こんにちは。
『人にはそれぞれ事情がある』は1994年リリースのマーシーの4thソロアルバムです。
前作である痛快ロックの3rdアルバム『RAW LIFE』とはまた違う、それ以前のノスタルジーでアコースティックな世界が帰ってきたという印象を受けます。
サックスが多用されているのが特徴です。
『人にはそれぞれ事情がある』というタイトルにはインパクトがあって覚えやすいですし、自分の事情も肯定してくれているような感じがして、そこも好きなポイントです。
それぞれの事情より同調性を優先しがちな、すべての日本人に向けて言いたい言葉です。
世界中まさにこのタイトル通りです。大好きなその人にも、ちょっと苦手なあの人にも、もちろん自分にだって、全員に事情があります。
しかしジャケットには『人にはそれぞれ事情がある』というタイトルは書かれていません。
証明写真を撮影中のマーシーの姿のジャケットに『Rabbits on the moon,Crows in the sun』というタイトルがバッチリと書かれています。
元々はこの「月のウサギ、太陽のカラス」という意味のアルバムタイトルだったけど、大人の『事情』で急遽変更になったそうです。
真相はわかりませんが、そんな『事情』を皮肉って付けたのかもしれません。
真島昌利/人にはそれぞれ事情がある(1994)
『人にはそれぞれ事情がある』は前作3rdアルバム『RAW LIFE(1992.11.1発表)』から約2年後(1994.10.21)にリリースされたマーシーソロ4枚目のアルバムです。
1994年はブルーハーツの活動だと2枚の名作『STICK OUT』『DUG OUT』を発表した翌年です。マーシーは創作意欲が溢れていたのかもしれません。
2023年現在、これがソロのラストアルバムです。(いつか5枚目が発表されるかも)
全4枚のソロアルバムの中で一番バランスの取れた作品という感触があります。
それと同時に抜群に芸術的です。
他のソロアルバムほど、音楽性がどこかに偏りすぎていません。とは言え、制作時でのマーシーの感性が炸裂しています。
私は『人にはそれぞれ事情がある』は視聴頻度が一番高いです。聴きたくなります。
分かりやすく言うと、私にとっての大名盤です。いつまでも聴きたい、魅力的なアルバムです。
マーシーの素晴らしい感性の“すべて”が表現されているという印象です。
アルバム全体が空想的です。
絶対に行かないけど、私が無人島に持っていくならこの1枚に決定しました。
・詩人マーシーが全開してる
・マーシーがサックスも吹く
・非常に繊細で心を動かす魅力がある
・大雑把なロックというより丁寧な音楽
「1枚で2度おいしい」というのは、前半のゆったりサイドと、後半のロックサイドで、マーシーの二面性を楽しめるという意味です。
そう感じるのがソロ活動の集大成的なアルバムだと確信する要素になっています。
ジャンルとしては、もちろんロックです。
でもそこら辺にあるただのロックではありません。マーシーが作った美しい繊細さをひっくるめたロックです。
前半と後半でガラッと雰囲気が変わるスリリングさを楽しめます。
そのギャップに4thアルバム『人にはそれぞれ事情がある』の魅力があります。
例えば、それはブルーハーツの「凸と凹」の違いに似てます。
前半はゆったりめな『DUG OUT』の雰囲気で、後半は勢いのある『STICK OUT』のような印象も受けます。
前半と後半のそれぞれの頭にインスト曲があることによって、違和感なく1枚のアルバムに整えられているように感じます。
どの曲にも心を動かす個性的なドラマがあります。
それは神様の有り難い言葉なんかよりも誠実で、心の支えにも、心のゆとりにも、弱い心を奮起させる起爆剤にもなり得ます。
『人にはそれぞれ事情がある』収録曲
1.月のウサギ、太陽のカラス
2.空席
3.アイスキャンディー
4.ロマンス
5.二人の夏の日
6.カーニバル
7.ジャングルの掟
8.カレーライスにゃかなわない
9.MR.SPEED
10.世界を笑う男
11.ドーパミンBABY
12.月のウサギ、太陽のカラス[reprise]
全12曲、51分です。
アルバム参加ミュージシャンは前作3rdアルバム『RAW LIFE』に引き続きこの3人です。
Vocals , Gitars , A.Sax , Harp & Chorus : 真島昌利
Drums & Percussion : そうる透
Bass , T.Sax , Tp , CMI Ⅲ & All Other Instruments : 佐久間正英
Produced by 佐久間正英
この人たちは前作『RAW LIFE』で音が語るロック魂と、音が奏でるストーリーを存分に楽しませてくれました。
今回も私たちの期待を軽く超えます。
初めて聴いた時の本音を言うと、前半があまり好きになれなかったです。
勢いのある後半は一聴してカッコいいと思えたけど、前半はゆったりしてるから少し重く感じたのかもしれません。
あとは芸術的でとても繊細な歌詞の世界観が自分の頭の中でまだぼやけていたからです。
しかし、今になって感想は変わりました。
より魅力的なのはゆったりした前半です。
マーシーは美しい比喩表現をよく使います。このアルバムにも繊細だなと感じる感動的な言葉や言い回しが溢れています。
今回のアルバムで特に感じるのは、マーシーはギターを弾く詩人だということ。
攻撃的なロックアルバムの『RAW LIFE』は心を激しく突き動かしたけど、本作『人にはそれぞれ事情がある』は心を優しくします。
心の奥の芸術的な部分を動かします。
ワンテンポ遅れて感情を直撃してきます。
マーシーが言っていましたが、ロックを聴く時に重要なキーワードは、、、
「興奮するかしないか。」
むろん、これは興奮する。
衝撃なのはこのアルバムではマーシーがアルトサックスを吹いているということ。
豪快に吹きます。すげえ上手いです。
こんなのありか!と興奮しました。
歌詞カードを開くといつものエンジニアブーツに、ギターではなくサックスを持っているマーシーの姿が写ってるのが新鮮です。
いつものバンダナじゃなく、橙色のキャスケットを被ってるのもすごく似合ってます。
男が嫉妬するカッコよさです。
アルバムのいろんなところでサックスの音が聴こえます。
そのためかアルバムからジャズのニュアンスも感じるかもしれません。私は「ロック+ジャズ」の渋めのカッコよさを感じます。
一つハッキリと言えることは、ありきたりでないマーシーの個性がバッチリと突出していること。
心を奪う“名盤”の貫禄だと思いました。
マーシーはアルバム発売後の1994年12月22日、厚木パルコにて弾き語りライブ&トークを行いました。
本作収録曲からは「空席」「ロマンス」の2曲のみのセットリストでしたが、「チャンス」「1000のバイオリン」などブルーハーツの曲をマーシーが弾き語る胸熱っぷり。
弾き語りライブ後のトークでは、この人はやっぱりボソボソと話す印象を受けたので、なんか安心しました。
熱く演奏している時とのギャップがマーシーらしくて好印象です。どこにいても、何をしてても自分のままでいる在り方に憧れます。
ーーどうもありがとうございました。風邪をひいたって伺っちゃって、歌うのも辛いんじゃないかと思って、大丈夫ですか?
マーシー「バリバリです。」
ーー質問用紙を用意させていただきまして、今日来てくださった方が入る前に質問を書いてくださいまして、お時間があまりありませんので、、、
マーシー「全部答えましょう。」
ーー1番多かった質問がこれなんですが、最近読んだ本、観た映画で良かったものおすすめだというものを教えて欲しい。
マーシー「そうですか。本は読んでないんですよね。」
ーーエッセイが多いですか?
マーシー「最近はね、エッセイが多いですね。」
ーー映画は最近?
マーシー「最近、映画も観てないんですよ。僕はね、WOWOWに加入してるから。でもね、結構観ないもんだよね。」
ーー10月21日に発売された「カレーライスにゃかなわない」、この歌の詩はどうしてカレーライスの作り方になってしまったんでしょうか?
マーシー「、、、、、なんとなく。カレー好きだし。」
ーー本当にカレーライスとお味噌汁一緒に食べてるんですか?
マーシー「食べるよ。美味しいよ。すっげえ熱いよ。」
ーーこれも多かった質問ですが、いつからギターを始めたのですか?
マーシー「ギターはね、小学校6年生の終わり頃です。最初はね、モーリスっていうメーカーの1万円のフォークギター。きっかけはビートルズだったんだけど、いきなりエレキギターは買えなかったです。」
カレーライスの詩に因んだ質問は、私も気になっていた事ではありますが、やっぱり明確な答えなんかある訳がなかったです。
もしマーシーがバシッと答えたら、実際にはつまらない歌になっていたような気がしました。
「カレーライスにゃかなわない」はいつも楽しい気分になれる傑作です。
シングル曲は6枚目のシングル「カレーライスにゃかなわない」が収録されました。
こちらのシングルは1994年10月21日にアルバムと同時リリースされました。タイトル曲はアルバム収録のものと同テイクです。
カップリングには本作の2曲目に収録されている「空席」の別バージョンが収録されています。カップリングの「空席(version 2)」は現在でもこのシングルCDでしか聴けません。
「空席(version 2)」とは、レゲエバージョンです。
入手するには中古を探すしかないですが、割と高値が付きますので手頃な価格で買えたらラッキーだと思います。
発売当時は8cm シングルCDのみで販売されました。
1994年の発売当時『人にはそれぞれ事情がある』はCDのみでリリースされました。
残念ながら『人にはそれぞれ事情がある』のアナログ盤(レコード)は発売されていません。
私は所有していませんが『あれもこれも』というタイトルのプロモーション用のカセットテープは当時存在していたようです。
どんな事情があろうとも、マーシーの深い感受性が時間をかけて心にゆっくりと、しかしドッシリと腰を下ろしていきます。
一つだけ残っていた心の空席が埋まります。
それは満たされるという意味です。
M1「月のウサギ、太陽のカラス」
作曲/真島昌利
マーシー初のインスト。
1曲目はサックスが吹き荒れるロックでジャジーなインストから好スタートです。
まさかのインストには意表を突かれたけど、間違いなく絶好調。
音がアルバムの幕開けを告げています。
4thアルバムの音を象徴するような繊細さと渋さと、さりげない主張のある楽曲。
突き抜けた勢いは減衰しつつも、経験を積み上げた感性にしか出せない雰囲気です。だからこそ心に聴こえます。
心の深い部分に鳴り響く美しいメロディ。
バッキングに徹したエレキと情熱的なアコギにキーボード、ベース、ドラムにサックスが入ってくる渋さ。
サックスが入ってきた頃には音楽に酔いしれている自分の感情に気付きます。
好きになるまで多少の時間はかかったかもしれないけど、この曲は私の心を好ましい方向へ動かし、わずかに残っていた心の隙間にスッと入り込んで、大きな存在になりました。
インストも興奮するもんなんだなと思った。
興奮するとは言え、激しいイメージではなく奥の方で静かにメラメラしてる感じです。
それはなかなか無い特別なもの。
私はあんまりインストは好きじゃないんだけど、これはマーシーの世界観が溢れていて最高です。
ジャジーな深みが心に響きます。
私はインストだと飛ばして聴いてしまう癖がありますが、これは「聴きたくなる」カッコいいインストです。中毒性があります。
何度聴いてもちょっと不思議な雰囲気です。
なんて言えばいいのか、メリーゴーランドなんかを感じています。
聴いていると頭の働きが鈍くなるような、意識がハッキリしなくなるような、心理的恍惚状態になります。
サイケな感じと言えばいいでしょうか⁈
そこにいる月のウサギと太陽のカラスが、天下を取ったような表情をしながら、つまらない日常の思考を徐々に快楽に変えてしまう。
つまり、うっとりします。
恍惚のインストルメンタル。
次の曲「空席」への繋がりが最高です。これ以上ないほどの気持ちよさを感じます。
私はどうしても本作をアナログサウンドで聴きたかったので、アルバム & シングルのカセットテープを自作しました。
M2「空席」
作詞・作曲/真島昌利
2曲目、いきなりハイライトです。
つまり名曲です。
これこそが私の一番好きな曲で、メロディ、歌詞、アレンジ、聴こえる音のすべてから相当な影響を受けました。
人生を変えることもあるかもしれません。
マーシーが得意とする文学的な歌詞が全開しています。一発で頭から離れなくなった歌詞の世界観が非常に好ましく感慨深い歌です。
歌詞にはあまり聞き慣れない難しそうな言葉も出てきて、それが興味深さになります。
演奏開始と共に響き渡るマーシーのハーモニカには既にドラマがあります。
1曲目からのこの深みのあるイントロのメロディへの繋がりの気持ち良さは、言葉で説明するのは不可能なほど美しいです。
ロックの光を感じる瞬間。
繊細かつ煌びやかで個性的な存在感を放ってる。
マーシーが歌い出すと、オレが聴きたかったのはこの歌声だと一瞬で心を奪い去っていきます。
力みすぎず、脱力しすぎず一番いい感じのマーシーのボーカルスタイル。
その声は、心の奥に沁みる深みを感じます。
誰にでも経験のある日常の風景を歌っているようにも聴こえるし、大抵の人はあまり考えないものすごい壮大なテーマについて熟考しているようにも聴こえます。
そのギャップが素晴らしい名曲にしてます。
今オレは映像を観てるのか⁈
そう錯覚してまうほどの惹き込むパワーが歌に備わってます。
メインのメロディを吹くハーモニカ、歪みながら滑らかに響くエレキ、重心になっている太いベース、誰の勝手な暴走も許さない堅実なドラム、音場の広がりを実現するキーボード。
この人たちの演奏は唯一無二です。
ふわっとしていながら、折れない柱が立っているような感触です。
それでいて、空席がまだ一つ空いている雰囲気まで出ちゃってる。何これ⁈すげえ。
私の空席にやってきた名曲です。
歌詞 : 「ひねもすのたり」、当時はこの言葉の意味を知りませんでした。意味を知ったら更に好きになった言葉です。
のたり = のどかにゆったり
なるほど、昔の日本語表現だったのか。一日中のんびりしているという過ごし方を、この言葉で表現しているのがマーシーらしいし、言葉を新しく一つ覚えるきっかけになりました。
この歌詞だからこそ滑らかで音がいいと感じます。
心で感じるともっとリアルさが増します。
今、歌の世界に私もいます。
私はあまり買いませんが「ブートレッグ」とは、いわゆる海賊盤のCDやレコードのことです。
それを聞いているとは、マーシーはやはり相当な音楽好きだなと思いました。
「空席には誰がやってくるんだろう」、誰にも分からないこと。あらゆる人生の、長い未来の不透明さがビシバシと伝わってきます。
希望でもあり、不安でもあるようなニュアンスで、私はどちらかと言うとこの歌にポジティブを感じます。
続く歌詞ではわずかに切なさを含んで仮定するのがドラマチックです。
芸術的な歌詞が心に深く刺さりました。
映画やドラマを観たような、本を読んだような、しかし確実にいい音楽を聴いたという満足感に熱くなった自分の心を実感しました。
ライブではマーシーはハーモニカを吹いていました。ギターはぶら下げてるだけだったのが妙にマーシーらしく見えました。
いつものバンダナではない帽子をかぶったマーシーを観れたのが嬉しいです。
M3「アイスキャンディー」
作詞・作曲/真島昌利
定義はないけど、3曲目っぽさがあります。
速いレゲエのリズムが浜辺で自転車をひきずります。
レゲエ?スカ?とにかく弾むリズム。
サックス入りで、にぎやかな凝ったアレンジの印象を受ける曲です。
昭和の時代には夏になると自転車に乗った“アイス売りのおじさん”という商売があったみたいです。私は会ったことはありませんが、イメージは出来ます。
歌の主人公はそれをやっている人です。
アイス売りのおじさんについてなど考えた事もなかったので、とても新鮮に感じました。
しかし夏ではなく10月という微妙に季節外れなのがこの歌のツボです。聴けば間違いなく歌の切ない気持ちは伝わってきます。
聴くと毎回、歌のストーリー性にも心を奪われます。
高らかに鳴り響くサックス主体のイントロは、期待感を膨らませて、心を躍らせる楽しげなメロディです。
あまり聴き親しんでいない音やアレンジや雰囲気に、自分の好奇心が一気に発動します。
普段と違う何かを感じる予感。
明るくにぎやかなイントロの後にマーシーが歌い出すのは“10月の誰もいない浜辺”と孤独感が出ますが、ロックのボーカルはポジティブな印象しか与えません。
1曲の中で突き抜けた明るい笑顔の歌と、センチメンタルな表情をした歌が聴ける相反する満足感。
バッキングで鳴るリズムギターの躍動感に合わせて踊りたくなります。
イメージしやすい歌詞の世界に入り込んでしまいます。美しい言葉たちに心の前向きな部分が反応します。
目の前には誰もいない浜辺が見えてます。
そこは寂しげですが、趣深い場所でもあると感じました。決して悲しくはなりません。
テンポが下がり落ち着いた雰囲気に一変する間奏では、情緒あるアコギの音の横に、波の音が聞こえてきます。
急に海に来ている実感。錯覚。いい感じ。
そのまま3番へ突入します。
センチメンタルな気持ちによく似合います。おセンチな気持ちの時は余計に沁みます。
1曲の中に二つのアレンジが存在しているようなスリリングな歌だと思いました。
この歌は一つ一つの言葉にロックの迫力があり、マーシーしか持っていない繊細さがあり圧倒的な個性が炸裂しています。
わずかに含む切なさがこの歌の美しさです。
それを感じた時に惹かれています。
歌詞 : 寂しげな情景と孤独な気持ちの歌詞ですが、曲調は明るいです。
こういうシチュエーションのストーリーをロックにして私を感動させるのは、マーシー以外あり得ません。
歌に存在する言葉のチョイスに繊細さが溢れていて、心を刺激するいい感じです。
割れたビンのかけらに「悪意」があると歌っている感性と、リアルに感じさせる想像力にはとても強い憧れを持ちました。
アルバム全体を司る優れた感性。
いつまでも私の心の中で光ってます。
ドライアイスの冷たさと、あの日のサヨナラの冷たさを比較してみせる歌詞にドラマを感じます。
ひとつの物語を聴き終えたという感覚です。
M4「ロマンス」
作詞・作曲/真島昌利
とてもロマンチックです。
1回目は印象に残りにくいかもしれないですが、間違いなく「空席」と肩を並べるほどの絶対に外せない名曲です。
マーシーの繊細な感性が溢れ出しています。
音も言葉も細やかな表現が際立ちます。
詩人にしか使いこなせない言葉たち。抽象的な表現を使いこなし、すべてを語らない美しさが感動的です。
テンポは無駄に疾走感があるわけではないのでじっくりと曲の雰囲気に浸れます。
どちらかと言うと後から良さに気付いた歌でした。
気付いた時にはものすごい大きな存在感を心の中に放っていました。
歌から溢れているのは空想的な美しさ。
エレキのメロディが頭の上をふわふわ浮遊するイントロが鳴った途端に、異世界へ連れて行かれます。
美しさだけが存在する穏やかな世界。
とても柔らかく、しかしハッキリとマーシーが空想的な歌詞を歌い出すと、私の今日のストレスが少しずつ消滅していきます。
心がふわっとしてきて軽くなる。柔らかい。
一番心を動かしているのはそこにあるロマンチシズム。
その世界観に心を奪われて、歌の中に自分まで存在してしまう。
マーシーのファルセットのコーラスも歌の独特な雰囲気を作り上げています。
全体的に緩やかな演奏。我こそはと無意味に主張する音はありません。どの楽器の音も心地良さ抜群です。音がぼやけずハッキリとはしています。
佐久間さんのベースに耳を傾けた場合、この曲の芯が聴こえてきて、心の弱さなんか強さにひっくり返ります。
マーシーのエレキは歪ませていないキラキラした快音が鳴っていて、悩みなんか消え去ります。
全部いい感じです。
ギンギンなロックンロールにシビレるのとはまた違う、心の細やかな部分が聴き惚れるリラックスソング。
ほっとする気持ちはアロマチック。
うっとりする心はロマンチック。
この歌には気持ちを落ち着かせ、心を空想的にする効能があります。
つまらない現実の平凡さは置き去りです。
ラストの歌詞をマーシーが本音で歌います。
歌詞: こういう考え方をしていないと、人生がつまらなく終わってしまうという教訓です。
他人に気を使いながら悩んでいるより、自分を楽しんだ方がいいと私は思いました。
最後の方で救いまであった名曲。
こんなにも自分の心の繊細な部分が反応する歌詞はありません。
ゆっくりと時間をかけて、この細やかな歌詞に心を鷲掴みにされました。いわゆる普通の商店街の、この瞬間にしかなかった特別な情景が浮かびます。
マーシーの想像力の優れた歌詞は、聴くといつも穏やかな気持ちがやってきます。
歌詞の緊迫していない自身のこの状況がすごくいいと思いました。とても共感します。
私は決して恋愛主義ではないですが、ゴロゴロしてるだけの夜に「君」を想っているというのは最高にロマンチックだし、人にとって世界で一番の幸せなことだと悟りました。
心の繋がりこそがロマンスです。
人それぞれ「君」の対象は違いますが、誰かを想う夜というのは感慨深いです。
心のネガティブが静かに癒やされていく。
大雑把でない感性の人には、この芸術性と繊細さが圧倒的に心まで響くと思います。
M5「二人の夏の日」
作詞・作曲/真島昌利
私の感性では“モノクロの音楽”という言葉が合う歌です。
不快でない気怠さがあり、そこにこの歌の生々しい魅力があります。
そういうものが音として聴こえてきます。
マイナー調なメロディでリアルな夏の思い出をマーシーが切ない雰囲気で歌います。
この曲は演奏が控えめな分、マーシーの歌声が際立ちます。
物語をリアルに伝えるゆったりテンポ。
イントロなし。開始早々に耳を直撃する飛行機が飛び去っていく音に、なんとなく不穏な空気が漂います。
これはきっと眩しく晴れた夏の日ではない。
しかし不安そうなその空気は、か細いエレキの音と同時に入る筋の通った歌によってすぐにノスタルジーな雰囲気に変わります。
頭の中でモノクロの映画が始まりました。
マーシーの心のこもった歌声が、映画のストーリーを滞りなく進めていきます。
落ち着いた聴き心地の中にハッとするふしだらなカミングアウトがあったりして、一瞬たりとも私の意識を背けさせません。
どことなく気怠いと感じるのも確かだけど、なんかすごく惹き込まれる、、、
「音楽+映画」を聴いている。
古めかしい音を聴きながら、モノクロの映像を見てる。
ゴリゴリしてないか細い音やアレンジが魅力的な歌ですが、間奏は猛々しく情熱的です。
サックスが猛威を奮っていて、一番根底にある強い恋心を歌っているかのようです。
間奏後にほんの一瞬あるブレイク部分でわずかに自分の意識を取り戻す自覚あり。
とは言え、受け入れ難くつまらない現実に戻ってしまう訳ではなく、モノクロで興味深い映画の世界は続いていきます。
いい音楽はいつも心を動かします。
この歌には感情移入しやすいストーリーがある。
たくさんの人が存在する地球で、たった1人しか大切に思えない私は、2人きりの世界というのにものすごく憧れを持ちました。
「二人の夏の日」には、相対性のない心地よさがあります。
とても繊細な歌で、雑な扱いや乱暴な触り方では壊れてしまうと感じました。
音の聴こえ方、内容の伝わり方、そのどれもが生々しい。
歌詞 : この歌はフランスの映画を彷彿とさせます。
思い出が主体な歌詞なので、全体的にノスタルジーな雰囲気が充満しています。
それは歌の魅力になっています。
最後の歌詞には、結末を視聴者の想像に任せる映画を感じました。
自分なりの解釈をしていいという、想像の余白が用意されています。
M6「カーニバル」
作詞・作曲/真島昌利
平常心が歌の中に迷い込む異世界ソング。
音はおとぎ話なんかを聞いているような感触で興味をそそられます。
のんびりとしたテンポで、世にも奇妙なカーニバル感がぶっちぎりに表現されたアレンジが好印象。
そんな雰囲気が夜の暗さと静けさによく合います。
遊園地を連想させるイントロ。
怖い曲ではないですが、楽器の演奏が始まるとわずかに不安な気持ちにもなります。
「迷い込んだカーニバル」という歌詞から歌が始まると、本当にカーニバルに迷い込んだような錯覚に陥ります。
脳がほんの少し混乱する可能性あり。
歌へ素直に心を預けて脳内トリップする快感を味わう楽しみ方が良さげです。
穏やかなアコギと一緒にマーシーがたくましく歌い出します。
マーシーは耳元で歌い、その体温にまで触れているような近さ。少なめの音数の中からマーシーがすくっと目の前に立ったと感じます。
個人的には、歌詞の語尾の歌い方にロックを感じるマーシーのボーカルの特徴が好ましく響きます。
にぎやかな印象を受ける「カーニバル」というタイトルですが、音から感じるのは、騒がしくはない静かな環境がそこにあって気持ちが落ち着きます。
その静けさの中に存在する奇妙な音たち。
度を超えてサイケデリックです。
私の頭の中で幻覚が浮遊する心地良さ。
卑怯者の現実逃避ではなく、奇跡の音楽による現実回帰不能です。
オレの頭はヤラレてる、シビレてる、隠さずに言うと実はもうブッ飛んでる。
幻覚ソングの最高峰。
このアレンジはただならない。
いい意味で、人間が演奏した音を録ったものだとは思えない。
なんだ、、、ただの神か。すげえ。
「カーニバル」の独特な歌詞と、浮遊するメロディと奇妙なアレンジのすべてが揃った時にのみ、快感な脳の錯覚が起きているのだと思いました。
この音はある種の快楽です。
歌詞 : 歌の情景を想像するだけで奇妙な世界を感じてしまいます。
自分の感受性がそっと触れたそこが迷い込んだカーニバルでした。
不思議さでいったらこの曲がアルバムの中でピカイチです。ゆったりサイドの前半の最後にピッタリな雰囲気。
M7「ジャングルの掟」
作曲/真島昌利
一気に突き抜ける2つ目のインスト。
アルバム“ナンバー1”の楽しさを誇ります。
前半の緩やかな雰囲気をガラッと変えるジャングルソング。
ここから一気にロックバンド感溢れるロックサウンドの後半戦に突入していきます。
ここでインスト曲を挟んでるところがポイントだと心が納得しました。前半と後半のまったく違う雰囲気をスムーズに繋ぎます。
とは言え、ガラッと変わる瞬間のスリリングさが『人にはそれぞれ事情がある』の尽きない魅力です。
インストといってもマーシーの声は入っていて、マーシー自身による今にも声がひっくり返りそうなターザンの雄叫びが聴けて楽しい曲です。
絶対にマーシー自身が一番楽しんでる。
最初の入り部分はノイズ混じりでこもった音がするので、古いラジカセから流れる音楽を聴いているみたいでおもしろいです。
至近距離にマーシーを感じる。
それはなぜか⁈
音楽作品として発表したものではほとんど聴くことのない、エレキギターをアンプに繋がずに弾いてる生の音だからです。
力の抜けたマーシーの雄叫びが響いた直後にアンプに繋がります。
急に音がハッキリくっきりします。
ふざけてるのか本気なのか分からないマーシーのシャウトと、突然鮮明になった音のスリリングさに、興奮せずにいられるつまらない感性を私は持っていない。
極度の期待からくる緊張感があります。
ハラハラ、ドキドキする感じ。
この曲はマーシーの声も、アルバムの雰囲気もひっくり返るスリリングな危うさがありながら、騒々しく、猛々しい。
ロックの馬鹿馬鹿しさが胸を張ってる。
サックスも入って心が躍るにぎやかなアレンジ。ポジティブな音しか聴こえません。
曲のリズムを司るベースに揺るぎない生命力を感じます。
曲の中ではジャングルの動物たちの声がたくさん聴こえてきます。ジャングルの勇者たちがそこにいて、私を陽気に歓迎してくれているようです。
マーシーが作曲したメロディはキャッチーさが溢れています。
どちらかと言うとインストは苦手な私が、これはインストを聴いている時のテンションとは思えない自分の高揚感に驚いてます。
数少ない聴きたくなるインスト。
やっぱりマーシーが一番楽しんでる。
だから私も楽しい。
M1からM2への流れにもあったように、この曲があることによって次の「カレーライスにゃかなわない」への繋がりは最高な気持ち良さがあります。
誰もテンション上げずにはいられない。
M8「カレーライスにゃかなわない」
作詞・作曲/真島昌利
マーシーのソロ6枚目のシングル。
ハッキリと断言しているタイトル。聴く前から世界に一つしかない輝きを放ってます。
嫉妬するほどの独特な感性。
いわゆるカレーライスの作り方の歌ですが、それ以上に楽しい気分を突き抜けた明るさで表現した歌です。
悲しみとは無縁です。
ネガティブになる人はいません。
マーシーがテンポ良くカレーの作り方を教えてくれます。
目に見えるほどキラキラ光るキーボード主体のイントロ。自分のワクワクする気持ちが一番前に出てきます。
跳ねるリズム。嬉しくてスキップしてるのと同じ、幸せを感じた時の気分です。
すぐに分かるのは、楽しそうな歌声だということ。マーシーの声が明るい笑顔です。一番しっくりくる感じのマーシーのボーカルスタイルが聴けます。
この歌はマーシーの繊細な感性にすごく合ってます。
歌詞から大いに感じるのは、割とプライベートのマーシーだということです。それをスピーカーの前で見ているような特別感。
こういう人なんだと肯定的に思った。
歪んでいないクリーントーンのギターに、体を揺らすためのリズムを感じます。
サックスまで入っている。ポジティブ全開で心に聴こえる。これでもまだ悲しんでいたり、イライラしたままの人はそう簡単には存在しないと思います。
カレーライスの作り方をこんなに楽しそうに歌うロックのボーカリストに憧れます。
だんだん出来上がっていくカレー。歌詞がルーをとかす頃には、なんだかカレーのいい匂いがしてきました。
すげえ熱そうで、火を吹くほど辛そう。
むろん、美味しそう。
今日はカレーライスを食べようと決心させる影響力。
聴き終わるともう思い出せないことがあります。悲しいってどんな気分だっけ?さみしいってどんな気持ちだっけ⁈
清々しい気分です。お腹も空きました。
悲しみの果てに辿り着いてしまう前に「カレーライスにゃかなわない」を必ず聴いてください。
宇宙で一番楽しくなります。
歌詞 : 「980円のCD」の一節に音楽好きならではの行動と心情が表現されていてすごく感動しました。
共感したからです。
ギタリストの音楽の聴き方が垣間見れた歌詞でした。こういう安いCDが意外と音が良かったりします。
楽しさが最高潮で伝わってきました。
マーシーはこの歌を終始楽しそうに歌っています。最後のこの歌詞のようにカレーがあれば楽しいという気持ちが炸裂していて、日頃のストレスまで緩和してくれます。
悲しみとは無縁の楽しい気分の歌。
バンド「ましまろ」をマーシーと一緒にやっていた真城めぐみさんが、初めてマーシーと会った時にカレーを食べていたマーシーを見て「本当にカレー食べてる」と思ったという話をしていたのが印象的でした。
この曲のPVではズボンを下ろして歌ってたりして、この人こういうことも出来るんだってほっこりしました。
このシングルのカップリングには本作に入っているM2「空席」のレゲエバージョンが収録されています。
アレンジで音楽ってこんなに変わるんだと驚くほど全然違う雰囲気になっています。
どっちが好きかと聞かれたら、本作収録のオリジナルバージョンの方ですが、レゲエバージョンも心の別の部分に響くのでかなり好きです。
「空席(version 2)」は当時リリースの8cmシングルCDにしか収録されいなくて、今のところなんとか中古を探すしかないです。
「カレーライスにゃかなわない」の原曲は、マーシーがブルーハーツの前にやっていた“THE BREAKERS”というバンドの「スーパーマンを紹介するぜ」です。
メロディは同じですが、歌詞もアレンジもテンポも違って、まったく別の曲という印象です。
分かりやすく言うと、カレーは作ってません。
疾走感のあるロックンロールにラブソングの要素があります。カッコいいです。
この原曲から一体なぜカレーを作ることになったのか⁈
私はそんなマーシーの感性のファンです。
【THE BREAKERS/スーパーマンを紹介するぜ 動画】
M9「MR.SPEED」
作詞・作曲/真島昌利
アップテンポですげえハイテンションです。
サックスの音が表立っているので、ジャズの気持ちいいスイング感があるのが好印象。
悩みなんか吹き飛ぶほどのスイングスイングです。
そこにマーシーのシャウトがバシッとキマッているのが、カッコいいロックンロール。
文学的な歌詞も冴えてます。歌われる言葉たちに興味をそそられ、素直に聴き入ってしまういい感じ。
アルバム一番の勢いでブッ飛ばす。
誰にも捕まらない自己中心的な疾走感をグングン上げながら、たった2分半で宇宙を駆け抜けます。
ネガティブを自分優先のポジティブにひっくり返すギンギンのエネルギー。
勢いのあるジャズっぽいドラムのリズムでロックンロール&スイングスタート。
そこへマーシーが「オレオレオーー!!!」とパワフルに歌い始めるからいきなり心を鷲掴みです。
しかも激しい魂のシャウトもあり。
イントロだけで、心が動く瞬間が何度もあります。
その後は終始スイングする軽快さです。
この勢いに乗って何か新しい事を始めてしまいそうな嬉しい気持ちが爆誕します。
にぎやかなアレンジが弱った心も突き動かします。
ギター、ベース、ドラム、キーボードの一歩前に立つサックスにトランペットまで。吹奏楽器が間奏のテンションをMAXにしてます。
歌詞はとてもおもしろいです。
美しさを根底に感じる詩は耳にスッと入り、光を放ちならが心へ響きます。
ありそうでなさそうな男の存在。
自分だけを優先していて、世の中との相対的な価値観ではなく、自分という絶対的な存在を信じる男に憧れを感じました。
聴き終わると好ましく圧倒された気持ち。
なんでもかんでもやっちまってる“ミスター・スピード”って奴は只者じゃない、ひねくれ者で宇宙一の大物だ。
とてつもない自己肯定力を見た。
もう負けっぱなしではいられなくなります。
マーシーの声、歌い方、音程だからこそ成り立つ歌です。
歌詞 : マーシーならではの言葉の使い方でキレイに歌詞として表現されていると感じます。
火星よりも、これを聴いた私がマーシーのことを嫉妬しています。
M10「世界を笑う男」
作詞・作曲/真島昌利
一言で言えば「男の色気」です。
前の曲に引き続きスイング感たっぷりで心地良さ抜群なアレンジ。
無意味な勢いで飛ばさないミドルテンポ。
このアルバムはもしかしたら「ロック+ジャズ」なのかもしれません。私はそんな風に感じます。
それが心を捉える魅力になっています。
いつまでも飽きずに、こんなにも魅力的な音楽はそこら辺にはありません。
歌を支配してる艶やかな雰囲気は、ジャズ好きの人にも受け入れられそうです。
この歌はギターというよりサックスによるリフが圧倒的にカッコいい。
イントロで色気たっぷりに吹き荒れるサックス。
そこにはセクシーなムードが漂います。
歌い出したマーシーは自信に満ち溢れてる。幸せな頑固で、二度と失敗などしないような男の生き様を歌から感じる。
自分しか信じない男。それが嫌味ではなく魅力的な色気になっているのがこの歌の特徴です。
しゃがれ声を張り上げるロックのスタイル。
曲の一部分ではフルートの音も聴こえてきて、艶めかしいメロディを吹きます。歌が色っぽい魅力を放つ瞬間です。
ジャジーな音はとても官能的に聴こえる。
ギター、ベース、キーボード、ドラムもロックバンドの底力を見事に炸裂させてます。色っぽくてジャジーだけど、同時に無敵なロックです。ここにしかない特別感のある演奏。
この人たちの感情が余裕で理屈を超えてる。
そこら辺にある音楽とは違う、“唯我独尊”が光を放つ。
ラストはマーシーの歪んだエレキギターの強烈な色気にトドメを刺されます。
この歌にいつも何を感じるのか⁈
艶のある唯我独尊な音が、ほくそ笑んだ表情でつまらない世界を笑ってる。
世界はいつだって声のデカいだけの奴が笑うけど、それらよりも非常に繊細でありながら誰よりも大胆な男が笑ってる。
正しいのはいつだって自分だということ。
なんだかスッキリする。
歌詞 : 私がこれを発言したらクサすぎて引かれますし、きっと嫌われます。
こういうクサいことをマーシーがあの声で歌うから似合うんだと思いました。マーシーの場合はカッコ良すぎです。
M11「ドーパミンBABY」
作詞・作曲/真島昌利
この歌の前で、心配なんかする余裕のある人はいません。
心配などとっくにブン投げられます。
脳が活性化するアップテンポ。
意外にも5分を超える長編です。アップテンポでグングン展開していくのでもっと短く感じます。
やはりハイテンションなサックスやトランペットが入っていて盛り上がり必至です。
ボーカルが入っているのはこの曲がラストです。マーシーが全身全霊をぶっ込んで盛り上げる、いかにもラストらしいハイテンションな歌いっぷり。
ブルーハーツとは明らかに違う、マーシーのソロらしいギターリフが印象的です。
一発で記憶に残るほど強烈です。
マーシーのボーカルの力強さは圧倒的です。誰もがしっくりくるロックの太々しさが突出しています。
絶対に負けないロックを聴いてる耳触り。
吹奏楽器が入っているけど、ニュアンスとしてはジャズというより頑固なロックの音がします。
これはCDなんだけど、太いアナログの音という感じで非常にパワフル。
ロックのプロフェッショナルたちが奏でるその音に、脳の中がいい感じに刺激されます。
既に多くのドーパミンが分泌されて、、、
“安定”というより“快感”を求めてます。
一聴すると普通の歌詞に聴こえますが、実はエロティックな意味の歌詞なのかもしれません。ただし、露骨ではないので下品な感じはしません。
詩人の歌は下品にならず、むしろ美しく心に響きます。
欲望全開でタイトルを叫びまくるサビの高揚感はたまらないです。私の気持ちを煽る。
自制心が効かなくなりそう。
間奏とアウトロでは、マーシーの唸るギターソロにただならぬ熱気を感じて、ロックの頑丈さを実感します。
むき出しにされたままのロックは、世間の謎のルールに怖気付くようなやわなものじゃない。
快楽物質、または幸せホルモンとも呼ばれる「ドーパミン」がいい具合に分泌された。
想像力が高まった脳が、快感と多幸感を得ました。
この歌に存在するのは快の感情です。
歌詞 : もう少しで品が無くなってしまいそうな言葉を、極上のロマンチックに響かせてしまう繊細さにうっとりします。
尊敬しながら、詩人だなぁと思いました。
「困った時に困ればいいや」という一節にはどれだけ心が救われたことか。マーシーからどれだけ生きるパワーを貰ったことか。
私はこれでムダに心配するのをやめました。
筋が通ってて、ロマンチックで、いつまでも反骨精神を持って生きてる。きっと、そう感じた時にマーシーを好きなっています。
今生きれるのは、今この瞬間だけであって、未来はまだ生きれない。
未来を心配するくらいなら、大事なものを変えないために、その未来を変えてしまえばいいのだと気付きました。
M12「月のウサギ、太陽のカラス [reprise]」
作曲/真島昌利
ラストは落ち着いたインストで締めます。
余韻に浸る大事な2分12秒。
1曲目「月のウサギ、太陽のカラス」のアレンジ違いです。
そちらではメインのメロディをサックスが吹いていましたが、こちらではハーモニカが吹いてます。
音から察するにはハーモニカと言っても鍵盤ハーモニカの方だと思います。
クレジットに詳しいことが書いていないので分かりませんが、最後の方に鍵盤を指でこする音が入っているので鍵盤だと思いました。
吹いているのがマーシーだというのは確実です。ギター以外の楽器の演奏を聴けるのはこのアルバムの良いところ。
ハーモニカ、エレキギター、パーカッションというシンプルな構成の演奏で、わずかに感じる切なさもあっていい雰囲気です。
心を落ち着かせる効果があります。
部屋に包容感のある静けさがやって来る。
これは情緒だ。ラストにこんなにも心に響く良質な音を持ってきやがって、、、
もしかしたら、インストだからもういいやって、この曲の前に停止ボタン押してしまう人とかいるかもしれないけど、そんなせっかちさん基本的にいません。
、、、と思います。(オレ調べ)
これを聴かないとアルバムは終われません。
今日一日を頑張って生きた自分への癒しになるかもしれません。
自分の一日に満点をつけてくれます。
緩やかな余韻に浸りつつ、一つだけ残っていた心の空席が埋まったところでアルバムはおしまいです。
細やかな感性と、図太いロックの魂が両立したマーシーの4枚目のソロアルバムでした。
根底にある美しさはやっぱり魅力的です。
人力での音作りはとても情熱的です。
アルバム全体を包容している繊細さは神がかって芸術的です。
自分の何千枚かあるCDコレクションの中の一番好きで、とても大事な名盤です。
たくさんの人に聴いてもらいたいと思う一方で、誰にも教えたくないと独り占めしていたいようなそんな気分でもあります。
もう何回聴いたんだろう?一年を通して一度も再生しないことはないです。
つまりこれは名盤です。
今のところ『人にはそれぞれ事情がある』がマーシーのソロラスト作になっています。
マーシーはもうソロはやらないんだろうか?
ソロに近いところだと「ましまろ」というのがあります。アコースティックな音です。
ありがとうございました。
また読んで頂けるとものすごく嬉しいです。
シングルCD「カレーライスにゃかなわない」のジャケット内側です。
ハッキリ言ってこのTシャツが欲しいです。