こんにちは。
『DUG OUT』は1993年リリースのブルーハーツの7thアルバムです。
2つの情熱、最高のロックンロールアルバム「凸(STICK OUT)と凹(DUG OUT)」の凹の方。
「凹」はバラードです。
“ロックンロールで泣けるとは”そんなことを感じた時にこのアルバムを好きになっています。
本作のコードネームは『凹』です。
「凸」の“STICK OUT”はパワーでした。
「凹」の“DUG OUT”はバラードです。
それからアコースティックなアルバムという印象でもあります。
同時期にリリースの6thアルバム『STICK OUT』はスピードとパワーなアルバムで一発で心を撃ち抜かれました。
どちらかと言うと『DUG OUT』の方は私にとっては遅れてきた名盤でした。遅れてはいたけど、確実に名盤です。
「これがブルーハーツ⁈」という戸惑いが初めて聴いた時の正直な感想でした。
この2作は対照的です。
THE BLUE HEARTS/DUG OUT(1993)
DUG OUT(ダグ・アウト)は対となる前作『STICK OUT』(1993.2.10)から5ヶ月後の1993年7月10日に発表された7枚目のアルバムです。
アルバムタイトルの読み方ですが、1993年のオリジナルCDの帯には「ダッグ アウト」と表記されており、2017年発売のレコードの帯には「ダグ・アウト」となっています。
ですので、どっちでも良さそうです。
私は「ダグ・アウト」のがしっくり来ます。
1993年、テレビに出演した際にヒロト本人は「ダグ・アウト」と言っていました。
ともかく重要なことは『DUG OUT』は、勢いでブッ飛ばしません。
緩やかなテンポで、心の柔らかい部分や弱さを優しく包みます。
根底にある確固たる情熱は何も変わりませんが、ブルーハーツの一般的なイメージとかそれまでのイメージとは違います。
それは急に違いました。本音を言うと発売当時の私は戸惑いました。
『DUG OUT』のようなゆったりしたテンポのみのアルバムをブルーハーツは本作以外には作っていません。
・決して雑にうるさくない
・ミドル〜スローテンポな曲のみ
・曲調は多彩
・あとから良さを理解した貴重な体験
このアルバムには柔らかいアコースティックの美しい魅力があります。
今回も白井幹夫さんがキーボードで参加していて大活躍しています。
3曲目の「トーチソング」には後のハイロウズのドラマーになる大島賢治さんがパーカッションで参加してます。
『DUG OUT』が発売される5ヶ月前に対を成す『STICK OUT』がリリースされました。
『STICK OUT』の方はいかにもブルーハーツらしい速くてパワーのある曲のオンパレードでした。それのため『STICK OUT』をブルーハーツの最高傑作という人も多いです。
でも無視していられない『DUG OUT』です。
なぜならこれを読んでください↓
CDの帯に書いてある言葉です。
『STICK OUT』と同じテンションで作ってる!それは熱くないわけがないじゃないか!
最高のロックンロールアルバム
この2枚がブルーハーツのいわゆる「凸」と「凹」です。
凸と凹、パワーとバラード、どっちもブルーハーツです。
2作品のジャケットの色にもこだわりを感じました。『STICK OUT 』は白、『DUG OUT』は鮮烈な青の仕様です。白と青はブルーハーツカラーです。
1stアルバムのジャケットのイメージです。
あえて2枚組にせず、曲調によってそれぞれを分けたということがリスナーへの思いやりです。
2枚組では聴く時に気が重くなってしまいます。聴くのやめるかもしれません。その日の気分によって選べるのは、「凸と凹」が聴きやすくなるポイントです。
『DUG OUT』収録曲
1.手紙
2.緑のハッパ
3.トーチソング
4.雨上がり
5.年をとろう
6.夜の盗賊団
7.キング・オブ・ルーキー
8.ムチとマント
9.宝もの
10.夕暮れ
11.パーティー
12.チャンス
全12曲、51分です。
曲のタイトルだけでも柔らかさを感じます。
『DUG OUT』がいきなり自分のお気に入りアルバムになったかと言えば、そうではなかったです。
やっぱりアルバム全体がゆったりしているので、リリース時はパンク好きな若者だった私はなんか違うと感じていました。当時はブルーハーツに疾走感のあるパンクを求めていたから『DUG OUT』はそのような印象になりました。
ですが、アルバムの至るところにブルーハーツならではのキャッチーさは最初から感じていました。
いつも通りメロディは抜群です。
テンポや曲調に違和感は感じつつも、根底の情熱に惹かれていました。曲やアレンジが静かなほど熱いという矛盾しそうな感覚も好印象です。
ゆっくり静かに歌詞が心まで届きます。
気付くと自然と聴いていて、何度も聴くとブルーハーツにしかない唯一無二の魅力がはじめからあったんだと納得しました。
自分の心が奪われていることを自覚するのがワンテンポ遅れていたという感じです。
今では結構な頻度で聴くお気に入りの名盤になりました。
バラードと言ってもスローテンポばかりではなく、軽快なミドルテンポの曲はいくつか収録されています。魂のシャウトも聴けます。
一聴すると壮大で、和やかで、柔らかい雰囲気ですが、奥の方には凄まじい熱さが確実に存在します。
その熱さはパワーの『STICK OUT』と同じテンションです。
とは言え、パワーの『STICK OUT』よりも涙が流れる瞬間が多いアルバムであることは間違いありません。ロックンロールに涙が流れる瞬間が何度もあります。
美しい繊細さも大きな魅力です。
機嫌を損ねた心に効く愛情たっぷりのロマンチックな12通りのストーリー。
これはゆったりしていて静かで退屈なイメージの「バラード集」ではなく、青いロックンロールアルバムだということ。
ーーまた激しいやつで?
ヒロト「ううん、今回ちょっと静かなの。」
ーー今回アルバムが凸凹って感じで、対になってるものを出したっていう
ヒロト「そうです。今年2枚出したんです。アルバムを。そんでひとつは速い、スピードの速いやつ、もう一個はゆっくりなやつ。」
当時の「凸凹」2作品のCMがあります。
【1993年7月 STICK OUT DUG OUT CM】
シングル曲は13thシングル「パーティー」と14thシングル「夕暮れ」が収録されています。
どちらのシングルもアルバム発売後のリカットシングルで、アルバム収録のものと同テイクです。
13枚目のシングル「パーティー」は1993年8月25日にリリースされました。自主制作シングルを含めた通算だと16枚目になります。
カップリングには本作にも収録済みの「チャンス」が収録されました。それからブルーハーツでは希少な、これら2曲のカラオケ入りです。計4曲入り。当然ですが、このカラオケはブルーハーツ自身の演奏のみを聴けるという胸熱っぷりです。
14枚目のシングル「夕暮れ」は1993年10月25日にリリースされました。
カップリングには「すてごま(Live Version)」と本作にも収録済みの「夜の盗賊団」が収録されました。
14thシングル「夕暮れ」はブルーハーツのラストシングルです。
2枚共に発売当時は8cmシングルCDでリリースされました。カセットテープが発売されたのかは分かりませんが、私はどうしてもカセットが欲しかったので自作しました。
1993年の『DUG OUT』発売当時はCDとカセットテープで販売されました。
CDには青い紙スリーブ入りの初回限定盤がありました。
カセットテープは結構レアで、稀に出品されても高値が付きます。そんな高いものは買えない私は悔しくてたまらないので『DUG OUT』もカセットを自作しました。満足してます。CDよりも大らかな音がします。
オリジナル(CD、カセット)発売から24年後の2017年に限定生産ですが、とうとう念願のアナログ盤がリリースされました。リマスターも施されています。
CDとは違う聴き心地でいい音してます。
当時の初回限定盤CDのスリーブジャケットが忠実にレコードジャケットととして再現されているのには感激しました。
当時は「凸と凹、どっちも ブルーハーツ」というタイトルの宣伝用のCDも存在していたようです。
『STICK OUT』と『DUG OUT』の曲が半分ずつで、曲順とか割と興味をそそる内容です。
私は持っていませんが、この曲順で聴いてみたいと思ったので自作MDで再現しました。
『STICK OUT』と『DUG OUT』CD発売当時(1993)はそれぞれに応募券が付いていて、両方の応募券をゲットして応募すると超素敵な「オリジナル2枚組 CDケース」がもれなく“全員”にプレゼントされるという企画もありました。
そのCDケースはこちらです↓
『DUG OUT』、静かに熱いです。
いや、奥の方なんかは激しく熱いです。
ひっそりとしていそうで、本当はバチバチに光っています。
「凹」のブルーハーツが誰かの心をゆっくり静かに動かします。
M1「手紙」
作詞・作曲/真島昌利
1曲目のイントロからいきなりオーケストラの壮大感と雄大感。
一発目の音はギターではなく、12通りの物語のはじまりにふさわしい優雅なバイオリン。
最高のロックンロールの魂は間違いなくそこにズッシリと腰を据えています。
『DUG OUT』の中でも独特の輝きを放ちます。すごくゴージャスな耳触り。とは言え、耳を圧迫してはきません。心を鷲掴みにしてきます。
テンポはゆったりとしていますが、その奥から熱さをじんわりと感じます。
1993年に私が感じた違和感は、今では特別な存在感に変わりました。かなり好きです。
ライブ映像の影響もありますが、イントロが始まった瞬間からゆっくり幕が開いていき、アルバムのはじまりを意識させる雰囲気が胸熱です。
「手紙」は何度聴いても、幕が上がる瞬間のワクワク感を実感させてくれます。
雄大なイントロに心を奪われながら、ヒロトのボーカルが入ると同時に4人の姿が浮かび上がるという強い印象を受けます。
今回のブルーハーツはスピードとパワーと反骨精神で突っ込んでくるというより、大きな愛情を持ってゆっくり静かにロマンチシズムで包み込むスタイル。
日常で凝り固まった心と頭を優しくほぐす。
バンドサウンドよりもオーケストラサウンドがフィーチャーされている印象です。ブルーハーツは控えめな演奏に感じます。
1番を歌い出したヒロトは突っ込むより包み込む包容感のある歌心。
後ろでゆったり落ち着いた響きを心地よく聴かせているマーシーのアコギ。
派手さはないけど、ブルーハーツの鼓動を鳴らす河ちゃんのベース。
打ちまくらず控えめに、でも確実にリズムをキープする梶くんのドラム。
演奏から癒し要素を提供してる白井さんのピアノ。
一聴すると静かなのに、何度目かにはすげえ熱い。耳に聞こえただけの浅はかなものではなくて、どう説明すればいいのか⁈奥の方がかなり熱いです。
サビの高揚感では、月に雪が降ってくる。
間奏はなんと、ヒロトが吹くリコーダー。ロックの太々しさは潜め、柔らかな音色で、空に飛ばした手紙を届ける溢れる想いのメロディを吹きます。
優しい音にグッと来る。
ライブではマーシーがエレキで同じメロディを弾いていたのは印象的でした。
この歌から聴こえてくるすべて、歌詞、メロディ、アレンジ、演奏は感じ方によっては幻想的であり、神秘的でもあります。
ゆったりしてるそのテンポが心に届けてる。
歌詞は1曲目にして最大の難解かもしれませんが、とても繊細で美しいです。ハッキリとした意味は分からなくてもそう感じます。
この歌を聴いていると、幻想的な異世界の話を聞いてるような感覚でもあります。
難解とは言え「無垢」な部分もあって、私は絵本の絵を眺めている気分になりました。
聴こえてくる言葉たちが美しいです。
今では、別の曲が1曲目だったとしたら12通りの『DUG OUT』の私だけのストーリーが始まらないとさえ感じます。
稀に「手紙」以外の歌から聴き始めた場合、やっぱり大事な何かが変わってしまいます。
自分の好きな曲だけ聴くのも楽しいけど、バンドが意図した「アルバム」という概念で聴くのはもっと鮮烈で奥深いです。
『DUG OUT』も例外ではなく、アルバムとして1曲目から聴くのがベストです。
これ以上ない最高の幕開け。
歌詞 : 当時は「ヴァージニア・ウルフって何だ⁇」とちんぷんかんぷんでした。マーシーの歌詞って知らない言葉や名前が割と出てくる印象があります。
ヴァージニア・ウルフはイギリスの小説家。
小説を読まない私は今でもそれくらいしか分かっていません。しかしこの歌詞にはとてつもない美しさを感じます。
感じてることがすべてです。
「手紙」の歌詞はロックの歌詞としてもカッコいいけど、美しい詩としても読めます。
マーシー独自の唯一無二なロマンチシズム溢れる歌詞が、いつも優しい気持ちにしてくれます。
ロックから大切な人を思いやる気持ちをもらった瞬間です。
私は手紙とか書かないです。でも人生のパートナーには書いてみたい気持ちはあります。きっといい手紙になる。私の場合、やたら長い気がします。
空に飛ばせるかな?風が運んでくれるかな?君のとこまで。すごく楽しそうだ。
M2「緑のハッパ」
作詞・作曲/甲本ヒロト
重厚なオーケストラサウンドから一転して、軽快なアコースティックサウンド。
テンポも上がります。
心が弾む軽やかなアレンジでいい感じ。
人の気持ちを惹きつけるタンバリンのリズムに、心がどんどん軽くなります。
アコギの音に心が自然と惹かれていきます。
弾むベースと、跳ねるドラム。
この曲の要のような、白井さんの楽しげなキーボードが気持ちいいそよ風を吹かせて、四ツ葉のクローバーを揺らします。
トランペットなどのラッパ隊の音も入って、重要な2曲目という役割を盛り上げます。
『DUG OUT』自体がそうではあるけど、これまでにたくさん聴いたブルーハーツの曲とは一線を画すアレンジ。
豪快なパンクとはまるで違うこういう聴き心地の歌は新鮮さで興味深く聴けます。
アコースティック調はふんわり感があって、日常の心の棘が抜ける柔らかい感触です。
特別な軽やかさがオレのネガティブをさらりと覆す予感がする。
歌の意味はよく分からないけど、聴こえる音が全部ポジティブな快音です。
“まあ まあ”と歌うのが重要なキーワードで、歌の中で何十回も連発します。それ以外の言葉はかなり少なめで、これもなんか掴みにくい感じはあります。
誰が聴いてもはっきりとした何かを理解できるタイプの歌詞ではないです。
間奏はアコギが力を入れすぎずにジャッジャッとコードを鳴らすだけなのに、どんなメロディよりも光ってます。不思議だ、簡単なコードがなんでこんな風に鮮やかに鳴るんだ⁈
河ちゃんのベースも独創的で粒立ちます。マーシーのギターに意識を向けたいけど、河ちゃんのベースもなんかすごくて、いつもオレを困らせます。
ブルーハーツにしか出来ない事にとてつもない魅力を感じる。
アウトロはヒロトのハーモニカまで入って、総出演の豪華なサウンド。結構長めです。
ロックのエンターテイメント性が輝いてる。
軽やかなリズムに乗って、心がすっかりポジティブに入れ替わった。
「緑のハッパ」を一言で表すなら、楽しい。
タイトルで既に察しがついていたかもしれないけれど、、、
その楽しさはなんとなくトリップ感がある。普通そこら辺には生えていないハッパを吸った時と同じ効能がこの歌にあるっぽいです。
トリップしたオレの記憶に残るバシッとしたインパクトがあった。
歌詞 : 誰もが欲にまみれて独り占めしてるから、何かが足りなくなることを懸念してるような印象を受けました。
2番では、四ツ葉のクローバーが足りなくなると歌っています。
幸せが全員に行き届いていないのかもしれません。歌からなんとなく、いい感じの皮肉も感じます。
ルールは守っているけど、マナーは無視する場合が多いので、ロックンロールのチケットも足りません。
ともかくルールを破るということは、もしかしたらやっぱり「緑のハッパ」とは、吸うとすごく気持ちよくなるハッパのことかもしれません。
M3「トーチソング」
作詞・作曲/真島昌利
キラッキラのアコースティック調。
太陽の光がいろんなものに反射してキラキラしてるのが見える音。
うっとりするほどのロマンチックが美しいメロディに乗っていて、心をギュッと掴んできます。
暴走しない落ち着いたテンポではあるけど、とても明るい雰囲気のアレンジ。
疲れ切った心が、マーシーの感性で奏でるキレイなアコギの音にとても癒されます。大胆には入っていないけど、イントロやサビで確実に聴こえるエレキの音も重要なポイントになっています。
控えめなエレキが『DUG OUT』っぽくて好ましい。
白井さんのピアノが聴こえてくると、もっと絶対的に癒される実感もあります。「トーチソング」のキラキラ感。
歌い出した瞬間にふわっとした感触のするヒロトの歌は、平和の象徴のような柔らかさと、人のあたたかさを感じさせるホットなスタイル。
優しい歌に包み込まれる感覚が緩やかに続いていきます。
ヒロトが歌っているのは、マーシーが作った美しくロマンチックな言葉たち。心地よいメロディに乗った言葉は鮮やかに心まで響いてきます。
とても素直な歌だ。
誰一人、無意味に突っ走らない穏やかさ。
ぶっちぎりに荒々しいパンクをブッ放していた人たちにこんなにも癒されるとは、、、ブルーハーツにはこういう魅力もあったんだ。
今、オレの気持ちは柔らかく正直で優しい。
歌も演奏もアレンジも音も、さらさら流れるような聴き心地にすっかり心を奪われています。
オレの中の不必要な心の重さはスーッとどっかへ流れていった。いい歌です。
アコギのソロが優しいメロディを奏でていて全然うるさくなく、ゴリ押し感もないです。『DUG OUT』の重要なポイントは緩やかで伸びやかだと感じることです。
『DUG OUT』を聴く時は、少し緩めた気持ちが大切だと思いました。
反対に『STICK OUT』はガツンとしてる、意識全開な気持ちで聴きたいです。
歌詞はいつも求めている直接的でない詩人の表現力を堪能できます。言葉についての詩的な比喩表現が印象的です。
分かりやすく言うと、ロマンチックです。
パートナーへの大きな恋心も含んでいて、ドキッとする無垢なときめきもあります。
この歌、言葉の端々に美しさを感じる。
ブルーハーツがこんなにも“穏やかさ”を奏でるなんて、余計好きになった。
傷付いた心が笑顔になれるキラキラな歌だなと感じます。
それは汚れた世界を洗い流してく光。
歌詞 : ヒロトが歌ってますが、すごくマーシーの世界を感じる繊細さです。
私の場合は本物の方向音痴です。普通は備わっているその機能が欠落してしまってます。
目的地に辿り着けない。ナビの見方がわからない。どこを曲がれと言っているのかわからない。自分の家がどっちの方角なのかわからない。もう帰れない。でも困ってない。
この歌はなんか純粋すぎてドキッとしました。“君”への屈折していない気持ちとか素敵です。
M4「雨上がり」
作詞・作曲/真島昌利
なくした物が出てきたような、いい感じのミディアムテンポ。
サイダーの炭酸が弾ける爽快なアレンジ。
体調不良も吹き飛ばす心の名曲。
アコースティックなアレンジが蒸し暑くはない、爽やかな夏を感じさせます。
優しい気持ちになれるいい歌です。
イントロで高らかに鳴るリコーダーの優しいメロディに、一瞬で大らかな気持ちになります。その音にはノスタルジーを感じます。
すべての音が、これまたキラキラしながら柔らかい。本当に光ってるし、心で触れるとふわっとした触り心地です。
この歌は子供の頃の夏を思い出させます。
サイダーの泡とか日焼けした顔とか水たまりとか、誰もが経験した元気に遊んでいた夏です。
3分を切る短い演奏時間で、ポジティブな気持ちになれるロックンロールの思いやりを、ブルーハーツがそっと置いていきます。
私はその思いやりを受け取って、いい感じの気分です。
伴奏的に大らかに鳴り響くマーシーの存在感バッチリのアコギ。そいつは『DUG OUT』を象徴する音。
ワクワクする気持ちをその感情のままに弾く河ちゃんのベース。この曲ではベースの音が際立った音で入っていて、歌詞の「心が踊るいい感じ」を実現しています。
軽快なリズムで決して嫌な事を思い出させない梶くんのドラム。
いい感じになった心を空まで飛ばしてしまう白井さんのキーボード。
ヒロトの歌は力んでいない自然体。
そんなブルーハーツの特別感から出てくる自然な音は、夏の歌だけど暑苦しくないです。
ほとんどの場合で心地よいと感じるテンポは一瞬たりとも滞らない。滑らかにスルスルと動く噛み合ったギアのような気持ちよさ。
いい具合に力は抜いているけど、手は抜いていない。ブルーハーツが自信を持って奏でる雨上がりの情景に心が踊る。
この雰囲気、すごく好きだ。
普段はあまり感じない気持ちになれるのが、印象的です。
「雨上がり」で歌われている気持ちには子供らしさが溢れていて、自分とも重なって懐かしくなりました。
美しい言葉で描かれた世界観の歌詞は、やっぱり眩しい輝きを放ちながら空まで飛ばす繊細さ。
ラストのサビにだけ入っているマーシーのコーラスは、やっぱり曲を盛り上げるポイントになります。
コーラスが入ると歌詞が強調されて心の中にスルッと入って、記憶の中にドシっと腰を下ろします。
ラストはフェイドアウトせず、キレのいい締め方でスッキリです。
今すごくスッキリしてて、素晴らしい雨上がりの気持ちになった。
歌詞 : 聴く度になんか嬉しい気持ちになります。
なくした物が出てくる予感がしてます。音楽の心への好影響は素晴らしいと思います。この歌には、言葉の一つ一つにポジティブなエネルギーがあります。
ラストはコーラス入りのパートもあって、マーシーならではだなと心に響きました。
照れたお日様って!私には雨上がりに雲からチョロっと顔を出したお日様が見えました。本物の雨上がりの夏の夕暮れが見えて、詩人の感性に感動します。
キレイな歌。キレイな心。
「雨上がり」からそういうものを感じます。
M5「年をとろう」
作詞・作曲/真島昌利
『DUG OUT』のマーシーボーカル曲。
マーシーがオレんちに来るほどの生音。
わずかな重みと、そよ風が吹く軽快さのあるアコースティックアレンジ。
年はとりたくないと言ってしまう人がほとんどの世の中で、このタイトルは強烈なインパクトがあります。
心に語りかけるしゃがれた声で、緩やかなアコギを弾きながらマーシーが歌います。
アコギによるアルペジオのイントロには不快ではない重みがあり、わずかな緊張感を伴います。それは積み上げた人生を表しているような説得力。
マイナー調の音で、これまで生きた人生を一歩ずつ噛み締めているような印象です。
とは言え、否定的な重さの歌ではありません。年を重ねていくことに対して、肯定的な素晴らしい歌です。
マーシーが歌い出すと、突然に軽やかさが現れ、肌に感じる心地よい風も吹きます。
振り返った過去から一瞬にして、意識が今この瞬間に戻ってきます。
重みと軽やかさ、そのギャップと切り替わる瞬間のスリリングさはいつ聴いてもドキドキします。
最高のロックンロールにしか起こらない奇跡。
Aメロはマーシーの地声に近いボーカルスタイルで、耳ではなく心へ語りかけます。
過ぎた過去さえも一切の否定をしていない。
年をとるとはそういう事なんだなと知りました。その生き方は軽やかです。
マーシーが自分の経験と情熱と愛情で歌ってます。静けさや軽やかさと同時に激しい熱を持って私の胸に入ってきます。
これ、錯覚してマーシーがそこで歌っていると勘違いする音が出ちゃってる。
何、この音⁈実在感ありすぎて怖いくらい。
ドシっとした河ちゃんのベースが一歩ずつ確実に今を歩んでて、ちゃんと未来もあることを気付かせてくれる。
誠実なリズムを刻む梶くんのドラムが“自分の人生”からはみ出さないための道標に聴こえてくる。
人生の可能性を広げてる白井さんのキーボード。この音がなかったら、また年をとることを否定してしまいそう。
意外でしたが、サビのコーラスもヒロトではなくマーシーです。本人によるハモリがサビの歌詞に厚さと広がりを持たせていて、歌への没入感は最高潮。
マーシーボーカル曲の時にはお馴染みのヒロトのハーモニカ。今回に限っては吹き荒れるというより、そよ風を吹かせます。
2回目のサビ以降は演奏に厚みが出て、少しの激しさも感じます。急に盛り上がるアレンジにいつも気持ちが高鳴ります。
ブルーハーツの緩やかな演奏は、歌に寄り添いながら一筋の光を放つという感じ。
イントロのアコギに少しの重みがあったと思ったら、気付くと風のように軽やかでキラキラと輝く希望に変わっています。
音が語るストーリーに心が動きます。
今になって感じるのは、この歌はすごく哲学的だということ。
日本人にはあんまりない考え方だなと感心しました。日本人は定年とか還暦を否定的に捉えがちだけど、人として正しいのはこの歌詞の生き方だと共感しました。
もっと軽やかに年をとりたいです。
長めのアウトロではヒロトの包み込むようなハーモニカと、マーシーの繊細なアコギの掛け合いが、心の優しさに触れる美音を聴かせてくれます。
歌詞 : 「年をとろう」と言う人は滅多に見ません。
大抵の場合は年はとりたくないと言って年を隠しつつ、若く見せようとしてるだけです。
もし仮にそんな普通のことを歌われてもつまんないですが、マーシーはバシッと“年をとろう”というメッセージを放ちました。
今よりもっと年をとった時に頑固にならず誰かを否定することもなく、自分の経験を活かして楽しみを持って生きていたいです。
M6「夜の盗賊団」
作詞・作曲/真島昌利
14thシングル「夕暮れ」のカップリング。
静かなバラードだけど、激アツな魂。
その熱さは『DUG OUT』で最大です。
ここまでのアルバムとしての構成が最高なことにも後から気付きました。
「夜の盗賊団」はドラマチックです。
『DUGOUT』の構成もグッとくるものがありドラマチックです。
そんな『DUG OUT』は前半にマーシーの感性が炸裂していて、後半からヒロトの世界が出現しはじめる印象です。マーシーサイドとヒロトサイドのような感覚でもあります。
個人的な感想で悪いけど、『DUG OUT』の代表曲だと思うほどの名曲です。
落ち着いた静かな曲でタイトル通り“夜”を感じます。ですが、終盤で激アツな盛り上がりを見せます。これ以上ない胸熱っぷり。
イントロは一発で心を奪っていく渋めのエレキ。その音は繊細な心を持っています。
バッキングギターも歪んでいないキレイで細やかな響き。
全員の演奏から大雑把さは取り去った丁寧な気持ちが伝わってきます。
どの音もしっかり把握できるほどキレイで曖昧さのないハッキリとした録音です。
すぐに察します。この歌は雑に扱えない。
静けさの中に光るメロディがあって、ゆったりとしたテンポの流れに印象的な言葉選びがある。
歌い出したヒロトは一音一音をハッキリ丁寧に、でも優しく歌っています。歌の世界に完全に感情移入したエモーショナル。
サビは力強く歌い、断言してるストレート。
ヒロトの歌のメロディに寄り添うマーシーの激情ギターは、もう1人のボーカリストがそこにいるような耳触りです。
エレキギターが感情的に歌ってる。
間奏のギターソロはその10倍は感情的。アレンジとか演奏とかブルーハーツがエモい。
エモすぎて涙が出てくる。
歌詞は鮮やかで美しい詩的表現たっぷりで、心に残るインパクトがあります。歌の世界に惹き込まれる魅力が突出していて、どうしても聴き流せない。
静けさのあるストーリーの中に自分も一緒にいる。
聴いてる間は歌のこと以外は感じられない。
マーシーの誰とも違うロマンチックな感性が見事に炸裂しているからです。
いちいちカッコ良すぎて涙が流れる。
ロックに感動する瞬間を体験した。
この歌をこんなにも好きになるまでには少し時間がかかりました。静かな曲なのでちょっとかったるいなと最初は感じていたけど、実はそうではなかった。
終盤でのヒロトとマーシーのボーカルの掛け合いに鳥肌が立ちます。「夜の盗賊団」のハイライト。
強烈で激アツな掛け合いは、お互いの信頼関係が成せることなんじゃないかと思った。この静かな曲の終盤で、こんなに激しいことをやろうと考えた2人の感性はぶっちぎり。
凄まじきマーシーのシャウトに今日の嫌な事なんて全部ぶっ飛びます。嘘ついてない、誤魔化してない、そのままの感情があるだけ。
マーシーの魂の激しさに更なる鳥肌が立ちます。
ブルーハーツとオレの気持ちの激しさがスピーカーをブっ壊してしまいそう。
テンポではなく、魂の激しさと勢いが『DUG OUT』の中にあったと気付いた瞬間。
気付いた時には既に遅く、触ると火傷しそうだと構える暇もなく、とっくに火傷してた。
「夜の盗賊団」を初めて聴いてから既に30年経ちました。結論としては、いつまでも飽きる事なく何度も聴きたくなる熱いやつ。
という事は、今から更に30年後も最初と同じ熱さを感じるということです。
この歌には、理屈を超えるリアルな感情が備わってる。
最高のロックンロールには、現実を超越するリアリティが存在してる。
歌詞 : 曲中に何度も歌われるサビの歌詞は印象的な表現で、私の感性にピッタリでした。
飲みいくのは生ビールではなく、缶ビールでもなく“5月の風のビール”です。すごく爽やかな飲み心地と希望の味がして美味しそう。
寂しげな夜の海を感じさせながら、可能性は輝いてるとピカピカ希望を放っているのが感動的です。
「夜の盗賊団」がオレの心にドッシリ腰を下ろして、どんどんこのアルバムが中毒性を持っていった。
とてつもない熱さがはじめからあったんだ。
『DUG OUT』を好きになるきっかりになった1曲です。
次の曲からは聴き心地が一味違うヒロト作の方に突入していきます。
M7「キング・オブ・ルーキー」
作詞・作曲/甲本ヒロト
ここからヒロト作の曲が続きます。途中に河ちゃん作も挟みつつ、ほのぼのとするような世界に惹き込まれます。
「夜の盗賊団」の興奮からこの曲で急に少しとぼけた感じになる流れは、心をほっこりさせるポイントになってます。
あの激情なテンションのままでいったらきっとオレの胸が張り裂ける。
急に雰囲気や曲調が変わるスリリングさは、B面の始まりといった印象を受けます。
7曲目というアルバムの真ん中辺りでヒロトの脱力系な歌が聴けるので、私もここで一旦気を緩めることが出来ます。
なんかそこら辺にいるルーキーの歌ではなくて、“恐るべき 未熟者”の歌です。
ブルーハーツならではの、いい感じの力の抜け具合に感化されて脱力できます。
フワフワでゴキゲンでポジティブです。
イントロが始まってすぐにおとぼけ系の音だと察します。それまでの興奮による緊張感が緩和される『DUG OUT』に必要不可欠な音です。おとぼけレゲエアレンジ。
アルバムに1曲は入ってないとオレの機嫌が悪くなる、体が横に揺れるレゲエ調。
レゲエにはキーボードの揺るぎない音が不可欠です。大丈夫、白井さんがビシッとキメてるし、バシッとやってます。
白井さんノリノリで大活躍です。
これはちょっと異色な歌かもしれない。
いや、そんなレベルじゃないです。何もかもに変哲がある。“異世界な歌”が正しい表現。
なぜなら基本的に意味がわからない。この歌は只事じゃないってことだけは理解できる。
イントロで登場するとぼけた感じのギターリフはとても印象に残ります。早速そいつが曲をとぼけた雰囲気に決定してる。
広がるキーボードとレゲエのリズムギターが迫力の音で入ってます。
太陽のようなキラキラ感と、脱力系のおとぼけ感が好印象です。この曲ですげえ力が入ってしまう人はあんまりいないと思います。
ヒロトは楽しそうにちょっと笑いながら歌ってるのが分かります。こういうのも似合うなと納得させる歌心。
出来る限り気を抜いて聴きたい歌。
ふわふわしながら心を預けたいリズム。
預けた心を奪っていくのが恐るべき未熟者。
ゆるい感じには聴こえるけど、これは結構高いテンションがなければ演奏できない。それは何かというと『STICK OUT』と同じテンションが必要です。
曲調や歌の世界観が独特なので、それが猛烈なインパクトになった1曲。意味はよく分からなくてても、記憶には余裕で残る歌。
一体どういう意味なのかググるよりも、自分が何を感じたのかが大事だと思いました。
私はアルバム1のふわふわな心を感じます。
歌詞 : 勘違いしちゃってるというより、自己重要感が高くていい感じ。さすがキング・オブ・ルーキーです。憧れの思考です。
こんな風に自分を肯定できなかった私の自己肯定感を少しだけ上げてくれました。
M8「ムチとマント」
作詞・作曲/甲本ヒロト
明るく楽しげなアコースティックアレンジ。ただし常識なんかは通用しない感じ。
2番からは軽やかなエレキの音も聴こえてきてポップスの親しみやすさが溢れ出ます。
親しみやすさのあるアレンジはロックにすごく重要だと気付きました。ブルーハーツはそこら辺のセンスが抜群です。
だから今でも聴き続けているんだと思った。
イントロは颯爽としているアコギが鳴り響きます。胸を張って駆け抜けてる。生音を感じるいい音です。
名前は知らないけどイントロから入ってるギコギコ鳴る楽器の音がいい感じです。曲におとぼけ感を存在させます。妙な重さなし。
これまでのどの曲とも違う絶妙な力加減でヒロトが歌い出します。とてもインパクトの強い歌詞を独特の歌心でぶっ放ちます。
耳と心が“普通”ではない“独自性”を聴き取ってる。
どの言葉もどの瞬間もなんかブッ飛んでる。
この歌ではかなり少ないけど、一番美味しい感じにマーシーのコーラスも入って私の感情に直接響きます。
ギターは印象的なフレーズを歌いっぱなし。
ブルーハーツって人の心を動かす。
またしても白井さんのキーボードが重要な役目を担っています。この音が入ってなかったらすごく味気ない曲になってしまう。
『DUG OUT』を表現するのに超重要な演奏。
個性的なロックのピアニスト。
聴き逃してはいけない間奏のギターソロ。
どこかおとぼけ感のあるメロディ部分からは想像も出来ない間奏の音。楽しいのはそのギャップ。太めの音で、チョーキングを多用したロックイズム溢れるソロで心を奪っていきます。
決して速くはないこういうテンポ、曲調では演奏の表現がダイレクトに伝わります。
ブルーハーツの演奏の上手さに急にハッとします。特にマーシーのギターは鳥肌が立つ。
この人たち、なんでこんなに熱いの⁈
演奏が上手すぎる。いや、カッコ良すぎる。
ヒロトはあくまで軽い感じで、ものすごい事を歌っています。
この曲も直感的には意味がよく分からないのが本音です。今でもあまり分かっていませんが、きっと生き方とか欲望とか人生という旅について歌っていると感じます。
ワンポイントだけ限定的に捉えるよりも、広く総合的に聴くと、なんとなく分かります。
そんな視点で聴いた場合は腑に落ちます。
間違いないのは、ヒロトにしか歌として表現できない世界観であるということ。
実は深い歌詞なんじゃないかなとも感じられます。“意味深”と言った方がいいのかもしれません。
『DUG OUT』の意味深ポイント。
歌の世界観に少し難解な部分もあるから、リリース当時は聴き流しがちでした。
今はポップの親しみやすさのある曲として、ブッ飛んだ歌として楽しんでいます。
歌詞 : 全体が独創的な比喩表現です。
この気持ちはよく分かります。共感します。でも実はこの人、数が常識を逸脱しててビビります。
こいつはなんてすごい男なんだ。大抵の場合はありえません。もしこんな男がいたらきっと何かで大成功してると思いました。
一般的思考では追いつけない歌詞がすごく意味深です。
M9「宝もの」
作詞・作曲/河口純之助
『DUG OUT』の河ちゃんボーカル曲。
やっぱり河ちゃんはいつも通りいい曲を作ってくれます。今回もアルバムにぴったりな曲だと感じました。
心穏やかなアレンジです。
あまりにも抑揚がありすぎない落ち着いて聴ける1曲。
ここで河ちゃんボーカルが入ると雰囲気が変わって、アルバムを飽きさせない要素になっていると思いました。
河ちゃんの歌い方もいつも通りで妙な違和感はありません。
柔らかい歌詞を淡々と歌っている印象です。他の誰とも違う河ちゃんの個性が滲み出たキレイな歌声。
エレキギターとキーボードのイントロが始まった途端に、雲の上まで連れて行かれたような軽やかな気分。
ふわっとしてて一瞬で音に癒される。
とても広々とした雰囲気に満ちてます。
音楽って人の気分をいい方に変える場合があります。
凝ったコーラスが印象的で、この歌の柔らかさと受け入れやすさを実現してます。河ちゃん本人によるファルセットの方のコーラスが曲に広い空間をプラスしてます。
歪んでいないクリアーな音のギターソロがまた柔らかく、ガツガツしていない好印象。
河ちゃんが歌う美しさを感じる言葉がたくさん耳から心へ入ってきます。
歌に歪んでいない真心がある。
それは見えないけど聴こえる。
何かを信仰した考え方じゃなくて、自分の感性でストレートに受け取るべき歌詞。
「宝もの」の歌詞、メロディがあってのこのアレンジはハイセンスです。これまで経験を積み上げたブルーハーツの演奏がバッチリすぎる。
『DUG OUT』のふわっとポイント。
ひたすら音がキレイだ。どうでもいい他人の言葉や態度で汚された心を音が洗い流す。
穏やかでない瞬間は一切なし。
一つだけ気になるのは、この曲ではヒロトの音が聴こえてこない。ハーモニカ入っていないし。コーラス歌ってるのかな。
河ちゃんはやっぱり音楽家だなと思います。
ドッと疲れた時、イライラした時、なんかもうやめたい時に聴くと癒されます。
心を癒す音は、少ないけどあります。
よく分からない神様じゃなくて、真心の歌が心を軽くしてくれます。
聴き終えた後はいつも「健康に心穏やかに」そんなことを優しい気持ちで考えてます。
歌詞 : スピリチュアルな世界が河ちゃんならではです。「ツインレイ」とかそういうことなのかもしれません。
私が興味あるのはロックンロールだけです。
でもこの歌のようなことはある気がしてます。ただし私の場合はスピリチュアルを信用してはいないから、こういうことがあるのは不思議に感じます。
サビもやっぱり河ちゃん独自の世界観が歌われます。きっと自分の経験や得た知識や学んだことのアウトプットなんだろうなと感じました。
この歌詞を変に深掘りするのはナンセンス。
自分の宝ものではなく、2人の宝ものであることに共感します。なんかいい。オレもそれを持ってます。“君と僕の宝もの” 2人で積み上げてきた大きな宝もの。それは世界に一つしかない素晴らしい宝もの。
M10「夕暮れ」
作詞・作曲/甲本ヒロト
ブルーハーツの14枚目のシングル。
ブルーハーツの“シングル”としてはこれが最後になってしまいました。
気持ちが高揚してしまう燃える名曲です。
栄光に向かう帰り道で聴きたいまさに夕暮れを感じる歌詞とアレンジが“赤い”印象です。
アコースティック調のいい雰囲気。
今この瞬間に意識を戻すミディアムテンポ。
わずかに切なさを含む歌詞が心の柔らかい部分にそっと触れてきます。
この歌には人間の感情が溢れてて、そこに強く惹かれます。
その感情に涙が流れる瞬間があるかもしれません。誰かの心を「夕暮れ」がある日突然、ギュッと抱きしめてきます。
一聴して軽やかさは感じるけど、それよりも胸の奥がメラメラ燃え盛っている感じ。
『DUG OUT』の魅力的な包容感。
力強いアコギと煌びやかなキーボードが、イントロの華やかさを演出しています。
名曲が始まる時の高まる期待感。
「はっきりさせなくてもいい」と、はっきりとした口調でヒロトが歌い出します。
一節だけでこの曲にはきっとロックの魂があって、卑怯な曖昧さはないと理解します。
歌の世界がすごく熱く赤い。それがどんどん自分の中に入ってきて心の奥が静かに燃え上がってるのが分かります。
人間の燃えるような感情と、夕暮れの真っ赤な色があって心をガッチリ掴まれる。
歌われているその感情とか情景とかを誰もが知ってる。
所々に入るエレキの伸びやかで太い音にロックンロールの熱さを感じます。
これは軽やかな歌じゃなくて、静かに熱くて奥の方が激しい歌だったんだ。
ただのBGMにはなりません。
説明できない惹き込まれる魅力があります。
すごく優しくあたたかいのかもしれない。
ただ耳に聞こえるだけの音じゃなくて、心が感じることが100%で存在してます。この音が聴こえるのは誰にでもある心の柔らかい部分。
聴こえてる何もかもが感情的。
感情がなければすべては無いのと同じ。
間奏でマーシーが感情的に弾くギターソロは美しくて、いつも今でも、きっとこれからも胸が熱くなります。
エレキギターが歌う最高のメロディ。
アウトロはアコギの音色によるメロディで、さっきまで迷っていた私の心が解き放たれます。
アコギが歌う美しいエンドロール。
「夕暮れ」は聴きながら歌に包み込まれる感覚があって、そいつが私の安心感にもなってます。
歌詞 : 生きることの大変さを和らげてくれます。すべてに答えを出さなくていいというのは、いい意味で楽に生きるコツなのかもしれません。
なんとなくの幸せこそが、かけがえのない幸せなんだと気付きました。
歌詞の力の抜け具合とか最高です。
絶妙なゆるい感じが、ダメにならない人生のヒントになります。
歌の情景が目に浮かぶから感情移入してしまいます。
この歌でヒロトが言いたいのは「今」をハッキリ生きるってことなんじゃないかと思いました。
本作には収録されていませんが「夕暮れ ライブ・バージョン」のイントロでマーシーが弾くエレキのメロディが胸熱です。PVも同じエレキ入りのバージョンになってます。
個人的に「夕暮れ ライブ・バージョン」のリードギターはマーシーのベストプレイです。ギタリストなら誰もが憧れるはず。
いつもライブではヒロトがアコギを弾きながら歌っていました。
ライブ・バージョンを聴いた後だと、本作に収録の「夕暮れ」は何か物足りなく感じてしまうことがあります。
M11「パーティー」
作詞・作曲/甲本ヒロト
ブルーハーツの13枚目のシングル。
1993年に初めて聴いた時は、ブルーハーツっぽくない曲だなと感じました。
シングルとしては、独特な曲調やアレンジが個人的には異色な印象を受けたのです。
奥深さのある内容は、タイトルに反して勢い最重視のパリピには多分合わない。
しかし胸熱な展開のある『DUG OUT』の中のアゲアゲソング。
イントロはゆったりとした少ない音数で始まります。ところが最後はみんなでヤケクソ気味な演奏でテンポも速くなるのが最高です。
静けさの中でまずギターだけが聴こえてきて、落ち着いた雰囲気でヒロトが歌います。
ヒロトがそこで歌っているようなリアル感抜群な音にドキドキします。
1番の途中から響く明るい音のキーボードが曲のスペースに広がりを出しています。相変わらず白井さんが、ブルーハーツの美味しいところを持っていった。
サビではバンドすべての演奏が入って、急に全開します。何も隠さない大盛り上がりなパーティーっぽさが出現します。
静と動の激しいギャップが、心の奥の本当はやってしまいたい自分を呼んできます。
オレもパーティーに呼ばれた。
思いっきり弾く歪んだエレキ、キャッチーなリズムのベース、巨大でパワフルなドラム。パーティーを最大限に盛り上げるバンドに私のテンションが上がります。
ロックンロールにも呼ばれた。
2番のサビの直前に『DUG OUT』では全然やっていないマーシーの芸術的ピックスクラッチ炸裂です。いつもより猛烈で、ここではないあっちの側の世界に誘う音に聴こえます。
その音がパーティー会場のドアを開きます。
「パーパ パパパパ パーパパパパパパ」
サビでの合唱のコーラスは印象に残りやすいです。ラストのサビなんか特に壮大で、病んだ心に爆発的ポジティブな効果があります。
余裕で平常心を追い越す何かを感じる。
サイケっぽさを感じる強烈なギターソロが“緑のハッパ”でブッ飛んだパーティーの一部始終を見せているようで楽しくなります。
チョーキング多用でウィンウィンしてて、その凄まじさがトリップ感満載になっちゃってる。
それはこの歌全体に言えることです。
なんか知らないけど臆病な心に勇気が湧いてくる。ロックンロールに騙されてるだけかもしれないけど、そういう事実。
何これ⁈オレをゴキゲンにしてくれる。
病院で処方される薬より効きます。
ブルーハーツにしては異色なアレンジだと感じたけど、本当はすごく強烈なパーティーアレンジだった。
ラストはヤケクソ気味なテンポで完全にトリップ状態へ。
にぎやかなパーティーが開催されてる。
歌詞 : すごく人間の特徴を表している歌詞です。日常の中にこういう気持ちはたくさんあるのでヒロトが代弁してくれたと感じました。
『DUG OUT』のヒロトの歌詞はどれも人間らしさが溢れていて学びになります。
歌詞のそんな気持ちあります。逃げたいからではなく、自分として突き抜けたいのです。
これを聴くと気持ちが楽になります。
私にとって『DUG OUT』は聴けば聴くほど、経験が増えれば増えるほど、年を重ねれば重ねるほどに意味が変わっていきました。
その変化も音楽の楽しさです。音楽は発表された時のまま何も変わっていません。いい方向に変わったのは自分です。
M12「チャンス」
作詞・作曲/真島昌利
13thシングル「パーティー」のカップリング。
面倒くさくチャンスを掴むのではなく、チャンスが降ってくるラッキーソング。
アルバムの締めはマーシーが作って、ブルーハーツがそっと差し出してくれる希望。
だからアルバムを聴き終えると希望の光に満ちた気持ちになります。
ネガティブ思考をゆっくりとポジティブに変換する効能あり。
心地よくゆったりとした「チャンス」を聴きながら急に焦り出す人はいません。
突然、チャンスが降ってくる人はいると思います。
アコースティックアレンジの決定版。
今日しか吹かない風がイントロで爽やかに吹いてきます。その風は、私たちが未来のために壊しすぎてる“今”をゆっくりと癒します。
とても穏やかです。
穏やかさの中にヒロトのゆったりとした歌が入って、優しい世界が広がります。「空前絶後」「前人未到」いきなりの四字熟語の連発は心を捉えるインパクトがあります。
マーシーらしい美しさの突出した歌詞の世界は、小さい心を広々とした宇宙に変えます。
どうでもいいことに悩んでる場合じゃない。
聴きながらのんびりと外で冷えたビールを飲みたくなる誘惑が溢れています。
ブルーハーツのこんなに柔らかな演奏が聴けるなんて。どこにも棘がない。嫌味もない。
愚痴もない。光ってる希望だけがある。
その希望はそっと差し出されてて、しかもオレにアピールしてる。差し出された希望に手を伸ばすとチャンスが降ってくる。
この歌を聴いたことある人と、ない人ではきっと人生の在り方が変わってきます。
マーシーのアコギと、ヒロトのハーモニカが特別に印象的です。
その瞬間の情熱が心まで届く生の音。
2番から入るゲストミュージシャン演奏のスティールギターも渋いです。平日の疲れた心に染み入るような、広々としたカントリーっぽさが出ています。
この歌は、徐々に広く大きくなっていく。
サビのツインボーカルは圧巻です。
この曲ではヒロトは割と感情的ではない歌い方をしているけど、マーシーは感情全開で歌っています。ブルーハーツ独自のバランスのカッコ良さが出まくってる。
マーシーはビシッとキレイに韻を踏む歌詞が特徴ですが、この歌でも強烈な韻を踏んでいて感激しました。その言葉が歌という音になった時に一番輝きます。
2人が真心で歌っています。チャンスは強引に掴むのではなく、誰の上にも降ってくる。
頑張らなくていいと思えました。
これからすべてが上手く行きそうです。
“人並み”が正しいのだと勘違いし、どこかで間違えた軌道を修正してくれるような大らかさと温情が「チャンス」にあります。
胸が破裂するような勢いはないけど、聴けばいつでも穏やかな気持ちにしてくれる歌。
ラストは誰の心も前進するマーチングアレンジが胸熱です。フェイドアウトせずスッキリ締めるのは、今ここにチャンスが降ってきた実感になります。
『DUG OUT』が辿り着いた終着点だけど、それぞれの素晴らしい今日のスタート地点。
歌詞 : サビの歌詞にこれまで何度も救われました。
本当は自分で掴みに行くことがチャンスではないです。チャンスというのは自分じゃなくて他の誰かが持ってくるものだから、そのことを知ってないと見逃してしまいます。
自分の上にだってチャンスが降ってくるのだから、いつでもそいつを受け取る準備をしておこうという学びです。
アルバムの最後の言葉は聴くと明日からも今この瞬間を生きるんだとポジティブな気分になれます。
オレにも希望が湧いてくるいかす締め方。
『DUG OUT』を聴き終えると「凹」とデザインされた青いジャケットが大きく広い希望に見えました。
みんなの上にチャンスが降ってきたところでアルバムはおしまいです。
退屈なバラード集じゃなかった。
すげえ熱いロックンロールだった。
心が満たされている実感があります。
幸せでいっぱいになっています。
ブルーハーツの真っ直ぐな音楽がカッコ良すぎてちょっと涙ぐんでる。
アコースティックな聴き心地でゆったりとした雰囲気の中に、涙が溢れるほどの熱い魂が入っているブルーハーツの7枚目のアルバムでした。
この人たちはいつもそうやってオレに勇気を差し出してくる、と改めて気付きました。
CD帯の言葉に偽りなし。
つまりこれは“最高のロックンロールアルバム”で名盤です。
今日は少し落ち着こうと思いながら『DUG OUT』を聴いていると、いつのまにか胸が熱くなってしまっています。
それはすごく心が満たされる感覚でもあります。
実は、バラードでのんびりしたい時というよりも「凸」を聴いてる心と同じように、熱くなりたい時にこそ『DUG OUT』を棚から選んで聴いています。
もちろんゆったり気楽な感じでも聴けます。
もしかしたら『DUG OUT』は自分の経験が積み上がっていくほどに好きになるアルバムなのかもしれません。
『STICK OUT』と『DUG OUT』、同時期に2枚もアルバムを作ってしまうなんて、ブルーハーツの凄まじき情熱の表れです。
2枚の最高のロックンロールアルバム。
“凸凹”の2枚はやっぱりセットです。
私にとっての“凸凹”2枚の魅力は、揺るぎない「疾走感」と、とてつもない「包容感」です。
次に発表されたのはブルーハーツのラストアルバム『PAN』でした。
ありがとうございました。
また読んで頂けるとものすごく嬉しいです。