こんにちは。
『RAW LIFE』は1992年リリースのマーシー(真島昌利)の3rdソロアルバムです。
前2作がドラマチック、ロマンチックな作品であったのに対し今作は“攻撃的で過激なロック”のアルバムです。
1992年『RAW LIFE』のリリース時期は、ブルーハーツの活動としては5枚目のアルバム『HIGH KICKS』(1991)と6枚目のアルバム『STICK OUT』(1993)の間です。
事実は知らないけど、ブルーハーツのブランク期間に制作したという印象を受けます。
マーシーは1992年の1年間はソロ活動に費やしたのかもしれません。
誰が聴いてもインパクトの強いソロ3枚目のアルバムです。
突き抜けた皮肉が爆発した攻撃的な歌詞と、ロックの衝動で掻き鳴らすジャカジャカ系のサウンドが特徴です。
分かりやすく言えば、ロックです。
真島昌利/RAW LIFE(1992)
RAW LIFE(ロウ・ライフ)は前作ソロ2ndアルバム『HAPPY SONGS』(1991.4.10)から1年半後(1992.11.1)に発売された3枚目のソロアルバムです。
それまでのソロ2作品に比べて、爆発的に問答無用のロックが一番前に出てきました。
そこら辺のロックよりもかなり刺激が強くてビビります。
ロックに殺られる覚悟が必要です。
これは私が中学生の時に買った初めてのCDアルバム。初のアルバムが強烈すぎました。
当時すごくジャケットに惹かれたのを覚えています。バンダナを巻いて黒のジャケットを着たマーシーの顔が「君が買うべきなのはこれだ!」と言ってるように見えました。
オレにアピールしてる⁈
そういうわけで、初めて買ったCDアルバムはジャケ買いでした。
聴いたらすげえビビったけど、買ってよかったという今でも変わらない当時の感想です。
あれから31年後の今でも『RAW LIFE』の過激なロックが大好きということは、あの時のマーシーのアピールには虚勢がなかったということになります。
ロックンロールはやることが違います。
ただのアルバムではなく、ロックの名盤。
今でもこの名盤を買って聴くことは出来ますが、当時のオリジナル盤はすでに廃盤です。
オリジナル発売から15年後の2007年に、新しく豪華になった『RAW LIFE-Revisited-』として再発売されました。
真島昌利/RAW LIFE -Revisited-(2007)
RAW LIFE -Revisited- (ロウライフ-リビジテッド-)は2007年にリリースされた『RAW LIFE』のリマスター盤で、2枚組み特別編です。
マーシー自身による全編リマスター
2枚組になって再登場しました。この再発売にはすごく驚きました。ボーナスディスクが追加されていたので当時のオリジナルの方を持っていたけどすぐに飛びつきました。
ジャケットも赤から緑になりました。
1992年当時のオリジナル盤の「内容」はそのままDisc1に収録されています。
音は確実に凄まじきものに変わりました。
マーシー本人監修によるリマスターが施されたからです。
今となってはオリジナル盤、再発盤の両方を持っているから比較できますが、オリジナルの方は古いCDにありがちなちょっと音が小さい感じです。音圧が低いです。
「Revisited」ではそこが見事に改善されて、聴き取りやすいクリアな音質になりました。最近の音楽と聴き比べても音圧に違和感はないです。
より過激なロックの音に生まれ変わったという印象です。『RAW LIFE』ってこんなにすごい音だったのかという感触でもあります。
ロックが炸裂する太い音と、細かい事にも手を抜いていない繊細な音が両立しています。
Disc2は93年渋谷公会堂でのアコースティックライヴが収録されています。
マーシーファンが興味ないはずありません。
しばらくの時間が経ちましたが、この音源を発売してくれたことに感激したし内容にもグッと来ました。
『RAW LIFE』に収録されたシングル2枚のカップリング曲もDisc2に入ってます。カップリング曲を聴くためにわざわざヤフオクとかで当時の8cmシングルを探さなくてもこっちのが手っ取り早いです。
「-Revisited-」のブックレットはオリジナル盤より豪華になりました。オリジナルには掲載されていなかった写真(シングルのジャケットなど)も載っています。
『RAW LIFE』はかなりロックです。
よく言われることですが、ソロ4作品の中で音楽的にブルーハーツに一番近いのはこの『RAW LIFE』です。
・皮肉たっぷりで攻撃的
・ロックにしかない鋭い勢いがある
・イライラしながら聴けばいい
・すぐにスカッとする
前の2作にはカバー曲が入っていましたが『RAW LIFE』は全曲マーシーのオリジナルです。
マーシーが声を張り上げて過激なロックを歌います。
歪んだ音で突き刺すギターを弾きます。
興奮のロックに不可欠なギンギンのギターリフがたくさん聴けます。
むろん、激アツです。
ブルーハーツからマーシーのソロ作品に興味を持った人はまずは『RAW LIFE』から聴くのが失敗しません。
鋭く尖っているし、止められない勢いがあって1回目から興奮しやすいですが、何度聴いても飽きることがありません。
一体どうしたのか⁉︎と思ってしまうほど、アルバム全体が皮肉たっぷりで燃え上がっています。
とてつもない熱量が伝わってきます。
歌詞の内容から暗いという人がいるかもしれないけど、私は他のどの音楽よりも前向きでポジティブだと感じます。
事実ですが、聴くといつもネガティブな感情など消え去っています。人と違っても自分らしくいてやるという前向きなパワーがみなぎっています。
人にはいろんな感性があっていいと思う。
アルバムタイトルの『RAW LIFE』とは “生々しいリアルな暮らし” を歌ったということです。
『RAW LIFE -Revisited-』収録曲
Disc 1 (本編)
01.RAW LIFE
02.俺は政治家だ
03.GO!GO!ヘドロマン
04.エゴでぶっとばせ
05.かしこい僕達
06.煙突のある街
07.ドライブしようよ
08.情報時代の野蛮人
09.関係ねえよパワー
10.こんなもんじゃない
11.RAW LIFE(Reprise)
BONUS TRACK:ですメタル
Disc 2
(アコースティックライブ&カップリング)
01.休日の夢
02.オートバイ
03.とても寒い日
04.カーニバル
05.花小金井ブレイクダウン
06.HAPPY SONG
07.踊り踊れば
08.I FOUGHT THE LAW
「Disc 1」全12曲、60分。
「Disc 2」全8曲、34分。
合計20曲で94分になりますが、Disc 1の11曲目の終わりに2分間の無音のブランク部分があります。
「本編」は基本的に3人のミュージシャンだけで演奏しています。
前2作よりもロックに傾倒してシンプルになったけど、パラフルになった印象です。
たった3人での演奏とは言え、音数が少なくてスカスカだなと感じる耳触りではありません。攻撃的な太い音が爆走しています。
3人だけの演奏とは思えない分厚さと力強さ。
他のゲストミュージシャンによる演奏はコーラスぐらいです。1曲だけバイオリンが入っています。
Vocals & Giutars : 真島昌利
Drums & Percussion : そうる透
Bass,CMI Ⅱ & All Other Instruments : 佐久間正英
Produced by 佐久間正英
1993年、5枚目のシングル「俺は政治家だ」リリース時にミュージックステーションに出演しました。
その放送をリアルタイムで観ていた私にはものすごい衝撃でした。テレビに映るマーシーの在り方や個性的なTシャツに強すぎるインパクトがあったので、ずっと記憶の中に真空パックされたままです。
ーー今日はブルーハーツから外れましてソロとして初めての登場。さっきからちょっとおとなしいけど、気分だいぶ違うの?
マーシー「さみしい。」
ーーやっぱりみんなと一緒にやってた方がいい?
マーシー「うん。」
ーー1人で自由にのびのびとやれない?
マーシー「やれる。」
ーーじゃあ寂しくないよね?
マーシー「でも、さみしい。」
ーー(「俺は政治家だ」について)これはあのどんなイメージで作ったの?
マーシー「いや、あの、普通。」
ーー政治家になんか批判的なものがあったんじゃないかと思うんだけど?
マーシー「う〜ん、いや、僕はただ普通に暮らしてるだけですから。」
ーーうん、あのね、そういう意味じゃなくて。わかるかな〜、なんか政治家がこう風刺とか、、、風刺わかるね⁈
マーシー「風疹?」
ーーあいつ嫌だな〜とか思ってチクッとやったれとかいう感じの、そういう意味があったわけ?
マーシー「う〜〜ん、ううん。」
ーーあ、そうじゃない。ふ〜ん、普通の意識だったわけね。
マーシー「うん。」
ーーよ〜く、話がね、分からなかった。
タモリさん相手にテレビでも個性のままでいるのがマーシーらしくて好感が持てます。
ということで、あくまで普通の意識で作った「俺は政治家だ」は普通ではありません。もし普通ならつまらないし、魅力も感じていません。超個性的です。
『RAW LIFE』もきっと普通の意識で作ったと言いそうです。マーシーの普通の意識であって、誰にでも出来る思考、音楽、制作意図ではないのは明らか。
そこにこそ『RAW LIFE』とマーシーの魅力を感じる訳です。
一つハッキリと言えるのは、何かとっつきやすくて、なんとなくリズムに乗ってて、誰にでも理解できるような、いわゆる“普通”を求めるならこれじゃないということ。
唯一無二の感性と、12通りのロックが訴えかける奇抜なドラマがあります。
ロックに突き動かさせられた初期衝動。
反骨精神に満ちたロックンロールの消えない魅力。
『RAW LIFE』を聴く場合はやっぱり、、、
ロックに殺られる覚悟が必要です。
シングル曲は4thシングル「GO!GO!ヘドロマン」と5thシングル「俺は政治家だ」が収録されています。2枚のシングルのカップリング曲もDisc2に収録済みで網羅してます。
4枚目のシングル「GO!GO!ヘドロマン」はアルバムに先行して1992年10月1日にリリースされました。
カップリングにはマーシー作の明るくて踊り出したくなるような「踊り踊れば」が収録されました。『RAW LIFE』に収録するにはちょっと合わないかもしれません。
5枚目のシングル「俺は政治家だ」はアルバム発売後のリカットで1993年1月21日にリリースされました。
カップリングには“THE CLASH”でも有名なカバー曲「I FOUGHT THE LAW」がマーシーによる日本語詩で収録されました。意表を突くカントリー調なアレンジで、やっぱり『RAW LIFE』に収録するには合わない感じ。
シングルタイトル曲は2曲ともに本作収録のものと同テイク。
1992年のオリジナル盤と2007年の再発盤発表時、『RAW LIFE』はCDのみでリリースされました。
残念ながら『RAW LIFE』のアナログ盤は現在も発売されていません。私は魅力的なロックの『RAW LIFE』をアナログの音で聴いてみたいと思っていました。
その思いを叶えるために、カセットテープを自作しました。いい感じです。
カセットに録るとCDよりちょっとだけ音が良くなります。
マーシーと自分の、何か抑えきれない衝動が炸裂する『RAW LIFE』です。
今イライラしてるなら、そのフラストレーションのまま聴けば余計にスカッとします。
『RAW LIFE』はどうでもいい一般論に殺られるような、やわなものではありません。
瞬間ごとに爆発するロックに殺られます。
M1「RAW LIFE」
作詞・作曲/真島昌利
一発目のタイトル曲からいきなりとっくにギンギンのロックです。
ギターリフに頑固なロックの雰囲気があります。
マーシーの独特な歌詞が鋭くて、一瞬で耳を通り抜けて感情に直撃します。
何度か歌う“俺は死ぬまでロックする 俺はとことんロックする”と言い切る歌詞がストロングなロックの魅力を放っています。
人力ロックではありますが、アレンジの影響か不思議と機械的な耳触りでもあります。機械的というか、ハードロックなんかに近い感触なのかもしれません。
意外と長い5分半の曲です。しかしすべての瞬間に心を奪われっぱなしなので長いとは感じません。間奏では重大な事件も起きます。
再生ボタンを押すとマーシーのアカペラ。それはアカペラだけど、ひたすらにロック。
一節歌った直後にすべての楽器の音が入ると度を超えたロック。その後はギンギンなギターリフに殺られます。
勢いがある、迫力がある、それよりもロックの太々しさが一番前にある。
刺激の強い歌詞を、マーシーが割と早口で歌うスタイル。そこにロックの頑丈さを感じます。やわな瞬間なんかない。
歌詞の通り、瞬間ごとに爆発してる。
弱々しさはない、協調性も一切ない、他人のルールなんかに妥協しない。そんなもの一蹴した主張と太々しさと馬鹿馬鹿しさが輝いてる。
ロックとはこれのことだと思った。
つまらない同調性を求めているならこれじゃないことは明らか。私はこれを聴いてじっとはしていられない。
自分の心の中で爆発を感じる。
それからこの曲には中学生の頃の私にとっては“なんかすげーヤバいもの”が仕掛けられていました。
忘れられない強烈な体験です。
『RAW LIFE』を初めて聴いた時は実家で同じ空間に家族がいる状況で、ヘッドホンをつけて聴き始めました。1曲目から「カッコいいなぁ買って良かったなぁ」なんて興奮しながら聴いていると間奏部分に突入しました。
問題なのはそこだった。
なにやらあんまり聞き慣れない怪しげな音が入っている。確実にハッキリしっかり聴こえているその音は、人の声だ。
耳の奥を伝わって、中学生の胸がドキドキしちゃっているのが分かる。なんか知らないけど「ハァハァ」とか「アハン」とか言っている。絶対言ってる。絶対聴こえてる。
そう、それはセクシー女優さんの超官能的なセクシーボイスでした。
間奏はギターソロじゃなくて、セクシーボイスソロ。
ヘッドホンつけてて良かったぜ!スピーカーだったら絶対これ気まずいやつじゃん(笑)
オレ、その気まずさには耐えらんねえよ(笑)なんて中学生は1人で勝手にドギマギしたのでした。
なまめかしいセクシーな声が、間奏から曲の終わりにもまた入ってます。頑固で強靭なロックに艶やかさまで出ちゃってる。
初めて買ったアルバムの1曲目から忘れられない体験をしました。もう中学生ではないので、ヘッドホンなんかつけないでスピーカーからの大音量で聴けるようになりました。
マーシーがテレビで言っていましたが、その女優さんには自分からオファーしてスタジオに来てもらって録音したということです。
最後の最後までフェイドアウトせず、ギンギンバリバリなロックの隣に、悶々としたセクシーな気分が付きまとう。
ラスト、、、どうやら満足したっぽい。
歌詞 : 安定を求めると心が不安定になります。私にとって退屈なのはいつも一般論です。そんな教訓をくれました。マーシーの感性でやるからこそ、嫉妬するほどカッコいいです。
「退屈に殺られるよりは 興奮に殺られたいんだ」
オリジナル盤の方のCDの帯にはこの歌詞が掲載されていて、初めて買うアルバムはどれにしようか迷った私の気持ちを煽りました。
帯の煽り文句は重要です。
セクシーな間奏の直後に歌われる素晴らしく下品な歌詞は衝撃です。
なんだこれは!エロすぎる。
今オレが読んでいるのは官能小説じゃなくて音楽の歌詞カードだよね⁈
この歌詞のすぐそばにあのセクシーボイスが聞こえているもんだから、なんかすごい。
ロックのアルバムでなければ必ずおかしなことになってしまいます。
オレには1曲目から事件が起きました。
『RAW LIFE』は、買えば無料でとことんセクシーな気分まで付いてきた。太っ腹だ。
ロック以外のことで興奮したい場合のみ、特に間奏はヘッドホン推奨。
M2「俺は政治家だ」
作詞・作曲/真島昌利
マーシーのソロ5枚目のシングル。
タイトルからして何かやらかしてくれそうな雰囲気を察します。
あくまで普通の意識で作ったというこの歌は、政治家への皮肉たっぷりでスカッとします。
『RAW LIFE』には他にもシングルになりそうな親しみやすい曲はあると感じますが、この歌をシングルにしたことにもロックイズムを感じます。
しかし他の歌ではインパクトでは勝らなかったかもしれない“一撃必殺”のシングルになりました。
強烈なインパクトだし、炸裂してます。
突撃開始のイントロは、半端な政治家が逃げ出していく誠実さと堅実さに溢れる極度にロックなギターリフ。
マーシーが歌い出すと凄まじき皮肉が炸裂。
誰かが痛いところを突かれてる。
根底は完全にロックですが、少しカクカクした印象の歌がラップに似ているような、それまでなかった新鮮さを感じました。
1曲目に続き少し早口な歌い方が、どこにでもあるロックに似たものとは一線を画す破壊力です。
マーシーのロックに合うしゃがれた歌声でしか成り立たない個性派ソング。
突き刺さるギターと、過度に轟音のベース、叩きつけるドラム、音場を豊かに広げるキーボード。
スピーカーからすごい音が鳴ってる。
特に「Revisited」は音圧にブッ飛ばされる。
3人のミュージシャンが録音したその瞬間にどれだけの熱量をブッ込んだのか⁈
ロックに馴染むテンポでバシバシと曲が突き進みます。
間奏はワウを効かせたギターソロ。ウィンウィン鳴るギターにトリップする瞬間。
オレは見事にロックの魅力に殺られてる。
途中で外国人が英語で「俺は政治家だ」にちなんだ何かを猛烈にまくし立てます。私は英語が分からないけど、言っていることの雰囲気は余裕で伝わってきます。
とてつもないパワーを感じる。
だから言いたい事は言えばいいとか思った。
聴いているとものすごく攻撃的にも感じるし、マーシー本人が言っているように普通に暮らしてるだけというのにも納得します。
これはリアルなロックです。
別に風刺ではないのかもしれないけど、攻撃力はMAXであることは間違いない。
その凄まじき攻撃力に魅せられています。
フラストレーションを感じながらも、言えないオレの軟弱な心の代弁です。
それは、ロックの救世主。
『RAW LIFE』のマーシーに救われ、勇み立つ心はたくさんあると思います。
弱さと強さのひっくり返った私の心は、浅はかな嘘とか心のない言葉とか全部ぶん投げようと決心しました。
歌詞でマーシー得意の韻を踏みまくってるところにこの歌のハイライトがあります。
歴史に残る。少なくともオレの心に残った。
当時テレビでマーシーがこの曲を歌ってたのを観た強すぎる記憶があります。マーシーは白いTシャツに赤いテープで「¥」を表現してたのが私にはかなり衝撃的だったので鮮明な記憶として残っています。
それまでテレビにこれほどのインパクトなんて他になかった。
歌詞 : マーシー以外の誰かが歌ったのならきっとドン引きです。この歌を作ったのは、本人いわくただ普通に暮らしてるだけの人です。
その人の苛立ちが言葉になり、誠実さがメロディになったのかもしれません。そして逆立つ気持ちを突き刺して!
サラッとロックのパワーにするのがすごい。
韻を踏みまくる歌詞はキレイにハマっていて圧巻だし、しっかり曲調にもマッチしています。その快感が音楽って楽しいなと思わせてくれます。
なんて芸術的才能なんだと思いました。
ここまでやってくれると文字で読むよりロックの音として聴いた方がガッツリ圧倒されます。私はマーシーのこの感性のファンです。
M3「GO!GO!ヘドロマン」
作詞・作曲/真島昌利
マーシーのソロ4枚目のシングル。
聴けばすぐにわかる“チャック・ベリー”スタイルのロックンロール。
ブッ飛ばす時のテーマソング。
平常心を突破するハイテンション。
3曲目もやっぱり強烈なインパクトが特徴です。アレンジはとことん分かりやすいロックンロール。
この攻撃力、テンポ、しゃがれたロックの歌にどんどん気持ちが落ち込む人はいない。
誰もが高揚していくはずです。高ぶって、ブッ飛んで、ギンギンバリバリな気分になります。
攻撃的な雰囲気の中にロックンロールの親しみやすさがしっかりあります。
くだらなく忖度した守備は一切なし。
サンバーストのストラトを持ったマーシーがロックンロールを弾きまくる。
頭にバンダナを巻き付け、黒のジャケットを着て、細いパンツにエンジニアブーツ。これ以上のロックなんかないぐらいのスタイルでマーシーが歌いまくる。
マーシーの魂で叫ぶ超絶シャウトありです。
イントロはオーケストラ風の長めのSE。ヘドロマンが悪意を充満させている音がする。その音にわずかな恐怖心も含んでいます。
その後にマーシーの「GO!!!!!」とロック炸裂なシャウトで演奏が始まると、一気に突き抜けてノリノリなロックンロールに。
急激にテンションが上がる瞬間。
この時点で期待をはるかに超えています。
インパクトがありすぎる。強烈だ。このロックンロールには“とことん”という言葉が似合う。
一発で記憶に残る凄まじさ。
ギターが上手すぎて圧倒されそう。上手いというかカッコいい。この人が弾くと一番興奮する正真正銘のロックンロールになる。
ハイテンションな歌が入ると、MAXな攻撃力でビシバシとマーシーがぶった斬っていく爽快感。
オレの憂鬱までぶった斬る。
宇宙で一番の自己中心的なヘドロマンの歌。
ロックの馬鹿馬鹿しさと、ロックの頑丈さが聴こえてくる音すべてに出ています。
長めにやってくれるギターソロに大興奮。尖ったギターを突き刺して、ヘドロマンのドライブだ。
ノリノリで盛り上がる名曲。ヘドロという環境問題に対して効きすぎた社会風刺を、見事にロックンロールでやっています。
いかにもロックンロールな、とことんロックンロールな聴き心地。そこまでやるかというほどのロックンロールへの狂熱。
つまらない世間を一蹴するロックパワー。
歌詞 : 最高な皮肉があるし、肯定的に受け取れる悪意も感じる。ロックは楽しい。
これは1992年の歌ですが、現代のヘドロマンのがタチが悪い気がします。どんどん悪質になってる気もする。陰湿かもしれない。
マーシーのロックンロールは最高です。
心なんて通じない人間がすべてを搾取していく様子を歌ったこの歌が、何も考えずに生きていた中学生の私にもすごく訴えかけてきました。
この歌詞は心を動かす破壊力があります。
M4「エゴでぶっとばせ」
作詞・作曲/真島昌利
短い歌詞の中に皮肉がたっぷりで、自分の反骨精神がメラメラします。
「エゴ」という言葉を連発する感情を爆発させたヘヴィーなアレンジ。
地球史上最大のエゴイズムでぶっとばす。
1曲目から印象的なリフが続きますが、この曲のリフもロックしか感じない鋭さです。
理想的に歪みまくった音のヘヴィーなギターリフで演奏スタート。絶対に考えを曲げない頑固なイントロ。
ギター、ベース、ドラムの音が部屋を揺らす。プロフェッショナルたちの魂を聴いた。
私を興奮させる分厚く重いロックの音がブレることなく猛突進してくる。太々しいイントロが、覚悟はいいかと言っている。
張り詰めるロックの緊張感。
漂う自己主張の傲慢な空気感。
マーシーが歌い出すのは、爆発的な主張。これ以上はないパワフルなボーカルスタイル。主張が猛烈な主張として重厚な存在感をブッ放してる。誰一人、逃げ出す隙はない。
絶対オレにアピールしてる。
誰も聞こえないフリは出来ない。
一つ一つの言葉が強烈な傲慢さをぶちまけながら耳に聴こえ、心に届きます。
3人編成というと、こじんまりとしたバンドの印象を受けがちだけど、なんかすげえ、ドデカイ。
演奏もアレンジも主張も、すべてが、、、
この歌はドデカイ!
短めの歌詞とは言え、歌っていること全部に得体の知れないパワーがある。
圧倒されるほどのパワーがある。
反省してる場合じゃない。落ち込んでる場合でもない。他人に萎縮する心はいらない。
生きるのやめる必要がない。
マーシーが命を削りながら歌う「生まれたからには でっかくやりたい」
そうだった。それをやるべきだった。
かなり長めの間奏ではトランペットが吹き荒れ、日常とは違う自己重要的な世界に連れて行かれます。
そこにわずかに聴こえるアコギの音は、平常心を快楽の狂乱に変えます。
この歌は痛快だなと思った。
オレは他人に合わす気などなくなった。エゴでぶっとばしたくなった。
ラストのそうる透さんのドラムさばきが猛烈でド迫力です。
心臓にまで響く打撃音。それは心を撃ち抜くロックイズム。この人たち最高。
相対的な他人と自分ではなく、自分という絶対的なブレないエゴイズムが炸裂してる。
エゴでぶっとばせ!!!!!
歌詞: 『RAW LIFE』のどの歌もそんなんですが、ここまでとことんやってくれるとスカッとする爽快感があります。
半端にやらないところが魅力です。
当時に比べたら働き方は変わってきたし過労にも敏感にはなっていますが、日本は右肩下がりです。
みんなと同じものを目指さず、エゴでぶっとばした方が幸せになれそうです。みんなに合わすことが決してモラルではないです。
モラリズムとエゴイズム。もうバランスとってる場合じゃない。
エゴでぶっとばせ。
M5「かしこい僕達」
作詞・作曲/真島昌利
イントロにあるサラサラした快感が、さっきの上がりすぎた狂熱を緩和してくれます。
すごくキャッチーなアレンジです。
5曲目でわずかにだけ落ち着く緩やかなテンポ。しかしミドルテンポの奥に燃えるロックの情熱は激しいです。激情してます。
古いだけの無価値なものをすべてぶっ壊す凄まじい破壊力。
ここにもやっぱりものすごい皮肉がある。
ドラマチックな歌詞に惹き込まれます。それはマーシーの感性の言葉が強烈だからです。
マーシーが歌い出すとすぐに、昭和の古いだけの価値観を感じます。
とは言え、暗い昭和歌謡ではなくマーシーからの大いなる希望の光を感じる歌。
歌の主人公は冷めた視点で見ているんじゃなくて、大事な考え方をしています。
爽やかなアコギと、軽やかなエレキ。相性が良すぎる。ギターはバッキングに徹しているという印象。
華やかなキーボードのメロディ。キーボードは広がりのある音場を作り出す重要なポイントになっています。
楽器のアレンジとしては割と控えめで、どちらかと言うと歌を強調しているように聴こえます。そんなアレンジはこの歌が鋭く放つメッセージを揺るぎないものにしています。
感情に直接刺さるので無視できません。
この歌詞の内容はただのわがままではなく、「自分らしさ」で生きていくってこと。
初めて聴いた中学生の時より、年を重ねてから分かったのは特に2番の“僕のお姉さん”は生きにくい不幸せの象徴だということ。
そんな生き方では心が病んでしまいます。
昔ながらの考え方を今でも信じ込んでいるとか、認知のゆがみということをこの歌から感じます。
サビですべてを覆し、突如爆誕する“かしこい生き方”に100%で共感します。
ヒーローが現れたような圧倒的な救い。
私にとっては、ド正論。
人それぞれ感じるものは違うでしょうが、私は古くて不快に感じるものを斬り捨てるような、救いがあるなと好感触でした。
皮肉というよりも「正解」を感じます。
マーシーの歌詩の奥深さを体現できます。
少し重さを含む内容ですが、アレンジはサラサラ流れていくような一瞬の滞りもない心地よさです。だから決して暗いものではなく、尚更に希望に満ちている歌に聴こえてきます。
個人的には一部の昭和歌謡の陰湿な感じを否定しているように思いました。それは私にはとても好ましいことです。
これまた心に突き刺さる強烈な歌。
一度聴いただけで記憶に残るインパクト。
この歌がどうしても頭から離れなくなったのは、自分も不幸な“それ”を生きているということに気付いてしまったから。
私はいつでも空気を読むような面倒くさいだけで、自分の幸せを感じられない生き方をやめます。
これまで他人に気を使いすぎてきた自分が前に出るために。
押し付けられた価値観で心が病んでしまう前に聴くべき希望の光。
歌詞 : 2番、自分の親なんかの考え方がこれで、そういう生き方には吐き気がします。
そんなの負けっぱなしです。自分の幸せを目指さないただの卑怯者です。
私もこの歌詞のような生き方を信じ込まされてきましたが、これは間違いなんだと気付きました。あとは愉快な人生を送ります。
3番は私にとってはド正論です。日本特有の「同調圧力」ってものに支配されずに自分を優先して生きようというメッセージだと解釈しています。
他人の人生を生きるなんてロクなもんじゃないです。
オレはもう忖度しない。おもてなしの心なんてどうでもいい。空気なんか読まない。負けっぱなしの人生にはおさらばするのさ。
自分がよければどうでもいいんだ。
M6「煙突のある街」
作詞・作曲/真島昌利
『RAW LIFE』をバラエティ豊かな名盤にする激シブなレゲエ調。
歌に心へ訴えかけるストーリーがあります。
グッとくるドラマチックソング。
汚染された工場地帯で働く男性の物語になっています。暗く重い雰囲気が漂い、古い時代背景がリアルに伝わってきます。
最後には暴発してしまう主人公の強いストレスを歌っています。リアルに伝わるドラマチックな歌詞が、わずかにある暗さごとこの曲を好きになる理由です。
物語の感情まで聴き取れるスローテンポ。
イントロでエレキギターがレゲエのリズムを弾き始めた瞬間から、素直に心が惹き込まれるシブさがあります。
さっきまでのロックンロールとは異質な音を感じます。
どことなくある暗さも感じ取ってる。
それほど華やかとは言えない単調なイントロが語るストーリーが既に聴こえています。
マーシーが歌い出すと、途端に歌と一緒に映像が頭の中に流れてくる。
しゃがれ声が、シブくゆったりとしたレゲエアレンジにマッチしすぎてる。
だから痛みまで伝わってきて、歌の主人公の心が傷付いた世界に自分も同時に存在しているようです。
重苦しく、痛々しい。
しかしそれは決して不快ではないです。
歌われている激しい主張が、自分を不幸にしない誠実さとして心に突き刺さるから。
嫌気がさしてる気持ちに同調して、現実の自分について考え始めるかもしれません。
苛立ちや不満が歌に充満してる。
この歌は「耐え切れない何か」です。
間奏ではワウの効きまくった浮遊感のあるギターソロが、モヤモヤした気持ちを表現しているように響きます。
マーシーの歌い方が、物語の終盤に行くほどに感情爆発な苛立ちを募らせていきます。
爆発した感情は爆音で心に刺さります。
ただの暗い歌だと言ってしまう人はきっといるけど、その人が絶対にやらない「暴発」するための起爆剤。
ストレスを回避するのではなく、回帰不能に握りつぶす恐るべき衝動が鳴ってる。
なんだか2時間の映画を観たような満足感。
歌詞 : 「時間と自分を殺す場所」という歌詞が自分の経験そのままだったので、この気持ちわかりすぎで刺さりました。
出勤するという毎日の行動に常に同じ気持ちを感じてしまいます。
この曲の物語には痛々しさがあります。
辛いことからは全力で逃げるべきだし、我慢するべきではありません。自分を不幸にしているものは何なのかを考えるきっかけになります。
スローテンポで6分を超える長めの曲なので人によっては聴きにくさがあるかもしれませんが、ただの歌に心を動かすほどのストーリー性があるのが魅力です。
M7「ドライブしようよ」
作詞・作曲/真島昌利
前の曲の重さを最初の一音だけでひっくり返す軽やかさ。
この曲だけ他と雰囲気が違い、少しポップ寄りなアレンジでとても爽やかな感触です。
どこにも社会風刺や皮肉は入っていません。
誰も予想できなかったことが起こる。
それは、、、急にロマンチックです。
悪く言えばアルバムの中では浮いているのかもしれないけど、それよりメロディはずば抜けているし、ここで一度息抜きできる感じがたまらないです。
マーシーはあえてここに入れたのかもしれないし。
キラキラしてて『RAW LIFE』になくてはならない優しい光。
次の曲からまた魂が震えっぱなしなので、一度クールダウンが必要です。
ただし、確実に心地いい歌です。
爆裂気味な『RAW LIFE』の癒しポイント。
イントロなし。歪んでいないクリアーなエレキ、爽快なアコギと一緒にマーシーが歌い始めます。
キラッキラで、心が軽くなります。
心のこもったドライブへの誘い。日常の私のひきこもった心を外へと導く思いやり。
明るい光景が見えます。ウキウキした気持ちを感じます。世界は美しいと思えます。
エレキが弾く柔らかなメロディ。聴くとスッとポジティブな気持ちになってくる。
マーシーの言葉が共感しやすいロマンチックな詩的表現なので、屈折せずそのまま心に届きます。
その美しさに心の全部を持って行かれてる。
私は特に車好きではないけど、車好きにはまた違った楽しさで聴こえるのかもしれない。
一つだけハッキリと言えることは、誰もが心が軽くなって楽しい気持ちになれるということ。
攻撃的なロックのアルバムを聴いてたはずなんだけど、急にこの歌に癒された自分の心の柔らかさがおもしろいです。
「ドライブしようよ」を聴きながら、心の中に嫌な事が入ってくる隙がない。
この歌はポジティブで、明るくて、ウキウキしてて、キラキラ輝いてて、車の窓から入ってくる外の空気も感じられる特別な存在感。
それにしても誘惑力が高いな。
これを聴いてもまだ意地でも部屋にいる人はあんまりいないと思います。
歌詞の光景が見たくなるし、自分も同じ楽しさを感じたくなります。
とても美しくて、誰よりもロマンチックだ。やられた。心を奪われた。ドライブしよう。
タイトル通りマーシーがドライブに誘ってくる癒しの誘惑ソング。
歌詞 : なんだか外に出たくなるほどに歌詞は爽やかで軽やかです。曲調も同じく爽やかで軽やかなので、部屋の中にはいられません。
外の空気に触りたくなります。
いつもキラキラ光るものを感じます。
唯一無二なマーシーの素晴らしい感性が炸裂していると感じます。
「リボンのとれた贈り物」という表現だけでワクワクします。すべてを語らない美しさというのはあります。
分かりやすく言えば、ロマンチックです。
M8「情報時代の野蛮人」
作詞・作曲/真島昌利
ここからの流れがまた最高です。
アルバムの音楽的な流れとしても素敵だし、私はここからの3曲の歌詞が特に影響を受けるほどに刺さりました。
レスポールを弾きまくりながらマーシーが魂で歌います。
ものすごいロックの疾走感。
スピード感のあるテンポ。高揚感に満ちた演奏。体感するリアルなロック。グルーブ感が溢れるハイテンション。
きっと誰もがしっくり来るアレンジ。
この曲は次のアルバムを出した時のライブでもやってたほど人気みたいで、私は盛り上がるブルーハーツっぽい曲だなと感じます。
のんびりそこでコーヒー飲んでる場合じゃなくなってくるほど突撃してます。
イントロは暴力的にコードストローク全開な図太い疾走力で攻める。
カッコいいロックの暴力が迫ってくる。
オレの心を一瞬で鷲掴み。炸裂してる。
普段の控えめな性格がなんか燃えてきた!
いつもマーシーに求めている激情のロックのボーカリスト&ギタリストを体現します。
誰かのロックの理想なんかはとっくに超えてるリアリティ。マーシーが突っ込んでくる。
本物のロックだし本気のロックです。
唸るベース、煽るドラム。弾きまくり叩きまくりで魂が激しいロックだ。
この3人の鋭い演奏は野蛮人そのもので、止められる人なんか1人もいない。
興奮に殺られる瞬間の連続。
野蛮さの裏に確実に存在する誠実さ。マーシーの歌声で、マーシーの言葉で、心の内側の真実を歌う誠実さ溢れる歌詞が心に突き刺さってくる。
ロックに似合う自己主張。
ほとんどの場合で誰もが遠慮して言えないことを、マーシーが遠慮なく言い放つ瞬間に心の中のドロドロした嫌悪感がスッキリする。
オレもわがままな野郎さ、マーシー。
弱いオレの気持ちを代弁して高らかに歌うマーシーに救世主を感じます。
ワウを使ったマーシーの長めのギターソロを思う存分に楽しめます。こいつは炸裂してる。アウトロでもまた長めのギターソロを楽しめます。
ロックのギターが脳内トリップに導く快音。
「情報時代の野蛮人」を聴いていると自分の脳の中で、それまで体験したことのない熱さ激しさ自分らしさを実感してしまう。
この歌は全身が熱い。すげえ!タフだ!!!
恐れさえ笑い飛ばすロックの野蛮人どもの猛烈な勢いに震える。
なんかよく分からないけど、今オレはとても余裕だ。
歌詞 : 私の代わりに本音を言ってくれてる歌詞が勇気の言葉になります。「俺はあいつが嫌いだよ」というはっきりした言葉だからこそリアルに感じました。
オレもあいつが嫌いだよ。
誰だって好きな人と嫌いな人がいて、全員に好かれるのは不可能です。
サラッと韻を踏んでるのも大好きです。
深い意味はないのかもしれませんが、この歌詞の韻の踏み方は見事です。圧巻です。音として聴くとめちゃくちゃ気持ちいいです。
マーシーの感性は高級なオーディオよりも音がいい。
M9「関係ねえよパワー」
作詞・作曲/真島昌利
そろそろアルバム終盤ですが、勢いはまったく衰えない。むしろ激増する。
内容がリアルすぎてまた脳がブッ飛びます。
インパクトの強い興味をそそるタイトルが、またなんか奇抜な事やってくれそうな予感。
一体なんの歌なんだ⁈
“日本人”てものが見えてきます。
「人と違うものにならないでね」という日本特有のくだらない圧力を木っ端微塵に打ち砕くパワーソング。
人と違っても自分らしくあるべきロック。
信じられるのは「個性」だと思い知らされる凄まじきエネルギー。
同調性の前に尊重されるべき個性。
ストラトを弾きながらマーシーが大いなる主張を叫びまくる。私の全身全霊が痛いと感じるほどの迫力で攻める。
胸熱なドラムロールでスタート。
すぐに印象的なリズムギターが入ると、すでにこの歌の世界観に惹き込まれてます。
タイトルでもある“関係ねえよパワー”と繰り返し歌い出すマーシーには、他人の圧力なんか視界にすら入っていない。
誰より誠実であり、正しい傲慢でもある。
どの瞬間にも、心に深く突き刺さるマーシー流の哲学的な歌詞が散りばめられています。
ロックに似合うしゃがれた声でもっともな主張をするもんだから、心が反応しないはずがない。
マーシーにまたまた救世主を感じた。
主たるリズムを弾く力強いアコギと、短いメロディで自分を主張するエレキの掛け合いが最高です。
このリズム感、この音、この歌には日常にはない快楽を味わってしまう。
アルバム後半は攻めてるなと思った。
この人たちの熱量は度を超えている。
度を超えたロックパワーが、節度のない日本人的思考を鋭くぶった斬る。
打楽器による南国っぽい間奏も独特で、そんなに聴き馴染みのないロック以外の音楽を感じられて楽しいです。
この歌のパワーは、「普通」ってものに嫌気がさしてる日には余計に炸裂しやがって、オレの心を奮い立たす。
マーシーが魂をぶっ込んで歌う。
「俺の邪魔をしないでくれーーー!!!!!」
おおお!そういうことだった!刺さった!
そこら辺の世間にある圧力を、粉々に破壊する激しい主張の歌が存在してるってことがまず驚きなのかもしれない。
自分の人生に、他人のルールは関係ねえ。
みんなと同じである同調性が良い事とは限らない。
歌詞 : 昔の自分が歌詞と同じだったので共感しすぎて今では考え方をすっかり変えました。
この歌から学んだ教訓は「オレが有能か無能かは関係ねえ」ということです。
なぜなら、関係ねえよパワーだから。
この歌詞は日本人というものを表しているように思います。
日本に生きていると誰もが、みんなと同じでなければいけないと感じてしまうくだらなさが蔓延してます。誠実さのかけらもない。
マーシーが大事な事に気付かせてくれた名曲です。今の私はみんなと同じだと不安になってしまいます。
この歌はわがままに聞こえるかもしれませんが、そうではなく「自分優先」ということです。他人の人生を生きてしまわないように自分の心に刻みました。
マーシーは歌詞でよく“オレの邪魔をしないでくれ”という主張をします。そこに大いに共感します。
心を病んでしまう前に「関係ねえよパワー」を聴いてください。
M10「こんなもんじゃない」
作詞・作曲/真島昌利
ロックに涙が流れる瞬間があります。
完全に『RAW LIFE』のハイライト。
何度か聴いてから、この曲の歌詞が心の中に入ってきた時に生き方が変わります。記憶の中にもドッシリと腰を下ろしていきます。
例えば、ブルーハーツの「青空」のようなグッとくるあの感じです。
金子マリさんのコーラスも感動を大きなものにしています。
ボニーとクライドが僕の部屋へやって来て、ビールを飲みながら、人生とか嘘とか自由について語るバラード。
『RAW LIFE』一番の説得力。
イントロはキーボードが夜の静けさを演出するメロディを弾いて物語の始まりです。
歌い始めたマーシーの声は、物語の感情的な読み手でもあって、薄暗い夜を照らす一筋のロックの光。
1番はキーボードとボーカルのみで、私の感情の激しい部分と心のガードし切れない柔らかい部分を直撃します。
その音はマーシーが今ここで歌ってる生音でスピーカーから再生されてる。
まだ歌が始まったばかりだけど、ゆったりしたバラードにすごく熱いものを感じます。
2番から入ってくる強い生命力を持ったアコギは、光の余韻が遠くへ去った静かな夜に心の本音を語り出します。
私はとっくに歌の世界の中に存在してる。
わずかに緊張しながらそこに座って、夢中になってマーシーが歌う興味深い話を聞いている。真実のロックを聴いている。
マーシーがオレの部屋へやってきた。
ドラマチックでありロマンチックでもあるアレンジには、思わず涙がたまってきてしまいます。
それは一切の嘘が歌われていないから。
激ロックな『RAW LIFE』のバラードによる感情揺さぶりポイント。誰もが感情移入を避けられない激情ソング。
歌のストーリー性と、ガツンとしたロックのボーカルと、熱さを放ちながらもゆったりとしたバラードのアレンジに自然と心は惹き込まれていきます。
ここにしかないもの。
他の誰も語らない真実。他の誰にも出来ないロックのバラード。唯一無二こそが私に最高の魅力を感じさせています。
歌に魅せられてる瞬間の心は、何か新しい答えを見つけそうな嬉しい予感。
ラストは感情を爆発させるのが、マーシー流のロックです。
“こんなもんじゃない”と繰り返し歌い、だんだんテンポが上がり、感情の激しさが急増して、全員のテンションまで爆上がりします。
この激アツっぷりのロックを聴かされてもまだ、諦めてる心なんかあってたまるか。
オレだって、、、
こんなもんじゃない、こんなもんじゃない。
結論 : 信じたいものを信じればいい。
私にとって、シングルにしてもよかったんじゃないかと思うほどの名曲です。
アルバムのラスト手前に収録されていることが、「こんなもんじゃない」の良さを引き立てています。
とても美しい言葉の一つ一つに、ハンパない説得力と揺るぎない生命力があった。
すっかり魂が震えた。全身が熱い。
歌詞 :アルバム一番の胸熱ポイントが炸裂します。
一般論よりも何を信じるのかが大事なんだと「こんなもんじゃない」から学ぶことができます。
本当のことを知っていない人間に対し、鏡をのぞいたらどうだ?という捨てゼリフは誠実そのものです。
やっぱりマーシーは世界一の優れた詩人だなと尊敬します。
落ち込んだ時に聴くといつも復活できます。今ある辛さとか苦しみに負ける訳にはいかないと、いつでも自分の心を復活させる特効薬です。
病院に行くよりも『RAW LIFE』のロックを聴いた方が心が健康になれます。
M11「RAW LIFE(Reprise)」
作詞・作曲/真島昌利
M1「RAW LIFE」の別バージョンです。
こちらのバージョンは電子的な印象を受けるアレンジです。
オリジナルバージョンとはテンポも違うし歌詞も結構違います。
イントロでヘヴィーなエレキの音が鳴った瞬間に、オリジナルバージョンより10倍は重厚だと感じます。ドッシリとしています。
キンキンなギターの音が耳に直撃します。
ダブっぽさもあって生粋の人力ロックとはまた違った聴き心地で楽しめます。
とは言え、根底はマーシーのロックです。
生のロックと電子音がフュージョンした音が新鮮に聴こえてきます。当時の新しいロックの走りだったといってもいいかもしれない。
マーシーは敢えて、ここで電子的ものをやっている印象です。
オリジナルバージョンとの聴き比べは、誰でもとても楽しいと感じると思います。
耳への感触も、自分の心が感じ取る音が放つ世界観も、結構違うからです。
ところで、こちらのバージョンにはあの女優さんの素晴らしく官能的で、ドギマギするほど淫らな息づかいは入っていません。
当時は中学生だった私はあれにはビビった。
今度は渋い男の色気で攻めてきます。
オリジナルバージョンより少し下げたテンポで歌うマーシーの声が、より太くより強靭に激しくしゃがれて、男のロックをぶちかましてます。
こちらの方が歌を耳が聴き取りやすく、心が受け取りやすく、歌詞の世界に感情がたかぶりやすいです。
曲のテンポは下げたけど、やっぱりマーシーの滑舌が良くてカッコいいラップの雰囲気はこっちにもあるなと思いました。
これはそこら辺にいくらでもあるただのロックではなく、唯一無二が備わってる。
決して当時の流行なんかではなく、マーシーはそれより難儀な普遍性を作りました。
残すはBONUS TRACKのみなので、本編はここでおしまいということなのでしょう。
私の場合はブランクの後のBONUS TRACK「ですメタル」まで聴かないと、しっくり来ませんが、アルバムの締め方としてはしっかりトドメを刺したという感じが最高です。
ラストの音はマーシーのパワフルな歌声で、
“RAW LIFE”
でした。「生々しいリアルな暮らし」の力強くキレが良いフィナーレです。
歌詞 : オリジナルバージョンにはない最後の一文がすごく心に響きます。
落ち込むと過去に価値を見出してしまいがちになるから、この歌を聴くとマーシーでもそうなんだと安心できてしまいます。
そういう経験は誰にでもあるのではないかと思いますが、私はすごく共感しました。
『RAW LIVE』というライブDVDに収録されている「RAW LIFE」は(Reprise)の方のゆったりしたアレンジで始まって、間奏の直後からテンポが上がりオリジナルバージョンになるという胸熱展開になってます。
M12(BONUS TRACK)「ですメタル」
作詞・作曲/真島昌利
BONUS TRACKなので本当は“12曲目”というクレジットではないです。
2分間のブランクの後に突然始まります。
まだ曲入ってるんだと、ちょっと隠れてたものを発見したような嬉しい感じ。
ゆったりとした怪しげなイントロから突然猛烈にスピードとパワーが増す驚愕アレンジ。
これは“デスメタル”じゃないです。
「ですメタル」日本語です。
視覚的にも強烈なタイトルで、なんとなく察しがつきそうな予感。しかしマーシーは想像をはるかに超える衝撃をブッ放します。
素晴らしいロックの馬鹿馬鹿しさがある。
ギターもベースもドラムも凶暴なデスメタルアレンジで弾き狂ってる感じがシビレます。
オレの全力疾走なんかじゃ追いつけないぐらいすげえ速い。
1分半しかない曲だから、距離を縮めることさえも不可能な爆速なヤツ。
しかもパワフル。速いし強い。敵わない。
メタルアレンジなので、いつもの聴き馴染んだマーシーのギターの音ではないです。
言葉が3つしか出てこない歌詞に深い意味はないんだろうけど「現在、過去、未来」の場合が歌われています。
どこまでも自由すぎる。
最後にもすごいのが入っていたという感想を持ちました。こんなの、衝撃です。
歌詞 : まさかのメタルアレンジでこの歌詞をひたすら歌っているのが頭から離れなくなります。
100%言い切っているその感じに強く惹かれます。バシッとしてる。
速弾きのメタルアレンジで変に引っ張らない切れのいい締め方が最高です。
ビシッとしてた。
メタルアレンジに意表を突かれ、新しい答えが見つかりそうになったところでアルバムはおしまいです。
なんだかすごくスカッとして、自分の心の奥の誠実さが燃えてくるマーシーの3枚目のソロアルバムでした。
ギンギンバリバリの攻撃力だった。
好ましいロックの暴力性も感じた。
すべての主張がロックだった。
これ以上に皮肉たっぷりなアルバムは他にないです。オレのイラついてる気持ちを見事に代弁してくれるのは『RAW LIFE』です。
イライラしながら聴くロックの決定版。
聴き終えた時に素直に心がスカッと楽しくなってることが重要です。
突き抜けた皮肉ロックの名盤。
『RAW LIFE』本編はここで終わりですが、「-Revisited-」にはアコースティックライブ6曲とシングルのカップリング2曲が楽しめるDisc2があります。
本編とは印象がまったく異なるDisc2はのんびり聴くのが良さげです。また違ったマーシーを堪能できます。
RAW LIFE -Revisited- Disc2
『Disc2』はどちらかと言うと、ゆったりしてます。本編と同じ高ぶった激しい気持ちで聴くのとは違います。
本編とは打って変わります。
ライブは1993年渋谷公会堂でのオープニングで演奏されたアコースティック・ステージが収録されました。
1stアルバム『夏のぬけがら』と2ndアルバム『HAPPY SONGS』収録曲が中心の内容。アコースティック・アレンジなのでオリジナルとはちょっと感触が変わっているのが好印象です。
オフィシャルでこの貴重な音源がリリースされたのは最高だと思いました。
当たり前だけど、ブートレッグではないので音質はバッチリ。
それまでアルバム未収録で、中古を探して買って聴くしかなかった2枚のシングル・カップリング2曲も収録されました。
M1「休日の夢」
作詞・作曲/真島昌利
2ndアルバム『HAPPY SONGS』収録曲。
Disc2は落ち着いたテンポの歌から、レアなアコースティック・ライブが始まります。
ライブ収録の全曲(M1〜6)が落ち着いたテンポのアコースティック・ライブ・バージョンです。
聴こえてくるのは美しいアコギの音、柔らかなマーシーの歌。
熟知していた歌だけど、アコースティックライブ・バージョンなので既にオリジナルとはアレンジが違っています。
かなりの新鮮さを感じます。
そう言えば、演奏が始まる前に客席の多分ファンから「マーシー頑張れ!」とか言われててちょっとウケました。
客席からの声援はにぎやかだけど、不快に感じる騒ぎっぷりではありません。それは重要なポイントです。
だから安心して聴けます。
アコースティック・ステージとは言え、雰囲気を華やかにするエレキギターの音も入っています。私はこのライブを観ていませんが、音から判断するとマーシーがエレキを弾いているのだと思います。
小気味良いカッティングはマーシーの神技。
それを弾きながら歌うプロフェッショナル。
ダサく脱力した退屈な感じなどなく、音楽にすべてを込めた瞬間の熱が伝わってきます。
アコギ、エレキ、バイオリンの演奏でマーシーがゆったりと、しかし根底は情熱的に歌います。
すぐ近くで演奏しているリアルな生音が聴こえてきてドキドキします。
滑らかな演奏。センチメンタルな午後に合いそうないい歌、いい演奏を聴いてる実感。
マーシーの歌は耳に聞こえるだけのものではないし、頭で考える事をショートカットして心に直接響きます。
シンプルなアレンジになった「休日の夢」が優雅な時間を感じさせます。
ギンギンバリバリのボサノバ。
M2「オートバイ」
作詞・作曲/真島昌利
1stアルバム『夏のぬけがら』収録曲。
オリジナルバージョンとはかなり印象の変わったアレンジで興味深いです。
アコースティック・ステージということで音数が少ないので当たり前かもしれませんが、聴き馴染みすぎた私にはとても新鮮です。
こういうの楽しい。
大きな気持ちとゆったりとしたテンポで、オートバイが走っていく真摯な態度のアコースティックアレンジ。
無法者な一人ぼっちが一直線に走り去っていく感情炸裂のライブ・バージョン。
クリーントーンのマーシーの力強いエレキ、スライド奏法の細やかなアコギ、やはり優雅な響きを感じさせるバイオリン。
演奏は輝きを放ちながら心へ届きます。
音数が少ない分、マーシーの歌声が細かなニュアンスまで伝わってくるほど前に来てる。
オリジナルとはかなり異なるアレンジは、興味深く一音一音に魅力を感じます。
マーシーの歌は力みすぎていない和やかな雰囲気です。とは言え、芯の通ったロックのボーカルであることは間違いなし。
こんなに美しいアレンジの「オートバイ」は生で観たら涙が流れたのかもしれない。
アレンジは優しくて緩やかなのに、熱く込み上げてくるものがあります。
歌が私の感情にダイレクトに語りかけてる。
M3「とても寒い日」
作詞・作曲/真島昌利
2ndアルバム『HAPPY SONGS』収録曲。
マーシー「じゃあ次は、あのぉ、、、あんまり働いてなかった、、頃の、作った歌をやります。」
この歌は特に本編の激しさとは随分と異なるのんびりとか、ゆったりとか、まったりという気持ちを体験できます。
分かりやすく言うと、癒されます。
アレンジの異なるライブ・バージョンはやはりオリジナルとは感触が変わりますが、こちらのバージョンは曲のメロディや歌詞の良さを引き立てています。
ライブ会場の全員がうっとりしている。
「とても寒い日」というタイトルですが、この歌から感じるのはあたたかさです。暖房器具のあたたかさ、マーシーの心のあたたかさ、生演奏のリアリティのあたたかさ。
オリジナルバージョンでもあたたかさを感じたけど、より一層のぬくもりが私の体に触れてます。
心まであたためる誠実な音。
のんびりした心情を歌う歌詞がゆったりアレンジと衝撃的な出会いをしてしまってます。
忙しない日常に必要なまったり感。
こういう雰囲気の歌が、世間に合わせすぎて重苦しくなった心を救う。
歌いながら弾く伴奏的なマーシーのエレキはいい音がする。活躍の場の多いアコギとバイオリンもただの音ではなく、快音で鳴っています。
Disc 2のライブ録音は音が近い。
マーシーたちがそこで演奏してる。それは見えないけど、そう感じる。
会場の空気感を鳴らすその音の響きとか、今自分が会場にいると錯覚させる高音質盤。
その瞬間に会場にいた人たちが癒されてる。
滑らかで、柔らかくて、布団よりもあったかくて、人間社会で凍りついた心がとけた。
M4「カーニバル」
作詞・作曲/真島昌利
4thアルバム『人にはそれぞれ事情がある』収録曲。
ライブ収録の中ではこの曲のみ1st , 2ndアルバムの曲ではなく、名盤4thアルバムに収録されている曲です。
もちろんオリジナル・バージョンとは異なるアレンジのライブ・バージョンなので、その違いに楽しさを見出してしまうのです。
随分と印象が変わっています。まさにアコースティックアレンジです。
静けさとか、そんな言葉が浮かびます。
録音されているのは、一度しかなかったライブの嘘がない一発勝負の瞬間です。
このライブを体験していない私が今聴いているのはCDだとしても、きっとライブの瞬間ごとに近い感情を抱いています。
Disc 2のライブ録音には臨場感があります。
元々オリジナルが緩やかな歌だけど、そこに少しあったメルヘンチックな雰囲気がアコースティックの柔らかさに変わっています。
オリジナルは現実とは別の世界を感じさせましたが、このライブ・バージョンは自分の手の届くところにあるような、自分が生きているリアルな現実の歌という印象を受けます。
歌ってアレンジでこんなにも世界観が変わるのかと驚きました。
マーシーが心を込めて歌います。
自分が作った歌を自身の感性と感情で歌うというのは、その歌の真の姿を見せているように聴こえます。
静けさと緩やかさの中に、マーシーたちの真摯な態度と情熱を感じました。
まっすぐに心へ響きます。
この演奏が終わった後に変な奇声を上げず、拍手で感動を伝えるオーディエンスにちょっとリスペクトです。
その人たちが目の前で見て聴いたマーシーが表現した世界を、私にも体験させてくれたような気がしました。
その後で楽器のチューニングを始めている音に、その日のライブのリアリティが聴こえてきました。
ところでこの歌が収録された4thアルバム『人にはそれぞれ事情がある』は、このライブ(1993)の翌年(1994)にリリースされたので、新曲として披露したのか、それとも古くからあった曲を再演したのかというのが興味深いところです。
ともかく、オリジナル・バージョンとの聴き比べはとても感情を刺激します。
M5「花小金井ブレイクダウン」
作詞・作曲/真島昌利
1stアルバム『夏のぬけがら』収録曲。
心の重さがベトっとした名曲です。
わずかに重みのあるバイオリンが曲の雰囲気を決定付けています。
爽やかな風は吹かない。汗をかくほどの音楽への凄まじい狂熱が伝わってきて、リスナーの感情まで支配してます。
見事に歌の世界に惹き込まれてる。
40代の私は、どことなく80年代の終わり頃を感じさせる歌詞に、自然と思いを馳せてしまいます。
美しさのある言葉で表現された歌詞。
ぶっちぎりの比喩表現、そこにある想像の余白、遠すぎず近すぎない現実感にうっとりします。
筋の通ったしゃがれた歌声に歌詞の世界がマッチしすぎてて、酔っぱらいそう。
歌に度数の高いアルコールを感じてしまう。
この歌が収録された1stアルバム『夏のぬけがら』を初めて聴いた時に一度で心に残ったサビの歌詞は印象的です。
ライブ・バージョンになって、その印象深い歌詞が今この瞬間の生命力を持っています。
サビでマーシーは力強く歌い、エレキを強めに掻き鳴らして激しさを感じますが、それ以上に歌自体がとても繊細です。
しかし激しさを強調するサビにはやはり歌のハイライトがあります。それは激情です。
私が何を感じたのかと言うと、この歌は繊細だということ。
そこに惹かれました。
歌に登場している人物はきっと大雑把な人ではなくて、繊細な感性なのだと思いました。
突然、空から雨ではなく涙が降ってくる。
大雑把な人には決して見えないものがこの人には見えています。すべてのものを繊細な感性で感じ取っている姿に好感を持ちました。
マーシーの感性は唯一無二です。
他にいないから好きになりました。
このライブ・バージョンがより繊細になっていたので、非常に好ましい美しさを感じたのでした。
M6「HAPPY SONG」
作詞・作曲/真島昌利
2ndアルバム『HAPPY SONGS』収録曲。
お気楽ソングの決定版でやっぱり名曲です。
マーシーが弾きながら歌う軽やかなエレキがそれまでのネガティブな思考を完全な形でポジティブに覆す。
エレキ、アコギ、バイオリンでの演奏は、日曜日の昼間の心の軽さを感じます。
気楽に楽しむための要素が満載です。
オリジナル・バージョンにはなかったバイオリンが入ることによって、素晴らしい異国情緒が誕生しました。
外国のビールが合うかもしれない。
今回のアレンジはお気楽加減が余裕で常識を超えていて、世間体なんてとっくに遥か彼方に置き去りです。
世間体を気にしながら生きてはならぬと、歌がハッキリキッパリ言っています。
むしろ、その概念すらありません。
力みすぎていないマーシーのボーカルも、全開で脱力した気楽な時間にしてくれます。
オリジナルとは一味違ったタリラリラーン。
聴くと心がスーッと軽くなり、気持ちの脱力感が平常心を抜け出していきます。
ずっと考えてた事とか、悩みっぱなしだった事とか、不快に感じた事とか、全部「そんなのどうでもいい」と穏やかな気持ちです。
歌がビールを差し出しながらとてつもなく大きな笑顔で「キミ、頑張りすぎだよ。」と言っている。絶対言ってる。そう聞こえた。
オレにアピールしてる。
そんなに頑張らなくてもいいんだよ。
そう気付いた私の表情は、もう真面目な顔をしていない。
“さあ もう タリラリラーン”
むろん、世間体なんて気にしちゃいない。
心を動かすとても愉快なアレンジでした。
これを聴きながらイライラし始めたり、ひどく落ち込んだりする人はいません。もしいたとしたら、それは心が病んでいる可能性があります。
HAPPYな歌を歌って 気楽にやろう。
M7「踊り踊れば」
作詞・作曲/真島昌利
4thシングル「GO! GO! ヘドロマン」カップリング曲。
本物の生命力がここにある。
イントロが始まってすぐに聴こえてくる電子音のような音に、人力ロック好きな私はほんの少しの違和感を覚えました。
しかしその直後の楽しげなダンスミュージックっぽいアレンジが完全に違和感なんか払拭してくれました。
悪いけど、これは相当楽しいよ。
タイトル通り踊り出したくなる明るさが、歌全体にあります。
開放的な踊りなんかが似合います。普段は塞いである心のシャッターを開けっ放しの自由度です。
踊りまくるための激しいリズム。
一つだけハッキリと断言できるのは、これは自由に楽しむための歌だということ。
マーシーが歌い出すと、心が一瞬で明るい太陽の下へ飛び出していきます。
パッとしてる歌の開放感に思わず心が反応します。どんなにダメな私も肯定してくれるような明るい歌詞に、楽しい気持ちが新しく芽生えてきます。
マーシーの独特な言葉のチョイスが心地よく響きます。一度もつまずかない滑らかさ。
キラキラ舞い踊るエレキと、生命力の源になってるアコギ。聴いているとだんだん楽しくなってきて、それらの音が爆音で耳に聴こえるようになってきます。
でも爆音で鳴っているのは耳じゃなくて心の方でした。
歌から生きてる命を感じる。
軽やかな曲に聴こえるけど、実は奥の情熱は激しいしとても熱いです。
きっとこの人たちにしか表現できなかった特別な雰囲気。
小さな悩みや、どうにもならない考え事なんか投げ捨てて、、、
ワクワクしよう、心が踊る事をしよう。
この歌には楽しい気持ちだけがあります。
M8「I FOUGHT THE LAW」
日本語詩/真島昌利 作曲/Sonny Curtis
5thシングル「俺は政治家だ」カップリング曲。
THE CLASHによるパンクカバーでもお馴染みの「I FOUGHT THE LAW」です。
マーシーによる日本語詞のシュールさがぶっちぎりのインパクトに繋がっています。
日本語で歌うとはすごく斬新に感じます。
それは意表を突くカントリー調。
ウエスタンブーツを履いてスカートをなびかせながら、一列になった女性たちが明るい笑顔で踊っていそう。ただのイメージ。
イントロは情熱的なバイオリン主体。
体がノリノリになってくる軽やかなリズム。
オリジナルは英語だけど、マーシーが歌うのは強烈な日本語詩。その歌詞は違和感などなく、ハマりまくってます。
シュールだ、、、そこが好きだ。
覚えやすい。英語が話せないオレもついに「I FOUGHT THE LAW」を歌えるようになる。
この場合はアコギですが、ギターのフレーズでこれは「I FOUGHT THE LAW」だと完全に理解した瞬間に胸が熱くなります。
間奏はキーボードのメロディが輝きを放ちます。楽しげなのにどこかで哀愁を感じるメロディにうっとりします。
そう感じるのは歌の世界に惹き込まれ、心にまで聴こえたから。
カントリー調で、柔らかく聴こえるかもしれないけど、ど真ん中には攻撃力もあると感じます。
とは言え『RAW LIFE』本編に収録するのはアレンジ的に合わないような気がします。
強烈な1曲なのは間違いなく、シングルのカップリングも手を抜いていないところにマーシーへの憧れが強まります。
このシングルに収録されたのは「俺は政治家だ」と「I FOUGHT THE LAW」ということでお金に因んだ内容だったんだとさっき気付きました。
シングルの裏ジャケが「¥」だし。
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
という訳で『RAW LIFE -Revisited-』の全曲が聴き終わりました。
Disc2は特別感のあるライブ・バージョンが聴けて楽しかった。シングルのカップリング2曲もDisc2によく合う雰囲気でした。
Disc1とDisc2はまったくの別物という印象ではあります。
そこがいい。
現在、『RAW LIFE』のオリジナル盤は中古を探せば入手できます。
「オリジナル」と「Revisited」の両方を所有している私としては、これから買う場合には『RAW LIFE -Revisited-』をオススメします。
凶暴なロックの本編、緩やかでアコースティックなDisc2と1作品でマーシーの二面性を楽しめるのが素晴らしいからです。
超純粋だった中学生の頃の強烈にドギマギした体験を経て、今では1年に何度も聴く名盤になりました。いつ見ても曲のタイトルがどれもインパクトがあって惹かれます。
世の中のつまらない事を皮肉った突き抜けたロックの名盤。
30年以上も聴き続けた今でも飽きずに無性に聴きたくなります。
それだけ普遍的な魅力が『RAW LIFE』にあります。
ありがとうございました。
また読んで頂けるとものすごく嬉しいです。
※マーシーの音楽はサブスクにはありません。