こんにちは。
『Do‼︎The★MUSTANG』は2004年リリースのザ・ハイロウズの8thアルバムで、ラストオリジナルアルバムです。
読み方は「ドゥー・ザ・マスタング」!
昔の読み方“ムスタング”ではなく、最新型の《マスタング》と読みます。
心の名盤 : 全曲レビューです。
3rdアルバム『ロブスター』に次ぐ刺激の強いキンキンな音。鋭く攻めたマスタリング。
耳がキンキンします。
初めて聴いた時には、音が出た瞬間にそのつんざくような音にびっくりしました。
さすがにちょっと攻めすぎです。
とはいえ、攻めないロックなんかに魅力を感じません。
それに疾走感溢れるロックンロールが馬並みの極太になりました。
とうとう全国民がノックアウトされます。
THE HIGH-LOWS/Do‼︎The★MUSTANG(2004)
Do‼︎The★MUSTANG(ドゥー・ザ・マスタング)は2004年9月1日にリリースされた8枚目のアルバムです。
キーボードの白井さん脱退後の初めてのアルバム。
ハイロウズ最後のオリジナルアルバム。
オリジナルアルバムとしては7枚目の『angel beetle』(2002/11/27)以来、1年10ヶ月振りの発表。
その間に企画盤『flip flop 2』(2003/11/12)のリリースがありました。
ハイロウズの全8枚のオリジナルアルバムの中で本作『Do‼︎The★MUSTANG』だけが耳に入ってくる音の感触が確実に違っています。
7thアルバム『angel beatle 』までとは圧倒的に異なる点 :
キーボードなし、ボーカル・ギター・ベース・ドラムの4人での音作りということ。
デビュー時から常に鳴っていた音、“キーボード”不在のハイロウズのアルバムの音というのはそれまでとは明らかに違います。
不在を補うというより、新しく始めた感じ。
本作『Do‼︎The★MUSTANG』は疾走感にあふれるロックンロールがメインで、キーボード不在ということもありマーシーのギターが凄まじい迫力で圧倒してきます。
常に左右、真ん中に複数のギターの音が鳴っているアルバム。
なんのメディアだったか、白井さんが抜けて既存曲のライブでのアレンジや音の厚みとかはどうするの?という趣旨の質問をされたマーシー。
ライブではギターの音を今までよりちょっと、アンプのツマミひと目盛か、ふた目盛りぐらい大きくしとけば大丈夫!みたいなことをマーシー本人が語っていました。
細かいことは気にしないし、今あるものを全開でいくのがとてもハイロウズらしいです。
当初は白井さんの後任の方を探していたけど、4人でやったらそれがすごく良かったからこの編成でいく選択をしたと、当時ヒロトが語っていました。
『Do‼︎The★MUSTANG』収録曲
1. ゴーン
2. 砂鉄
3. ノロノロ
4. 荒野はるかに
5. アネモネ男爵
6. 夜の背
7. ブラジル
8. 暴力アラウンド・ザ・クロック
9. ズートロ
10. スパイダー・ポップ
11. ザリガニ
12. ヘッドホン
13. たつむき親分
14. プラプラ
全14曲57分。
これまではバンドにキーボードありきの5人編成での音でしたが、本作はこれまでになかったほどにマーシーのギターが最前線で主張しています。
この新しいスタイルは、よりストレートなロックンロールバンドの音だと感じます。
その一方でDUBを施したレゲエ、サイケなアレンジの曲も収録されているのが特徴的。
白井さんが脱退したということでサウンドが実験的である印象もあります。ただの遊び心を発揮した試みとも受け取れます。
これまでのどの作品とも音色の違うラストアルバム。
ハイロウズが最後にやれることをド派手にやったという解釈も出来そうです。
マスタリングはまたキンキンになりました。
この感触は以前にもありました。1998年リリースの3rdアルバム『ロブスター』以来6年振りに耳が痛いほどのキンキンな音です。
極端にキンキンな耳触りにはロックの鋭さを感じます。とんでもなく鋭利です。
こういう音は極太のロックンロールでしかその魅力が成立しません。
このアルバムはイヤホンやスピーカーの性能の確認にも向いています。
低音寄りでキレイな高音が出ないBluetoothイヤホンなんかで聴くと、全体的に音がまろやかになって耳にはちょうどいい感じです。
しかしそれは本当の音ではありません。
私はこのアルバムを、新しくイヤホンやスピーカーを買った時のリファレンス音源にしています。
このキンキンなマスタリングの影響であるのか分かりませんが、『Do‼︎The★MUSTANG』はハイロウズのどのアルバムよりも音がハッキリしています。
音の粒立ちというのか一つ一つの音の輪郭が鮮明に聴こえてきます。
やはり本作だけが耳に入ってくる音が確実に違っている要素です。
他では聴いたことのない強烈な音が鳴っているという感想は余裕であると思います。
音圧もかなり高くて素晴らしいことです。
キンキンなマスタリングはさておきアルバム1枚の内容としては疾走感にあふれているし、特にギターが際立っているのでマーシーファンの私にはかなりの“名盤”です。
発売当時はキーボードが入っていないので、どちらかというとブルーハーツに近い音として気に入っていました。
4人編成のハイロウズのアルバムは本作でしか聴けません。
唯一無二の世界観の歌詞や、覚えやすいメロディに親しみやすいアレンジが多いので聴かずに無視していいアルバムではありません。
ドギツク炸裂した音に美しいメロディのキャッチーな曲が多く、興奮MAXな瞬間の連続。
キーボードの白井さんが脱退したとはいえ、数曲ではキーボードの音が効果的に入っています。
ヒロト、マーシー7曲ずつ作詞作曲しています。前半にマーシー作、後半にヒロト作が多く配置されている感じの構成。
アルバムに収録された14曲を一番魅力的に聴かせてくれる曲順。
そのため、この歌だけとかいつまんで聴くよりアルバムとして聴いた時が一番感動します。
シングル曲は「荒野はるかに/ズートロ」、「砂鉄」、「スパイダー・ホップ」の4曲が収録されています。
25thシングル「スパイダー・ホップ」のみアルバム発売後のリリースでした。
3枚すべて12cm CDと12インチアナログ盤が同時発売。
23rdシングル「荒野はるかに/ズートロ(69バージョン)」は2004年6月9日リリース。
ロックの日に新生ハイロウズ、ニューシングル発表。このシングルはロックへの期待をはるかに超えました。
カップリングには久々のマーシーボーカルである「64,928-キャサディ・キャサディ-」が3曲目に収録されました。
軽快な感触でありながら、熱いロックンロールです。
24thシングル「砂鉄」は2004年7月21日リリース。
前のシングルからひと月半後には新曲発表と精力的な新生ハイロウズ。
カップリングには、なんだかよくわからないけど強烈なヒロト作「ヤゴ」、緩やかなアコースティックが映えるマーシー作「ただ一人の男」が収録されました。
25thシングル「スパイダー・ホップ」はアルバム発売から3ヶ月後の2004年12月15日リリース。
カップリングには、軽やかに全滅するヒロト作「全滅マーチ」、和風テイストで猛烈なマーシー作「東大出ててもバカはバカ」が収録されました。
シングル3枚のアナログ盤はすべて12インチレコードで、高音質の45回転です。
これらのシングルのカップリング曲はアルバム未収録のため、ハイロウズの音源をコンプするにはそれぞれ単体で入手する必要があります。
2004年の『Do‼︎The★MUSTANG』発売当時、CDとレコード(限定生産)の2形態でリリースされました。
ピンクの下地にに馬の顔ドアップのジャケットが既に普通じゃないです。
しかも恥じらないのない自信満々な笑顔。
絶対どうかしてる。
異常に太くて芯の強いロックが鳴りそうだ。
初回盤のCDはデジパック仕様。
アナログ盤は12インチレコード2枚組で音質重視仕様です。
レコードを取り替える手間は増えますが、最上級のアナログサウンドが実現しています。
キンキンなのはそのままです。レコードだからと言って妙にまろやかにはなりません。
誠実な音の出るレコードです。
限定生産だったレコードは2020年にリマスターも施されて再発売されました。
私は再発盤の方を持っていないので、リマスターの効果やオリジナル盤との音質の違いをお伝え出来ません。
記事中の写真はすべてオリジナル盤です。
並大抵でないキャッチコピーに驚愕します。
“疾走‼︎ 馬並の極太ロック・サウンドでノックアウト‼︎ ”
本作は不幸の象徴である「人並み」なんかは目指していません。馬並に突き抜けています。
ハイロウズ最後の爆走!!!
悪いけど、太くてデカいです。
それで、すげえ硬いというか芯が強い。
どんだけ魅力的なのよ。
「ドゥ!! ザ ★マスタング」疾走開始!
M1「ゴーン」
作詞・作曲/真島昌利
さて、『Do‼︎The★MUSTANG』再生スタート。
えっ!!!!!
ギターの音!でけえぇぇ!!!!!
豪快に飛び出してきたギターの音が過激にキンキンで耳へ直撃します。
もぉ、いきなりなんだもの。
同時に一瞬で理解します、これは以前にも聴いたことのある『ロブスター』のあの音だと。
ただし、あの時の3倍ぐらいの衝撃。
私はこの音を決してディスっている訳ではなく、これはロックイズム全開な音だと大歓迎しています。
人によっては耳が痛くて2回目を聴けないという場合があるかもしれません。
アルバムの始まりを告げるのにふさわしいキンキンで痛快なギターリフに、心は音速で惹き込まれます。
4人編成であるメリットが最大限に活かされたバンドサウンドで、シンプルさがあって、疾走感のあるストレートなロックンロール。
ゴーンゴーンと新生ハイロウズの鐘が何度も鳴り響く“始まり”のロックアレンジ。
とことんポジティブなアップテンポ。
疾走しつつも滑らかなメロディ。
富士山くらいデカいアンプで鳴らすエレキギターの凄まじき音圧。
シングル曲ぐらいの親しみやすさと、一発で記憶に残るインパクトあり。
鋭い音色とその音圧に圧倒されるイントロ。
心を鷲掴みにされていたため長い物語があったように感じたけど、実は数秒の短めです。
すかさず入るヒロトのパワフルな歌声は、バンドの新しい章を高らかに宣言したみたいだ。
エレキギターがけたたましくジャカジャカと鳴るやかましさがたまらない。
キビキビした演奏に、変な角のない滑らかなメロディが爽快です。
歌の内容なんか意味もなくデカくて快感。
アルバムの1曲目、始まりの歌を純度100%の気持ちで興奮しながら聴いているという実感が湧いてきた。
サビでのミュートしたギターのゴツゴツした感触、一歩前に張り出すベースなんか、一段と過激な音が出ます。
間奏があるけど、長ったるく退屈なものではありません。一直線の勢いでブッ飛ばす。
テクニック自慢のつまんないギターソロとか一切やりません。鋭利な音がつまらない世界に鳴り響くデカいリフは弾きます。
この歌は途中で休憩したり出来ない。
どの瞬間も耳をつんざく爆音だし、止められる奴なんか一人もいないほどのスピード感と拒否できないゴリ押しのパワー。
終始、ハイロウズのフルパワー炸裂です。
始まりからラストまで一気に駆け抜ける。
人の心をガツンと動かす「凄まじい」という言葉が合います。
歌詞 : 度を超えたスケール感が燦然と輝くロックの光。
マーシーの細やかで鋭い感性が説得力を持って心に響いてきます。
直接的な表現はせず、心に残る美しい比喩的な言葉での自我の主張という感じ。
はっきりとした意味は掴みにくいけど、言葉の端々から感じる明るい光が魅力です。
すべてを語らないロックの歌詞の隅にある想像の余白から、神社なんかの鐘をつく音が鮮明に聞こえてきそうで楽しい。
スケールが並外れているし、マーシーの気持ちが特大なのがインパクト絶大。
ラストの歌詞では、鐘を突き終えるところがなんだかしっくり来ました。謎の安心感。
M2「砂鉄」
作詞・作曲/真島昌利
ハイロウズの24thシングル。
1曲目に続きストレートなロックンロール。
大切な恋心が躍動するアップテンポ。
キラキラ光るドラマチックなアレンジ。
比喩的表現の磁石に、心が砂鉄のように引き付けられるロマンチックな歌詞世界。
それらが爆音で鳴ります。
音の感触はやっぱりエレキの高音やシンバルの炸裂音が耳をつんざくキンキンなやつ。
左チャンネルの華麗なリードギターと右チャンネルの歪んだギターのコードストロークが存在感抜群です。ブレイク部分では繊細なアコギの音が耽美な魅力を放ちます。
マーシーのハモりコーラスも相変わらず私の心が動くいい感じ。
ジャカジャカやかましいほどのギターがでっかく鳴り響く6秒のイントロ。
1曲目からの凄みのある疾走感は保ったまま。
まったく、こいつらどんだけ煽るんだよ⁉︎
ヒロトが歌い出すとスピード感にパワー感まで加わって、私の心とハイロウズのロックパワーが衝突寸前です。
更には、2番でヒロトとマーシーのツインボーカルになって、もうハイロウズのなすがまま。音楽の魂としての響きなんか究極的。
こいつの前で至極冷静な気持ちのままいられる人なんかいない。
平常心が興奮に殺られる時だ。
私の感情を直撃するほどのエモさを感じるBメロを経て、本物の恋心が爆発するサビへ。
サビは恋心にちなんだ歌詞と見事に合ったロマンチックなメロディ。
恋してる瞬間の気持ちそのまんま。
“大好き”なパートナーのことを決してテキトーに“愛”していない正直者の音がします。
音が急に光るのが誰にも見えると思います。
でも、「愛してる」の人には光は見えないかもしれない。光った場合に限っては、終わらない恋をしている証拠です。知らんけど。
ともかく、この歌はあり得ない音圧でロックンロールが心へ真っ直ぐ突っ込んできます。
あらゆるギターの音が鳴りまくる強刺激。
ラストはマーシーのギターが猛烈にまくし立てながら、こっそりフェードアウトします。
タフな磁力のロック。
みんなの心が引き寄せられた砂鉄になる歌。
歌詞 : マーシー節全開でロマンチック。この感性でロックの歌詩を作れるのはやはり唯一無二だなと感じます。
こういう歌詞はここでしか聴けません。
一言目から最大級のロマンチックな言葉に惹かれます。“布団屋の屋根に 満月が座る” とか、一般論では絶対に口から出てこない言葉が歌詞になってるなんて、うっとりです。
最高の比喩表現はロックに合います。
サビは本物の恋にちなんだ歌詞で、私の心を捉えて離さないほどの圧倒的な事実が表現されています。心のずっと奥の方まで突っ込んできます。完全に自分と一致しているから。
なすがままに磁石に引き寄せられてる砂鉄。
“君”に惹かれる恋心そのものです。
誰に対しても抱ける感情である「愛」と名前を付けたものじゃなくて、相手を好きでたまらない「恋」の気持ちの方です。
形も決まりもないから一緒にいればいるほど次から次に問題が起きるし、面倒だと感じるけど、磁石になすがままに惹きつけられてしまう特別な気持ち。
間違いなく楽しいし一番大きな幸せ。パートナーのその磁力にいつまでも惹きつけられていたいと、自分の本音まで実感しました。
マーシーの歌詞はいつも美しさが、爆音の中で際立ってる。
M3「ノロノロ」
作詞・作曲/甲本ヒロト
勢いや音の過激さはまったく減衰しません。
思わず元気になるポップな聴き心地。
足取りも弾む軽快なテンポ。
とはいえ、無意味に飛ばさない安全運転のスピード感が重要です。
ヒロト作の心を掴むほのぼのしたメロディがとても印象に残ります。
暗い気持ちをまったく介入させない明るいアレンジが一発で気に入りました。
所々に入っているヒロトのハーモニカが温かみのあるいい雰囲気です。珍しく歌と同時にハーモニカが入る箇所もあり。
ライブではハーモニカは吹かず、ボーカル、ギター、ベース、ドラムのみのより一層タイトな演奏が披露されました。
恐るべきインパクトを誇る歌詞。
興味深い言い回しの歌詞が、リリースから20年経った今でも心を掴んで離してくれません。
ギターが激しく前のめりで攻めるイントロ。
するりと流れる滑らかなフレーズでありながらも荒々しい音に、私の激する気持ちが勢いを増す。
轟音がこっちへ突撃してくるベースには今日の自分の機嫌の良さを感じます。
一つ一つの音が立体的に飛び出してくるドラム。叩いた瞬間の振動が今ここに再現されてるみたいでなんかすごい。
相変わらずパワフルですべての空間にビシッと通るヒロトの歌声。
ヒロトの極太な歌心が、私の心に響く。
マーシーのコーラスがまた絶妙で、ロックへの興奮を倍増させる。
バッキングギターも入っているけど、音の存在感が強くてバッキングになっていないド迫力。
聴こえるすべての音には巨大なパワーがあるけど、そこで流れているメロディはほのぼのした柔らかさ。人の温かみとか人情まで感じられます。
そこにギャップ萌えがあるかもしれない。
サビでヒロトが歌う「トゥラララララ」という擬音のようなフレーズは、実は日本語の文字では表せない発音で印象深いです。
チョーキングしまくった激しいギターソロ。
長めに楽しませてくれる。
こんなにも感情的にギターを弾くマーシーからは、興奮必至のロックを聴いている時の熱狂そのものを感じます。
「ノロノロ」の演奏が始まってから3分45秒の中に1秒たりとも暗さがない。
爆発的なロックの音だけがあります。
この歌を聴いても楽しい気分になれない時はひどく疲れているので休んでください。
しかしどこがノロノロ運転なんだ、秩序を保った安全運転で素晴らしいじゃんか。
歌詞 : ヒロトにしか分からない独特な世界。
興味深い空想的な歌詞。短めです。
何のことなのか実はよく分からないけど、思いのほか説得力があります。
明るく楽しげな感じは誰にでも伝わります。
行列になっててまさにノロノロな感じが出まくっているのが好きな歌詞。ケツの前に別のケツとか果てしない行列です。なんだかほっこりしちゃうのも特徴。
ノロノロした順番待ちの歌かと思いきや、その後には割り込みが現れます。
2回目のBメロでの “割り込みな オレの前に 恋人が 恋より先に現れた” という経験が私にはないのでよく分かりませんが、そういうこともあるのかもしれません。
少ない言葉の中に全員を納得させる説得力と心に残るインパクトのある歌。
M4「荒野はるかに」
作詞・作曲/真島昌利
ハイロウズの23rdシングル。
激シブです。“男の色気!炸裂 !!!”
アルバムより先行リリースされたこのシングルは、キーボードなしの4人編成の強みを最大限に活かした曲だなと感じました。
シングルは「ズートロ」と両A面だったので、この2曲の演奏はこれまでよりタイトになって鋭いなと興奮気味です。
本作に収録されたものは、特に表記はありませんがアルバムバージョンです。アルバムバージョンの方が音が濃い分、熱くなってます。
ラストも違います。シングルバージョンはフェードアウトしましたが、アルバムバージョンは完奏します。
このラストのマーシーのギターもシングルとは別のフレーズが飛び出すので注目です。
遂に男が男の色気に惚れるロックンロール。
衝撃の、古き良き西部劇アレンジ。
人の心に響くエモすぎるギター。
心の奥の方に触れてくる、いい具合に枯れたメロディ。一人の孤独な男の物語。
とんでもなく興奮しながらジーンともします。
曲が始まった途端に誰もが映画の物語のセピア色の中です。自分がその主人公。
口笛とアコギで西部劇を彷彿とさせるイントロがこの歌の世界観を物語ってる。
哀愁のある口笛はヒロトが吹いています。
シングルバージョンはこの口笛がもっと遠いです。アルバムバージョンの場合は耳元で吹いています。
一瞬の絶妙な間の直後に炸裂するギターリフ。エレキの堅実な音が冴えまくり。
演奏開始30秒もしないうちに心にズキューンと衝撃を撃ち込まれた気分。
ヒロトが歌い出したのは重みのある「孤独」。
群れないことの魅力が突出してる。
マーシーのギターアレンジはこれまでのハイロウズにはなかった新しいスタイル。
音で埋め尽くさない隙間のあるいい感じ。
そこへ爆音のギンギンなフレーズが猛アピールしてくる極めて鋭い感じ。
過激なピックスクラッチも随所でキマる!
ギターが「荒野はるかに」のハイライトと言っても過言ではないくらいのインパクト。
どことなく枯れた印象を受ける歌のメロディには切なさや哀愁が漂います。メロディにある温もりが心に素手で触れてきました。
歌詞の生き様は筋が通っていて、私まで自分の信じた道を立ち止まらないで突き進もうと決心します。
そういう信念を貫かせる影響力がある。
この歌もやはりヒロトとマーシーのツインボーカル部分が胸熱すぎて鳥肌が立った。特にサビでのマーシーのがなり立てる歌声が突き刺さる。
マーシーがもっとも得意とする感情的なチョーキングが心のど真ん中で鳴り響くギターソロもあります。
また一つ自分のテンションが上がる瞬間。
“荒野はるかに”と繰り返す終盤の盛り上げには、胸の熱さがとうとう激しい感動の涙に変わりそう。
アウトロはマーシーがギターで更に心の奥まで煽ります。
自分がちょっと男らしくなった気がする。
ほんのり色気が出ちゃってる気もする。
自分の道を歩き出すきっかけになる。
歌詞 : 孤独な男の生き様。
1番の歌詞を繰り返すため、内容の量としてはそんなに多くはありません。
ですが、一人の男の物語があって、その中に潔い生き様もあって、強い信念まであって、男の色気にグッと来る映画のようです。
1本の映画を観て感動した時ぐらいの満足感。
多くは語らない歌詞の中に、生きていくことのリアリティが集約されてる。
孤独にこそ幸せを感じる気質の私にはストレートに刺さります。
これ、オレにアピールしてる⁈
古い西部劇を観ているような言葉や世界観。
他の誰かがやったのならクサいと言われてしまうかも。それをいつでも激熱に、ぶっ飛んだ迫力でキメるのがマーシー。
私はあまりにも男らしさをアピールした歌とかは好きになれないんだけど、これにはグッと来た。
ロックの色気にやられた。
M5「アネモネ男爵」
作詞・作曲/真島昌利
太くてデカくてギンギンです。
私には胸熱ソングの決定版。
終始過激な音が出る猛烈なロック。
ギンギンバリバリのギター炸裂アレンジ。
音が爆発しながら退屈を突き破るアップテンポ。
記憶と心の深い部分にいつまでも音程を間違えずに残るメロディ。
それは、よく私の心のレコードプレーヤーが勝手に選曲して大きな音で再生する特別なメロディです。
一撃ごとがガツンとしてるので、尖った音の頑固なギターが聴きたい時に非常に合います。
歌詞、メロディ、アレンジ、演奏のすべてをひっくるめた意味での“歌”のガッツリとした存在感に心が大きく動きます。
出ているそれらの音が、高まった自分の感情を制御できない程に凄まじい。
この曲にはキーボードの音がとても効果的に入っています。
イントロはミュートを活かしたギターとボーカルで始まり、そのあと一気に明るい雰囲気に突き抜けるアレンジが、胸熱ソングの王道を余裕で超えます。
イントロで高まった期待感がその後で見事に爆発するのがたまりません。
音が強すぎて全体的にちょっと歪んじゃってるのがロックの音圧だと感じます。
おのずと体を大きく揺らして踊りたくなる快感なリズム。
分かりやすく親しみやすいメロディが体の中心で楽しいダンスをしながら流れています。
ヒロトとマーシーのボーカルが何の引っ掛かりもなく心の奥までスッと入ってきました。
声質の異なるこの2人が歌うからこその魅惑。
インパクトのある歌詞がいろんな風景を美しく見せてくれます。
なんだ、オレ完全に歌の世界に入ってたんだ。
そう気付いたのは「アネモネ男爵」にパワフルかつ繊細な魅力があるからです。
攻撃力さえ伴っているほどのギターのフレーズが次から次へと飛び出して、音楽から意識を逸せない。
マーシーの演奏は細やかでもあります。
曲の構成も特徴的。
一番印象に残るのはギターですが、ギターソロはなし。
終盤はテンポが速くなってさらに盛り上がります。アコギの音が強調されて弾けるテンションMAXです。
こういう底なしの明るさこそがハイロウズの人気の理由なのかも。
ラストにイントロと同じフレーズをもう一度キリッと演奏してからスーッと音が消えていってスッキリした。
すっかり胸が熱くなってる。
これ、すげえギンギンだった。
歌詞 : 止まらない時間、限りある時間を自分として生きているということが爆発的です。
サビには超重要で、心の一番前にブッ刺しておくべき言葉があります。
“他人のために生きる 退屈を知ってる”という部分には感銘を受けました。
日本特有の同調圧力や世間というものに支配されて、他人の人生を生きさせられてしまいがちな日本人には特に重要だと感じます。
他人のためとかつまらないし、それ絶対に嘘ついてるし。
3番の歌詞は異常に強いインパクトがあります。1回で脳に記憶されました。私の場合はなんとなく薄っすらとですが、昭和のロマンポ◯ノっぽい雰囲気を感じました。
とはいえ、まったく下品でなく美しさを感じるのが最大のポイントです。
しかし、なんて破壊力なんだ。
M6「夜の背」
作詞・作曲/甲本ヒロト
6曲目に来て感じる大胆な音色の違いに心がときめきます。
だけど『Do‼︎The★MUSTANG』の根底にある凄まじい音はそのまんまです。
清涼感のあるアレンジ。
サラサラと流れる心地よいテンポ。
重みと軽快さのバランスが特徴的。
爆弾でも破壊できなかった美しき恋の物語。
うんざりするラブソングではなく、歌の表現には思わずキュンとする可愛らしさまで存在する特大の恋心ソング。
不快に湿ってはいないけど、決して干からびてはいない特別な聴き心地。
キラキラした音が耳に心地よい曲調で、最初から最後までアコギの音が聞こえているのが楽しげな雰囲気を醸し出す要素です。
気分を高揚させるアコギは生音だと錯覚するほど高音質な録音。
イントロはクリーントーンで奏でるエレキのメロディ。1フレーズ弾くと次第にアコギの弦をはじく音がキラキラっと響き始める。
澄んだ声で歌うコーラスに心を掴まれます。
ヒロトが恋の物語を歌い出す。
言葉が美しいって感じながら、心の内側に光りながら広がっていく。
この曲は、ハモリコーラス & 追っかけコーラスがすごく凝っていて音場も広く感じます。
センス良すぎるし上手すぎる。
このコーラスがなかったら全然違う歌になってしまうくらい超重要な役割を果たします。
力加減を絶妙に変化させる演奏からは、とても美しい音が鳴ってるなと、うっとりです。
歌としてのあまりの美しさに日常で傷付いた心が癒やされます。
一つしかない恋をしてる人の温かみがある。
深く考えすぎると割と重い歌詞に聴こえるかもしれないけど、アレンジや鳴っている音からは軽やかでポジティブなものだけが連想されます。
音楽っていいよねと思いました。
歌の後半にはマーシーの追っかけコーラスがぶっちぎりの輝きを放って、音楽に感動した自分の気持ちを実感した。
印象深く、記憶にも深く残ります。
このメロディもやっぱり心のレコードプレーヤーがよく選んで再生します。本物の恋心でしか歌えない清らかなメロディだから。
恋してる2人の想いをぶっ壊せるものなんかこの世にはない。
この歌は、無敵の気持ちを演奏してる。
歌詞 : 空想的で、美しい言葉が並んでいるし、心の汚れが洗い流される気分です。
1番に「戒厳令下」「開戦前夜」と出てくるので戦争に因んだ歌なのかなと解釈しています。
とはいえ、戦争は美しくないけど「夜の背」の歌詞はすごくキレイなので安心してください。
絵本になりそうなヒロトの世界と、絵の具で描いたような言葉に興味をそそられます。
歌詞は戦争から恋を守っています。
どちらか1人ではなく、2人で守っています。
相手のことを思うだけで夜があけてしまうという強い恋心が胸を打ちます。
人間の恋心というのは、太古の昔からこの先の遥かな未来でもこの歌詞と同じ気持ちになるんだろうな。
恋の強さが真心に刺さる歌。
究極です。
M7「ブラジル」
作詞・作曲/真島昌利
荒々しい音や凄まじい勢いが続きました。
前の曲では流れるようなテンポでしたが、ここで一度ゆったりとくつろぐリラクゼーションポイントです。
テンポ、リズムとしてはのんびりしたレゲエ。
DUBを施したレゲエアレンジがハイロウズっぽくないのが、自由なハイロウズらしい。
過剰に重なる音が特徴。
テンポこそゆったりしていますが、鳴ってる音は強力なので実はリラックスにならない。
いちいち主張してくる音に心が過敏に反応します。
途中でボーカルが右チャンネルに振れるという、これまでにはなかった演出も登場します。オーディオの故障ではありません。
穏やかな心で聴き始めたけど、どうかな⁈
わずかな脱力感のあるイントロが凄まじい勢いで攻める『Do‼︎The★MUSTANG』の新しい魅力を感じさせます。
レゲエらしくベースが強調されてるいい感じ。
歌が始まるとボーカルを差し置いて最前線でキンキンなギターが鳴り響きます。
刺激強すぎ。耳に刺さる。
強烈なDUBの施された実験的なサウンド。
もしくはただのハイロウズの遊び心。
ヒロトのボーカルは穏やかな歌心が溢れてます。ロックンロールアルバムの中の癒し系。
途中でマーシーとツインボーカルになる箇所はレゲエの熱さを突破します。
柔らかく歌うヒロトと、声を張り上げ感情的に歌うマーシーのギャップには一瞬で心を奪われました。
間奏ではレゲエなのに三線の音が情緒あるメロディを奏で、和の心まで感じるハイブリッド仕様。
ハイロウズがレゲエをやると演奏の上手さとか、根底にある熱さとか、音楽の楽しさが炸裂する。
スローテンポの曲は聞き流しがちな私だけど、これはそうはいかないインパクト。
この音、後で耳がキンキンしちゃいそうだ。
ゆったりしたレゲエのリズムが聴こえてきた瞬間は、リラックス出来そうだなと思ったんだけど、、、
やっぱりこの歌も極太の音が鳴ってた。
もう7曲もやってるのに、まだまだギンギンじゃんか。
すごいぜ!ハイロウズ。
新しく生きたい時にベストチョイスのレゲエ。
日頃の心の違和感を解決するヒントになりうる歌。よろこびへのきっかけ。
歌詞 : 取捨選択をする名場面。
哲学的な要素に魅力がある“生き方”についての内容が最高です。哲学的と言っても、これまで誰も表現しなかった考え方なので楽しく興味深く聴けます。
時代背景はすごく古い印象。
世の中の事に嫌気が差して、もっと良さそうな生き方を新しく始めちゃおうという感じに現代を生きる私もとても共感します。
喜びとは人と比べる相対的ではなく、絶対的な自分なのだということを歌詞から強く感じました。
穏やかな心で悟ってもいるし、世間なんかの不要なものを斬り捨ててもいる。
みんなと同じや人並みなんかを目指して生きると、喜びを感じにくくなるし不幸になります。他人は他人、自分は自分が余裕です。
生きるよろこびのみを感じつつ、静かに暮らす穏やかな未来が見えます。
M8「暴力アラウンド・ザ・クロック」
作詞・作曲/真島昌利
レコードだとここから盤を取り替えたC面。
この歌も強烈です。特大のインパクト。
極太ロック・サウンドの暴力が襲ってくる。
すべてに「暴力」を付けた歌詞が楽しい弾けるパンクアレンジで爽快。
暴力的な歌詞は意味がわからなくて最高です。
ゆったりしたレゲエの後のこの突き抜けたテンションは、ヤバめに高揚した気分にさせてくれます。
次の曲のヒロト作「ズートロ」もそうなんですが、これらの歌のような超個性的な歌詞で人の心を動かすセンスはヒロトとマーシーにしかあり得ません。すこぶる繊細な感性です。
キレの良いアップテンポ。
キレッキレの鋭いアレンジと演奏。
常に何かに軽くキレてる暴力的なロック。
はい、イントロの一発目の音からキンキンです。ギターです。音圧高すぎて歪み気味。
そのフレーズからは暴力ロックの幕が上がっていくのが見えました。突撃開始だ。
もう、期待しちゃう。
それで、ヒロトがやる気満々で元気に歌い出しちゃうからね。
何だこれは⁈次から次に「暴力」が歌われる。
まさにaround the clock : ぶっ続けです。
24時間絶え間ない。
こういうのこそロックの馬鹿げた光。
演奏はとことんキビキビしてる。
このジャキジャキした鋭い音を聴きながら、段々ネガティブな気分になるのは不可能だと思われます。
「暴力コーヒー」ってどういうの⁉︎
なんかすげえ苦いのか?飲むと痛いのかもしれないな。そいつ、口の中で暴れそうだぜ。
AメロもBメロもサビも絶対に暴力。
サビでの「オイ!」のコーラスにはパンクロックの太々しさを感じる。どんだけ合うのよ。
間奏なんてなくて、最初から最後まで暴力的な勢いで突っ走ってく。
止められる奴なんか1人もいそうにない。
だってさ、止めようとすると更なる暴力が襲ってくるんだ。無理だろ。
こんなのありか!
後半では「オォー!」と加速度をつけているようなコーラスが曲の疾走感を倍増させます。
アウトロで主張してるべっちゃんのベースの音なんか3歩くらい前に出てきてシビレる。
そう言えば、「暴力くつろぎ」ってどういうくつろぎ方⁈
私にはわからないけど、それ面白そうだ。
一つだけ断言できるのは、ハイロウズロックの暴力はポジティブだということ。
歌詞 : 全部に「暴力」が付いてて何がなんだか分からないのが楽しくてしょうがない。
目ざまし、洗顔、朝食、パン、通学、自転車、改札、駅、これらの単語の前に必ず暴力が付いてるショッキング。
言葉としては意味不明の衝撃。
なのにイメージははっきり伝わるセンセーショナル。
たくさんの「暴力」が見事にメロディに乗ってるのがすごいし、ロックイズム全開の潔さを感じます。
サビに登場する「勝手な暴力、甘えた暴力、湿った暴力、いきなり暴力、正義の暴力」なんかは実際にあって、それらは第三者の目には見えない暴力だったりするし、実はすごく深い歌詞なんじゃないかと思ったりもします。
こだわって「暴力」を貫き通すロックの歌詞。
並大抵のセンスじゃない、馬並です。
マーシーの貫徹力を尊敬します。
M9「ズートロ」
作詞・作曲/甲本ヒロト
「荒野はるかに」と両A面のハイロウズの23rdシングル。
シングルの方は「ズートロ(69バージョン)」とサブタイトルの付いたシングルバージョンでした。
アルバムバージョンの方が音がキンキンしてるし、ガッツリしてるし、すべてが馬並にパワーアップしたし、一段と強烈です。
だからかなり前のめりの音が出る!
シングルの69バージョンよりコーラスが5倍ぐらいゴージャスになりました。
音(特にヒロトの歌声)により実在感があるのは69バージョンの方ですが。
“ズートロ”とは「ズーっとロック」という解釈でOKだと私は思います。
「パーっとロック」「ジーンとロック」「モーッとロック」なんかも出てきます。ロックに対するどの感情もハイロウズにはありますね。
やっぱりネガティブが付け入る隙のないスーパーポジティブアレンジ。
楽しくならない訳がない。
造語による驚異的な説得力。
腕を振り上げたくなるアップテンポ。
可愛らしさを感じるキャッチーなメロディ。
足りないものなどなく、激情のロックがこの歌にはある。
歯切れのいいタイトな演奏が心地よく空間に響きます。
弾丸が胸の真ん中に撃ち込まれたような攻撃的なイントロ。
いきなり暴れるロックパワー全開です。
ここがライブ会場だったら恐ろしくカオスな状態になってる。気持ちは既に前のめり。
“ズートロ”と繰り返しヒロトが歌い出した。
少しだけでも自分なりの解釈がなかったらまったく意味のわからない歌に聴こえるかもしれない。
とはいえ、ライブ中にそんな事を考えてるノリの悪い心の余裕なんて必要ないから、歌から強く受けるイメージだけで最高潮に興奮できるはず。
なぜなら“強烈”を感じない瞬間がないから。
一聴すると同じフレーズの繰り返しで単調ではあるけど、そんなのどうでもよくなる抜群の破壊力があります。
そういうコーラスは入っていないんだけど、ヒロトの「ズートロ!」に続けて「オイ!」とパンクの熱さで腕を突き上げながら合いの手を入れたくなった。
それに「もっともっと」とハイロウズを煽りたくもなる。
間奏ではマーシーのギターとべっちゃんのベースの煽り合いが勃発してます。
2回目の間奏ではハイロウズがどうかしてるテンションで騒いでいて、負けてられないと私のテンションも爆上がり。
この部分はシングルでは演奏のみでバカ騒ぎはしていません。
まったく、どんだけ盛り上げちゃうのよ。
如実に出てるハイロウズの底力。
この歌、個人的にはハイロウズのもう一つのテーマ曲にも感じます。
歌詞 : 単純に楽しめる超傑作の“ずーっとロック”調。
すべての歌詞が“ズートロ”な調子ですけど、これ考えたヒロトってやっぱり突き抜けたロック好きの人なんだなとビビりました。
どこにでもある感性じゃこれは思いつかないです。
ロックの色んな楽しみ方が用意されてるし、そこにある想像の余白が更に楽しい自分のロックの聴き方にまで思いを馳せらせることになります。
ロックのカッコ良さは決して一つじゃない。
ハイロウズは間違いなく、ずーっと心に響くロックを聴かせてくれる。
その意味で「ズートロ」なのはこの人たち。
ずーっとロックするという宣言でもありそう。
M10「スパイダー・ホップ」
作詞・作曲/甲本ヒロト
ハイロウズの25thシングル。
こちらもアルバムバージョンです。というよりこちらがオリジナルバージョンでシングルでリリースされた音源は(GLIDIN’ MODE)とサブタイトルの付いたバージョン違いです。
音が全然違います。シングルバージョンは少し滑らかで、キンキンしていなくて音に物足りなさを感じてしまうほどです。
シングルカットされたのは意外でした。
もちろん親しみやすい曲ですが、他にもっと心に刺さる曲が本作にはあったので意外に感じたということです。
心と耳にスッと入ってくる軽やかさがすこぶる好印象です。
ゆれるハンモックに乗っている気分になるキラキラのポップソング。
ポップですが尋常でない特殊性があります。
ぶっちぎりに弾けるポップ感のどこかに、ハイロウズというバンド自体の哀愁や切なさをわずかに感じる特殊なアレンジ。
キレッキレでインパクトのある衝撃的なイントロ。
特に音圧の高いアルバムバージョンは、容赦なしのギターが爆音で耳をつんざく。
直後に歌が入ると至極ポップなアレンジになるとは思えないほどの破壊力を伴います。
ヒロトが歌い出すと至高の心地良さが唐突に現れるのでびっくり。
楽しげな音が心の隅々まで弾ける快感。
細やかに跳ねるギターは爽快です。
“ゆれるハンモック”と歌う歌詞に同調して、体がゆったりと揺れ始めます。
ストレスから遠ざかるいい気分。
聴き進めると歌詞の内容が心への引っ掛かりを与えているのに気付きます。
元気いっぱいな音の中にわずかに感じた妙に刺さる切なさ。
この時のハイロウズにしか鳴らせない音。
所々でなんとなく感じる哀愁は歌詞からの影響なのかもしれません。
アコギソロの間奏後には一度しか歌わないメロディも登場します。
その部分でものすごく印象に残る表現の歌詞は、この時の4人のハイロウズそのものを表している気がする。
最初から最後までスピーカーの随分前にまで飛び出してくる猛烈な音が鳴ってた。
求めていたロックのキリッとした音圧。
これ、高音質さえも超えてます。一つも音が埋もれず、すべてが聴こえてる超音質。
目の前にあったはずの世界が音楽と自分以外は無になってしまう2分51秒。とてつもなく心を奪われているということ。
どの瞬間も音楽と向き合っている感覚です。
やっぱりこの歌の唯一無二な特殊性や独自性は、名曲としてシングルになるべきだったんだなと、今は感じています。
いつもと違うところに刺さる名曲です。
歌詞 : すごくなんとなくですが、軽快なアレンジとは裏腹に歌詞は、ハイロウズの“ラストチャンス”を思わせるような哀愁や切なさを感じます。
ですが、決して悲しい気持ちになる歌ではありませんので大丈夫。
4人になったハイロウズの心情のような印象を受けました。
歌詞カードの表記が面白いです。
“気がしたよ”という文章の「よ」だけが一文字離れて独立しているのが意味深です。2番も3番も同じです。これがヒロトの突き抜けたセンスなんだな。
中盤に一度しかやらないメロディに乗る“足がはちなら 命はよん”という歌詞が興味深いです。一人ずつの足が2本なら命はその半分のひとつということでしょうか。
「よん」なので、白井さんの抜けた4人編成のハイロウズを表しているようにも思えます。
印象に残る強烈な表現でした。
M11「ザリガニ」
作詞・作曲/真島昌利
11曲目はテンポは落ち着きますが、ちょっとトリップ注意です。
マーシーの繊細な世界観が炸裂していて聴き入ってしまいます。マイナー調のメロディなんかすごくグッと来ます。
すぐに覚えて一緒に歌える。
タイトルが「ザリガニ」の歌とか、この人以外は作らない。
シュールさがたまらなく好きです。
アコギ基調ですが、キンキンなエレキの音がサイケな感じに入っている変わったアレンジが興味深さを倍増させています。
この曲にもキーボードの音が入っています。
白井さんは脱退してしまったけど数曲でキーボードを効果的には使っていて、その音に気付いた時ちょっとだけ嬉しくなります。
向こうの世界に行ってしまいそうなサイケ感。
時間がゆったり流れるミディアムテンポ。
ザリガニに話しかけるという衝撃。
ほのぼのしてるし、しみじみともしてるけど、鳴ってる音はやっぱりド派手な痛快感。
どうかしてる。
規則的なアコギが味わい深く鳴り響いた直後に、エレキギターの途切れとぎれの音が空間を切り裂くイントロからして早速感じるただならぬ雰囲気。
これは何かが起きる。
歌が入るとアコギ調の柔らかい音に包まれた感覚です。
子供心や可愛らしさのあるマーシー作の歌詞を、そのまんま子供心と可愛らしさで歌うのがヒロト。
心に響きます。
サビの後ろの方で確実に鳴ってるエレキの響き方とか、思わず意識を奪われちゃう。
それらの音には誰もが幻覚を見ます。
これなんかやってない⁉︎ 絶対普通じゃない。
どっか別の快楽的な世界に突入しそう。
ハイロウズの馬並のセンスです。
何度か現実とは別の世界の入口が見えたのでびっくりしました。
そういう意味では超過激なアレンジ。
サックスとエレキギターが誘ってくる間奏は明らかに独立してて協調性のない音。エレキの部分は音が歪み気味。強い異質っぷり。
その瞬間はサイケデリックな世界への開かれた扉か、そういう心理へのきっかけになる。
この歌、私の目の前にある現実より遥かに快感だった。
ザリガニに会いたくなりました。
そいつの赤くて大きいハサミに挟まれたいのかもしれない。
それってどの程度の痛みだっけ?とか思った。
ん?まだ現実に戻って来れてない⁈
歌詞 : 車で移動せず、マイペースで歩きながら出会ったザリガニとの対峙が心に残る物語。
車に乗ったスピード感ではなく、のんびりした散歩のペースを感じる歌詞が特徴的。
夕焼けの時間がゆったり流れてるほのぼのした感じ。
マーシーが作る音楽によく登場する「散歩」が一言目から出てきます。マーシーはよく散歩してるみたい。
ザリガニにナポリタン好きか?きらいか?と問いかけるマーシーの感性こそが、いつでも憧れの対象です。
どこにでもありそうな感性では実現できない歌詞の世界は聴いていて楽しくなってきます。
最後の歌詞がすごい深いなと共感しました。
“においさえ消える”という事は完全に無になった状態を表現しています。一番哀れなのは忘れられた人だということをこの歌詞から感じました。
子供の頃に感じたザリガニの独特なにおいを私は覚えています。
M12「ヘッドホン」
作詞・作曲/甲本ヒロト
ここからラストまではヒロト作詞作曲の歌が3曲続いて、まだまだ聴きどころたっぷり。
アップテンポの一歩手前ぐらいの絶妙なテンポ。突っ走ると歩くの間ぐらいで最高です。
いろんな音の主張が耳に入ってくるサービス精神旺盛なロックアレンジ。
ハイロウズの人気ポイントである覚えやすいメロディ。
頭のてっぺんをもりあげる無敵っぷりが魅力。
いかした気分になれるポジティブソング。
ハイロウズから楽しくて無敵な気分が特盛で提供されます。
CDやレコードを持っているとおかわり自由。
迫りくる打撃系のイントロの感じのままでいくのかと思いきや、実はいい具合に力を抜いたアレンジが楽しく聴ける歌です。
打撃の後は低い音で控えめではあるけど、確実に印象に残るギターのフレーズが繰り返されます。また面白い事やってくれそうだ。
ヘッドホンの大いなる魅力に取り憑かれたような歌心を披露するヒロト。
力まず、独特な脱力感がいかしてます。
一部、マーシーのコーラスが非常にハッキリとした音で入っていてビクッとしました。
1番のAメロにはマーシーのコーラスがあの歌い方で、異常に至近距離で歌っている音で聴こえる瞬間がありインパクト絶大です。
ボーッとしていたりロックとは別の事を考えていたとしても聞き逃せず、100%耳に入る。
Bメロからサビにかけて楽しげな雰囲気を倍増させる効果的なキーボードが入ります。
この音が入っているかいないかでは、楽しいかつまらないかぐらいの違いがあります。
弾けたメロディのサビはやっぱりもりあがって、特にインパクトのあるサビらしいサビだと感じました。
サビにはこの歌で言いたい事が集約されてる。
ヘッドホンへの恋心みたいだ。
すごい好きになったんだなってことが誰にでも理解できます。
この曲で鳴っている音からもそう感じます。
特に間奏ですが、曲中でなんかヒューヒュー、ヒュルヒュルいってる気になるこの音は何なんだろ?
そいつがちょっとおとぼけで愛せます。
ラストでも更なるヘッドホンの魅力に取り憑かれた「Uh〜 ヘッドホン」と歌う清涼感のあるコーラスが空間に響いて、魅力的な気持ちのまま聴き終われました。
後で楽しむというより、今すぐこの瞬間を楽しんでる気分になりたい時に抜群に合います。
ハイロウズからのうれしいサービス旺盛。
いい気分で、愉快な気分。
歌詞 : ヘッドホンの発明から、共感、笑い、興奮、感動、いろんな事象と心象が1曲の歌詞の中にある超ド級。
ヒロトの感性ってぶっちぎりだと思った。
ずっと心に残ります。
歌詞の思いついたらやらなきゃ気がすまないという性格が自分と一致したので、爆発的に共感しました。特に“いらないもんまで作っちゃう”の部分。
サビは“ヘッドホン”を連発して、その魅力を最大限に伝えてます。
私はイヤホン派なのでヘッドホンを持っていませんが、サビを聴くとヘッドホンが欲しくなります。それ、すげえ楽しそうだから。
絶対良さそうだし、必ず心が動くんだろう。
ヘッドホンは持ってないけど、私にも断言できる事実があります。
スピーカーから出てくる音もまた鮮烈です。
M13「たつまき親分」
作詞・作曲/甲本ヒロト
うわさの親分、登場!!!
みんなが不快に思っていることをズバッと歌う誠実な親分。
ロックの光が放たれて心に響く。
当たり前とか通用しない親分のスローテンポ。
一般論など余裕で覆す芯の強いメロディ。
手加減なしで放り投げる豪快なアレンジ。
うんざりする世間体を吹き飛ばす要素がすべて揃ってるたつまきロック。
聴くとスッキリするし、感銘を受けて一瞬だけ止まった世界が新しくまた動き出します。
短いイントロは歪んだエレキの炸裂音が世間など相手にせず、直接世界へ向けて豪快に鳴り響きます。
すかさず歌い出すヒロトの力強いボーカル、またまたグッと来ます。
なんだか頑固そうだけど、それよりも誠実そうな親分が登場してきた。
1番を歌い切ると、たつまき親分よりも頑固そうなベースとドラムも加わって一気に音が分厚くなります。
人の心を動かす繊細なアコギまで入ってる。
誰かの心の深い部分に語りかけるようなメロディは涙腺までちょっと刺激する。
楽器の種類としての音数の多いアレンジではなく、マーシーのギターが音場を広げてます。
キーボードは入っていなくても、両方の耳へとマーシーの豪快かつ繊細なギターがゴージャスに鳴っているアレンジの効果なのか、とても壮大な曲に聴こえます。
一番前にあるのはたつまきの豪快さです。
そのすぐ隣にあるマーシーの細やかさが常に私の心に響いてる感じ。
確実に傑作です。
中盤ではボーカルにエフェクトが掛かり、ヒロトがグルグル回るたつまきの中から真実を叫んでいるように聴こえる衝撃仕様。
その直後に私の目の前にヒロトが戻ってきた瞬間の音がヤバい。
今オレんちにヒロトが来てた。
そういう音が出た。
これ、みんなドキッとすると思います。
その大きなパワーが圧倒してくる。ヒロトってぶっちぎりの歌心が宇宙一を誇ってる。
もうとっくに名曲です。
この歌、嘘のないメロディが心の奥に触ってくる。だから無意味に着飾るとか秘密にしとくとか出来ません。
実感してるのは、いつもは隠してるつもりの自分の心の奥を感じてしまったこと。
アウトロの力強さは4人のたつまきの大行進にも聴こえる。
私に勇気を差し出して過ぎ去っていった。
一般論に縛りつけられた時にまた私のところへやって来そうだ。
たつまき親分。うわさの親分。
歌詞 : 自分の考えを主張しつつ、まだ分からない事をたつまき親分に問い掛けるロック。
私にとっては、嘘つかなくて頼もしい“ハイロウズ親分”。
真心で共感できる歌詞が記憶に残ります。
“信じる者は 救われるのか それはずいぶん感じわるい”と、これをズバッと歌ってくれるのがロックに託してるリアリティです。
これを歌うロックはこれまで聴いた事がなかったから1回で心の真ん中に刺さりました。
ハイロウズ親分はずいぶん感じがいい。
“世界はだれのものでもないし だれも世界のものではない”という歌詞なんか、当たり前のことなのに忘れてしまっている場合が多い事実です。
ハッとして、私もさっき思い出しました。
嘘のないロックが歌うと尋常じゃない説得力があります。
M14「プラプラ」
作詞・作曲/甲本ヒロト
音も歌詞もメロディもすべてがスルッと穏やかに自分の中に入ってくる心地良さはラストにぴったりです。
アルバムを締めくくる雄大なアレンジ。
ゆっくりと躍動していくミディアムテンポ。
子供のような遊び心だけで成り立つメロディ。
夢中で楽しむ遊びのプロに、大人全員が感化されてしまう童心の歌。
アコギもエレキも冴えてます。ギターの音色の魅力が如実に出まくったマーシーの名演奏。
ラスト14曲目、始まるよ。
感情のギタリスト : マーシーが真心で奏でる優しいアコギのみで「プラプラ」演奏開始。
柔らかいアコギがまるで夕暮れ時のように響き、思わずたそがれちゃうイントロです。
イントロから1番終わりまではアコギと歌のみで真心を掴まれる和み系。
しかし衝撃的なことが起こります。
ヒロトが歌い出すと、異常に音が近い。
今度こそヒロトが私の目の前にやって来た。
なんて生々しい録音なんだ⁈
みんなびっくりしちゃってるよ。
自分を褒めまくる歌詞のヒロトの歌い方は、爆発的な感情と燃える魂が炸裂してます。
そのあと、曲の雰囲気が一変します。
2番からはまろやかなアコギが鮮烈なエレキと入れ替わって徐々に躍動します。
スリリングな瞬間でもある。
バンド全体の音は、楽しさ嬉しさが歌詞の通り“モーレツ”です。
なんて事してくれたんだ!心がズキュンと大きく動いたじゃんか。遊ばない大人なんか許されないぞこれ、きっと、絶対。
決して主張はせず、さりげなく音場を豊かにするキーボードがとてもいい感じです。
夢中になって遊んでいる歌詞が、普段のお疲れ気味の心をポジティブにしてくれます。
この効果は全員に適用されます。
そういう意味では神がかったアレンジ。
ハイロウズがいつも実現してる“唯一無二”のロックの魔法が間違いなくかかってる。
間奏では聴き慣れない感じの音で響くギターソロ。必要以上にキンキンしてて楽しくなる。
後半も明るい演奏がほのぼのしながらキラキラしてて、ずっとワクワクします。
「プラプラ」を聴く時に落ち込んだ精神状態だったとしても、楽しい気分てこういう事だったなと思い出す人がたくさんいそう。
歌や楽器の光る音。
それが楽しい形のまま直後心へ響きます。
アウトロは好ましいスピードでフェードアウトしていく『Do‼︎The★MUSTANG』の感動的なラストシーン。
まだ終わらないでくれと思いつつ、、、
ジーンとしちゃってるのと同時に心穏やかにもなってます。
健康ってことです。
歌詞 : ぶっちぎりに子供心が溢れるヒロトの感性にほっこりします。
ブーメランで遊ぶのが大好きな人。
もうブーメランが自分のお尻にもついてたらいいなと考えちゃうくらいの遊びのプロ。
こいつが、落っこちる前に空中でブーメランをとった時は、私の心の中学2年生が歌の主人公より興奮してました。
誰もが童心にかえって遊びたくなる瞬間です。
どの言葉にも好きな事を好きなだけ楽しむという一番大事な気持ちが含まれています。
それを夢中でやることの幸福感が燦然と輝く特別な歌詞。
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜
ラストに超ほのぼのした「プラプラ」が配置されているため、心が随分と穏やかになってアルバムを聴き終えることが出来ました。
14曲の極太ロック・サウンドを馬並な気持ちで楽しめた。
健やかな心が戻ってきた。
みんなのかけがえのない個性と感情が、ブーメランのように戻ってきたやつを空中でとれたところでアルバムはおしまいです。
聴いたすべての人の存在感が“馬並”にデカくなるハイロウズの8枚目のアルバムでした。
ギターが弾きたくなるアルバムだった。
これがハイロウズのラストアルバムになった。
やはり白井さんが脱退して、ハイロウズとしては何か違うと思ったのでしょうかね?
ハイロウズはキーボードの白井さんがいて、白井さんの情熱による音の厚みのある5人編成のバンドだということなのかもしれません。
この後に2枚のシングル(スパイダー・ホップ & サンダーロード)のリリースはあったものの、次作アルバムの発表はありませんでした。
当時はこの後のハイロウズに更なるシンプルなロックを期待したけど、これが最後のアルバムになってしまいました。
つまりハイロウズ最後のド派手な名盤です。
※アナログ盤(再発盤)もまだ新品で購入できるようです。
一応、ハイロウズは解散と宣言した訳ではなく“活動休止”です。
ちなみにハイロウズの公式ウェブサイトが今でも存在しています。
デビュー時からハイロウズは歌詞の面でも存分に楽しませてくれました。
何かを教えてくれたのではなく、いつも大事な事に気付くきっかけをくれました。
ハイロウズになってから歌詞の意味を捨て去ったとか言ったやつはまったく浅はかです。
今日から新しく生きていくための取っ掛かりにハイロウズはなりうる。
この後はラストシングル「サンダーロード」で記念碑を建て、ベスト盤『FLASH-BEST-』でロックンロールの足跡を世に残しました。
ありがとうございました。
また読んで頂けるとものすごく嬉しいです。