを取っ払った。
ネガティブな気持ちのままセーブしちゃいけないってハイロウズに言われた気がする。
間奏には哀愁の漂うヒロトのセリフ入り。
そのセリフに共感しつつ、どこまでも行こうと決心してしまう。
ヒロトの表現はすごく感情的。
この歌、強引にではなく、しなやかに心の中の悪玉菌を丁寧に流し去ってくれた。
あったかくて、やさしくて、意味がわからなくてすごく印象に残る歌だなぁ。
歌詞 : ヒロトの独特な感性が豊かに表現された音楽の歌詞だと感じます。どの言葉も素直に受け入れて聴けるのが見事です。
韻の踏み方が個性的で、なんか言葉が高音質だなと感じます。とても印象的。
歌詞に記載はありませんが“手に入れて”という言葉の後に「ハリケンハニー」とハッキリと歌っています。
きっと意味なんてないとヒロト本人は言うと思います。
それがカッコいいから楽しいからやってるだけというロックのリアリティを感じます。
「ハリケンハニー」って何だよ?とか考え始めると急につまらなくなるのでやめましょう。
シングル「Flower」のジャケットはヒロトのイラストです。
自然な水彩画に癒されます。
M5「青春 lunch time version」
作詞・作曲/真島昌利
屈指の名曲がサブタイトル通り昼休みに合うアレンジに見事に生まれ変わっています。
ゆったりテンポのアコースティック調で和みます。オリジナルとは極性のスローテンポ。
ランチが食べやすい、ゆっくり食べれる。
オリジナルは恋の名場面である3番で特にドキドキしたけど、こっちは2人で仲良くランチを食べているような雰囲気にほっこりした。
とにかく、ガラッと変わったアレンジです。
なお、私は朝起きてから夜寝るまでずっと昼休みだと思っていますから、このバージョンのほのぼのした雰囲気は最高です。
7分を超える長編で、長く癒してくれます。
ランチタイムの始まりを告げるハーモニカのメロディが流れてくるイントロ。
今から1秒たりとも仕事してる場合ではないし、勉強してる場合でもない。休むべき。
食べて寝るのがいい感じ。緊張感なんか投げ捨てて遊んでてもいいかもしれない。
ヒロトが歌い出すと、まさかのスローテンポにちょっと衝撃。ここまでテンポを変えるとこんな風になるんだ。
メロディまで別の歌みたいに聴こえる。
聴きながら穏やかに緩やかに流れる時間。
昼休みは1時間かもしれないけど、5時間分ぐらいの心の休息が与えられます。
エレクトリックな音は入ってません。
頑張る必要なんてないんだよ。
無意味な抑揚は排除した坦々とした調子が私には好ましく、最大の特徴です。
大らかだけど、とても繊細な感じ。
「lunch time version」には、思わず心のすべてを奪われる仕掛けが用意されていました。
間奏ではアコギの音で聞いたことのあるメロディが演奏されています。
至上の癒されポイント。
心の込もったマーシーの名演奏。
子供の頃によく耳にしたような、なんて曲だったかな?誰もが知ってるこのメロディ。気になって調べまくったらやっと分かりました。
【ドヴォルザーク《ユーモレスク》変ト長調 Op101 第7番】
急に昼寝したくなるので注意が必要ですね。
この間奏のみ後日録音されたということです。
この「青春 lunch time version」を聴きながら、怒りをパワーに変えてしまえるような穏やかでない人はいません。
一瞬の例外もなく、すべての瞬間が穏やかだ。
のんびり休みたい時によく合います。
休憩は絶対に必要だとハイロウズが言ってる。
M6「十四才[SINGLE EDIT]」
作詞・作曲/甲本ヒロト
2001年リリースのハイロウズの16thシングル。
こちらはラストがフェイドアウトのシングルバージョンです。
フェイドアウトしちゃうのに、アルバムバージョンの「もう一つのラスト」よりも後味がスッキリする印象があります。
個人的にはハイロウズの中で一番心に刺さった名曲。
凄まじいリアリティを実感するロック。
ヒロトの語り口調のボーカルなんか本物のリアリティがそこに存在していて、とてつもないインパクトがあります。
胸が熱くなって急にグッと来る歌。
心の名曲になったのは、実は後からでした。勢いだけでブッ飛ばすアレンジではないし、意外にも常に流れるようなメロディを歌う曲でもなかったので初めはピンと来なかった。
しかし強烈なインパクトは必ず残ります。
それが聴くほどに、なんかこの歌は胸が熱くなってきてるなと気付きました。
リアルよりリアリティとは、ロックがやってる理由なんてなくカッコいいと感じるあの感情になった時に目の前にあるもののことだとハッキリしました。
ハイロウズはそのリアリティをよくやります。
ステージ上でヒロトが踊る訳の分からないダンスとか、マーシーがギターを弾いて振り上げたその腕とか、心を奪われた理由を明確に説明できないカッコ良さ。
“ジョナサン”の行動にも興味が湧きます。
歌詞にも出てくる『かもめのジョナサン』を読んでみたら、歌から感じた事と同じ“胸が熱くなるストーリー”が書いてありました。
「十四才」に感じるのは、、、
お金を稼ぐとか生きるための手段ではなく、楽しいからやるんだというリアリティ。
一音目はキーンと冴えた音のエレキ一発。
私にはその一音に壮大なドラマまであります。
すかさずリズムっぽいフレーズを弾く澄んだ音色のエレキが入って、柔らかくヒロトがかもめのジョナサンへ向けて思いを歌い出す。
1番を歌い切った次の瞬間に、ジャカジャーン!とロックの光をブッ放つエレキが炸裂。
マーシーの振り上げた腕のリアリティには、突然の涙が出た。
そこからのヒロトのボーカルスタイルには心を鷲掴みにされます。嘘がない、熱く伝わるリアリティがある。
一番最初のロックンロールの衝撃がある。
ギターソロの音は鮮烈で、美しいメロディを感情的に弾くマーシーが見えました。
終盤の歌詞に登場したヒロトの“レコードプレーヤー”は、私が持ってる物とまったく同じ存在感を放ってた。
だから意図的にレコードをかけなくても、しょっちゅう心のレコードプレーヤーが「十四才」を選曲して爆音で鳴らしてます。
ハイロウズ、2001年最新型の胸熱スタイル。
迫力を伴うリアリティの音が出る。
誰にこの歌の軸を折り曲げられるんだという程にパワフルです。
絶対に折れない軸の音も同時に出てる。
M7「フルコート」
作詞・作曲/甲本ヒロト
「十四才」と両A面の16thシングル。
シングルに収録されたこのバージョンは南石聡巳氏による国内ミックスバージョンということです。
アルバム収録バージョンと比べてアレンジが変わっている訳ではないので、一聴して大きな違いは感じません。なんとなく音の雰囲気が違うという感じ。
聴き比べると違いがはっきりします。
シングル収録バージョンの方が音が力強く鮮明です。パワフルに応援してほしい時はシングルがいいです。アルバムはもう少し繊細でキラキラした音の印象。
負けたくない時の応援ソング。
グイッと背中を押すアップテンポ。
タイトルはバスケットのディフェンスの事だけど、ひるまず攻めるロックアレンジ。
ヒロトと大勢のチアガールがキビキビとした振り付けを踊りながら、頼もしい応援をしてくれる試合中のベストチョイスロック。
イントロにあるのは鉄壁のディフェンスを感じるパワー系の揺るぎない音。
うしろは任せた。
歪んだギターがゴリゴリしてる、負けはナシのロックの耳触り。
2番からは澄んだエレキも入って煌びやかな聴き心地。初めから弾け飛んでるキーボードも音場をコートいっぱいに広げ続けます。
ヒロトの真っ直ぐな歌声には、遂に勝機が訪れます。
奇跡なんかじゃない、待ってたんじゃダメなんだと歌う本当の名場面を体験中。
神に懇願する事なく、自分の力で攻めれば攻めるほど勝利に近づいていく無敵の感覚。
ハイロウズのロックに自信を与えられる事ってよくあります。
私は小柄で細身なんだけど、大きくて強い相手にも負けるとは限らない。ハイロウズが強靭なロックでそうだと断言してるし。
聴けば、チャンピオンだって目指せます。
ギターソロの華麗なメロディや鋭い音は、円陣を組んで気合いを入れて戦うそれぞれの選手たちの意気込みが溢れてる。
非常にドラマチックな間奏です。
「フルコート」を聴きながら誰もがさっきよりちょっと強くなる。絶対なる。勝てる。
ディフェンスは最強のハイロウズがやってくれるんだから、これ以上に心強い事はない。
私は前に出る事だけやればいい。
シングルのミックスは一つずつの音が前に出てきて主張してる。
M8「よろこびの歌[Nancy Mix]」
作詞・作曲/真島昌利
2001年リリースの17thシングル「ニューヨーク」のカップリング曲。
シングルのタイトル曲「ニューヨーク」はアルバムと同じバージョンですが「よろこびの歌」は前の曲「フルコート」と同じ南石氏による国内ミックスです。
スタジオで鳴った“素の音”という印象。
このシングル以降、南石氏によるバージョンは[Nancy Mix]という表記が採用されることになりました。
聴き比べが100倍楽しくなるミックスです。
この後も頻繁に登場して、オリジナルバージョンとは違った「より素に近い」と感じるそのまんまなロックの音を楽しませてくれます。
真夜中にうろつく時のテーマソング。
軽快な曲調に乗っかってよろこびがダダ漏れしちゃってるのが伝わってきます。
散歩している時のマーシーを近くで感じているような気分。
最大の特徴は、自我のある歌ってことです。
歩く時にピッタリ合うふわふわとしたテンポ。人間が心地よいと感じる絶妙なテンポ。
さっきまでの重い足取りは軽くなります。
演奏にもヒロトの歌にも妙な力は入っていません。
ストレスを癒す心軽やかな歌のメロディ。
鳴っている音はすべて「よろこび」に結びつくような軽快な音色。
そんな浮遊感のあるアレンジの中に一際バシッと存在してるのが、楽しく生きる上で最も重要な「自我」です。
サビでは“あふれ出る”という歌詞のヒロトの歌のアクセントが、その言葉に100倍のインパクトを爆誕させています。
「あふれ出る」ってこういう事だ。
こんなにあふれ出てる歌は聴いた事がない。
間奏と終盤で聴けるマーシーの滑らかなギターのメロディには、他人を介入させない絶対的で健やかな気持ちが全部揃ってます。
人と比べる相対的な思考に疲れた時の秘薬。
アウトロの白井さんのキーボードのメロディは、遂に自分だけの世界に入った安らぎの音が出ます。
聴くほどに、絶対的な自分でいられる。
[Nancy Mix]は、ハイロウズの音が極端に近いから尚更です。
M9「天国野郎ナンバーワン[Live Version]」
作詞・作曲/真島昌利
17thシングル「ニューヨーク」のカップリング曲。
前の曲でふわふわした直後は高速でギンギンのライブバージョンが炸裂します。
2001年8月18日北海道・石狩湾新港で行われた「RISING SUN FESTIVAL 2001 in EZO」に出演した時の録音です。
お笑いタレントの「間寛平」に提供した曲のセルフカバー。
こちらはライブバージョンですが、スタジオ録音のオリジナルは6thアルバム『HOTEL TIKI-POTO』に収録されています。
寛平さんバージョンは一部歌詞が異なっていますが、ハイロウズバージョンの歌詞がオリジナルのものです。
いきなりライブが始まったせっかちな感じ。
あれこれ考える前に一歩前に踏み出したようなスリリングさがたまらない。
度を超えて熱狂的な音が出ます。
ビシッとしたマーシーのギターなんか、特に激しくて実在感のある音で鳴ってます。
オリジナルバージョンとの決定的な違い : 新しくオーディエンスの凄まじき熱狂が加わったアップテンポで最強です。
トチ狂ったスピード感。
ドーピングなんざ足元にも及ばないどうかしちゃってるエネルギー。
人間にこんなにパワフルな音が出せるのか⁉︎
この瞬間は聴覚を過剰に刺激するほどの爆音で鳴っていた事が伝わってきます。
音量の問題じゃなくて、ロックのエネルギー。
何⁉︎ 天国になんか行きたくない理由が「つまらなそうだから」だって⁈
ロックンロールは正直者だぜ。
それにロックンロールは過激だぜ。
いつもライブの最後の歌まで体力の減少をまったく感じさせないヒロトのパワーも、五感で聴き取れます。
迫力がある!
ハイロウズもオーディエンスも、そこにいた全員が「天国野郎ナンバーワン」に熱狂した瞬間が録音されてる。
悩みなんて思い出してる暇がない程の迫力がある!
部屋でもロックンロールのライブの醍醐味を楽しんでしまえるド迫力。
最高じゃんか。
ライブバージョンあと20曲ぐらい聴かせてくれよ。
M10「いかすぜOK[Radio Edit]」
作詞・作曲/真島昌利
未発表バージョン。
当時「アクエリアスCMソング」でよくテレビから流れていました。CMとは別テイク。
こちらの[Radio Edit]はシングルに収録されたものではなく、後半のDUBパートがカットされてラジオ・オン・エア用として配布されたものです。
単にDUBパートがカットされただけなのでオリジナルと同テイク。
結論としては断然こちらのが“正常”です。
「いかすぜOK」が潔く4分45秒で聴けるのは嬉しい。オリジナルバージョンは驚異の11分26秒です。
正常なこのバージョンの収録にはすごく感激しました。オリジナルバージョンは戸惑う程に長くて、後半のDUBパートは当時なんかよくわからなかったから(笑)
一つハッキリと断言したいのは、名曲です。
暑い時にこそ飲みたくなる“アクエリアス”のCMソングにも抜擢された、マーシーが大好きな「夏」の歌。
テンポは遅くはなく速すぎず、アレンジは緩すぎずパンクすぎず、超絶妙 : いかすぜOKな曲です。
イントロが始まった途端に飛び出す明るい音には爽快感あり。
いい具合に歪んだギター。ブリッジミュートしたジャキジャキ音がいかしてます。
爽やかなアコギも豪快に聴こえるOKな感じ。
誰もが感じるキリッとしてるいい音です。
暑い夏に冷たい飲み物を喉から体の中に流し込む快感と同じ幸福感のあるロック。
すべてが充実してるいい感じ。
特にマーシーのギターですが、一音ずつがほとばしって心を直撃する瞬発力全開なアレンジです。
間奏は歌と同じメロディを丁寧に弾くキーボードソロ。
伸びやか音ではなく、キレのいい感触。一つずつの音に長い物語があります。ちょっとアコギの音のニュアンスにも似てる。
元気一杯なのがヒロトのボーカル。
歌い終わった後にアクエリアスをガブ飲みしたに違いない。
キラキラした夏アレンジを決定的なものにする健やかな歌心。
この歌、夏に突撃しているロックンロールだ。
ハイロウズに似合いすぎてる。
彼らのみなぎるパワーがそのまま音楽になったと感じました。
いかすぜOK!
人間はいつか必ず死ぬという事さえも忘れてしまう生命力が噴出してる。
歌詞 : 今を楽しむウルトラパワーが集約されてて、同じパワーが自分にも備わる夏の歌詞。
ドラマチックな世界観で興味津々です。
音と同時に生命力全開な映像が浮かんでくるストーリー性。
唯一無二なマーシーの美しい表現は胸にヒビが入るし、いつまでも同じ強さで光る特別なインパクトを残します。
ロマンチックな言葉たちにうっとり。
心に沁みる言葉があり、哲学とパンクのリアリティが入り混じってるマーシーらしさを感じます。
それにしても一瞬で覚えられるインパクトのあるタイトルで、最大限にいかしてるし、最大級のOKが出ています。
暑いだけの夏を楽しい夏にひっくり返す、今この瞬間が弾けててロックに合う歌詞です。
[Radio Edit]は、最後の“汗びっしょり”という歌詞を歌いません。
M11「いかすぜOK」
作詞・作曲/真島昌利
2002年リリースのハイロウズの18thシングル。
オリジナルアルバム未収録シングル。
同じ曲が続くの若干キツいかもしれない。
こちらはなんか“異常”です。歌本編より長いアウトロ(いわゆるDUB)があって余裕の11分超えです。
初めて聴いた時の正直な感想としては、この長いDUBパートがいかしているのか、OKなのか私には分かりませんでした。
DUBパートではずっと「汗びっしょり」と歌ってます。
勘違いしてはいけないのは、あくまで[Radio Edit]の方ではなく、こちらがオリジナルバージョンだということ。
本編の後、急にレゲエが始まります。
ロックの後にレゲエまで楽しめる仕掛け。聴くと、なんだか汗びっしょりになってくる。
2002年の発売当時はよく分からなかったDUBパートだけど、それから20年以上が経った今はなんだかしっくり来ました。
5月の暑い日にイヤホンで「いかすぜOK 」を聴きながら歩いていたら、この暑苦しいレゲエが心地よく感じました。
なんかすげえカッコいいぞ⁉︎
暑い日のこういうシチュエーションにこそ合うのか、自分の趣味とかが変化したのか?どっちでもいいけど。
つんざくようなギターの音や太く唸るベースの音が、逸れかけた意識に引っ掛かりを与えてくるから思わず聴き入ってしまいました。
もちろん汗びっしょりです。
随分と時間がかかったけど、
なんだ、これいかすしOKだったのかという体験をしました。
本作には収録されていませんがシングルCD「いかすぜOK」には3曲目に[カラオケ]が入っています。この[カラオケ]も後半のDUBパートがカットされた4分42秒のものです。
シングル「いかすぜOK」のアナログ盤は発売されていません。
M12「迷路[Nancy Mix]」
作詞・作曲/甲本ヒロト
18thシングル「いかすぜOK」のカップリング曲。
オリジナルバージョンと、ものすごくは違わないです。アルバムに収録されたものはもう少し清涼感のあるサラッとした音。
そちらに比べ[Nancy Mix]は低音、特にベースが強調された太い音という印象。
曲のアレンジは素晴らしく軽快です。
聴くと悩み飽きるほどのヘヴィーな気持ちをひっくり返します。
足取りまでテンポ良くなる心軽やかソング。
心地よいテンポに、ヒロトの親近感のあるボーカルがほっこりする歌。
近寄りがたいロックスターというより身近な存在を感じさせる歌い方がみんなの心に触ってきます。
べっちゃんの冴えるベースは、子供の頃にファミコンのBGMで聴いたようなフレーズがとても楽しい。
迷路を攻略していく歌詞との相乗効果でコントローラーを持っているような気分。
バッキングは鋭く歪んだエレキと軽やかで爽快感のあるアコギ。[Nancy Mix]の方がギターの音も聴き取りやすい感じがします。
超重要な白井さんのキーボードが、曲の軽やかな雰囲気を決定しています。
思わず元気になってしまいそうな明るい音の楽しいフレーズが次から次へと飛び出してくる。
おーちゃんのドラムは力強く歩く時のリズムでもあり、絶対に前を塞いでしまわない軽やかさにも聴こえます。
これこそ大好きなハイロウズのドラムの音。
これまで自分が歩いてきたあとを、曲がりくねった“迷路”だと歌う歌詞には、揺るぎない自己肯定感が溢れています。
この歌には、
ほっこりさせるロックの魔法がかかってる。
「迷路」を聴いてもまったく軽やかな気持ちになれないという人は、多分かなり心が疲れているので休んでください。
なんかちょっとでもポジティブになるのが正しい反応だと思います。
自分の道を作る時のベストソング。
[Nancy Mix]がまとめて聴けるのは本作の特徴です。じっくりオリジナルバージョンと聴き比べてみると違いに気付いて楽しいです。
M13「ルイジアンナ」
作詞/大倉洋一 作曲/矢沢永吉
2001年リリースの矢沢永吉トリビュートアルバム『JOYRIDE 矢沢永吉スーパーカバー・トラックス』に収録のカバー曲。
DISC-1のラストは急にキャロルのカバー曲が入ってるのでハッとします。
ハイロウズのブッ飛んだ勢いでブイブイ言わせてる感じが絶好調で、カバー曲の違和感がまったくありません。
めちゃくちゃ似合うし完全にハイロウズロックになってます。
なんかすげえ速い。
だからルイジアンナに憧れてる気持ちがとんでもなく感情的。
名曲なので聴いた事がある人は多いはずです。
ギターの音が二つしかない超短いイントロ。ほとんどイントロなし。
鋭すぎて出てくる音が歪んじゃってます。
キンキンなその音だけで自分の感覚のすべてが惹き込まれるのがハイロウズの凄み。
始まって一瞬で感じるのは、とにかくすげえ速い。とことん速い。速すぎる。
ロックのリアリティを痛感する凄まじい速さの「ルイジアンナ」です。
こいつら絶対ヤバい。
これ、煽り運転じゃんか。
それに激しすぎるし、熱すぎる。前を塞ぐ邪魔者なんか薙ぎ倒していくパワーもある。
唯一無二の過激な「ルイジアンナ」だ。
これ、なんかやってるだろ⁈とか思ってしまうしまう程の狂熱が瞬間を支配してる。
どんだけ熱狂的にトリビュートしてるんだ!
疾走感のみなぎる圧倒的なパワー系。
聴いた事のある名曲の歌詞やメロディが、最新型の激情アレンジで太々しく大変身した。
この太々しさをやり遂げたのはハイロウズが初めてです。
ロックのカッコいい厚かましさまである。
トリビュートソングであらわになったハイロウズの底力とロックスピリッツ。
なんて事してくれたんだ⁉︎
ついうっかり元気が出てしまったじゃんか。
遂に感情が理屈なんかを突破してしまったじゃないか。
やってくれたぜ!ハイロウズ。
余談 : ハイロウズの楽曲だけが目的だった場合は、トリビュート盤をわざわざ3000円出して買わなくていいというケチな本音を満たしてくれるハイロウズの親心に感謝です。
だってさ、トリビュート盤て自分の感性に刺さらず楽しくないカバー曲もたくさん入ってるんだよ。すぐ聴かなくなっちゃうんだよ。
DISC-2
こちらのDISC-2は7thアルバム『angel beatle』からの歌が9曲収録と、曲タイトルを見た時点ではあんまりワクワク感がないというのが本音でした。
実際に聴いてみると『angel beatle』に収録のオリジナルバージョンとは結構音が違います。聴こえ方がオリジナルとは違うので、これは新しく楽しめるポイントです。
“MONO MIX”というバージョン名が付けられたモノラル音源が5曲収録されています。
M1〜M9が『angel beatle』収録曲の別バージョンのため、もう一枚の『angel beatle』を聴いているような特別な感覚になります。
未発表にしていた『angel beatle -別ミックス盤-』みたいな感じです。
オリジナル盤を聴いた後にこちらを聴くと、曲順の違いや聴こえ方の違いにすこぶる楽しくなってきます。
後半にはオリジナルアルバム未収録シングル「夏なんだな」の全曲に、3枚のシングルCDに収録されたシークレットトラックのおふざけソングまで網羅したDISC-2です。
記事はまだまだ長く続きますが、必ず楽しんで頂けますので是非読んでください。
よろしくお願いします。
M1「Too Late To Die[Nancy Mix]」
作詞・作曲/甲本ヒロト
2002年リリースのハイロウズの19thシングル。
ここから南石氏によるミックスを連続して楽しめます。
[Nancy Mix]はオリジナルミックスと比べると音が整いすぎていない印象を受けます。
オリジナルより生音に近いのが特徴です。
DISC-2の1曲目は本家『angel beatle』と同じ「Too Late To Die」からのスタート。
もう一枚の『angel beatle』演奏開始。
これはオリジナルとの違いがはっきりしてます。再生した途端に聴こえ方の違いが誰でも分かります。音にハイロウズの実在感あり。
装飾していない素の感じ。
ミックスが異なると音の雰囲気がこんなに変わるんだなという感想になりました。それが整いすぎていない生音っぽさの要因です。
死ぬには遅すぎるから、とことん自分を生きるためのロックアレンジ。
生きるには丁度よく、潔いアップテンポ。
これは死ぬことより生きること。
演奏が進むにつれてハイロウズの録音スタジオに一緒にいると錯覚するような音が出る。
イントロから疾走感のあるロックに惹き込まれます。
降りるはずの駅さえもすっ飛ばして、今この瞬間を楽しむハイロウズの生き様が聴こえる。
ヒロトのボーカルの力強さに、いつもハイロウズに求めてる特別なエネルギーはこれだと感激です。
凝ったコーラスも強い生命力を放ってる。
比喩的で一切の直接的な表現をしない歌詞。想像の余白があって、何通りもの解釈がありそうです。
ロックのすべてを語らない美しさ。
これこそ音楽の歌詞だと感じました。
“泣きのギター”という言葉が合いそうなギターソロの音は、誰かの心に響くマーシーの名演奏。短い間奏だけどインパクトは絶大。
思わず立ち向かいたくなった心がきっとある。
全員で「Too Late To Die」と歌うラストは、前にしか進まないロックのエネルギーがそこら中に充満してる。
聴けば、楽しむ以外ないだろと確信できます。
落ち込んでしまうより自分を励ますこと。この歌を聴いた今日はそんなことが出来そうな頼もしい気分。
ハイロウズは死ぬことなんて決して歌わない。
M2「曇天[Nancy Mix]」
作詞・作曲/真島昌利
19thシングル「Too Late To Die」カップリング曲。
「曇天」はもっと全然違います。
『angel beatle』に収録されたオリジナルは曲自体が猛烈にバリバリと歪んじゃっていますが、こちらはクリアーで素の音です。
とはいえ、曲自体は荒々しく雰囲気としての歪みは感じます。
一部マーシーのコーラスの聴こえ方が全然違います。右側の位置で歌っているマーシーの声が耳元で強調されていて感激します。
左チャンネルのドラムとかギンギンな音です。
という訳で、これはギンギンバリバリのロックンロール。
「激」という字が似合います。
一音目から頑固な音のイントロ。
この音には理屈なんか通用しないと一瞬で悟ります。またハイロウズが過激なことやりそうだ。いや、既にとっくに始まってる。
目の前の空間を歪ませるアップテンポ。
過激に歪みすぎて、絶対に曲げたり折ったりできない頑固な軸になっちゃってる。
絶妙にヘヴィー、バリッとしたロック。
「それ」とか「あれ」とか、名称を一切使わない歌詞の頑固オヤジっぷりもなんだか過激だ。
感情的なメロディにシュールな歌詞が見事にハマってるから、一回で記憶に残ります。
ただのイメージだけど、初期衝動が今この瞬間に蘇った時の音がします。
そこら辺にはないもの。激情の音。
音にパワーがみなぎっているのを目の当たりにする特別な体験。
間奏のギターソロ直前でけたたましく響くマーシーのシャウトには鳥肌が立つ人続出です。
どうかしてるテンションでチョーキングしまくりのマーシーの狂気のソロが聴けます。
鋭すぎるし尖りすぎなこの音は反則級だ。
もうトリップ寸前なのは自分で分かってる。
ヤバすぎる間奏のラストには、もう一回マーシーの激しいシャウトがキマって、私の心はあっちの世界へ飛んでった。
トドメを刺された。こんなのありか!!
またロックに殺られた。
この歌、早い話が「激しい」。
普段は人に見せないようにしてる心のガードなんか、あっさりと突き破られる。
2回目からはこの激しさを聴くには、ある程度の覚悟が必要かもしれない。
何もかもが信じられないくらいに尖っているのを知っているから。
3回目で普通の世界には戻って来れなくなる。
「Too Late To Die」の後の「曇天」にびっくりしました。これは当時シングルで聴いていたはずの曲順なんですけど、シングルってアルバムがリリースされた後はほとんど聴かなくなってしまうから忘れてしまっている。
なんだろ、たまにはシングルも聴こう。わずらわしくA面とB面がある7インチのレコードの方を再生したくなりました。
そういう意味でもこの企画盤は重宝します。
M3「一人で大人 一人で子供[Nancy Mix]」
作詞・作曲/真島昌利
2002年リリースのハイロウズの20thシングル。
こちらの[Nancy Mix]の方がオリジナルバージョンよりも、現実的な音に聴こえます。
音の一つ一つがクッキリしている印象です。そのためかシングルとして発表するにはこちらのが好ましく感じます。
歌詞で伝えたい事をはっきりと主張している名曲。
必ず誰かのうんざりした気持ちに光を照らす真摯なロック。
今この瞬間を生きるためのミドルテンポ。
ライブではマーシーが腕をぶん回してギターを弾くほどの非常にドラマチックなアレンジ。
やりすぎていない哲学的な歌詞。
多くの美しい表現が際立っていて今日を生きることへの好影響あり。
真摯な態度で挑むハイロウズが聴けます。
速くはないテンポでグダグダにならず、キレ味のいいヒロトのボーカルが心を直撃します。
マーシーの歌詞には、心が救われるほどのとてつもない説得力がある。
昨日に戻ろうとする人も、まだ来ていない明日をいきなり生きようとするもいません。
今この瞬間に全振りする人は沢山います。
ブリッジミュートを最大限に活かしたギターアレンジが、ゆっくり徐々に気持ちを上昇させます。
ちょっとずつ、でも確実に来てる感じにたまらなくグッと来る。
サビは音が一気に突き抜けて目の前がキラキラします。
鍵のかかった心のドアの施錠が外れました。
間奏では、みんなに置いてきぼりにされないようにって頑張りすぎてる心へ、フルートが緩やかなメロディを奏でて安らぎを与えてくれます。
続く白井さんのキーボードの音には、天から自分に向けて放たれた特別な光を感じます。
その光に照らされたまま3番へ。
ハイロウズが汚れた世界を洗い流してく光をロックというスタイルで放っています。
2フレーズ目へ突入する直前に入るべっちゃんの力強いベース。自分の中から強く生きるためのパワーが静かに湧いてくる。
その2フレーズ目を歌い切った瞬間には、更に心を奪っていく非常にドラマチックな展開が待っています。
この人たちにしか実現できないタイミングで入る抑制の効いたドラム、ブリッジミュートを効かせたジャキジャキのギター。
カッコ良すぎて涙が流れることはあります。
その後は全員の心を開かせてしまうような煌びやかな音でラストまで突進していく。
音が光る奇跡を感じられます。
この歌には、「誠実」や「ひたむき」という言葉がしっくり来る。
とうとう心のドアが開いた。すげえ明るい。
ジャケットのデザインはマーシーによるもので、渡英する当日に成田空港で制作されたということです。
M4「俺たちに明日は無い[Nancy Mix]」
作詞・作曲/甲本ヒロト
「一人で大人 一人で子供」と両A面の20thシングル。
このシングルのマスタリングはビートルズで有名なアビーロードスタジオで行われました。「一人で大人 一人で子供」のPVにその様子が収録されています。
この曲もやっぱりオリジナルバージョンよりも生に近い実在感のある音です。
ハイロウズが至近距離、身近な音。
イントロの鐘の音も銃声も音が大きい。小さい銃と大きい銃ぐらい違います。
一つ一つの音の輪郭の聴き取りやすさはアルバムミックスに軍配が上がります。
テイクやアレンジは何も変わらないですが、オリジナルバージョンと[Nancy Mix]の聴き比べは楽しいと気付いた別ミックス。
映画の世界に没入するロック。
躍動感のあるゴージャスなアレンジ。
感動の波紋が聴こえる丁度いいアップテンポ。
なんなら吹き替え版の映画を観てる時の気分そのもの。
言葉の内容というよりも、メロディや音からイメージした世界観が強い歌。
イントロのゴリゴリしたベースは名フレーズです。
べっちゃんのベースのゴリゴリ感がより太くエネルギーに満ちた音で聴けます。
歌詞の一文字ずつをキレ良くビシッと歌うヒロトのボーカル。
聴き取りにくい音など一つもない高級なオーディオで吹き替え版を観てる感じ。
元気に弾けるキーボードが音場を広げます。
マーシーのギターはどちらかというと控えめで、バッキングに徹してる。
印象的なギターソロはあります。
間奏ではあまり聴き馴染みのない音、古き良き映画のシーンで流れそうなセピア色の音で、流暢なメロディを奏でて心をときめかせてくれます。
曲の終盤では、映画への没入感を倍増させるホーンが効果的すぎるハイセンス。
映画のクライマックス、興奮が最高潮に達する名場面の音が出る。
この歌はすごく豪華な音楽を聴いている唯一無二の感覚です。
はつらつとした煌びやかな音の連続。
明日は無くても今はあると確信し、だんだん楽しくなってくる人がたくさんいそう。
ハイロウズの音楽はよく音と同時に映画まで見せてくる。
シングルの中ジャケットのイラストはヒロトによるもので、渡英前日に自宅にて制作されたということです。
M5「ななの少し上に[RADIO EDIT/MONO MIX]」
作詞・作曲/甲本ヒロト
ここから「DISC-2」が本気出します。
お待ちかねのモノミックスが5曲連続で炸裂する。エンジニアは[Nancy Mix]の南石さん。
もちろん期待など遥かに超える別世界。
これらの音源はラジオ・オン・エア用プロモーション・サンプラーとして2003年4月末に配布されたものです。
モノラル音源というのは凄まじい迫力があって、音が魂の塊になって突っ込んでくるので思った以上に興奮します。
ボリュームを上げたスピーカーから出てくるガッツのある音には平常心がビビりました。
メロディックで軽快な「ななの少し上に」が、迫力満点で突っ込んでくるモノラルサウンドに大変身。
歌とアコギのみで始まって、バンドサウンドが後から入る胸熱アレンジ。
いつもよりちょっと上が見えてくるアップテンポ。
人の心を動かす馴染みやすいメロディ。
イントロなし。歌とアコギで演奏開始。
ステレオミックスでも音の広がりはそんなに感じなかったこの部分から、いきなり音の感触が全然違う。
ヒロトの声が近い。ほとんど耳元です。
サビから入ってくるエレキの音はもっと近い。ハイロウズと私の間にはなんの障害物もなく耳の奥へ直撃します。
モノラルってなんだかぶっちぎりだ!
歌とギターのみの1番を歌い切ると、ホーン入りのバンドサウンドがガツンとした演奏でブチかます。
チームが一丸となった時のパワフルな音が突っ込んできます。
親しみやすさ抜群のキャッチーなメロディに聴き惚れて、とてつもなくポジティブな気分。
大抵の場合は、はっきりとした意味は掴みにくい空想的な歌詞。
そこがいい。歌詞とかメロディって別々なことじゃなくて音楽に心を奪われてる感覚。
それは、意味は分からなくても音のイメージから「生きてやるぜ」と不思議なエネルギーが溢れてくるここにしかない特別な感覚です。
ギターソロのドラマチックで美しいメロディにはグッと来ます。
しかもスピーカーの前に出てきた音。
思わずこのメロディを弾いてみたくなったギタリストが何人もいそうだ。そのくらい人の心へダイレクトに響く。
これは目に見えてる体の表面じゃなくて、心の内側へ熱く響くロック。
モノラルは音が真ん中だけにあるから、あっちへこっちへと意識がフラフラせず、ロックへの没入感が圧倒的です。
ど真ん中のロックが体験できます。
M6「ecstasy[RADIO EDIT/MONO MIX]」
作詞・作曲/甲本ヒロト
心酔する感動的なこの歌を、オリジナルとは別世界のモノラルで聴けるのが嬉しい。
期待以上にすごい迫力。
人によっては、あまりのエクスタシーにトリップする可能性もあるので注意が必要です。
あっち側の世界を感じる神秘的なロックアレンジ。
ほとんど快楽のミディアムテンポ。
日本人の心に馴染むグッと来るメロディ。
魅惑的な美しさで表現された官能の歌詞は、この世のすべてのエクスタシーの元型です。
[MONO MIX]、鳴った瞬間から音がキンキンになってるし、前に突進してきて強烈だ。
近すぎるし、音圧も圧倒的。
これ、絶対ヤラレるとイントロで悟った。
そのイントロで「キュイーーン!!」とブッ飛んでいくマーシーのピックスクラッチのジェット音なんか如実だ。
恍惚のサビ始まりで早速エクスタシーが耳から全身全霊へ広がっていきます。
歌は天からの声のようなコーラス入り。
この世界のものではない快楽の光を伴っています。もしかしたら官能の神様が歌っているのかもしれない。
ヒロトが歌い出したAメロはマイナー調の麗しいメロディで、心の奥まですっぽりと入ってきます。
心のガードは効きません。
昨日までの心の痛みを癒す艶やかな光を放っているのはキーボード。
普段の心の不快さが、快感に覆ります。
2番からはアコギとエレキのハーモニーが魅力的すぎる。
バッキングのマーシーのアコギの音がまた強烈な音になってて耳と心に直撃します。
この曲はギターで攻めたアレンジだったのかと、オリジナルを聴いた時とは違った感想を持ちました。
遂に最高潮の快感に達する瞬間が訪れます。
サビへ突入すると音が突き抜けてエクスタシーしか感じられなくなる。誰もが今自分はあっちの世界に入ったんだと錯覚するはずです。
ロックの光がつまらない世界のすべてを照らしてる。
ギターソロの音もオリジナルとモノミックスでは音の突き刺さり方がまったく違う。
ギターアンプ交換した?とか思ってしまう程のド迫力!!! ちょっとびっくりしたよ。
この歌こそがタイトルの「ecstasy」そのまんまなもの。
音楽というスタイルでは、ハイロウズにしか表現し切れなかった本物の「ecstasy」です。
このエクスタシーを実感してしまったら、もういつもの世界には戻って来れそうもない。
そういう気分になりたい時のベストロック。
M7「毛虫[RADIO EDIT/MONO MIX]」
作詞・作曲/甲本ヒロト
オリジナルバージョンはフワッとした印象でしたが、[MONO MIX]はバシッとした曲になっているように感じます。
とはいえ、可愛らしい和みソングであることは間違いありません。
タイトルには強烈なインパクトがあって一回で覚えました。
メロディや歌詞、これは一体どんな歌なのかは聴くまで想像できませんでした。
季節をこえるほっこりアレンジ。
毛虫が決して生き急がないゆったりテンポ。
虫好きのヒロトならではの毛虫視点の歌詞が、自分の未来まで楽しくする物語。
聴き終えた時に心に残るのは、希望です。
モノはやっぱり始まった途端にガツンとした音だと感じる。イントロのアコギの音が随分と前に出てきているように聴こえます。
オリジナルミックスでは毛虫はのんびり前進していたけど、[MONO MIX]になったらこっちに突進してきた。
ヒロトの歌もオリジナルより立派な毛虫になったみたいに聴こえる。
毛虫、前よりちょっと成長してる。
演奏中ずっと後ろで鳴ってるギコギコは、ピックを弦に擦り付ける音で、かなり印象的。
なんだかすごく毛虫っぽい。
楽しく弾むフレーズを奏でているのは白井さんのキーボード。
この音が入っていないと毛虫の日常っぽくなりません。毛虫の物語の伴奏にもなってる。
間奏はちょっと長めのギターソロあり。
マーシーが歌と同じメロディを感情を込めて弾く演奏は最高です。抜群の癒し効果もあり。
この歌は終始“和やか”な雰囲気。
これを聴きながらストレスを増大させられる人はいません。必ず癒されます。
今日のストレスを緩和するための苦くはない良薬になりうる。
特徴的な終盤では毛虫が楽しそうに笑い始めるから、私も自分のネガティブなんか笑い飛ばしてしまえました。
それにしてもこいつ、ずっと笑ってやがる。
この毛虫、すげえ楽しそうだ。
オレだって未来も生きていたいと思った。
M8「マミー[RADIO EDIT/MONO MIX]」
作詞・作曲/真島昌利
繊細で感動的なバラードが“熱い音”に生まれ変わっています。
明らかに芯の強い音になりました。
イントロのピアノの低音とか、2番から入るべっちゃんのベースの太さとか、自分の感情に戸惑ってしまうほど涙腺を刺激する。
[MONO MIX]の凄まじき影響力。
ちょっとヤバい。
散歩しながら涙が溢れて止まらなくなりそうだ。すれ違った人に心配されてしまうかも。
奥に潜んでいた“情”が込み上げるバラード。
衝撃的 : マーシーの世界の見え方に心が震える美しい歌。
誠実な態度が人の心を動かすメロディ。
魅力的な比喩表現で綴られた歌詞には命の重みを感じます。
名バラードが始まったなと実感するピアノのイントロ。信じられない美しさ。
歌と真摯に向き合いたくなる。
混じり気のない純度100%の感情で歌うヒロト。早速、グイッと歌の中に惹き込まれる。
うかつに聴き流せないバラード「マミー」特有の性質を歌で表現し切れるのは、この人しかいません。
キレイなバラードの中に際立つ歪んだエレキ。
節度なく主張したりはしないけど、鋭く印象的な音で空間に響きます。
替えのきかない真摯なアレンジ。
ゆったりしたテンポで歌うメロディには心の奥の方が静かに熱く反応してるし、生命にちなんだ神秘的な歌詞が記憶に張り付いていく。
[MONO MIX]では、より一層ひとつずつの音に生命力がみなぎっています。音が強い。
間奏では堪え切れなくなった自分の涙を実感する人が続出しそうです。
心の込もったギターソロ。
「真正直」という言葉が合う澄んだメロディ。
いつか必ず終わりの来る命の儚さまで感じる。
どんだけ感情が表に出ちゃってるんだよ。鳴ってる一音ずつに魂を感じちゃう。
それまでなんとか堪えていた涙がとうとう溢れ出してしまうじゃんか。
この世に一人しかいない感情モロ出し直送型のロックのギタリスト。
曲のラストには間奏よりも長く感動的なギターのメロディが鳴り響きます。自分の道を生きてく時の狂熱を携えた力強いメロディ。
時間をかけてゆっくりと、気付いたら激しい力が湧いている歌だ。
命の重みを感じつつも、衝撃的に繊細です。
美しきマーシーの独特な世界観にグッと来る、ハイロウズの名バラード。
M9「映画[RADIO EDIT/MONO MIX]」
作詞・作曲/甲本ヒロト
7thアルバム『angel beatle』からの曲はこれでラストですが、オリジナルアルバムとは異なる曲順にもワクワクします。
視聴回数は圧倒的に本家『angel beatle』の方が多いです。こちらは本家ほど聴き慣れていません。
だから次はどの歌が来るんだとドキドキしながら聴けます。魅惑のトキメキポイント。
もう1枚の特別な『angel beatle』を締めるのは、ほっこりするしジーンとくるこの名曲。
ホーンセクションが大活躍するアゲアゲすぎない賑やかなアレンジ。
感情豊かなミドルテンポ。
映画にちなんだ歌にベストマッチした伴奏。
今から観に行く映画に大きくときめいてるヒロトの歌心。
感化されて、私まで映画館に行きたくなる強い魅力を放ちます。
ヒロトが観に行くのは楽しみにしていた好きな映画。
その映画の主人公への強い憧れが恋心とまったく同じ気持ちで歌われるほっこりソング。
イントロから入るホーンがいい具合に、映画を観に行く時のいつもより軽い足取りを演出します。
賑やかで軽快なイントロは楽しみにしていた映画のオープニングでもある。上映開始です。
そんでまた[MONO MIX]がガツンとした音を出してます。こういうの聴きたかった。期待を余裕で超えてるし、心が激しく動いた。
オリジナルミックスはもっとキラキラと煌びやかな音です。こちらは装飾していない素の音が聴けます。
より大きいスクリーンで、より鮮明な良画質で、とことん迫力の音の映画が観れそうだ。楽しみ!
ヒロトが真心で歌う歌詞の内容には、映画を観に行く時のワクワク感が燦然と輝いているし、可愛らしくも誠実な恋心まで大きな存在感を放っています。
無意味な“愛”じゃない本物の“恋心”と完全に一致する奇跡。
どの瞬間も柔らかく伸びやかなボーカルスタイルにキュンとします。
マーシーのクリーンなエレキの音が実在感抜群で、生音だと感じられます。
ジャカジャカとコードを掻き鳴らさない細やかなギタープレイ。
恋心で弾いてるのが分かります。
オリジナルミックスの時よりギターアンプのツマミをひと目盛りくらい上げてる感じ、またはアンプをちょっと前に持ってきた感じ。
とにかく、いい音が鳴ってる。
この歌、そこら辺のラブソング以上に、ときめいた恋心が爆発しちゃってる。
とっても優しい気持ちになった。
恋って、ドキドキする歌を唄いますね。
ホーンありきのこのアレンジこそ「映画」の歌との相性が抜群だった。
ハイロウズの真心にジーンと来て、いつまでも心の中心に残る名曲。
M10「夏なんだな」
作詞・作曲/真島昌利
2003年リリースのハイロウズの21stシングル。
オリジナルアルバム未収録シングル。
「いかすぜOK」に続き“アクエリアス”CMソングに起用されました。
「夏なんだな」は3曲入りのシングルで、すべての曲がマーシー作です。
同時発売されたアナログ盤は12インチの“45回転”で最高の音が鳴ります。
キーボードの白井さん在籍中の最後の新曲。
イントロはすごくキレイなアコギの音から演奏開始です。直後にはエレキのブリッジミュートが炸裂するパンクモードに突入します。
アップテンポのパンクアレンジ。
パンクな耳触りの真ん中には、白井さんの美しいキーボードが映える爽快さあり。
タイトル通り“夏の名曲”です。
ジメジメ感はない、カラッとした夏のロック。
夏の暑さと同時に心地よい涼しさも感じます。
最大の特徴は、イライラする夏の暑さを余裕で突破する激アツっぷりが聴けるってこと。
情緒あふれるアコギによる序章。
柔らかさのある緩やかな歌なのかと思いきや、実は全然そうではなかった。
その直後にいきなり図太いロックへ激変するスリリングさがたまらない。
パワフルなヒロトのボーカル。あまりのエネルギーに汗をかいてきた。
この曲、ギターがなんかすげえ爆裂してる。
マーシーのギターがいつもよりデカい音で鳴ってて、すぐにテンションが最高潮にまで達してしまう。
暑い夏に突撃するべっちゃんのベースなんか、追い打ちに更なる追い打ちを重ねるほどにブリブリしてる。
一撃ずつに凄まじい破壊力を持ったおーちゃんのドラムが、夏の不快な暑さをどんどん撃破していく。
夏がなんか異常に暑くなった気がする。
いや、それでは間違ってる。
間違いないのは、胸が熱くなった。
凶暴なパンクの爆音に絡んでいくのは、細やかな音色で音場を広げる白井さんのキーボード。心安らぐ避暑地のような役目もあるかもしれない。
かなりの親しみやすさがあって、すぐに覚えて一緒に歌えるメロディ。
特に短いサビは突出したキャッチーさ。
大勢の人がハイロウズと一緒に歌えば、夏の暑さを“宇宙一の熱さ”にひっくり返せる。
暑い夏にぐったりしたくない時のベストチョイス。
歌詞 : 繊細さが際立つ夏の風物詩。特別な夏。夏にしか起きない事てんこ盛りで楽しめます。
風鈴にちなんだ3番の歌詞がものすごく腑に落ちました。繊細な感性の人にしか表現し切れない芸術性。
子供の頃に同じ経験をしているので100%で共感します。
鳴らない風鈴に扇風機を向けると「面倒くさそうに鳴るから」という言い回しには爆発的に感激しました。これが聴きたかったんだというほどのマーシー節が炸裂してる。
全体的に、好奇心で成り立っている歌詞だと感じました。
人間としての笑顔が聴こえてきます。
Bメロの歌詞では、カブトムシに“様”を付けている様子に心がガッツリ動きます。マーシーにとっての夏の特別感が爆発してる。
大人になっても一番前にある子供心が全開だ。
マーシーといえばやっぱり、夏なんだな。
M11「プール帰り」
作詞・作曲/真島昌利
シングル「夏なんだな」のカップリング曲。
ゆったりめのアコギが印象的です。
タイトルからしてそうなんですが、夏の歌が続きます。
「夏なんだな」は当初1曲入りのシングルの予定もあったということですが、マーシーの意向でカップリング曲を入れることになり、ツアーのあい間にレコーディングされました。
告白します。実は私は事もあろうに、本作で聴き直すまで全然記憶になかった歌です。というか聞いても「こんな曲あったっけ?」となってびっくりしました。
なんて事だ、なんて、、、
中盤から入ってくる三線(さんしん)の音も「夏なんだな」同様に、思いっきり日本の夏を感じます。
三線の音は特に沖縄をイメージさせます。
情緒あるこの三線はマーシーによる演奏です。
今日は無意味に頑張らなくていいと悟れるスローテンポ。
100%くつろげる柔らかなメロディ。
エレクトリックがジャカジャカしていない癒しのアコースティックアレンジ。
早速、心がゆったりし始める緩やかなアコギのイントロ。
自然な響きが心地いいです。
ヒロトが独特で絶妙な力加減で歌い始める。
すぐにこれは日本の夏の響き方だと感じます。
1番を歌い終えたところで静かにあくまでもさりげなくベースが入って、私の心の入り口のドアをそっと開けました。
その後に続くキーボード、ドラム、三線、それぞれの楽器の入り方が感動的。
心に響くアレンジです。
ゆったりした間奏でヒロトが吹くハーモニカは夏の少し涼しくなった時間帯を感じさせます。日本の夏、フローリングより畳が合うかもしれない。
この歌を聴いている間だけは時間がのんびり進みます。
忙しない日常に癒し効果を発揮します。
特に、空間に広がる“響き”が癒し効果抜群。
なぜ「プール帰り」が自分の記憶に残っていなかったのか意味がわからない。
本格的に癒されるので聴いてください。
1日を25時間くらいにしたい時にこそ、ひそやかにオススメです。
歌詞 : 所々に映画のワンシーンの映像が挟み込まれたような回帰的な表現が魅力です。
忘れてしまいがちな小さな夏の思い出がまるで映画のシーンのような歌詞になって、ゆったりとしたメロディに乗っかって、音楽になっているので心に沁みます。
2番の歌詞では「おととい買ったレコード」を聴いてます。ダラダラしながらです。
気張らずに楽しむという意味で「プール帰り」を聴いている時の感じに合います。
そんな2番のサビでは、人間は自由でいいんだと再確認させてくれた上に“どうにでもなるよ”と最大の希望まで与えてくれる歌詞にポジティブな気持ちへ変身できました。
こんなにいい歌入ってたのか。これからは聴きます(笑)
M12「ジェリーロール」
作詞・作曲/真島昌利
「夏なんだな」のカップリング曲。
キターーー‼︎ マーシーボーカル。
それもギンギンバリバリのロックンロール。
痛烈です。
当時、4年ぶりのマーシーボーカル曲で、大ファンの私は歓喜しました。
それでなのか、この歌はバッチリすぎるほど強烈に覚えていました。前の曲「プール帰り」はインパクトに欠けていたのかな⁈
そうではない、「ジェリーロール」がインパクトありすぎなんだ。
意味の分からないカタカナのロックンロール。
激震が走るアップテンポ。
つまらない世界を切り裂く鋭いアレンジ。
自分とは何なのかの意味不明な主張が、激しく突進していく衝撃。
今から何が始まるんだ⁈と、わずかな緊張感のあるシンバルとベースの怪音でロックンロールスタート。
絶妙に歪んだロックのエレキが入る。誰が聴いてロックンロール以外の事は感じない。
一気にアップテンポに突き抜けて、切れ味のいいハーモニカも加わった。
しゃがれた声でマーシーが歌い出した。
おお!ロックンロールだ!
これぞ、ロックのギタリストでボーカリスト。
なんだかよく分からない歌詞は、一つずつの言葉のインパクトが強すぎる。
ああ!ロックってそういうことだ!
インジケーターが常にフルテンを指してるほど声を張った歌。ロック以外の何者でもない。
私にも謎のパワーがみなぎってくる。
一文字ずつすべてをシャウトしてるくらいの凄まじい勢いがマーシーにある。
こちらの事情などお構いなしで突進してくる。
ロックイズム全開なカタカナたちが、私の心のど真ん中に太文字で張り付いていく。
それを剥がすのは難儀なほどに印象的。
ヒロトの吹き荒れるハーモニカもぶっちぎりの存在感。
この歌はタイトだ。
全部の瞬間が引き締まってるし、鋭い音がギュッと凝縮されてる。
切れ味の鋭いロックだ。
テキトーに大雑把に触ると多分すげえ深く手の平が切れる。
つまらない世界が、素晴らしく馬鹿げた世界に覆る痛烈な音が出る。
宇宙一、鋭く尖ってもいる。
録音がいいのか、シャープな生音が聴けます。
歌詞 : 意味のない言葉たちに心を鷲掴みにされます。ロックでカタカナで意味なんてない。その魅力に強く惹かれます。
“エコロジーベイビー”とか“オーガニックエンジェル”とか“ベジタリアンハニー”とか、何のことか分からないけどロックであることは分かる。
最後の歌詞は“ツルツルのネジ”という言葉ですが、やはり何のことだか分からないのにこの歌にバシッとハマってて、訳の分からないハイテンションな興奮をしました。
全体的にロックイズム全開です。
意味なんか考えずに聴けてなんかよく分からないけど、ロックンロールの太々しさとリアリティを感じる。
ところでカミカゼフラッシュってなんだ⁉︎
そんなもの、、、
感じろ!!!
M13「セクシーナンシーモーニングララバイ」
作詞・作曲/ザ・ハイロウズ
ここから3曲はシングルのシークレットトラックであったおふざけソングが続き、クスッと笑えるポイントになってます。
どれも驚異的に傑作です。
16thシングル「十四才/フルコート」のシークレットトラック。
昔の歌謡ロック調。
むろん、タイトルからして意味はわからないんだけど、、、
これ大好きです。おふざけソングだけど、どこか芸術を感じてしまう。
いわゆる歌謡曲のいいとこ取りをしちゃってて印象深い曲。バリバリの歌謡曲調のアイディア最高です。
キャンディーズの「ハートのエースが出てこない」ですね。
決して“普通”を求めてはいけません。
言葉が繋がっていなくて日本語がおかしいのがウケます。口ギターとかも入ってるし(笑)
ボーカルは[Nancy Mix]の南石さんに嫌がるのを無理矢理やらせたということです。
何⁉︎この親近感の湧く歌。
謎の魅力がありまくる。
オレの中では当時、大流行した。今聴いてもやっぱりいい。また新しくハマるくらい。
他のスタッフの方にもセクシーボイス、口ギターソロ、台詞を無理矢理やらせたみたいです。
まったく、、、完成度高すぎ。
前代未聞のあからさまに力の抜けた口ギターソロ。その独特の感性には私の心の中学2年生が大喜び。
口ギターは、マーシーのバッキングのエレキより3歩は前に出てます。
後半では負けてしまいそうな今日の心を、思いやりのある台詞で不本意にも応援してもらえちゃいます。
何度聴いてもセリフっぽいのがたまらない。
どうかしちゃってるすべてが揃った、ハイセンスなアレンジが一番の聴きどころ。
スタッフの方々は嫌がっていたみたいだけど、こんなに楽しい曲にしてくれたことに感謝します。
もっとやってください。
すべてが絶妙すぎて、奇しくも感動した。
どんだけおもしろいのよ。
M14「狼ウルフ」
作詞・作曲/ザ・ハイロウズ
19thシングル「Too Late To Die」のシークレットトラック。
渋めのブルース。
おふざけソングの中でも特に意味の分からないやつ。
マーシーのギター、ヒロトのハープ、スタジオに居合わせた狼ウルフのボーカルでセッションが始まり、誰も止める者がおらず長いテイクになったものが、そのままシークレットトラックとして収録されました。
ブルースの気怠さ、切なさ、ちょっぴりの怖さなんかが感じられます。
ボーカルはやっぱりふざけていますね。
「あんたどこ住んでんの?」とか「俺はなあ狼なんだぜ」とか言ってます。ボーカルと言っても歌ではないですが。これは語りです。
多分ふざけてるけど、イントロが始まった瞬間に古き良き本物のブルースの音が出てビクッとします。
なぜか演奏はガチです。
上手すぎる。魂のブルースが炸裂してる。
昔の海外のブルースのリアリティを感じるのと同時に、日本人に染み付いた“ブルース= 関西”というイメージをそのまんま具現化したような印象もあります。
なんか知らないけど、緊迫したブルースを聴いている時と同じ鳥肌が立った。
でもやっぱり笑っちゃうのが「狼ウルフ」。
よく考えるとタイトルもなんかとんでもなくおかしい。
これは悔しくも感動した。
「狼ウルフ」が遂にブルースにハマるきっかけになりう、、、やっぱりそれは他のものにした方がいいかもしれない。
ヒリっとした鳥肌を立てながら、クスッと笑いたい時に聴いてください。
M15「オクラホマデスカ?」
作詞・作曲/ザ・ハイロウズ
20thシングル「一人で大人 一人で子供/俺たちに明日は無い」のシークレットトラック。
なんか笑っちゃうラップ調。
これを聴いて楽しい気分にならない人はあんまりいないと思います。
おふざけソングではあるけどオススメです。
笑いたくなった時にはこれ聴いてください。
スタジオにいた者全員の中からアミダくじで6名のラッパーが選出されました。
順番はヒロト→アシスタントの谷口博一→スタッフの中西五代→レコードメーカーの早坂泰浩→ベースの調→Nancy Mixの南石さん。
歌詞カードに歌詞の掲載はありませんが、こんなに楽しい内容のラップは他にありません。
始まった途端に、これ絶対ラップやるだろとわかる電子音。
そこへしれっと入ってくる素人っぽいピアノ。
マーシーがピアノを弾いています。
と言っても、指一本だけで弾いているような私でも弾けそうな遊び心のピアノです。
そのフレーズだけでなんかもう笑っちゃう。
そこからはこの人たちにしか出来ないと悟る唯一無二のラップミュージックへ。
一番手のヒロトは、さすがボーカリストと感激しちゃうくらいラップがキレッキレで炸裂してる。
内容は特に意味がないけど、ラップらしく韻を踏みまくった強烈なものです。
他の人は自己紹介をラップしていきます。
とにかくノリノリで笑いながら楽しそうにやってるのが最大級に魅力的。
笑いが出ちゃいそうな音ばかり入っているのが最大限に特徴的。
人を楽しい気分にさせる天才たち。
「ああそう ああそうですか」
どこにでもありそうなこのセリフがラップになって、最高に楽しませてくれるサービス精神には感服です。
音楽に求めている楽しさならここにある。
ロックとは違うことをやってもハイロウズ節はダダ漏れしちゃってる訳で、企画盤ラストは大きな笑いで聴き終えられます。
いつでも人を楽しませるのがハイロウズ。
私にとって企画盤や編集盤というのは、持て余すかそれとも至極興味深いかです。
『flip flop 2』は明らかに後者。
とはいえ、今からハイロウズを聴くという人には『flip flop 2』から買うのはオススメしません。
まずは、オリジナルアルバムを買って聴くのがいいです。
なぜなら『flip flop 2』はその後に聴く方が何倍にも楽しめるから。
これはベスト盤ではありません。
オリジナルアルバムのその先にある極みのような存在。
全体的に感じたこと : シングルに入っているミックスは音が「素」の状態だ。
アルバムバージョンはやっぱりそれぞれのアルバムの音色にベストな耳触りになってるから、何の違和感もなく聴けるんだな。
私の感性ではアルバム収録のオリジナルミックスは、ライブ会場でのステージのハイロウズという感じ。
[Nancy Mix]はスタジオのハイロウズという距離が近い感じ。
プロフェッショナルの細やかな仕事はとてつもなく情熱的だと感じました。
微妙ではなく、絶妙。神業だ。
《アナログ盤(再発盤)もまだ新品で買えます!》
『flip flop 2』以降は、新体制4人組のハイロウズが馬並みをやってのけます。
名作ラストアルバム『Do‼︎The★MUSTANG』を爆誕させました。
ハイロウズの音源を完全に網羅するには、キーボードの白井さん脱退後に発表されたシングル4枚は単体で入手する必要があります。
その時期の4人編成のハイロウズはよりタイトになり、更に爆音のロックになりました。
それらのシングルのカップリング曲にはグッと来る歌が多いので必聴です。
ありがとうございました。
また読んで頂けるとものすごく嬉しいです。