こんにちはUMEです。
「angel beetle」は2002年リリースのハイロウズの7thアルバムです。
“今この瞬間は神様にもあげはしない”という昨日より明日より今日を生きる名曲「一人で大人 一人で子供」が収録されているのはこれです。
THE HIGH-LOWS/angel beatle(2002)
※Amazonは19%OFFです。
キーボードの白井さん脱退前の最後のアルバムです。
テンポの速い曲だけで構成されていないので前作『HOTEL TIKI-POTO』同様、好き嫌いが分かれそうなアルバムです。
本作に勢いだけを求めた場合ハズレます。レコードの帯にもありますが「驚愕‼︎史上最大級‼︎」な芳醇という印象を受けます。
ハイロウズってこういうこともやるんだなという衝撃と、こういうことやってもいいんだなという納得感があります。
悪く言えば統一感のなさを感じます。
1stアルバムではやっていなかったことをやっています。そう考えると1stの頃とはバラエティの豊かさが結構違います。
マーシーのギターをコピーしようと必死に練習しているバリバリのギタリストの人には多分つまらないです。
どちらかというと割とのんびり聴きたい時にオススメです。ギンギンのロックンロールではちょっとうるさいかなと思った時にバッチリのアルバムです。
とはいえ、根幹にはヒロトやマーシーの目的である楽しいからやるというロックの激しい熱量が爆発しています。ですから、もちろんロック以外の何者でもないんですけどね。ハイロウズの底力。むしろこのサウンド志向がハイロウズの基本形なのかもしれません。
歌詞の面ではいつも通り冴えていて現在でも有効なエネルギーを放つ言葉たちが素晴らしいです。
熱く鋭い歌詞は胸の奥の方に刻まれて、人生の終わりまで輝き放ち続けると確信できます。
アルバム1枚トータルで聴けば自分の中のいろんな感情を楽しめます。かいつまんで聴くよりも是非ともアルバムとして楽しむのがオススメです。
楽しいとか楽しむとは何なのかを教えてくれるアルバム、つまり名盤です。
全14曲57分の驚愕‼︎史上最大級‼︎なアルバムを聴いてみましょう。
シングル曲は「Too Late To Die」「一人で大人 一人で子供/俺たちに明日は無い」の3曲が収録されています。
2002年当時アナログ盤も同時発売されました。
M1「Too Late To Die」
作詞・作曲/甲本ヒロト
ハイロウズの19thシングル。
冒頭から痛快で濃厚なロックンロールで攻めます。1曲目は盛り上がれるロックが好ましいですね。シングル曲らしいキャッチーさがあります。
バンドの一体感はまさに芳醇です。
「Too Late To Die」と歌うコーラスではマーシーの声が際立つ名曲です。
※Too Late To Die
死ぬには遅すぎる
“降りるはずの 駅はうしろ 泊まるべき 港をはなれてく Too Late To Die”
思いのほか早死にしていないし、どうせなら楽しもうぜという曲なのだと解釈しています。長く生きればその分、好きな音楽を楽しめる時間が延びるということでもあります。
特に早死にとかする意味もないです。
足を蹴り上げるマーシーのアクションがロックすぎて燃えます。楽しいからやるとはこれのことです。
M2「ななの少し上に」
作詞・作曲/甲本ヒロト
流れるような気持ちいいロックンロールが続きます。アコギと歌だけで始まって緩やかなエレキが入ってきて、バンド全体の音になるアレンジが聴きやすいロックンロールです。
歌モノは記憶に残りやすいです。
ハイロウズには割とありますが最後にヒロトが笑っているのが小さな音で聞こえてきます。
ギターソロの透き通る音色にはうっとりします。
“早朝にたつ まっすぐに かたく 堤防にたつ 亡霊のけむり ならぶ まぶたはじっと ならぶ 閉じたまま 夜空を踏んで 月を蹴る”
3番のこの歌詞は男性ならきっとピンと来ます。思い当たります(笑)それにしてもロマンチックな言葉です。「夜空を踏んで 月を蹴る」とか一般的な生活をしているだけじゃ使わないし出てこない言葉です。
M3「スカイフィッシュ」
作詞・作曲/真島昌利
心地よい優しいギターの音色が聞こえてきたと思うといきなりファンキーな演奏が始まります。
マーシーの激しいシャウトが聴きどころです。曲中ずーっとやってます。
とにかくロックンロール以外はたいしたことじゃないという主張です。
リリース当時は好きになれなかった曲でしたが、ファンクだけどロックンロールなアレンジは実は最高です。
ワウを使ったファンキーなギターソロが最高潮です。しかも音は左右に振れる浮遊感が楽しい。
歌詞は5行しかありません。
聴けば、日々の悩みも妬みも憎しみもロックンロール以外は大したことじゃないと気付ける良曲。
“スカイフィッシュ 素早いぜ スカイフィッシュ 素早いぜ 目にも とまらない”
※スカイフィッシュ
スカイフィッシュ(英: Sky Fish)とは、長い棒状の身体を持ち、空中を高速(280km/h以上)で移動する、とされている未確認動物(UMA)。 写真などによって存在が仮定されていた生き物である。
1995年くらいに世間を騒がせていました。めちゃくちゃテレビでやっていて、こいつは何なんだと誰もが興味津々です。当時の人気者でした。
“ロックン・ロール以外は大した事じゃない ロックン・ロール以外は”
この言葉に尽きます。マーシーにとってロックンロールの衝撃以外は大した事ではないのです。だからずっとロックし続けているんですね。
このような「好き」が突き抜けた人たちがやってる音楽はどんな学者よりも説得力が溢れてる。それはもうオタクというより変態です。だから好きなんです。筆者はそこが好きなんです。
M4「アメリカ魂」
作詞・作曲/真島昌利
とりあえず炸裂してます。
アルバムの中で一番のインパクトでかなり好きです。優れたメロディに9.11に対する皮肉な歌詞が最高です。
清々しいほどアメリカ人をおちょくっているのが気持ちいいです。筆者は日本人的くだらない同調圧力よりもアメリカ魂を目指します。限りなき正義だぴょん。
豪快なホーンとバンドが一体になった演奏は聴きどころ。
“有色人種はつぶせ 都合よくルール作れ 自分のミスは認めず それがアメリカ魂”
自己中すぎてここまで来ると清々しいです。自己中ではなく自分優先でいきましょう。
“オイ 俺の言うこと きけないっていうのか? オイ 俺を誰だと 思っているのだ?”
日本の会社にもこういうヤツはいますね。それすごく勘違いしてますよ。人間同士は対等なことに早く気付いた方がいいよ。
“君達の悲しみは 俺にはわからないけど 俺の悲しみはどうか 君達はわかってくれ”
こういうヤツも日本人にも余裕でいます。関わると不幸になるので筆者は完全スルーしています。
ロックに乗せて痛いとこつく歌詞が痛快ですが、やっぱり日本人的同調圧力よりははるかに人間らしいと感じました。アメリカに同調圧力という概念はありません。
M5「毛虫」
作詞・作曲/甲本ヒロト
ほんわかしててふわっとした心地いいアレンジです。こんなに柔らかい曲を聴いてイライラし出す人は多分いません。
イントロのアコギの音ですでに癒されます。
歌と同じメロディを弾くギターソロに胸が熱くなります。バッキングでずっとマーシーのピックスクラッチが鳴っているのも特徴です。「キュイーーン」というより「ギコギコ」です。
“毛虫 毛虫 毛虫 毛虫 なんかの赤ん坊”
こんな感じで毛虫について歌い始めます。ヒロトって虫が好きです。一般的な視点とは違うのが表現者です。
“ひらがなじゃない カタカナでもない 漢字で書こう 『毛虫』”
気を張らずに聴けるほんわかした歌詞もこの曲のポイントです。
“ああ いつか 季節をこえて あなたに会いたいの”
ここがロマンチックです。チョウかガの成虫になったらまた会いたいなんて愛情を感じます。
ふざけてるとしか思えないタイトルとは裏腹に胸にジーンと来る良曲です。
M6「天の川」
作詞・作曲/真島昌利
柔らかい曲調が続きます。イントロはやっぱりアコギで、ギターソロもアコギでうるさくないのが好印象です。分かりやすく言えばアコギ調の曲。
“信じているのは カレーライス そら もう 気分しだい 笑っちゃう”
出た!カレーライス。マーシー以外この歌詞を書く人はいません。唯一無二なのが素敵です。
M7「マミー」
作詞・作曲/真島昌利
美しいメロディで、聴けばすぐにマーシー作だと分かる情熱的なスローテンポ。そのスローテンポの中にエレキが唸る熱いアレンジ。ロックが弾けるピアニスト白井さんのキーボードも超重要です。
マーシーのギターの綺麗なメロディと録音された瞬間のアンプを通ったその音に心を奪われます。
“世紀が揺れてる みの虫のよう 雪豹の歯が なさけなく尖る”
詩人『真島昌利』が全開しています。比喩とか抽象的な表現とかすべてを語らない美しさが、マーシーの感性の共感ポイントであって大好きなところです。
“世紀が揺れてる 俺は生きてる それはたしかで あとはどうだろう?”
心を打つ歌詞が最高です。生きてるという事実以外にたしかなことなんてありません。
M8「俺たちに明日は無い」
作詞・作曲/甲本ヒロト
明るくて元気な曲調が光ります。
テーマが「映画」の曲が本作にはもう1曲あります。音楽を聴いているのに映画を観たくなります。
ホーンも入っていてゴージャスなアレンジは聴きごたえ抜群です。銃声も入ってます。
“ほら聞こえてきた 口笛のテーマ モリコーネ 用心棒の 復讐だ 覚悟はいいか”
※モリコーネ
エンニオ・モリコーネ(Ennio M orricone)、(1928年11月10日-2020年7月6日)は、イタリアの作曲家である。映画音楽で特に知られる。
古い映画を感じます。ヒロトやマーシーがよく語る古い映画とか音楽には興味を持てます。この曲と同タイトルの『俺たちに明日はない』という1968年の映画があります。銀行強盗を繰り返す「ボニーとクライド」の物語。マーシーもソロアルバム【RAW LIFE】の中でボニーとクライドについての曲『こんなもんじゃない』を発表していました。
彼らが観たり聴いたりして心に響いたものを、後追いで深掘りしていって数珠繋がりになっていく楽しさは人生を豊かにしてくれました。
M9「Born To Be Pooh」
作詞・作曲/甲本ヒロト
この曲もふんわりとした感触でほのぼのします。
曲のタイトルとテーマは「無職の人」のことでしょう。生まれた時からプーという感じでしょうか。曲中では「プー」を連発してます。
時速がめちゃくちゃ速かったりする時間軸について歌う歌詞も興味深いものです。
“時速3時間 あっという間に夜 時速2秒 もうずっと夜”
“時速12年 龍のしっぽに蛇 干支がマッハで駆け抜ける”
時速で遊んでいる感覚にびっくりしました。言葉選びも言い回しもヒロトにしか出来ない。やっぱり唯一無二です。
“時速1時間 マジな顔するほど 誰が見ても 考えるふり”
最後は現実に戻ったこの感じがたまらないです。しかしプーは考えるふりだというのが偉大な精神力です。
M10「映画」
作詞・作曲/甲本ヒロト
映画の曲、第2弾。美しい心の曲です。筆者の心に張り付いたままの名曲で、よく頭の中にこの曲の歌詞が浮かんでいます。
勢いで聴くというより、自然と歌の世界に浸るという感じです。
ホーンのアクセントもバッチリいい味出ています。
“楽しみにしていた 映画がくるんだよ 人気はないけど 僕は好きなんだよ”
自分にとっての好きな映画と歌っているのが共感持てます。映画館に行くワクワク感も感じられて、同じ人間なんだなと思えるのがこの曲の好きなところです。
“あなたに会えたらなあ 毎日だったらなあ 偶然でもいいけど 約束できたらなあ”
これもう完全に恋心と一致ですね。恋をするとこういう気持ちになります。筆者は一生この歌詞を忘れることはないですね。
M11「つき指」
作詞・作曲/真島昌利
第一印象は和風テイストなロックです。
バッキングに爽快なアコギとゴーゴーと鳴っているエレキ。
野球好きなマーシーらしい具体的でイメージしやすいつき指についての歌詞が好印象です。
第二次時世界大戦のことにも触れています。サビの最後の歌詞が“昭和18年ラバウルで”という一節ですが、初めて聴いた時からこれが何故だか心にひっかかる。ググってみるとすぐに何のことなのかは分かりました。
※ラバウル空襲
ラバウル空襲は、第二次世界大戦中にラバウルで日本軍と連合国軍との戦闘で行われた空襲。
わかると割と重い内容の曲なのかなと感じます。
“つき指をすれば痛い してない時より痛い 痛いけど死ぬほどじゃない それほどじゃない”
この事実、当たり前だけど気付いていなかったことにびっくりします。「してない時より痛い」って至極当然ですね。この言い回し最高です。
M12「曇天」
作詞・作曲/真島昌利
歪んだギターが印象的な勢いのあるロックです。それはギンギンバリバリのゴリゴリでノリノリです。
ギターソロ直後にマーシーの魂のシャウトありで、聴いているだけで一気に自分が燃え上がるしメロメロです。
タイトルが「曇り空」ではなく「曇天」なのがマーシーの感性が炸裂していて好きです。
※曇天
くもった空。くもりの天気
“曇天 寒い午後 曇天 目が醒めてきた 曇天 炬燵(こたつ)がちょっと熱すぎるんじゃないか? 曇天 見つかったのか? 曇天 おいしい生活 曇天 炬燵がちょっと熱すぎるんじゃないか?”
曲の舞台は日本の日常なんだけど、言っていることや考えていることが深いです。
M13「ecstasy」
作詞・作曲/甲本ヒロト
前の曲のゴリゴリ感から激変するキレイで軽やかなイントロの音が聞こえてきて耳も心も引き込まれます。
そのイントロにあるマーシーのピックスクラッチの音はやっぱり最高です。この人マジで上手すぎる。
感動的で胸に響くメロディです。アルバムの後半にはこういう曲が似合います。
割とどのアルバムにも入ってるヒロトならではのロマンチックな言葉の曲です。心を鷲掴みにされる世界観。
“昨日までの全部が おもいうかぶ全部が 燃える暖炉 今日は 今日のために全部”
幸せに生きるために重要な考え方です。昨日まではすでに完了しました。ブルーハーツ時代のヒロトの名言にもありましたが、明日のための今日ではなく今日のための今日です。今日は全部を今日のために使うのが幸せです。
次の曲でマーシーも今を今日を生きるという重要なことを示してくれます。
“All I Want Is ecstasy”
サビの歌詞の意味は「私が欲しいのはエクスタシーだけです」となりますね。快楽だけが欲しいという最も人間らしい言葉です。
M14「一人で大人 一人で子供」
作詞・作曲/真島昌利
この曲でマーシーが腕をぶん回してギターを弾くのが胸アツです。
生きる勇気と覚悟がこの曲にはあります。歌詞は短めで2番までしかありません。そんな短い歌詞のすべてが刺さります。
“うんざりなんて してて当たり前 絶望なんて してて当たり前 あきらめるのは簡単だ 簡単すぎてつまらない イェー 腰は大丈夫”
全開で救われる歌詞です。すでに20年前の曲の歌詞ですが、今から何十年後、何百年後だろうと常に有効な力を放つ言葉です。
“昨日の事は 蟻にあげたよ 明日の事は 蝿にあげるよ だけど今この瞬間は 神様にもあげはしない イェー これはゆずれない”
2番の歌詞こそが筆者の心には鋭く刺さりました。リリースから何年後かの精神的に病んでいた時期のある日のふとした瞬間、頭の中というか心の中でこの歌詞が爆音で再生されました。
ああ!これだ!と、生きるとはこれなんだと理解してしまった。
僕たちは大人でありながら子供なんだ。完全な大人なんていないし、子供のままでもいられない。いつも今日を生きるだけ。
目の前のことが楽しいか楽しくないか、それだけしかないですね。人間が生まれた時のデフォルトはこれだったはずです。それを忘れて病んでしまった。今この瞬間を、今日のために生きればいいんだな。なんだ簡単じゃん。
凝り固まった石頭で古い価値観や考え方をとっても大事に信じ込んでいる「ボケたニッポン人」にだけはなってはいけません。それは不幸というものです。
前例なんてなくて当たり前。いつだって今この瞬間しか生きれません。まず自分が楽しいかどうかということが大事ですよね。
本作1枚トータルで聴き終えた後は生きる勇気に満ち溢れているはずです。
のんびり聴き始めたつもりがメラメラと燃える覚悟のような炎が自分の中に存在しているのを感じます。
白い箱に赤いリボンをイメージさせるジャケットデザインはハイロウズからの最高なプレゼントでしかありません。
再生ボタンを押せばいつでもロックの魂からの心のこもった贈り物を受け取れます。
贈り主はもちろんハイロウズ。
つまりやっぱり名盤です。
本作の後にリリースされた編集盤『flip flop 2』を挟んでからの次作はハイロウズのラストアルバムです。
2020年に「angel beetle」のアナログ盤が再発売されました
当時のオリジナル盤にこだわらないのであれば、ヤフオクで高値で売られている物を落札する前にまずAmazonとかを確認しましょう。
なぜなら再発盤はまだ定価で買えます。割引になっている場合さえもあります。
※Amazonは22%OFFです。
むしろ再発盤は180g重量盤でオリジナル盤より高音質なはずです。(筆者はオリジナル盤しか持っていないので聴き比べたわけではありません)
※記事中の写真はオリジナル盤です。
1stアルバム【THE HIGH-LOWS】
筆者のオススメ前作6thアルバム『HOTEL TIKI-POTO』
ハイロウズの一ファンとして。
ありがとうございました。
それではまた。