こんにちはUMEです。
「バームクーヘン」は1999年リリースのハイロウズの4thアルバムです。
初のセルフプロデュース作です。全部ハイロウズが自分たちでやってます。
会心のDIYアルバムはこれです。
ハイロウズの人気No1アルバムです。
THE HIGH-LOWS/バームクーヘン(1999)
「バームクーヘン」リリース時からヒロトのルックスは完全にパンクモードへ。それまで長めのウルフカットだったヘアースタイルはパンクの象徴であるシド・ヴィシャスを彷彿とさせる短髪を逆立てたスパイキーヘアに。
パンクを意識してるのが最高潮に伝わります。
彼らが最も得意とするスタイルが戻ってきたという印象が強いアルバムです。
離れてしまったファンが戻ってきたアルバムと言われることも多いです。
録音は自前のスタジオである「アトミック・ブギー・スタジオ」で行われました。当初の仮称 は「ちんちんランド」でした。録音、ミックス、アートワーク、写真撮影まで、すべての作業をメンバー5人で行ったDIYな名盤です。
※ウィキペディアより
ドラムの録音は各ドラムの前にマイクを立て、ギターやベースの音はアンプの前にマイクを立てて、甲本が「まわすよー」と宣言して録音を開始し、一発録りで録音したという(ヴォーカルおよびリズムギター等ごく一部のみ別録り)。収録曲「バームクーヘン」の最後の部分で白井がオルガンをミスタッチしているが、それもそのまま収録されている。
一発録りなので基本的にギターソロのうしろにバッキングギターが入っていないのがライブ感バリバリでテンション上がります。
キンキンなマスタリングであった3rdアルバム『ロブスター』を聴いた直後に本作を聴くと、音が悪いのか?と一瞬だけ感じてしまうほど耳触りが異なります。
「バームクーヘン」は決して音が悪いわけではなく、生々しい純度の高い音だと気付きます。ライブと変わらない“そのまんま”のロックな音です。
世の中によくある身の丈に合っていないような整い過ぎた音ではない。それが生々しい丸裸の音だと感じられます。それも人気の要因なのかもしれません。
本作の特徴として「切なさ」がいい雰囲気として漂っています。胸をえぐるほどのマーシーのセンチメンタリズムが本領を発揮しています。
※ウィキペディアより
アルバム発売時に、ロッキング・オン・ジャパンのインタビューによれば、「見送り」や「ハスキー(欲望と言う名の戦車)」など「切ない(インタビュアー談)」楽曲が増えたことに対して、真島は「全然切なくしようとなんて思ってないよ、でも結果切なくなったということは…切なかったんだよ(笑)」と述べている。
それを一発目から感じ取れてしまう。とはいえ、悲しい気持ちになるわけではないパンクアルバムです。
特筆すべきは、興奮必至のギターリフから始まる曲多数です。
つまり大名盤です。
最初に聴いた時は少しだけ残念だと感じたことがありましたが筆者の誤解でした。マーシーのコーラスは、その音がちょっと遠めだなと思っていたけど、これがその瞬間の実際の距離感なんだな。
本作には強烈なマーシーボーカル曲が入ってます。
3rdアルバム【ロブスター】までは全12曲入りでしたが『バームクーヘン』は2曲も多い全14曲入りです。
アルバムの構成、ヒロト作マーシー作の絶妙な配置の仕方なんかも聴きやすさのポイントです。
シングル曲は「罪と罰」「ハスキー(欲望という名の戦車)」の2曲が収録されています。
4thシングル「胸がドキドキ」から10thシングル「真夜中レーザーガン」までは8cmのシングルCDでのリリースでしたが12th「罪と罰」の前の11thシングル「ローリングジェットサンダー」からは12cmのCDでのリリースになっています。
1999年当時アルバム、シングル共にアナログ盤も同時発売されました。
M1「罪と罰」
作詞・作曲/甲本ヒロト
ハイロウズの12thシングル。
シングルにはカップリングの『即死』の後にシークレットトラックで『アジア(愛のテーマ)』が収録されています。
イントロからすでにハイロウズ第4弾の幕開けにふさわしい曲だと感じられます。1曲目に既発のシングル曲をブッ込んできましたが、この曲は強烈なので納得です。
破壊力を伴ったものすごい勢いです。
ドストエフスキーの小説に同タイトルのものがありますね。この曲とは関係ないと思われます。
ハイロウズロックなゴリゴリのギターリフは歪んだ音が印象的で、自前録音&ミックスの生々しさです。「バームクーヘン」の音の特徴として曲が終わった無音部分なんかに、サーーというノイズが割と聞こえてきます。それが等身大でハイロウズらしいと魅力的に感じます。
日本人にありがちな「他人の人生」を生きることの終わりを告げる1曲です。これを聴いて何もやらないんなら、もう救われません。有罪です。
“デカいドリルで穴を掘って 地獄の門にションベンする 天国の扉をたたいて ピンポンダッシュでバカ笑いだ
正しい道だけを選んで 選んでるうちに日が暮れて 立ち止まったまま動かない 結局何もやらないなら
有罪 有罪 有罪 重罪”
「行動しなよ」とヒロトが的確なアドバイスをくれています。正しいと思い込んでいる道が本当に正しいかは一度疑ってみた方が幸せになれるかもしれません。世の中の当たり前はフィクションであることが多いです。
ヒロトのツンツンに立てたパンクヘアーとマーシーの肩出しスタイルが熱いです。
M2「チェンジングマン」
作詞・作曲/真島昌利
ドラマ『伝説の教師』挿入歌。
2曲目もインパクトのあるギターリフでスタートです。マイナー調の音に哀愁を感じます。それが心を捉えて離さないポイントです。
ヒロトの次はマーシーの感性が炸裂します。
変わりたいと思っている人と、変わりたいと思っていない人では生きる前提が既に違います。そもそも変わりたいと思っていないと断言するような人は扱いが面倒な場合が多いので、関わる時は注意が必要です。「自己中」というものです。相手のことは変えられません。変えられるのは自分だけですね。
“変わるぜ いつだって 変わるぜ 今だって するりと抜けていく 水銀光ってる”
この曲が刺さる人の方が筆者は好きです。「変わるぜ」と宣言できる人のエネルギーはこちらにも伝染します。
“キミがそう信じるのなら ガラクタも宝ものだろ そういうことじゃん”
この歌詞はすごく嬉しくなりました。自分もそう感じていたので。一般的な価値観よりも何を信じるのかが大事ですね。
“やさしいフリすんな その気もないくせに アブラのとこはちょっと 食えないから残す”
歌詞のようにやさしいフリするのは変わりたいと思ってない人だと筆者は体感で気付いています。
変わりたいと思うところから始まるんだとマーシーが大正解なことを教えてくれています。
M3「二匹のマシンガン」
作詞・作曲/甲本ヒロト
初めて聴いた時から一発で名曲でした。力強いヒロトのボーカルとマーシーのミュート奏法のギターに胸熱なメロディがスタート直後から名曲の佇まいです。突き抜ける瞬間の高揚感は最高です。
ロックが胸にガツンと来てアドレナリン出まくりです。
“夜の宝石を化石に変えて笑ってる 二匹のマシンガン 夢見心地のままでは夢はつかめない 二匹のマシンガン”
「二匹のマシンガン」という言葉がヒロトとマーシーの2人のことな気がします。ファンならそう考えずにはいられないところです。その解釈で聴いてみると腑に落ちるので。
あの2人ならロックで世界を撃ち抜くマシンガンですね。
“アダムとイブが最初なら僕らは最後だ 二匹のマシンガン アダムの罪がリンゴなら僕らはレコード 二匹のマシンガン”
ここで完全に胸を撃ち抜かれます。僕らは最後だ、僕らはレコードという表現は至高です。ロックを楽しむことの幸福感とオタクの心もくすぐる言葉のセンスが光っています。
ラストがピアノソロというのもハイロウズらしいです。
M4「モンシロチョウ」
作詞・作曲/真島昌利
簡単なコードのパンクなギターリフが冴えてます。「切なさ」出てます。クールなのにすごく熱い。難しいテクニックなんか一切ないのにこんなに燃えるのはハイロウズだけです。
“裸になればいいのか ポコチン出せばいいのか 存在してるだけじゃ 退屈で嫌になっちゃうよ
モンシロチョウ キャベツ畑”
自分の人生にどこか疑問を感じている。一般的な生き方をして、みんなと同じをやっている自分に飽きていて嫌気がさしてる、そんな心情だと解釈できます。マーシーがポコチンを(歌詞に)出してきたことが意外でした。
“詮索好きのババア 男のババアが増えた オレはひどい咳だぜ コデインをお願いします”
自分の経験からも「男のババアが増えた」という表現がすごく刺さりました。同感です。
※コデイン
咳中枢に作用する「中枢性鎮咳薬」です。古くから、咳止め薬として広く用いられています。わりと強いほうなので、咳のひどいときに処方されることが多いです。
なるほど。コデインは咳を止める薬なんですね。
“地球にやさしくだと 余計なお世話だババア イルカやクジラよりも 森林やオゾンよりも
第三次世界大戦だ ワクワクするぜ 突撃だ”
また男のババアが出てきました。前例がないことを嫌う老害な政治家のことなんじゃないでしょうか。本当の戦争じゃなくて、自分の中で第三次世界大戦ほどの世界を変える何かに突撃しようとしている決意が胸熱です。
M5「ハスキー(欲望という名の戦車)」
作詞・作曲/甲本ヒロト
ハイロウズの13thシングル。本作「バームクーヘン」と同時発売でした。
「王様のブランチ」のエンディングテーマで使用されました。シングルにはカップリングの『愛はいらない』の30秒後にシークレットトラックの『ブラックハワイ(愛のテーマ)』が収録されています。
久々に来ました。マーシーのコードストロークのみのギター!ギター初心者でもコードさえ覚えれば弾けてしまう。でもマーシーじゃなきゃ、こんな風にキレイにはいかないんです。
白井さんのキーボードの音がいい雰囲気を紡ぎ出しています。
サビでの手拍子がたまらなくテンション上がります。
“ロマンチックな理由で ロマンチックな方法で ロマンチックな結末の ロマンチックな途中の場面”
とことんロマンチックなのが照れるほどに筆者は好きです。人生はロマンチックです。
“枯れ葉のような舟で ユーレイ船に会った そしてもう戻らない もう二度と戻らない うたおうハスキーボイス”
自分自身の方は船ではなく「舟」の漢字を使っているのが好印象です。イメージでしかないですが、船より安定はしていないけど1人の人間である自分自身だと宣言しているように感じます。
“うたおうハスキーボイス”の盛り上がりは最高潮です。
M6「ダセー」
作詞・作曲/真島昌利
ここで少しだけテンポダウンします。テンションは変わりません。ここからマーシー楽曲が3曲続きます。その後に今度はヒロト楽曲が3曲続くという構成が筆者はお気に入りです。
ギターリフからのスタートです。
シュールなのがダサくなくて素敵です。
「ダセー」という言葉のインパクトは強いのでもちろん曲も記憶に残りやすいです。
※「ダサい」ウィキペディアより引用
ダサいとは、「恰好悪い」「野暮ったい」「垢抜けない」などといった意味を持つ俗語である。1970年代前半から関東地方の不良少年や女子高生の間で盛んに用いられ、1970年代後半には若者語として定着した。
この説明もめちゃくちゃダサいですね。
“ダセー世の中で ダセー恋をする ダセー毎日が ダサく盛り上がる ダセー”
何かこれじゃないという思いがあるんでしょうね。自分だけは違っていたいと奮起しているけど、サビではやっぱりこうなのかって歯がゆい感じがバッチリ出ているのが共感できます。
“オレはダサくなんかねえ そう言ってみたいけど みっともなさばかりが ドボドボあふれ出す ダセー”
これ聴くとすごい安心できます。あのマーシーでも自分をみっともないと感じ認めてしまうことが知れたので。人間同士、大して変わらない。これでいいんだなと思います。
でもやっぱりダセー。
M7「見送り」
作詞・作曲/真島昌利
個人的にはハイロウズ全楽曲の中でもかなりの名曲です。
それはなぜか。マーシーのセンチメンタリズム全開で心に響くからです。見送る側の心情が切々と爆発したジーンと来る名曲です。ストーリー性があって、もうすぐで涙が出ます。
イントロで向かって右側で弾いているマーシーのギターリフの音からすでに何か特別なものを感じてしまいます。この曲はオーラが違う。落ち着いたテンポとアレンジが特別感を引き立てています。
「バームクーヘン」で見つけたノスタルジーです。マーシーの天才的な詩人ぷりが見事です。
“ひどい雨で 空港まで 南へ飛んでくキミの 左手をギュッと握った”
空港まで見送りに行く時の心情が切ないです。サビから後半では更なる思いの爆発がとても人間らしく表現されます。
“何でいつも見送る側は 所在なく立ちつくすんだ 何でいつも見送る側は ただの風景になるんだ 何でいつも見送る側は 照れ笑いとかしちゃうんだ 何でいつも見送る側は”
マーシー節炸裂してますね。立ちつくしている自分を「ただの風景」って。こんなにも魅力的な表現ができるの世界にマーシー1人しかいません。照れ笑いしてしまう気持ちも共感しちゃうな。心にうったえかける歌詞はこれだけじゃないんです。
“ひどい雨で 空港まで 南へ飛んでくキミに 言葉は歯の裏で溶けた”
やられました。言いかけたけど言えなかった言葉。1曲目からテンション高く聴いてきて7曲目に独特のオーラを放つ曲が入ってるんだもん。
“ひどい雨で 空港まで 南へ飛んでくキミに 心を持ってかれちゃうよ”
この曲の魅力的な比喩表現に心を持ってかれちゃうよ。見送る側の心情に共感しまくりで切ないような胸にジーンと来るような…何度も聴きたくなる曲です。
M8「死人」
作詞・作曲/真島昌利
タイトルが強烈で、何の歌なんだろうと思いましたがこれは偉大な曲です。
生きてることを完全に100%肯定する衝撃の曲です。自分と完全に価値観が一致していて大好きな曲です。
この曲が言っていることは至極当然です。それ以外の正解なんてありません。
あの商売に喝を入れます。
“死んだ人よりも オレは大切だ 死んだ人よりも オレは大切だ なぜならばオレは生きてるからだ”
これがすべてです。理由が正しくてハッキリしている。それを理解できないと幸せにはなれません。
“死んだら死んでいるだけだ 地獄や死後の裁きとかそんなのはウソっぱちだぜ クサい金の臭いがする”
筆者は誰かを幸せにするという意味での宗教は肯定しますが、ありもしないものを高値で提供する考え方としては否定的です。歌詞の通り、死んだら死んでるだけだと筆者も考えます。マネタリング(直訳すると収益化)のひとつとしては宗教は優秀かもしれませんけど。
“人を誉めるなら 生きてるうちに 恋をするのなら 生きてるうちに”
最後のこの歌詞には心を鷲掴みにされます。自分の体も感情も「生きてるうち」だけが存在してる時間です。死後のために今を生きるのは変だと思いますよ。
ヒロトの「罪と罰」同様に行動しなよと背中を押されます。
M9「彼女はパンク」
作詞・作曲/甲本ヒロト
タイトルからも連想させるようにコードのみのシンプルなギターに難しくない演奏がラモーンズ風です。
「パンク」という言葉がタイトルに使われている曲がパンクアルバムに収録されていることが期待通りです。
アルバム用の曲が1曲足りなかったからヒロトが急いで作ったということです。今でもどことなく、この曲だけちょっと軽い印象はあります。決して捨て曲ではありません。
ここからヒロト楽曲が3曲続きます。「バームクーヘン」は2人の楽曲の配置が絶妙です。
“カッコいいじゃん 常識はずれ カッコいいじゃん 道徳やぶり”
道徳やぶりを肯定するわけではないけど、日本人はあまりにも非常識な常識を信じ込みすぎです。
“本当なんだよ 壊したいんじゃない 壊れてみたいだけ 粉々に”
何かのフラストレーションを感じます。重要で共感できるのは他人を傷付けるわけではなく、自分が粉々になってみたいだけという実は最低限のモラル(道徳)は持っているということです。
“退屈に飽きちゃった”
何度か出てくるこの歌詞。今の一般的な生き方が退屈なんでしょう。そんな価値観いらないから自分らしく生きたいという強い思いなんだなと解釈しています。
この曲の歌詞は12曲目の「ガタガタゴー」にも繋がっていると感じます。
M10「ガンスリンガー」
作詞・作曲/甲本ヒロト
個人的にはこの曲と次の曲がアルバムの中では少しインパクトが弱い印象があります。
2ndアルバム【Tigermobile】収録の『シェーン』のようなガンマン系のシリーズです。昔の西部劇映画なんかを思い出させます。
※ガンスリンガー
ガンスリンガー(gunslinger)は、ガンマンの別名。
ベースソロありです。間奏ではべっちゃんのベースが歯切れよく唸ります。
“弱い者は助けたいけれど 臆病者はうっとうしいだけ ガンスリンガー”
古い映画で観たガンマンの心が表現されていて男らしさを感じます。「男らしさ」という価値観もすでにオワコンかもしれませんね。「男らしさ」「女らしさ」の前に「自分らしさ」です。
“置き手紙も残さないで 捨てゼリフのその代わりに 鉛の流線形”
このサビのメロディは哀愁を感じる日本人には馴染みやすさがあります。捨てゼリフの代わりに銃を一発撃つところがガンマンです。
M11「21世紀のフランケンシュタイン」
作詞・作曲/甲本ヒロト
本作「バームクーヘン」のリリースは21世紀がすぐそこの直前まで迫っていた時期ですね。
急にテンポが変わったりする曲という印象が強いです。
“魔法はいらねえ 寝っ転がれよ しろつめ草に まずはビールだろ”
※シロツメクサ
マメ科で春〜夏に咲く15mmくらいの白い花
魔法なんかないからしろつめ草にビールだろとフランケンシュタインの主張が人間よりも人間らしいです。しろつめ草はマメ科ということで、関係ないかもしれませんがヒロトは豆が好きですね。
“21th century フランケンシュタイン 雷鳴を待たず 21th century フランケンシュタイン 奇跡を待たず”
奇跡なんか待たずに行動しろということでしょうね。
ラストは5人の凄まじい演奏でハイロウズロックのカッコよさ出まくりです。
M12「ガタガタゴー」
作詞・作曲/真島昌利
1stアルバム【THE HIGH-LOWS】収録の『バナナボートに銀の月』以来のマーシーボーカル曲です。待ってました。
驚愕の一発録りです。
軽快なピアノの演奏が始まったなと思ったらファンならすぐに気づく、いかにもマーシーが歌い出しそうなロックンロールのギターのフレーズが期待を裏切らない。
マーシーが目をカッと見開いて歌っている光景が浮かびます。
間奏はギターソロにピアノソロと楽しませてくれます。
マーシーボーカル曲はヒロトのハーモニカも聴きどころです。
歌詞には薬物の名称が入っているためピー音でその部分のボーカルが伏せられています。それがなんともロックらしいと感じるし、ボリューム全開にして何と言っているのか聞き取ってみようと試みた人もいるはずです(笑)もちろん筆者もやりました。
よく聞くと漏れて聞こえています。
“働いて働いてまた働く 仕事より楽しいのはまた仕事 休みたいなんて思ったこともねえ”
すごい皮肉ですね。この曲はトリップしてる感じを出したかったんじゃないかと思いますが、どうなんでしょう。
“落ち着かないなら・・・でも吸えよ くたびれたんなら・・・でもやれよ 結局のところ退屈なんだろ ガタガタゴー”
休むことは重要なので疲れる前に休みましょう。そんなに一生懸命に生きようとしなくても大丈夫です。
歌詞カードに注意書きされているのがなんかウケました。
一発録りの演奏力がハンパないです。
M13「笑ってあげる」
作詞・作曲/真島昌利
筆者にとって「バームクーヘン」の一番好きな曲です。
オレ正しかったんだと思いっきり気付かせてくれます。この曲はマジでスカッとします。
ラストの「あっはっはっはっはー」のコーラスは圧巻で壮大で爽快です。間違った古い価値観なんか笑ってあげられます。途中から入ってくるマーシーが自分スタイルで歌う「笑ってあげるー」のコーラスが超絶胸熱です。
“裸になって 滝に打たれても 結局何にもわかりゃしないだろ 日々の煩悩と欲望の中に しっかり確かな手応えがあるぜ”
修行したって何もわからない。日々の煩悩と欲望こそが100%の確率だという生き方には同感です。自分を苦しめる修行とか意味ないのでやめましょう。もっと楽に生きれます。
“キミは笑われたことがないんだろ 笑ってあげる 眉間にしわを寄せてるキミを 笑ってあげる”
笑われたこともないやつが何もわかっていないで、非常識な正義を振りかざしてるのを笑ってあげるというのが痛快すぎてこの曲の信者になってしまった。これは宗教じゃないけど、誰かを幸せにするという意味での教祖ではありますね。
“苦行の果てには 何が見えたんだ 難行の果てに何が見えたんだ キミが偉そうに 言ってることなど とっくにオレは 気付いてるんだぜ”
ここです!マーシーのこの歌詞で自分を肯定することが叶いました。個人的には「毒親」ってやつのクソほどの非常識から解放してくれる重要な曲です。歌詞の通り、とっくに気付いています。この哲学には惚れ込みました。
M14「バームクーヘン」
作詞・作曲/甲本ヒロト
ラストはタイトル曲です。
確実に生きる気力を取り戻せます。人間である自分のことを好きになれる良曲です。
ブルーハーツの頃から思ってました、こういう人間らしい曲はヒロトにしか作れません。最高です。
“ダビンチのひらめきと ライト兄弟の勇気で 僕らは空を飛ばないかわり 月にロケットを飛ばす”
人間て素晴らしいなと感心してしまいます。普段は人間でいることに嫌気がさしてしまったりするけど、この曲聴いたら人間がいいと思えました。
“たとえでっち上げたような夢も 口から出まかせでもいい 現実に変えていく 僕らはそんな形”
これほどまでに人間を肯定している曲は他に知りません。人間には現実に変えていく力が備わっていますよね。そう信じられるようになりました。
“僕はこんな形 ダラダラ歩く形 オートバイに乗る形 コーヒーを飲む形 バームクーヘン食べよう”
コーヒーと一緒にバームクーヘンを食べたくなったところでアルバムは終了です。締めにほのぼのとさせてくれるのがいいですね。
「バームクーヘン」の歌詞カードの写真のマーシーはバンダナをしていません。
全14曲のハイロウズロックが楽しめる唯一無二のDIYアルバムです。録音の異常さは聴けばわかる鳥肌ものです。その瞬間に込められた魂が見事に伝わってきます。
つまり名盤です。
これからハイロウズを聴いてみようという人は「バームクーヘン」から入ってみるといいです。
人生なんてあっという間です。やりたいことがあるなら今すぐ、聴きたいレコードがあるなら今すぐに。
“罪ならば全部認めるが 罰を受けてるヒマはないぜ”(罪と罰より)
未開封Tシャツコレクション
これは明らかに「バームクーヘン」のツアーのものですね。筆者は細身の小柄なのでサイズはSです。2枚買ってもう1枚はよく着てました。
2020年に「バームクーヘン」のアナログ盤が再発売されました。
まだ買えます!
レコードは面倒くささ、わずらわしさがたまらなく楽しいです。
※写真は1999年当時のオリジナル盤です。
1stアルバム【THE HIGH-LOWS】
2ndアルバム【Tigermobile】
ミニアルバム【4×5】
3rdアルバム【ロブスター】
ハイロウズの一ファンとして。
ありがとうございました。
それではまた。